※この作品はR-18です。

ファイアーエムブレム ヒロインズ ~英雄たちの受難~   作:瀬部唯人

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☆オリヴィエの受難 final

 飛空城にある森の奥深く。

 あまり整地されていない道を抜けた先には、見通しの良い開けた空間が広がり、森林浴を浴びるには最適の隠れた名所があった。

 周囲に人気はなく、穏やかな時間が流れていく。

 木々の間からそっと差し込む木漏れ日が辺りを柔らかに照らし、時折風に揺られる草木が緑のにおいを運びながら穏やかな音色となって奏でられる。

 特務機関の中でも知る者はほんの一握りしかいないその場所は、まさに自然が作り上げた憩いの場であった。

 

 そんな場所の中心に、凡そこの場に似つかわしくない無骨な柱のような物がそびえ立っていた。

 赤茶色の石造りの台座の四隅には先端がトゲのように尖った支柱が並び、中央からは数メートルの高さに及ぶ構造物が天に向けて真っ直ぐにそびえ立っている。

 どう見ても自然発生したものではない明らかな人工物。

 場違い極まりないそれは、例の「雷の塔」と呼ばれる電撃を放つ魔法の装置であった。

 

 その台座の上で、支柱の一つに寄りかかるように背中を預け、ゆったりと腰かける少女が一人。オリヴィエがそこにいた。

 すぐ傍らには彼女の荷物と衣服と思わしきものが丁寧にまとめられている。

 なんと彼女は、ここが屋外であるにもかかわらず衣服のほとんどを脱ぎ去り、身に着けているのは下半身を頼りなく覆う淡桃色のショーツ一枚のみという、非常に大胆かつ悩ましい姿となっていたのだった。

 これから彼女がやろうとしていることは、着衣のままだと少々衣服を汚してしまう行為である。ならばいっその事、服を脱いでしまおう。というのは、倫理などの視点を度外視すれば、極論ではあるがある意味で理には適っている。

 しかしながら、いくら服を汚さないようにするためとはいえ、人目がないという事を差し引いても――それも、うら若き年頃の乙女が――衣服のほとんどを脱いでしまうというのは、中々に思い切った行動である事には違いないだろう。

 それでも唯一下の下着だけは脱がずに残しているのは、彼女にもまだ恥じらうだけの理性が残っていたからに他ならない。

 実のところ、脱ぎ去った他のどの衣服よりも汚してしまう衣類に当たるのだが、流石にそれまで脱いでしまうのはどうしても躊躇われたのである。外で素っ裸になるのは、たとえこの場で一人であろうとも恥ずかしいという羞恥心ゆえであった。

 まあ……、下を一枚残したところでほとんど裸も同然には変わりないわけだが、そこはオリヴィエ本人の気持ちの問題なのである。

 

 さて、わざわざこんな人気のない場所までやってきて、何ゆえそんなあられもない姿となり、果たして彼女は一体何をやっているのか。

 ……一言でいってしまうと、それはズバリ「自慰行為」であった。

 

「んっ……、ひぅっ。んぅっ……」

 

 片手で己の乳房を下から支えるように持ち上げながら丁寧にこねくり回す。もう一方の手はショーツの中へと滑り込ませて、強弱をつけながら性器を擦るように何度も何度もなぞり続ける。

 指が往復するその度に首筋をチリチリとした感覚が走り、オリヴィエの口から時折呻くような声が切なげに漏れた。

 

「はぁ……ん……うぁっ……!」

 

 漏れ出す声が少しずつ大きくなっていく。

 ここが仲間たちのいる場所からそれなりに離れた地であるとはいえ、あまり大きな声を出すのは得策ではないだろう。

 特務機関の施設内であれば滅多なことはないであろうが、だからといって例えば人を襲う魔物や盗賊などといった外敵となる存在などが、絶対に紛れ込んでいないという保障などないのだから。

 

「はっ、ふぁっ……あ、んっ……あふっ!」

 

