※この作品はR-18です。

ドールズフロントライン ルナティックウォー   作:F.Y

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待ち伏せ

 2056年 3月11日 0913時 ウズベキスタン

 

 サイボーグやUGV、UAVを率いて行動していた鉄血のハイエンドモデル、ハンターは通信を確認した。どうやら、配下のサイボーグが右往左往しているようだ。

 

"何が起きた"

 

"施設が何者かによって破壊されている。何者かは不明だが、グリフィンの部隊だと推測できる。しかも、確認に向かった時には奴らの姿は無い"

 

"わかった。お前たちはそいつを探し出して殺せ。我々はターゲットの捕獲に向かう"

 

"了解"

 

 ハンターは報告された被害状況を確認した。恐ろしく効率が良く、洗練された破壊工作活動だ。実行したのが何者かは知らないが、こうした工作活動に長けていることは確かだ。グリフィンの人形にこうした奴はいないはずだから、これを指示しているのは人間のはずだ。

 

 気に食わん。鉄血は人間の思考に関するデータを収集していたが、全く役に立つようなものは無かった。特定のパターンを見つけ出すのは極めて困難で、どれも滅茶苦茶なものばかりだ。まあ、このようなものは副次的なものだ。とは言え、敵を知ることは決して無駄な事ではないはずだ。

 まずは、どちらを優先すべきか考えなければならない。ターゲットを捕獲するか、それとも自分たちの前方展開施設を破壊して回っている奴らを先に片づけるか。ターゲットは確実に仕留めねばならない。とは言え、破壊工作を行っている敵は確実に目標達成をするには障害になるだろう。こっちも仕留めねばならない。

 

 ハンターはターゲットに対して自分の手を直接下すことを決めた。少数のサイボーグだけを引き連れ、ターゲットの位置をそこら中に派遣したスカウトに探らせる。他の有象無象に破壊工作を行っている連中を探させ、殺す。一部を除き、多くのサイボーグやロボット兵器が爆破事件の犯人捜しに動員された。それが敵の狙いだとも、鉄血のハイエンドモデルは気づかずに。

 

 2056年 3月11日 0922時 ウズベキスタン

 

『おおー、来た来た。こっちの思うつぼだとも知らずに、ぞろぞろぞろぞろ。団体さんのお出ましだぞ』

 

 ライフルのスコープを覗き、敵のサイボーグが地平線の向こうからやって来るのを見たSPR-A3Gが無線でグリッドレイに報告してきた。

 

「A3G、状況はどうだ?」

 

『リッパーにストライカー、ヴェスピド。ざっと数えただけで数十体はいるぞ。獲物がいっぱいだ』

 

「全員、戦闘準備。俺が撃ったら一斉に撃て」

 

 グリッドレイはエストニア式伏射の姿勢になり、敵を観察した。レーザー測距儀で観測すると2200mと言ったところか。上手くやれば.338ラプアマグナムで撃つこともできるが、条件がきっちり揃っていなければかなり厳しい。グリッドレイはまずは1500m程度まで引き付けることにした。風と気温、湿度も確認し、防水加工された野帳を見つつ小さなタブレット端末に数値を入力した。この弾道計算アプリは非常に役立つが、勿論、先人の狙撃手が100年以上使ってきたローテクもしっかり身に着けている。指を立てて距離を測り、それに着弾点を会わせるようスコープを設定する。バットプレートを肩に当て、グリップを優しく握って引き金に指をかけ、大きく深呼吸してからスコープのクロスヘアを敵の頭部に重ねた。

 敵は真っすぐ向こうから近寄ってくる。ざっと見たところ、リッパーが10体にヴェスピドが8体。そして、ガードが6体にドラグーンが6体。ハイエンドモデルはいない。

 

 敵はゆっくり歩いて周囲を窺うような動きを見せている。どうやら連続爆破テロの犯人を捜しているらしい。残念だったな。お前たちは確かに、その犯人に遭遇するだろうが、捕まえることは叶わない。グリッドレイはもう少しだけ敵を引き付ける事にした。初弾は確実に命中させて、敵の不意を打ちたい。

 

『指揮官、敵が接近。あと2000m』SPR-A3Gが無線で知らせてきた。

 

「まだ撃つな。もう少し引き付けろ。命令通りにやれ」

 

『勿論だ。全て、指揮官の命令通りに』

 

 グリッドレイは自分を護衛している仲間の方を見た。

 

「94、こいつらを片づけたら、死体を一ヶ所に集めてC-4で吹き飛ばす。爆発の騒ぎで、奴らをまた分散させられるからな」

 

「まるで私が前にいた部隊みたいな事をするのね」

 

「FSBのアルファ部隊か。俺も似たような部隊で戦闘訓練を受けたからな。SBSっていう、イギリス海兵隊の特殊部隊だ。あの時は、一応は"訓練の為の交換留学生"として送り込まれたがな。んで、訓練課程を修了したと思ったら、L96A1ライフルやグロック19を持たされてソマリアに行かされて、武装勢力の幹部の暗殺作戦さ。そいつは、俺が訓練を終える数日前にテロを起こしてイギリス市民を殺傷していたんだと。俺は突入部隊の援護をする役目だったが、その時は確か・・・・・AKを持った輩を10人くらいだったかな。頭をぶち抜いて殺した。突入部隊は無傷で戻ってきて、件のターゲットを射殺したと報告した。迎えのC-130が来るまでの間、証拠隠滅のために建物を爆破して、死体を火葬した」

