バレンタインイベント 序章
ホワイトデーイベント 序章
オレンジデーイベント 序章
の3部作品です。どうぞお楽しみ下さい。
バレンタインイベント 序章
今の所問題は無い。早朝、私は部屋をこっそりと抜け出したのだけど、追っ手の姿は確認出来ていない。
でも、油断は出来ないわ。見つかれば多分相当怒られるもの。
少しの緊張感を保ちつつ辺りを見てみる。だって、何がなんでも1人で来たかったのよ。
治安が悪い事で有名であり、その代わりに飲食物や宝石に強いと言う島に、私はどうしても行きたかった。でも、1人でと言ったのが悪かったのか許しては貰えなかったので、こっそりと抜け出してきたのだ。
ふふふ、目当ての物は確実に手に入れるわよ!
脳裏でバレンタイン関連の歌が流れるくらいには、浮かれている私だけど万が1を考えて変装までして来たのだ。だからこれで大丈夫!……だと思う。
バレンタインデーキスとか脳内で流れてるけど、もう今それを止める手立ては思い付かない。本当にあの歌、可愛いわよね。
小さなパワーストーン系の物を扱うお店でさえ、商品は恐ろしく質がいい。幻と言われるようなカカオもあるし、掲示板を見ればどうやら利き酒の大会もあり、優勝賞品のお酒は随分と珍しい物だ。
その上出るお酒も良い物が多く、優勝賞品のお酒も数種類となれば参加したい。いや……でも、こっちのイベントも楽しそうと掲示板を凝視していたら、ひったくりとかって声が聞こえて振り向く。
ひったくりだなんて芸がないわね。スマートにスリなさいよ!
ひったくられたのが、孫娘と買い物に来ていたらしい御婆様だったのでそれを殴って取り戻してあげれば恐ろしく感謝されたけど、目立つと流石にヤバいからと急いで逃げ出す。そうして逃げた先には調味料とかが並んでいて、私の瞳は自然と輝く。
砂糖と1口に言っても種類が恐ろしく豊富で、木の実や果実も伝説級に珍しい上質な物が多い。お金には余裕があるし、妥協しないでいい物を手に入れたい。
だって、大切な人に想いを伝えるってイベントなんだもの。……そりゃぁ、ダメだって言われたのに飛び出したのは良くないと思ってるけど、それでもどうしても来たかったのだ。
カカオだって恐らくは全種類あるし、チョコになってるものも当然凄く多い。……あれ、どうやって作るんだろ?
人の顔がマキアートみたいに描かれてるのを見てじっとそれを見詰める。あ、あっちにも何かある!
気になる物が沢山あって、珍しい本も沢山あって、欲しい物が本当に沢山ある。ある意味天国だわ。
やっぱり抜け出してきて正解だったわね。でも、早く買って帰らないとバレたら面倒な事になるわよね。
クリマタクトで私の幻を部屋に置いて、海図を描いてるように見せかけて来たから暫くは持つと思うけど、即ち私の武器がないのだ。……短剣だと長期戦に向かないし、頑張ろう、うん!
それから必要な物を買ったり、イベントに参加したりして手に入れた物を抱きしめて、私はホクホクしながら島を歩く。後はラッピング系よね、なんて考えながら。
ラッピング系のお店に入って、気に入った物を買った私がお店を出れば、怒りを静かに内面に押し殺してる様子の人が立っていた。変装してるからバレる筈は……不味い!
何故か表情と気配から私だと分かってるのだと伝わって来て、咄嗟に逃げようとしたけど大荷物な上に慌ててる私が逃げられる筈もなく、簡単に囚われてしまい……荷物は没収されなかったけど部屋に閉じ込められてしまった。
「どうして分かったのー?私変装してたのにー!」
それに対して匂いだと言われてしまえば、そんなの狡いと思う。そして、お説教が始まった。
時は流れ、私は少しいじけていた。……あんなに怒らなくても良いのに。
少し不貞腐れたような気持ちになりつつも、買った物を広げてニヤリと笑う。これで、目的は無事に果たせそうだと言うのが大きい。
閉じ込められたのも考えようによっては悪くない。ゆっくりとバレンタインの準備が出来そうねと、ウキウキした気持ちで材料を見詰めて、先に購入した新しい本を本棚に片付ける。
さて、まずは作りたいものを明確にしないとね!
そう思って私は1人エプロンを手にする。バレンタインまでは、もう時間も無いのだから。
ハッピーバレンタイン!皆様も大切な人と楽しいバレンタインを過ごせますように!