 ……と頭ではわかっていながら、羞恥が身を焦がすような感覚は如何ともしがたい。

 性的な昂ぶりに身体はすっかりと火照り上がり、身体のいたる所から吹き出した汗がしっとりと肌を濡らす。

 いや、汗だけではない。

 下着の奥で熱を放つ女陰のさらに奥。割れ目から女の蜜がとめどなく溢れだしてくる。指先に己の淫液が絡まり、下着に恥ずかしいシミがどんどん広がっていく。

 野外でこんな破廉恥なことをしているという背徳感、羞恥心といった感情さえも快感に置き換わる。その事実に、オリヴィエはひどい自己嫌悪に苛まれるが、それでも己が身体を弄りまわす指を止めることはできなかった。

 とその時、突如、雷の塔が帯電の光を放ちスパークし始めた。

 

「―――んあああああっ!!」

 

 当然の如く、その雷は発生源の中心に腰かけるオリヴィエを容赦なくまき込み、彼女の身体に電流を流し込んでいく。強烈な刺激にオリヴィエの呻き声は、それまでとは比較にもならない声量の悲鳴へと様変わりした。

 相当に威力を落とした電圧であるため、痛みや苦痛は大したものではないが、その代わりにその刺激は今のオリヴィエには多大な官能をもたらすものとなった。

 

「うあぁぁっ! ああっ、いいっ! き、気持ちいい……っ!」

 

 喘ぐように息をつき、甘い痺れに自然と身をよじる。その時、まだ指し込むつもりのなかった指先が、膣口から膣内へと滑り込んでしまった。

 反射的に指を引き抜こうと意識する間もなく膣肉がキュッと凝縮し、指先を締め付けると同時、身震いするような快楽が脳髄を突き抜けた。

 

「~~~~~ぅっ!!」

 

 目の前で星が瞬き、一瞬視界が真っ白に染まる。

 強烈な刺激に、オリヴィエは堪らずに身体を丸め込んだ。

 官能の波が一気に押し寄せ、全身が小刻みに痙攣を繰り返す。絶頂と痺れによる不規則なリズムが立て続けに刻まれ、オリヴィエは激しく身悶えた。

 

「ああっ! る、ルフレさん……ッ! だ、ダメです……ルフレさ、んはぁぁぁっ!」

 

 雷の塔は未だ雷撃を放ち続け、オリヴィエに官能的な快楽を与え続けている。

 それだけでも十分に絶頂に達せるものであるが、彼女は指の動きを止めようとはせず、貪欲に更なる快楽を求めていく。

 恍惚とした表情を浮かべながら思い描くのは、比較的先日、塔で受けた拷問に近しい光景。

 両手を縛られて動けないオリヴィエが、ルフレから「お仕置き」という名目で辱められ、雷の魔法を浴びせられながら彼のイチモツを膣内に挿入されるという中々にハードなもの。

 

『―――こんな事をされているのに悦んでいるのかい? 本当にイヤらしい子だね、オリヴィエは。それならもっとたくさん、思う存分によがらせてあげようじゃないか』

 

 想像上のルフレが、普段オリヴィエに向けることのない嗜虐的な目でこちらを見下ろし、口の端を歪めてサディスティックに嗤う。

 基本的には穏やかな気質で、誰が相手であっても柔和な対応を取る彼から凡そ飛び出すとは思えない、まるで鬼畜な変態拷問官であるかのようなひどい言動。

 オリヴィエ自身の内にある被虐願望が多分に反映された内容を夢想し、彼女は全身を震わせた。

 

「あぁんっ! いやっ、恥ずかしい……っ! ルフレさん、もう……だめぇ……ん゛ぐっう゛う゛う゛う゛う゛っ!!」

 

 一際大きな絶頂を果たし、オリヴィエの身体が大きく跳ね上がる。

 もう何度目の絶頂となるのか。身体中の水分がなくなると思えるほどに汗だくとなり、激しく潮を吹き漏らす。オリヴィエのいる一帯は、今や彼女の様々な体液によって水浸しとなっていた。

 強烈な官能の刺激に、オリヴィエはしばらく上体を大きく仰け反らせたままカクカクと身体を震わせ続けていたが、程なくしてイキ疲れによって全身から力が抜け落ちていき、ぐったりと支柱に寄りかかっていく。

