※この作品はR-18です。

共通序章置場   作:夢枕 七変化

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2020年イースターイベント(序章)

 ペンを立てて、軽く伸びをする。海図は思い通りの出来になっているからと、少しではなく嬉しくなった私はそれを干す為に手にして立ち上がった。

 海図を干してから窓を開けて空気の入れ替えを行うと、これ迄に感じた事の無い何かが迫ってるのに気付く。サイクロンでもないし……何かしら?

 この世界の海は私には、まだまだ分からない現象が多くある。だから、その内のひとつなんだろうという事は分かるけど……。

 首を傾げた時、ふとカレンダーが目に入りそろそろイースターの時期かと気付く。このイベントは、日本では名前程度しか知らない人も多いのよね。

 このイベントが、日本で普及しない理由は多い。勿論キリスト教のイベントだから仏教や神徒には無関係だと言うのもあるけど、それならばハロウィンやクリスマスはどうなるんだとなるので、それは除外する。

 日本人特有のイベント……つまりお祭り系は何でもやると言う概念的には問題はない。元々日本人は、太古から祭りが好きなのだ。

 そんな日本人にイベントなのにも関わらず広まらない大きな理由は、日付が確定していないという事が大きい。宗派により同じ年でさえイースターの日が違う事は、既にネック以外のなにものでもないだろう。

 その他に卒園、卒業、入園、入学、就職の時期であり、花見の季節でもある為にイベントが溢れ過ぎて、そんな事までやっていられないのが現実だろう。実際幼少期から社会人迄、揃ってこの時期は忙しいのだから。

 それでも何となく、イースターと聞けば兎と卵のイメージ位は皆抱くんじゃないかな。それはキリスト教関係のイベントは、シンボルとなる物が決まっているからと言えるだろう。

 クリスマスツリーがクリスマスのシンボル、南瓜がハロウィンのシンボルであるように、イースターにもシンボルがあるのよね。それが、イースターエッグとイースターバニー。

 この2つのシンボルはそれぞれ、卵は生命のはじまりの象徴であり、殻の中にいる時間を経て、殻を割って生まれて来る様子が、キリストの復活を表している事からシンボルとなっているの。続いてイースターバニーは、兎が多産である事から、豊穣や繁栄のシンボルとされている事が元になっているのよ。

 日本だと雀が子沢山だから、雀が家に巣を作ると家内安全や子宝に恵まれると言われているのに、似てるかもしれない。その国により少し異なる所はあっても、考え方は案外近いのかもね。

 因みに、たまにしか来ないからという事で、燕は幸運の象徴とかそれぞれ家に巣を作られた時の為のご利益がある。後は虫の発生が減るのも鳥の住む家の特徴かな。

 話を戻してイースターの方についてだけど、イースターのシンボル、つまり象徴となる物だから、卵を使った遊びや料理、兎を象った遊びや料理が多く存在する。この世界では日本より更に馴染みなんか無いと分かってるけど、何か出来るならやりたいな……。

 島も近いから、卵と兎のカチューシャでも用意したらイベントが出来るのではと考えて、算盤に手を伸ばした。けどその時妙な霧に船が包み込まれてしまえば、楽しもうとか言ってる場合では無い。

 慌てて表に出た時、その悲劇は起きた。霧が纏わり付くような感覚に、全身が総毛立つのを感じる。

 振り払おうとしてみても、相手が霧では何も出来る筈もない。舌打ちしそうになるのを飲み込んで、頭上とお尻が妙に痒いようなムズムズする感覚に耐える。

 原因不明むず痒さと、よく分からない総毛立つような感覚に自らの身体を強く抱き締めて、その場に蹲る。そんな私に気付いたらしい彼が慌てた様子で駆けてきて、倒れそうになった私を支えてくれた。

 それに、迷惑かけたくなくて離れようとした私に言葉が降ってくる。それに含まれる感情の種類が、今は読み取れない。

 

 「この程度、甘えには入らない」

 

 その言葉に泣きそうになると、そのまま抱き上げられて船内に戻される。どうやら彼には、霧が纏わり付く事は無かったらしい。

 そうして私は寝かされる事となり、私の体調を鑑みて少しでも休めるように何処かの島を目指してくれる事になった。それを聞いて、私はそれならせめて少しでも、楽しい事があった方が良いよねと思って言葉を口にする。

 それは私を心配して部屋から出ようとしない人に出て行って貰うのにも役立ちそうだから、そう考えたのは間違いないけど。それに、なんか、ゾワゾワしてる感じが風邪でも引いたんじゃないかなと不安になるものある。

 

 「私、イースターのイベントやりたいの」

 「イースター?」

 「兎と卵のイベント。詳しくはWebで!」

 「〝うぇぶ〟ってなんだ?」

 

 あ、そっか、通じないか。なんか寂しい。

 通じたら怖いんだけど、なんか素直に寂しい。そうよね、この世界にWebなんて無いもんね。

 

 「言い間違えたのよ。机に出版したくて書いたの置いてあるから、それを見てくれると助かるわ」

 

 私の言葉に是と答えて、頭を優しく撫でてくれたその時、変な感触に双方顔を見合せ……暫し無言になる。なんか、今……耳を撫でられたような、感覚が……?

 

 「頭の上にあるものは……目の錯覚か?」

 

 動揺する様子を目の当たりにした私は、ベッドから身体を起こして慌てて鏡へと向かう。そこで見たのは、間違いようのないウサミミ。

 ……なに、これ?

 嫌な予感がしてくるりと体の向きを変えれば、猿だった時の名残である尾骶骨と呼ばれる筈のその場所に、丸いものがあって……。何コレと悲鳴をあげた私と、似合うし良いんじゃないか的な事をほざく馬鹿と言うカオスな状態に陥った。

 その後調べてみた結果、先程通った海域では女に動物の耳や尻尾が生えてしまう現象が度々報告されているらしい。その時一時的に体調を崩しても、他には特に問題も無く、人により生えてる期間は違うもののその内なくなるそうだ。

 でも……私に生えるなら普通に考えて、猫耳と猫の尻尾だと思うのよ。なんで兎なのー?

 納得いかないと騒ぐ私に、可愛いと笑う彼。それにより私は、ウサミミと尻尾のある状態で何処かの島を目指す事となった。

 Happy Easter……皆様、世界で愛される春の祝日を、大切な人とお楽しみください。とりあえず今私は、少しでも早くこの耳と尻尾が無くなる事を望むばかり。

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