カレンダーを見てふと思う。……今月って遊んだりできそうなイベントが無いのねって。
勿論大切なイベントはある。文化の日とか、勤労感謝の日とかね。
でも、それで何か皆で出来ることがあるのかって言われたら難しい。他には七五三とか?
だけど流石に、七五三が関わるようなクルーは居ないと思うのよね。……中身がどうあれ、肉体は大人の筈だし。
そんな事を思いながら描きあげたばかりの譜面を見て、そっとピアノに手を伸ばす。弾きたい時は好きにしていいと言われてるそれは、完成した時に歌詞の間違いが無いかのチェックも兼ねて使ってる。
無観客の演奏会。それを私は案外気に入ってるの。
「『流星群』」
この曲は本当にピアノで前奏が始まる。それに関しては、私が勝手に変えたとかでは無い。
この女性歌手もまた、作詞作曲を自分でやる人で……歌を好む人ならば、名前を聞いた事の無い人は日本人ではいないだろうと思われる位には有名なシンガーだ。この曲を描きながら、愛しい人を想って泣きそうになったのは1度や2度ではない。
私はいつも甘やかされてばかりで、だからこそこの歌詞により泣きそうになるの。私は無価値な自分を、ちゃんと理解しているから。
「ーーー」
哀しみや孤独が押し寄せて、私の心に絡み付いた夜は……貴方がいつも、私に上手に愛を伝えてくれた。蔦のように絡むそれに、けれども僅かに含まれる温もりに震えそうになる私が居るの。
「ーーー」
感情なんていらないと捨て去ってしまった私に、手作りの愛情を与えてくれたのは貴方でした。貴方が私に泣く場所を与えてくれたから、もう……喪った人を数える為の星は見なくてもいいよね。
「ーーー」
私を呼ぶ優しい声は、いつも悲しみを生むばかり。大切だから、愛しいから、それなのに、私だけが……愚かだから……優しさが全て悲しみに変わってしまうの。
「ーーー」
私は、醜い。それを証明するように、苦しみと悲しみが何時までも私を取り巻いている。
でも、必要として欲しい。私という存在を、少しでもいいから。
「ーーー」
貴方が必要としない私なんて、無いのと同じだもの。貴方が私の価値を決めるのよ。
私の全ては、貴方によって形作られる。だからどうか、不要になった時は……壊していってね。
「ーーー」
曖昧なままこの世界に溶けていきたいと願う私を、そんな望みは叶えてやらないと繋ぎ止める貴方は、優しいのか残酷なのか。分かるのは1つだけ……貴方の愛情が、私をこの世に繋いでいると言う事。
「ーーー」
貴方が想いを包み隠さず伝えてくれるから、私の瞳は僅かな振動でさえ簡単にその涙腺を崩壊させそうになるの。世界が滲んで見えなくなるのは、貴方が私を甘やかすから。
泣く事を思い出させてくれた貴方に、私は何を返せるだろう。泣いてばかりの弱い私を、私は今も好きになれそうにないわ。
「ーーー」
それでも幾度と無く奇跡のように心を通わせて、肌を触れ合わせて、でも、この肌は誰でも良いと浅ましく反応する。それ故に、遠くない未来に見捨てられるとわかってるの。
「ーーー」
こんなにも無力で何も出来ない私は、肌がただ経験した事を覚えて行くばかりで、役にも立てない。いつも、足手纏いになってるのはわかってるの。
「ーーー」
それにも関わらず、私は必要としてと願ってしまうの。貴方に触れられない私に、望まれない私に、価値なんてありはしないのだから。
「ーーー」
数えきれない程に嘆いた日々の中、美しいと言ってくれる貴方の言葉が私を支えている。震えてばかりの私は、貴方の傍で、今も足掻き方のひとつさえ本当の意味ではわかってない。
「ーーー」
私を呼ぶ愛しい人達の声が、悲しみに変わるのは嫌だと思う。もう、喪いたく無いの……!
「ーーー」
我儘だとわかってる。けれども代償に支払えるものを、今の私はもう、何も持たないから。
今はもう、私の全ては彼のものだから。勝手に代償とする事さえ出来はしない。
「ーーー」
だからどうか、必要として。貴方が必要としてくれるなら、私はなんでもやり切ってみせるから……。
歌が終わり、ピアノも自然に終わりの時を迎える。そうして、細く息を吐き出せば、思い出す。
「あ!!防災の日!」
少しすぎてしまってるし、時期は外れてしまってるけど、震災の教訓で生まれたこの日なら実際何時だって災害は起きうるのだから問題ないわ。どうしたって何時だって危険と隣り合わせだから、悪い事じゃないと思うのよね。
これなら皆で準備したり訓練したり出来るし、実用的だわ。よし……何ができるか相談してみましょう!
そう思って立ち上がれば、強く抱きしめられてしまう。その温もりは慣れたもので……相手を誰何する必要さえない。
「必要としてる」
「うん、ありがとう。私も防災の日は必要だと思うわ」
同意してくれたそれに笑顔で答えたら、何故か言葉がやんだ。意味がわからなくて首を傾げたら、それも必要だけど……なんて言いながらその顔が近付くのを私は不思議に思って見詰めていた。
……皆様もどうか、大切な存在を守る為にも、防災の意識はしっかりと持って下さいね。勿論、何も無いのが1番ですけど!