 その頃には雷の塔からの放電もようやく止まり、奇しくもオリヴィエのその姿は、先日に塔で受けた拷問の後と同じような様相を彷彿させるものであった。

 その時との最大の違いを挙げるとするのなら、それは彼女の口元だろうか。これだけ酷い有様を晒しながら、薄らと満足げな笑みを浮かべているである。

 この僅か数日の間だけで、確実にオリヴィエは快楽の虜になりつつあった。

 

「……っ!?」

 

 ぼんやりと身を投げ出していたオリヴィエであったが、その時ふとこちらに近づく人の気配を感じて思わず跳ね起きた。

 この場所は自分とルフレぐらいしか知らない隠された地である。そんな場所であるからこそ、彼女は一人で行為に勤しむことができたのだ。

 今の自分の姿が酷い惨状にあることぐらい鏡を見なくてもわかる。

 可能性を考えなかったことはない。しかし、いざこんな己の姿を人に見られるという現実を前にすると、オリヴィエは途端にどうしようもない恐怖心を抱いた。相手次第ではこちらに襲いかかってくる可能性も十二分にあるのだから。

 立ち止まった足音の気配の先に恐々と視線を向けていく。

 

「―――こんにちは、母さん。こんなところで何をされているのですか?」

 

 果たして視線を向けた先にいたのは、暴漢でも魔物でもない己と比較的年の近い一人の女の子。悪戯な笑みを浮かべる未来の我が娘、マークであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……包み隠さずに言ってしまうと、塔から帰還した少女たちはその後“性的欲求不満を持て余した快楽中毒者”とでも言えるような状態に陥ってしまうことがとても多い」

 

 大の男三人が身を寄せる色気のない空間に、ルフレの声が静かに響く。

 

「その女性の体質などに起因するものなのか、あるいは塔で体験した内容によるものなのか、その度合いにはそれなりに個人差はあるみたいだけどね。その中で分類すると、オリヴィエはかなり重度の快楽中毒者に位置するものだった。そして……、それを助長させた責任の一端は間違いなく僕にある」

 

 それまで淡々と語るだけだった彼の口調の中に僅かな憂いが混じる。

 

「オリヴィエが塔から帰還したその夜、彼女を抱いたところまではまだ良かった。けれどその後……、彼女から“次は挿(い)れながら雷の魔法を浴びせてくれ”なんていう、ぶっ飛んだお願いをされから一気におかしな流れになっていった」

 

 とうとうルフレは頭を抱え込んでしまった。

 

「もちろん初めは断ったよ。加減は出来るけど、それでも彼女を傷つける可能性だってあったんだ。……でも、事あるごとにあまりにも真顔で詰め寄ってくる彼女に押し負けて―――いや、これは言い訳だな。結局僕自身が、それをしてオリヴィエがどんな反応を見せるのか見てみたくなった、という誘惑に抗えなかった事が何よりの要因なんだ」

「…………」

 

 そっとエクラの手がルフレの肩に置かれる。

 言葉のないその気遣いが今のルフレにはとてもありがたかった。下手に言葉を掛けられるよりずっと気が楽になる。

 すまない。と短く返しルフレは話を続けた。

 

「お互い、味を占めたというのもあるんだろうな。それからはあっという間だった。毎晩のようにやってくるオリヴィエも日を追うごとに、要求が少しずつハードなものになっていくし、なんだかんだで僕もノリノリでそれに付き合ってしまった。そして仕舞いには、こんな場所にあんな代物まで用意することとなって、その果てとなったのがこの光景だよ」

 

 ―――この光景。すなわち、雷の塔で自慰に耽るオリヴィエの姿のことであった。

 

 ラズワルドの持ち込んだ相談話に始まり、エクラとラズワルドがルフレに連れられてやってきたのは、飛空城の中でも中心から外れた人気のない森の奥地。雷の塔が設置されたオリヴィエの隠れ自慰スポットであった。

 三者がいるのはオリヴィエのいる場所からわずかに離れた茂みの中。

 現在彼らは彼女に見つからないよう身を潜め、目の前で繰り広げられる彼女の痴態を観察、もとい覗きをしている真っ只中である。

 その合間に、彼女がこうなった経緯を当事者故に誰よりも詳しく知るルフレが、その内容を二人に聞かせ、ちょうど今すべてを語り終えたところであった。

 話を聞いた二人はそれぞれ異なる反応を示し、話が半端に終わっていたエクラはようやくその全貌が見えたことに得心したと言わんばかりにしきりに頷き、ラズワルドは何か激情を抑え込むように静かに俯いている。

