※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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4ヶ月後


捜索救難作戦

 2055年 12月11日 0813時 ルーマニア アウレル・ヴライク国際空港

 

 雪が積もった空港に、1機のAn-12が雪煙を巻き上げながら着陸する。ガンシップグレーの機体には、白で『Griffin&Kryuger』とステンシルで描かれている。更にIl-76が2機、続いて着陸した。

 

 Il-76からはロシア製のKa-60カサッカ汎用ヘリが引き出された。そして、An-12からは、五十嵐智基と戦術人形たちが降りてきた。地上では、グリフィンの支援スタッフたちが待っていた。

 

『到着したか、指揮官。では、状況を軽く説明する。鉄血の部隊がルーマニア東部から侵攻を開始した。勢いが非常に激しく、NATOのタスクフォースが支援に出撃しているが、どうも旗色が悪いらしい。我々は、君たちの他、7個小隊規模の戦術人形部隊を投入することを決定した。我々は支援のためにMQ-9リーパーを3個飛行隊分展開させている。現場の連隊司令官から無人機用のコンソールを受け取ってくれ。それで無人機を呼び出して、ミサイルなり誘導爆弾なりを奴らの頭の上に落とせる筈だ。いいか。君らの第一任務は、AR小隊の捜索と発見、そして小隊所属の4人の戦術人形の救出だ。彼女たちは、救出次第、君の部隊のメンバーとして合流させる。そして、ここからが問題だ。一昨日、そこに出撃させたT中隊から連絡が無い』

 

「T中隊ですか。メンバーは?」

 

『指揮官はフランス人のアンリ・ルノー。31歳だ。彼の指揮下にいた戦術人形は以下の通り。ジェリコ941、AEK-999、AS-VAL、9A91、Ots14、ガリル、MP40、P08、MP38だ。まずは、T中隊の捜索救難も可能であれば頼みたい』

 

「わかりました。では、目下の所、鉄血の連中を排除しながら孤立した味方の捜索救難。これが任務で間違い無いですか」

 

『ああ。問題無い。では、幸運を、指揮官。それと、航空支援はいつでも呼べるよう待機させてある。遠慮なく使ってくれ』

 

 2055年 12月11日 0834時 ルーマニア アウレル・ヴライク国際空港

 

 五十嵐は武器を確認していた。破砕手榴弾、閃光手榴弾、煙幕手榴弾、自動小銃、拳銃、散弾銃、弾薬、食料、飲水、浄水キット、医療キット、コンバットナイフ、工具、複数の種類の信管、プラスチック爆薬等々、全部で約30kg。かなりの重さだ。

 

「それで、鉄血の奴らをやっつけながら、味方を見つけて助け出せば良いんだよね」

 

 UMP9が五十嵐に訊いた。

 

「ああ、それが今回の任務だ。どうやら、結構押されて大変なことになっているみたいだ」

 

「AR小隊はどうなってるかわかる?」

 

「いや。全然。それにT中隊も助けに行けってさ。全く、無茶振りしやがって」

 

「それにしても寒いね。結構大変そう」

 

「カイロを大量に持ってきておいた。食料は極地用。灯油と防水マッチ、着火剤を追加で要求しておいてよかった。万が一の脱出地点は確認していあるな」

 

「大丈夫。みんなはあっちで待ってる」

 

 五十嵐とUMP9が兵員輸送車の方へ歩いていった。滑走路からスコーピオン軽攻撃機がGBU-12レーザー誘導爆弾やAGM-65空対地ミサイル、増槽を満載して離陸していく。ピラーニャの前には、B中隊のメンバーが並んでいた。

 

「よし。全員、乗れ」

 

 戦術人形たちが装甲車に乗り込んだ。ピラーニャが走り出す。B中隊の前には、Y中隊のメンバーが乗った同じ装甲車が割り込み、走り出した。

 

「うわっ、誰よ運転しているのは。質(たち)悪いわねー」

 

 B中隊のピラーニャを運転するFALが文句を言った。Y中隊の装甲車が市街地へ向けて走り出す。目的地はB中隊と同じだ。

 

「Y中隊の指揮官は・・・・・・ええと・・・・・名前から推測するとシンガポールとか中国の人かな。それにしても、随分急いでいたな」五十嵐が手に持ったブリーフィング資料を見て言った。

 

「乱暴過ぎますよ。それで、あの人達に付いていけば良いんですか?」

 