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ホワイトデーイベント 序章
自分が贈る側だったバレンタインのイベントが終われば、本来ならば当然お返しを貰うべきイベントがあると言うのに、私はその事をすっかり忘れていつもと同じような生活をしていた。そんな時にクーちゃんが何かを持って姿を見せたので、それを受け取るとそれはノジコからの手紙とバレンタインのお返しだった。
1方通行という契約なのに、何だかんだとクーちゃんは私に甘い。それに笑いながら、後で食べてなんてお菓子を少し渡せば嬉しそうに甘えてくれるクーちゃんに少し癒される。
ノジコは私に何をくれたのかな。そう思って箱を開けると、中には色とりどりのマシュマロとその中に隠すように更にもう1つ箱が入っている。
まさかのお菓子をクッション替わりに使うという豪胆なそれに、そう言えば飴やお茶をクッション材の代わりに使う梱包もあったななんて思い出す。クッション材はゴミにしかならないけど、飴とかお茶なら食べたりできるからと親しい人への贈物に喜ばれるそれだ。
「でも、マシュマロをクッションにするとは……考えた事もなかったわ」
思わず呟いてから、このマシュマロで何か作ろうかなと思う。珈琲に蜂蜜とマシュマロ入れるのも美味しいのよね。
激甘になるから、相当疲れてるか甘党の人じゃないと飲めないけど。バレンタインの時の残りだけど、チョコもあるし、マシュマロとチョコと蜜柑、それと何かシリアルかクッキー辺りを加えて簡単なお菓子にしようかな。
でも、折角ノジコから貰ったマシュマロだから、そのまま食べるのも手よね。そう思って悩んでいた私は、その中に埋もれている箱の存在をすっかり忘れていた。
そんな時、いつの間に部屋にいたらしい大切な人が少し困ったような顔で私を見て、家族の中でも姉が相手じゃなんてよく分からない事を呟いているので、仕方ないと思ってその口にマシュマロを1つ指先で押し込む。
「特別よ。私がノジコに貰ったマシュマロなんだから」
「有り難すぎて涙が出そうだ」
その返事にそうでしょうそうでしょうと頷き、私はとりあえず飲み物を用意してその飲み物を片方手渡してから、自分もそれを口にすれば妙にホッとする。その時何か言いたそうに私を見ているのは気になったけど、結局何も言わないから首を傾げて飲み物片手に部屋を出て行くその背を見送った。
その数日後に何が待っているのかなんて、この時の私は知らなかったし、ノジコが何を贈ってくれたのかも知らなかった。ただ、今日も空はいつもと変わりなく晴れ渡り、風は優しく吹いている。
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オレンジデーイベント 序章
バレンタインは私から仕掛けた。ホワイトデーは存在を忘れていた。
そして、もうすぐオレンジデーが来るけど……誰も知らないわよね。本当は毎月14日に何かのイベントがあるんだけど、私も覚えているのはこの3つだけだったりする。
大切な人が私の傍で眠っているのを見て、そっと近づいたのは……その寝顔があまりにも無防備で可愛かったから。そっとその頭を撫でて、愛しているわと囁くと瞼が痙攣したから起きてるらしいと知る。
それとも、起こしちゃったのかな?
ふと風に乗って桜の花びらが舞い込んで来たのを見れば、春なのだなと思う。まぁ、この世界では1年中春の島もあるのだから、1概には言えないと分かってはいるのだけれど……。
桜はよく女に例えられるけれど、本当に……散っても尚、その姿が脳裏に焼き付くのだからそれもまた正しいのかも知れない。私に何かあって散ったとして、少しでもこの人の中に私は残れるだろうか。
たまに思い出して貰えたら、私としては充分なのだけれど。私が遺されるのは耐えられないから、遺すつもりでいるなんて知られたら、怒られそうね。
さて、寝たフリを続けるこの人をどうしてやろうかしらと考えて、そっと額にキスをするに留める。そうしてみても起きようとしない狸に、私はそっと抱き着いてみたけど、それでも起きようとはしない。
愛しい人が傍に居てくれると言う奇跡に感謝して、狸に甘えるように擦り寄った私は本気で寝に入る事に決める。起きてくれないから、寂しくなったとかじゃないんだから。
オレンジデーには、貴方に何ができるかな。何でもいいから、貴方が喜んでくれる事をしたいと……心から思って……その温もりに縋るようにして、溺れて行く。
オレンジデーだと思うからか、ベルメールさんとノジコの顔が脳裏にチラつき、その傍には何故かゲンさんじゃなくて愛しいこの人が居た。それだけ私の中で、彼は重要な位置に居るのだと痛感させられながら小さく、お休みなんて囁いてみるけどやはり狸を続けている。
その時彼がどんな事を考えていたかなんて、当然私には知る由もなかったけれど。桜が散っているのならば、そろそろ蜜柑の花も咲いているかしらね。
Happy orange day……大切な人に、貴方もオレンジの物を贈りませんか?
このイベントは他シリーズ作品等に、組込まれた形で掲載する予定です。今後ともよろしくお願いします。