 

「ふむ……、今日は一段と激しいな」

 

 一方ルフレはというと、話しを終えてどこかすっきりとした様子で先まであった憂いなど既になく、なんとものんきな様子で己の名を呼びながら喘ぐオリヴィエを冷静に注視している。

 

「察するに、僕からそれなりにハードな目に遭わされているような内容を夢想しているんだろうね。オカズにされるのは悪い気はしないけど、後々にそれを本人に要求してくるあたり、最近のオリヴィエはマゾに磨きが掛かったと言わざるを得ない―――」

「そろそろツッコんでいいかなあ!?」

 

 とうとう堪えきれずにラズワルドは感情をぶちまけた。

 器用にもこの場にしか響かない小声ではあるが、捲し立てるように続く言葉は彼の魂の叫びそのものであった。

 

「何なのコレぇ!? ねえ?! 何なのこの状況ぉ!? 何が悲しくて母親の痴態を父親と一緒に見ているの!? 母さんのあの状態はなに!? いや、たった今事細かく聞かされたよ、親の性事情と合わせてガッツリ聞かされたよ! それで!? この状況でそんなとんでもない話を聞かされて、僕は一体どんな顔をすればいいのかなあ!?」

 

 笑えばいいと思うよ。

 と、思わず出かかった言葉を、エクラは慌てて飲み込んだ。既に藪の中から蛇は出てきているのだ。ここでさらに藪を突くような真似をするのは、最早ただの自殺志願者でしかない。

 ルフレの方も「あぁ……うん、まぁ……」と流石にバツの悪そうな様子を見せる。

 

「というか、それ以前に僕ら二人だけならまだしも、エクラさんまでここに連れてきたのは流石にダメでしょ!?」

 

 結局飛び火してきた。

 こうなってくると、いよいよエクラには静観する他に手段がない。

 

「エクラさんに限って、その……妙なことになるとは思えないけど……。それでもなんていうかこう、見てほしくないでしょ!?」

「君の意見も尤もだ。オリヴィエは僕にとってはかけがえのない女性(ひと)で、君にとっても大切な母親に違いないだろう。現状を正確に知ってもらうためとはいえ、愛する人のこんな姿を他者に晒すなど、確かにやり過ぎであったことは否定できない」

「そうでしょ!?」

「それでも僕は、エクラなら問題ないと判断した。少なくとも彼なら、オリヴィエに変な気を起こすことはないと断言できる。エクラの人なりを信頼できるのはもちろんだが、それ以上の理由がある。なぜならそう……、今の彼にはそんな余裕は一切ないからだ!」

「―――へ?」

 

 それまでの剣幕から一転して素っ頓狂な声を上げたラズワルドの視線が、ルフレからエクラへと向けられる。

 そのエクラはというと、ルフレの言葉に何やら思うところがあるのか、まるで苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、露骨に頬を引きつらせていた。

 

「おや……? あれは……」

 

 どういうことか尋ねようとしたところで、ルフレが短く上げた声に意識が削がれた。

 反射的に父が反応を示した先をラズワルドの視線が追う。

 

「マーク……?」

 

 その先に見えたのは、こちらとは反対側の茂みから姿を晒しオリヴィエに近づく小さな人影。己のただ一人の妹、マークであった。

 なんでこんなところに、とラズワルドが疑問に思う間にも彼女は母のすぐそばにまで近づいていき、とうとうオリヴィエも娘の存在に気づくことなった。

 

 

―――こんにちは、母さん。こんなところで何をされているのですか?

―――ま、マーク!? どうしてここに!?

―――飛竜に乗って空の散歩をしていたら、たまたま母さんを見つけました

   それで? 母さんはここで何をされているのですか?

―――へっ!? え、ええと、これは……えぇと、そう!

   と、特訓です! 突然のダイムサンダに見舞われても大丈夫になるための!

―――そんな恰好で、ですか?