「ああ。そうしてくれ」

 

 Y中隊の装甲車はB中隊を尻目に、ずんずん戦場へ向けて驀進していた。しかし、そのことが、後に彼らの命運を大きく分ける事になってしまった。

 

 2055年 12月11日 0857時 ルーマニア ブカレスト市内

 

 美しかったブカレストの光景は一変していた。銃声、爆発音、そして瓦礫になった建物。AKS-74を持ったルーマニア軍の兵士たちが、通りを奔走している。MLI-84歩兵戦闘車が25mm機関砲を撃ち、わらわらと湧いてくる4本足の無人兵器を破壊し続けている。奇妙な銃を持った鉄血兵が銃撃し、ルーマニア軍の兵士が倒れる。鉄血兵の頭が吹き飛び倒れる。狙撃手が仕留めたようだ。

 

 五十嵐と戦術人形たちは、装甲車のなかでギュウギュウ詰めになっていた。装備は重く、一人あたり20kgにも達する。

 

「イタタタ。もうちょっと詰めてくれる?」M14が隣にいるFNCに言う。

 

「もう無理ですよー。これ以上押したら、指揮官様が潰れちゃいますよ」

 

「し・・・・・指揮官大丈夫?」

 

 五十嵐は、装甲車の壁とUMP9に挟まれた状態だった。足元には装備を詰めたザックが置かれてあり、身動きが取れない。

 

「な・・・・・なんとかな」

 

 装甲車の乗り心地は最悪で、がたがた揺れるはシートはゴツゴツして固いわで踏んだり蹴ったりだ。FALは、あまり揺れたりしないように慎重に運転しているようだが、仕方がない。頻繁に銃声と爆発音が聞こえてくる。路面はアイスバーンで、かなり滑る。だが、交通安全をと慎重に運転していたら、標的にされて殺されてしまう。

 

「さて、最初に降りるのはあたしとスプリングフィールドか。嫌だなー、真っ先に撃たれるやつじゃん」AM-RFBが文句を言う。

 

「だから装甲車を壁にするって教えられただろ。降りたら、すぐに遮蔽物に隠れるんだ。建物とか、車の影とか」五十嵐が言う。

 

「わかってるよ。私達の命、指揮官に預けたからね」

 

 責任重大だ。15人の仲間たちの命が自分の判断にかかっているのだ。

 

 2055年 12月11日 0911時 ルーマニア ブカレスト市内

 

 通りの向こうで、グリフィンの部隊を待ち構えている鉄血の部隊がいた。人形兵が、ロケットランチャーをビルとビルの間の道に向けている。やがて、2台の装甲車がやって来るのが見えた。鉄血兵は、少し待ってから先頭の装甲車を撃った。

 

「うわっ!」

 

「きゃあ!」

 

 装甲車が急停車した。五十嵐と戦術人形たちが、前に放り出される。

 

「大変!みんな、降りて!降りて!」

 

 FALが運転席から飛び出し、後部の扉を開けた。

 

「降りて!敵よ!降りて!」

 

 五十嵐を先頭に、戦術人形たちは銃を構えて装甲車の外に出た。さっきまでグウグウ眠っていたG11も、流石に目が覚めたようだ。

 

「撃って!撃って!」

 

 416が銃を撃ち、敵を倒す。目の前には炎上する装甲車があり、そこから弾薬が弾ける、パーン、パーンという音が鳴り続ける。通りの向こうに、五十嵐は奇妙な銃を持った集団がいるのを確認し、自動小銃を構えて撃った。5.56mmAPM弾を食らって敵が倒れる。M14とG36も敵を狙い撃ちし、仕留めていく。

 

「下がって!下がって!」

 

 FALが銃を撃ちながら後退した。くそっ、ここでは不利なようだ。五十嵐は装備ベルトから発煙手榴弾を取り出し、投げた。手榴弾が爆発し、緑色の油ぎった煙が五十嵐たちの姿を敵から隠す。

 

「さっきの十字路まで下がったら、右側の通りに行こう!そこから回り込んで目的地へ行く。それしか無さそうだ!」

 

 B中隊のメンバーは、思わぬ敵襲に遭い、遠回りをせざるを得ない状況に追い込まれた。五十嵐は、炎上する装甲車の方を見たが、乗っている者を救出するのはもはや不可能であることはわかっていた。

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