今日私は1人で買物に来ている。……え?
そんな事をしても、大丈夫なのかって……?
これはまぁ、珍しくちゃんと許可を得てきたのだ。実はここ3日程、私は寝かせて貰えなかったのである。
確かに大切な人だし、愛しいとも思うけど、3日寝かせて貰えないのは流石につらくて……爆発したのだ。そして安息日として1日寝かせて貰って、その翌日である今日、私は買物に1人で出させて貰ったと言う訳。
月が変わったからか、お正月ムードは何処にも残ってなくて、代わりに島全体が節分やバレンタインに彩られている。折角だからとお店を冷やかして歩いていたら、美味しそうなひよこ豆や小豆、大豆を見付けて、食べるにも豆撒きするにも調度いいかと考えて色々と手に取って見た。
豆ばかり数種類購入して、届けて貰うように手配してから、買物の続きを楽しむ私は、とある店で妙な物を見付けた。……なに、あれ?
太巻きの着ぐるみが、売られている。鬼のお面や、鬼の着ぐるみは分かるしよく見るけど、恵方巻きの着ぐるみって何?
よくよく見てみると、手を出す事もできないで、顔は恵方巻きの先から飛び出す仕様らしい。足と顔しか出せないそれは、身長に応じて伸縮させて使えるようにはなってるけど、これって何に使えるのかな。
でも何だか面白くて、目的もないのに思わず衝動買いしていた。それに店主は売れるとは思わなかったと言うけど、私も買う予定は無かったのだからそうでしょうねと頷く他ない。
恵方巻きの着ぐるみを見た事で恵方巻きの材料も欲しいわよねと考えた私は、海苔や米は勿論、他にも食材を見て回る。海鮮系も多少は作れた方が良いかしらと、捕れるのに考えるのはどうしたって海域ごとに入手出来る種類が大きく異なるから。
肉の恵方巻き、海鮮の恵方巻き、サラダ系の恵方巻き、海苔ではなくて卵を使った恵方巻きも良いわよね。今年の方角は西南西だった筈……あ、あっちにもなんか売ってる!
駆け寄ってみると、砲弾程の大きさの豆が売られていた。……なに、これ。
「あ、それはこの近海の島で採れる巨大豆だよ。それは小さい方だけどな。大豆で何か作るなら、それひとつで事足りるって事で、飾りとして買ったり、料理に使われたりしてるんだ。……何より、普通の大豆の数倍美味い!」
「へぇ、色々あるのね。自生してるの?」
「あァ、だけど狂暴な獣とかが住み着いてたり、色々危険だから1つ2つ仕入れてくるのも命懸けだ。その分値段は張るけど、この島に来た記念に買って行って思い出にする人も多いよ」
面白い情報を得たわなんて笑いながら、帰ったら土産話楽しみに話してみようかななんて小さく笑う。あまりにも楽しんでいた為に、あんなにも目立つ人が後ろからコソコソと着いてきていた事に、私は少しも気付いては居なかったのだけど。
……ついでだから、毛糸でも買って行こうかな。バレンタインも近いから。
何色が良いかな、何作ろうかな。あ……この色、ノジコに似合いそう!!
こっちはベルメールさんが好きそうだし、あ……この色は、昔ゲンさんにマフラー編んであげたっけ。常夏の島だから使う事無いだろうに、無駄な事しちゃったわ。
……この毛糸だと、鬼のパンツ、編めそう。編んだ所で使い道とか、よくわかんないけどね。
そんな事をしていたから、帰りは当然遅くなったけど、この日ばかりは叱られる事も無かった事をここに残しておく。鬼はー外!福はー内!なんてよく言うけど、怒ると鬼みたいになる大切な人がもしも鬼なら、鬼は内、福も内……って言いたい気分だわ。
そもそも節分とは本来〝季節を分ける〟つまり季節が移り変わる節日を指し、立春・立夏・立秋・立冬それぞれの前日に、1年に4回あったものだったの。ところが、日本では立春は1年のはじまりとして、とくに尊ばれた為、次第に節分といえば春の節分のみを指すようになっていったって訳よ。
豆は
だからこそ、年の早い内、1~3月に産まれた人を早生まれと呼ぶのよ。今ではその立場が逆転してるけどね。
ただ、豆まきに使う豆は炒った豆でやるようにしてね。何故なら、生の豆を使うと拾い忘れた豆から芽が出てしまうと縁起が悪いから。
〝炒る〟は〝射る〟にも通じ、また、鬼や大豆は陰陽五行説の『金』にあたり、この『金』の作用を滅すると言われる『火』で大豆を炒る事で、鬼を封じ込めるという意味があるの。そして最後は、豆を人間が食べてしまう事により、鬼を退治した、という事になる訳よ。
この辺りは元々中国が節分の発祥だった事に由縁してて、だからこそわかりやすいと思うわ。勿論諸説あるから、これが必ずしも正しいとはかぎらないけど、大筋ではこんな所かな。
楽しい節分の日は、もうすぐだわ。皆様が健康で、幸せな1年を過ごせますように。
無病息災、健康長寿を願って……。鬼は外、福は内!!