―――うっ! こ、これは……えっと、あまりにもたくさん汗をかいてしまったからで……

―――へぇ~。でも人がいないとはいえ、その恰好は少し大胆過ぎないですか? 

―――あぅ……、そ、それは……

―――あと気になったんですけど、小股のそれ明らかに汗じゃないですよね~?

―――うぅっ……もうっ! マークっ! そろそろ怒りますよ!?

   絶対さっきから全部わかって言ってますよね!?

 

 

 二人の会話がここまで聞こえてくる。

 

「母と娘の微笑ましい一幕だね」

「父さん、本気で言っているならその目は相当節穴だと思うよ?」

 

 妹のマークは、母のことが大好きなのだという。一緒にいてその横顔を眺めている時間が好きなのだと、周囲に公言しているほどである。

 そこだけ切り取って聞けばとても微笑ましい親子の間柄に思えるのだが、彼女には恥じらう母の表情を眺めることが何よりの至福という少々歪んだ一面があり、度々オリヴィエを困らせることがあるのだった。

 そんなマークがこの状況を見逃すことなどあるはずがなく、嬉々とした様子でオリヴィエに詰め寄っていく。

 一体何がきっかけでそんな思いを抱くようになったのか。長年連れ添って生きてきた兄でも気づけばそうなっていたという状態であり、今となってはその経緯を知る由もない。

 

「あっ」

 

 不意に短く声を上げたのは、ルフレとラズワルドのどちらだったのか。

 引き続き目の前で繰り広げられる母と娘のやり取りは、険悪とまではいかないものの、明らかに雲行きの悪いものとなっていた。

 オリヴィエの手がマークの腕を掴み、娘を台座の上へと引きずり上げていく。

 

 

―――いい機会です! お説教ついでに、マークにもこの特訓を受けてもらいます!

   さあ、こちらに来なさい!

―――ぅえぇっ!? えぇと、流石にそれはちょっと遠慮したいかなぁ……なんて。

   あの……、母さん? 目が怖いですよ? いや、ちょっと待っ、はにゃああぁぁぁっ!?

 

 

 普段、滅多な事で怒りの感情を見せることのないオリヴィエであるが、この状況でからかう様な言動を続けるマークに、とうとう堪忍袋の緒が切れてしまったらしい。

 元居た世界でさえ聞いたことのないその怒声は、自分が言われたわけではないのと分かっていながら、ラズワルドまでもすくみ上らせる程のものであった。

 二人が台座に並ぶとほぼ同時に、再び雷の塔が雷撃を放ちスパークを始める。当然の如く、渦巻く雷は発生源の中心にいる二人をまとめて飲みこみ、特に電撃に慣れていないマークからはたちまち甲高い悲鳴が響いた。

 

「…………。母と娘の微笑ましい一幕だね」

「父さん、現実を見て! ていうか流石に止めにいこう!? マークまで母さんみたいになったらホントにシャレにならないよ!」

 

 言うが早いが、ラズワルドはルフレの腕を引いて茂みから飛び出していく。

 その直前、乾いた笑みを浮かべるルフレと最後に目が合い、エクラは何とも言えない気持ちで彼らを見送ることとなった。

 まさか後を追うわけにもいかず、一人残されたエクラは静かに嘆息を漏らす。

 

 結局のところ、彼が彼らにアドバイスできたことなどほとんどない。

 ここを訪れる前に「マニアックな内容にのめり込み過ぎると、スタンダードが味気なくなる」という事をルフレに伝えたのが精々なのだ。

 しかし、いざこの場を訪れて実際にオリヴィエの艶姿を見せられてしまうと、既に手遅れとでもいうべきか、その言も遅きに失するものに思えて仕方がない。

 家族の喜劇は今もなお続いているが、最早エクラに出来ることは何もないであろう。

 一体、自分は何をしにここに来たのだろうか。

 おまけに、彼らの謎の信頼には申し訳ないが、エクラとて男である。手を出そうなどという愚かな事を考えるはずもないが、だからといって人妻の自慰行為の覗き見をしてそれで興奮しないはずもない。

 モヤモヤとした感情と、ムラムラと込み上げてくる情欲を必死に抑え込みながら、エクラはひっそりと一人この場を後にするのであった。

 

 

 

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