 

「指揮官・・・・・それって・・・・・」

 

「あ?さっきの事を君に話した事がバレたら、セキュリティ・クリアランス違反でイギリスとアメリカの両方で告訴されるだろうな。少なくとも20年は禁固になるだろうな」

 

 グリッドレイはレーザー測距機能付きの双眼鏡でターゲットを見た。ターゲットまで1800m。.338ラプアマグナム弾の射程内であるが、仲間たちの武器からしてみたら射程の遥か彼方だ。もっと近づいてくるのを待たねばならない。

 

「全員待て。俺が撃つまで撃つな」

 

 夜間であれば、赤外線レーザーを使って敵をポイントして味方に指し示すこともできるが、今は午前中だ。おまけに可視光レーザーを使えば敵に気づかれて待ち伏せの意味が無くなる。

 

 グリッドレイは再び銃を構え、敵との距離に合わせてスコープのエレベーション・ノブを回した。敵がこちらに接近してくるごとの1目盛りずつノブを動かす。ゆっくりと呼吸し、その間に最初の標的を選んで照準を合わせた。狙いを付けたのはストライカーだ。こいつはゲームのキャラクターよろしく3つの銃身を持つガトリングガンを持っている。非常に重たい武器のため、こいつの動きは鈍いが、他のサイボーグ兵に比べて圧倒的な火力を誇っている。早いところ片づけなければ自分と仲間たちがハチの巣になってしまう。

 もっと敵を引きつけなければならない。こっちだ・・・・・・・・。そうだ、そのまま真っすぐこっちに来い。鉄血のサイボーグの集団は既に銃の狙いを定められているとも知らずにグリッドレイたちが隠れている場所に向かって歩いてきた。

 

 残り350mのところまでストライカーのグループが近づいてきたところで、グリッドレイは敵の頭にクロスヘアの中心点を合わせた。スコープのエレベーションは300mに合わせている。.338ラプアマグナム弾を使うには近すぎるくらいの距離だが、仲間たちが持つのは自動小銃が殆どだ。あと50mほど接近してくるのを待たねばならない。普段は800m以上の長距離狙撃をすることが多いが、グリッドレイは当然ながら300m程度の近距離での狙撃の技術も持ち合わせていた。敵が零点調整をしている距離に入ってくるとゆっくりと呼吸して、息を止め、トリガーを絞った。.338ラプアマグナム弾が銃口から飛び出し、0コンマ数秒飛んだ後、サイボーグの電子頭脳にめり込んだ。続いてSPR-A3Gと四式、81式カービンが放った弾丸が敵の頭部に命中する。鉄血のサイボーグは周囲をキョロキョロと見回し、どこから弾丸が飛んできたのか探して回った。ところが、そうこうしているうちに7,62mm弾や5.56㎜弾があらゆる角度から飛んできてサイボーグやロボットをズタズタに引き裂いていった。生体組織の破片や人工血液が地面に散らばる。両膝から下を完全に失ったリッパーが四つん這いで敵を探して回ったが、頭をフルオートで放たれた弾丸で砕かれた。銃弾の暴風は2分ほど続き、その後にはサイボーグの死体と破壊されたロボットの残骸が残されていた。

 

『クリア』

 

『クリア』

 

『クリア』

 

「全員無事か?」

 

 グリッドレイの言葉に仲間全員から返事が返ってきた。

 

「よし、いい子たちだ。爆破するから敵の死体を一ヶ所に集めて逃げ出す準備をしろ」

 

『了解』

 

『イエッサー』

 

 2056年 3月11日 0948時 ウズベキスタン

 

 思った以上に重労働だった。敵のサイボーグの重さは1体あたり50㎏、プラウラーの重さは90kgといったところか。一ヶ所に山のように積んでいく。

 

「うう・・・・・これで最後でいいわよね」

 

 64式が真っ二つになったリッパーの上半分を引きずって持ってきて、山の上に放り投げた。

 

「ああ、いいぜ。これで完了だ」

 

 破壊された鉄血の山にはプラスチック爆薬と信管、コードが混ざっている。爆破はリモコン式だ。これならばいつでも都合がいい時に爆破可能だ。

 

「よーし、全員集合!みんないるな」

 

「指揮官、次はどうするの?」AN94が訊く。

 

「勿論、同じことをやる。奴らの施設を見つけ出して爆破。こっちに奴らを引き寄せる」

 

「そう。それじゃ、さっさと仕事に取り掛かりましょ。でも、爆薬が足りるかしら?」

 

「そうだな・・・・・まあ、足りそうになければ、敵の施設から何か燃料を奪って放火すればいいさ。それだけでも効果はあるからな」   

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