※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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助っ人

 2056年 3月11日 0856時 ウズベキスタン

 

 五十嵐たちがBTR-4で雪山を移動していた時、再び爆発音が聞こえた。先頭のBTRを運転しているのは9A-91。助手席にはG11がいる。兵員輸送室にはM60とAEK、TPMがいる。二番目の装甲車をG36が運転し、助手席にはM9、後部には五十嵐、UMP45、UMP9、416が乗っている。

 五十嵐たちが乗っている装甲車の両脇にも2台のBTR-4が並走している。そして、装甲車1台分の間隔を空けて、後ろに5台目のBTRが走っている。最後尾の車を運転しているのはM16で、助手席にはM4が座っている。

 この指示を出したのは416だ。万が一、攻撃されても、最初に攻撃を受けるのは周囲の装甲車。真ん中にいる五十嵐たちは生き残る可能性が極めて高いという訳だ。

 

 五十嵐はそっと上のハッチを開けて周囲を見た。右側のBTR-4を運転しているのはFAL。兵員輸送室にはM14とファルコン、スプリングフィールドがいるはずだ。左側のBTR-4に乗っているのは、RFB、スオミ、FNCだ。

 

「ダメよ、指揮官」

 

 416が五十嵐を引っ張って、荷台の真ん中の辺りに座らせた。敵がどこにいるかわからない以上、指揮官を危険に晒す訳にはいかない。

 彼女たちと議論しても無駄だ。戦術人形たちは、指揮官の身の安全を第一に考えて行動する。

 仕方が無い。五十嵐は装甲車に乗せられた武器を確認した。これは、どうやら軍が使っていたもののようで、中にRPK-16と400発の5.45mm弾をまとめた弾薬ベルトが幾つか。そして、RPG-7の発射機と対人用弾頭、対戦車用弾頭もあった。

 

「それにしても、さっきから爆発が聞こえるけど何だろう?軍と鉄血がドンパチし始めたのかな?」

 

 UMP9がタブレット端末を見て言った。UAVからの俯瞰画像が表示されているが、そこには雪原と点在する森林しか映っていない。

 

「ナイン、信号はどうだ?」五十嵐が訊く。

 

「近づいているみたいだけど、向こうも移動しているみたい。それから・・・・・・この先に敵がいるみたいだよ。見てこれ」

 

 五十嵐はタブレットをUMP9から受け取り、画像を確認した。敵のサイボーグが集団で移動しているのがわかる。奴らも同じターゲットを追っているのだろうか。

 

「9A、聞こえるか?」

 

『何でしょう?』

 

「進路を変更しよう。無人機からの映像によれば、この先に敵の集団がいるみたいだ」

 

『わかりました。どの方向に向かいますか?』

 

「ぐるっと南から回り込もう。そこから真っすぐターゲットに向かって回収。こうしよう」

 

『わかりました。回収が完了したらヘリを呼ぶのですね』

 

「ああ、そうだ。行くぞ」

 

 2056年 3月11日 0901時 ウズベキスタン

 

 一方で、グリッドレイ率いる中隊が敵の施設を破壊して回っているせいで、鉄血に追われている連中がいた。グエン・タオ・ランが率いるS小隊だ。

 

「あー、また弾が詰まったちゃいました」

 

 ショーシャが半円形のマガジンを銃から外してボルトを何度か引き、薬室とエキストラクター、ボルトの間に挟まった弾薬を取り出して地面に落とした。周囲では敵が放ってくる弾丸が樹木や岩に命中する音が聞こえる。

 

「仕方ないわねー。早く直しなさいよ」

 

 T65が故障を排除しているショーシャの代わりに敵に弾幕を浴びせる。サイボーグに5.56mm弾が命中し、体に穴を空けるが、こいつらは小銃弾数発程度では平気でこっちに向かってくるからたちが悪い。

 

 大砲のような銃声が鳴り響いた。M99が放った12.7mm弾が2118mぴったり飛んだ後、リッパーの頭を粉々に砕いた。続いてストライカーをモシン・ナガンが遠くから撃つ。

 

「ああ、もう。これが終わったらB中隊とV中隊の指揮官に文句をぐちゃぐちゃ言わないと気が済まないわ!全く、あのゴリラは!」

 

 グエンは文句を言いながら自動小銃を撃って目の前の敵を排除した。プラウラーやスカウト、リッパーがうようよしている。彼女はグリッドレイの事はよく知っていた。元アメリカ海兵隊の狙撃手という、グリフィンの指揮官の中でも異色の経歴を持っている。いつもFN57を持った、長い銀髪の少女と一緒にいる。あいつは人間嫌いという訳では無いが、グエンからしてみたら、グリッドレイは少々戦術人形に入れ込み過ぎているきらいがある。

 B中隊の指揮官のことはよく知らない。どこの何者なのかも。噂では、16LABの不手際から、404小隊がある国から密かに連れ出して保護し、そのままグリフィンに所属することにあった人間だという話を聞いた。そいつは、そのまま404小隊を中核とした部隊を指揮しているらしいとも。

 

「畜生!全く、どうしていつもいつもこんな目に・・・・・・」

 

 グエンが銃に新しい弾倉を取り付けている間に、他の仲間が銃を撃つ。向こうで敵のサイボーグや自律兵器が折り重なるように倒れ、人工血液や機械油が地面に流れ、水たまりのようになっている。

 

 グエンは自動小銃を単発で撃ち、敵を倒した。まだプラウラーやリッパーの姿が幾つも見える。それがこちらに津波のように押し寄せてきている。向こうに地雷でも仕掛けておけばまとめて一気に片づけることもできるのだろうが、そんなことは不可能だ。

 

