指揮官
ニーナ・クリモヴァ
PA15
P22
PP-90
100式
AKS-74U
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サイガ12
R93
QBU-88
2056年 4月2日 1203時 UAE グリフィン前方展開基地
五十嵐智基とUMP45、M4A1、416はグリフィンの前方展開基地の中を進んだ。他の仲間たちは遠くのバラックで待機してもらっていた。その上を爆音を立てながらCH-47FとUH-60Lが離陸していく。
アサルトライフルを持った警備隊が駆け足で五十嵐たちの隣を通り過ぎていった。幹部連中はスマホや衛星通信装置を手に、何やら連絡を取っている。
今日は何ともない、ただのパトロール任務のはずだ。五十嵐は頭の中で必要な装備をリストアップしていた。正式にグリフィンの指揮官になって半年以上が過ぎている。しかしながら、五十嵐はまだまだ半人前扱いであり、実戦投入時と休暇を除き、集中的に教育訓練を受けている身だ。とはいうものの、AIに指揮モジュールを持ち、人間の指揮官の仕事をある程度肩代わりできるM4や特殊作戦における実戦経験豊富な416のサポートで何とか生き残ってきた。
416は前を歩く五十嵐とUMP45を見た。二人の仲については、中隊に所属する人形全員が知っているし、戦術人形と人間の指揮官が深い関係になるケースは別段、珍しいことでは無い。4人はそのまま、作戦ブリーフィングが行われる予定のバラックの中へ入っていった。
バラックの中心には机が1つ、椅子が8脚、置かれいて、壁にはスクリーンが設置されている。まあ、時間になったらヘリアンがグリフィンの本部からの通信で状況と成すべき任務について伝えてくるだろう。
暫く待っていると、バラックの扉が開き、外装が強化されたタブレット端末を持った若い女性が入ってきた。五十嵐は彼女に会ったことは無かった。
「ええっと、B中隊の指揮官様ですね。私は後方幕僚部から派遣されたカリーナといいます。普段は、部隊の作戦行動のための後方支援の任務についています。あ、ヘリアンさんですが、忙しいために、私がここで代理を務めています」
「わかりました。では、今日のパトロールのルートを・・・・・・」
「と、言いたいところですが、指揮官様のパトロール任務はキャンセルになりました。今はそれどころじゃ無くなったんです」
カリーナはタブレット端末を操作した。スクリーンに地図が映しだされる。
「これは、ドバイ市内の様子です。知っての通り、現在、ドバイ市内には鉄血がなだれ込んできて、町は戦場になっています。UAEの軍が交戦していますが旗色が悪く、軍の部隊は徐々に撤退を始めています。その過程で・・・・・・・」
カリーナが再びタブレットを操作した。市内のある建物が大写しになり、GPS座標が表示される。
「ここはドバイ市内のグリフィンの支部です。今、この建物の中に私たちの部隊が1個小隊、取り残されていて救援を待っている状態です。無人機で支援物資をどんどん送り込んでいますが、そのうちの何機かは撃墜されてしまって、物資を十分に届けることができないでいます。そこで、B中隊の指揮官様には、その取り残された小隊の救助に向かって欲しいのです。必要な装備があれば言ってください。それから、勿論、滞空型武装無人機と戦場警戒監視無人機の援護もあります。物資輸送無人機は、途中で撃墜される可能性があることは忘れないでください。装備は、指揮官様が必要と思うものは全部持って行って構いません。以上です。質問はありますか?」
「UAEの軍の状況はどうなのです?」五十嵐が訊いた。
「それが・・・・・・」
カリーナがタブレットを操作すると、市内の一部のエリアが赤と青に塗り分けらた。赤いエリアに対して青いエリアは極端に面積が小さく、中には青いエリアはほぼ小さな点に近い面積になっている部分がある。
「赤が鉄血の勢力、青が軍の勢力です。見ての通り、軍はの部隊はどんどん後退して、ドバイ放棄も時間の問題になってきそうです。一応、市街地放棄に伴う空爆は予定されてはいません。UAE軍はどうやら今後の戦いに備えて戦力を温存するつもりのようです。軍の主力部隊の大部分は撤退を開始しました。つまり、取り残された小隊を救出できるのは、現状、指揮官様のB中隊だけです」
五十嵐はスクリーンに映し出された地図を見た。思った以上に厄介な状態になっているようだ。これまでの作戦では、ジェラルド・グリッドレイや呉明のような、経験豊富な先輩指揮官の助けを借りていたが、今回は自分一人で部隊を率いて、任務を達成せねばならない。