 MP7が銃を撃ちながら敵に向かって行った。素早く敵の頭部に4.6mm弾を1発ずつ叩きこむ。光景が小さいので目立った外傷にはならないが、小口径の弾丸は電子頭脳を確実に破壊し、敵を機能停止に追い込んでいた。

 MP7は銃の弾倉を取り換え、高く飛び上がって単発で銃を撃つ。リッパーとヴェスピドが弾丸を食らって倒れた。スチェッキンが彼女の援護に向かい、敵に弾丸を撃ち込む。グエンたちの周囲に弾丸が次々と飛んできた。MP7が周囲を見まわすと、敵がグエンたちをぐるりと囲み、包囲網を少しずつ狭めていることに気づいた。

 

「まずい!囲まれた!」

 

 向こうの林からモーター音を立てながら巨大な影が現れた。鉄血の巨大無人兵器、マンティコアだ。4つの頑丈な脚に支えられた装甲カプセルの中にAIのCPUがあり、その下には7,62mm機銃がマウントされている。あれを倒すには、少なくとも12.7mm口径の対物ライフルが必要だ。

 

「最悪・・・・・・」

 

 グエンはうげっ、と言わんばかりの表情でマンティコアを見た。こっちは爆発物はM26手榴弾しか持っていない。

 

『指揮官、私がやりましょう』

 

 遠くでグエンたちを援護していたモシン・ナガンが無線で伝えてきた。そして、すぐに7.62mm×54R弾がマンティコアに命中した。当然のことながら、弾丸は装甲に弾かれ、木の幹にめり込んだ。

 

「モシン、無駄よ。それよりも他の奴らを撃って!」

 

 RPGを持ってこなかったのが悔やまれる。それがあれば、少なくとも脚を吹き飛ばして動きを止める程度までのことはできた。寧ろ、それで十分なのだ。

 

「指揮官!」

 

 Ots-14がグエンを突き飛ばした直後、大口径の弾丸がほんのコンマ数秒前に二人がいた場所を通過していった。この戦術人形の反応が遅れていたら、グエンは瞬く間に挽肉になっていたところだった。

 

「グローザ・・・・」

 

 グエンは体勢を立て直し、手榴弾を投げた。金属の破片が巻き散らされ、リッパーが何体か倒れたがマンティコアには傷一つ付けられずに終わった。そのマンティコアはのっしのっしと歩きながらグエンとOts-14に向かって来た。

 戦術人形はグエンの前に出て、フルオートで小銃弾を放った。固い複合装甲が銅のカバーで覆われた小さな鉛の塊をはじき返す音が鳴る。MP7とP90がグエンを引っ張りながら下がる。こういう時に戦術人形が取る行動は一つ。最後まで自らを指揮官の盾とするのだ。

 

 Ots-14が弾倉を取り換えた時、彼女は右肩に弾丸を受けて倒れた。肩の人工筋肉が吹き飛ばされ、中の炭素繊維の骨格がむき出しになった。

 

「グローザ!」

 

 マンティコアの機銃が止まり、内部でモーターが動く音が聞こえてきた。弾帯を再装填する音だ。真っ黒な銃口が、傷を負ったサイボーグの少女に向けられる。グエンはOts-14に駆け寄ろうとしたが、MP7とスチェッキンが指揮官の体を押さえて阻止する。

 

「ダメ!離して!」

 

 目の前で3年間も生死を共にした友人が殺されそうになっているのに、黙って見ていろとでも言うのか。確かに、戦術人形にはメンタルモデルのバックアップがある。しかしながら、目の前で殺されるのは、見ていて気持ちの良いものでは無い。

 

 マンティコアの機銃が今にも弾丸を吐き出しそうになったその時、左から何かが高速で飛んできた。それはマンティコアに命中して大きな穴を空ける。そして弾丸がセミオートで連続して放たれる音が鳴った。他の敵もバタバタと倒れる。5分もしないうちに全てが終わっていた。

 

 グエンは周囲を見回した。倒れた鉄血のサイボーグや破壊されたロボットがそこら中に転がっている。これをやったのは・・・・・・・。

 

 二人の見慣れない戦術人形が駆け寄ってきた。二人ともAK系統の武器をスリングで肩から下げている。銀髪の少女が持つ銃はAK12で、もう一人の金髪の戦術人形が持っているのはAN94のようだ。AN94を持っている方の少女は前後から硝煙を上げるAT-4ロケットランチャーをその場に投げ捨てた。

 

「あなたたちは・・・・・・?」

 

「V中隊です。合流できて良かったですね」

 

 長い金髪の少女が答えた。その答えにグエンはため息をついた。件の少女の後ろから、狙撃ライフルを持った大男が歩いてくる。その隣にはセミオート拳銃を持つ銀髪の少女がいた。

 

「間一髪だったな、ラン」

 

「ジェリー、あんたまた違う女の子を引っかけたの?」

 

「あー、94と12の事か?まあ、こいつらの事を話せば長くなる。それよりも、俺のダチと救難信号の主を早いところ救助しなきゃならん。手伝ってくれないか」

 

 グエンは再びため息をついた。敵を引きつけろと言われたり、仲間を探し出せと言われたり、今回の任務は振り回されてばっかりだ。

 

「わかったわ。全く、これは報酬上乗せしてもらわないと釣り合わないわね」

 

「それはヘリアンかクルーガーに言ってくれ。俺の問題じゃない」

 

「それで、そのお友達の居場所の目星は付いているわけ?」

 

「ああ。ビーコン信号を捉えている。それを追跡して回収、後は基地に帰るだけだ」

 

「随分単純ね」

 

「その方があれこれ考えずに済むからな。さて、行くぞ」

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