目標は一つ。孤立した部隊の場所に駆け付け、護衛しながら
「厄介ね。でも、救出に向かえるのは私たちだけってことね・・・・・」
416は腕を組み、椅子の背もたれに背中を預けた。
「装備を見直さないとな。パトロール用のものしか考えてなかったから、強襲作戦用のものに注文し直さないと」
「でしたら、私に任せて下さい。指揮官様が必要なものは、銃弾から戦車にヘリコプター、ミサイルや無人機まで、何でも用意させて貰いますよ」カリーナは右手で拳を握り、自分の胸を軽く叩いた。
「416、必要そうなものは?」五十嵐が訊く。
「まずはC-4かセムテックスと、リモコン起爆装置と時限起爆装置。ボルトカッターにバターリングラム、ピッキング道具も必要ね。それから各種手榴弾と対戦車兵器。SMAWかRPG、カールグスタフがいいわね。ジャベリンはかさばるし、重いから止めた方がいいわ」
「ハンマーとタガネは?」
「あった方がいいわね。とにかく、屋内に突入することを想定すべきよ。酸素トーチも加えましょう」
416が話している間、カリーナはタブレットPCに何やら入力していく。どうやら、必要な物資の手配をしてくれているようだ。
「指揮官様、必要なものがあれば、メモを渡してくれれば、私が全部用意させてもらいますよ」
「お願いします。かなりの種類や数になると思いますが。まずは、部隊にいる人形の銃の弾薬を全種類と、各種手榴弾、C4や時限信管、リモコン信管をお願いします」
「指揮官、まずは作戦会議をしましょう。それから必要そうなものを考えればいいわよ」
416の言う通りだ。まずは、作戦を考えなければ、何が必要になってくるかもわからない。
「そうしよう。カリーナさん、後でリストを渡すので、少し待って貰えますか?」
「大丈夫ですよ。じっくり作戦を立てて下さい」
2056年 4月2日 1208時 UAE ドバイ グリフィン支部
かつては中東随一の観光地だったドバイは戦場と化していた。美しかった高層ビル群は崩れており、道路には穴が空いている。
通りには破壊されたルクレールやBMP-3、AMX10Pといった軍用車両が放置され、墜落したF-16Eやミラージュ2000Cの残骸が散らばり、兵士や市民の死体が転がっていた。
ウクライナ出身の指揮官、ニーナ・クリモヴァはMk16-SCARの上に搭載したCOMP-ML2越しに周囲を見回した。先ほど、物資を運んできたUAVが撃墜され、それは300m先の通りに弾薬を入れたコンテナと一緒に転がっている。
「指揮官、向こうに敵の集団がいます。注意してください」
隣にいるR93がスコープ越しに通りの先を見て言った。彼女が注意している方向を双眼鏡で見てみると、リッパーやニーマムがいるのが確認できる。
「こっちには気付いていないみたいね。このまま注意して観察しましょう」
「よーし、あのままあっちに行ってよ。こっちは余裕がないんだからね」
そう言って敵を観察しているのはQBU-88だ。その祈りが届いたのか、敵の集団は通りの角を曲がり、建物の向こうに姿を消した。
「ふう。ひとまず助かったわ。でも、油断はしちゃだめよ・・・・・って、ちょっと、サイガ、こんな時にやめなさいって!」
クリモヴァは振り返り、後ろから近づいて、自分に密着してきた人形を引き離そうとした。彼女は何かと自分にくっつきたがるどころか、他の部隊の人形にも手を出そうとする始末だ。
「ええー。そんなー」
「そんな余裕があるなら、本部に連絡を取って、救助部隊か支援物資を寄越すように要請してきなさい!」
「むー。わかったわよ」
サイガは不満そうな表情でその場を離れ、通信室に向かった。その一方で、クリモヴァは窓から周囲を見回した。この状況が長続きするとは思えない。自分たちで打破するか、救援部隊が来るのを待つか。
「これは参ったね、指揮官。でも、このままだとどうにもならないよ」
続いてやって来たのはPA15。彼女は比較的最近、この部隊にやって来た人形だ。
「何か良い考えはある?」
「これは、救助でも来ない限りどうにもなりそうに無いね。まあ、そんなのがやって来ればの話だけど」
クリモヴァはため息をついて、肩まで伸びた金髪を結い直した。白い肌は弾薬の火薬のカスや埃にまみれ、うっすらと黒い斑になっている。他の部隊は撤退に成功したようだが、自分たちがいたのは運悪く敵のど真ん中にいたため、逃げ出すことができず、このビルの中に籠城する他、選択肢が無くなってしまったのだ。