ファイアーエムブレム ヒロインズ ~英雄たちの受難~ 作:瀬部唯人
アスクの地に現れた淫魔がひしめく卑猥な罠に溢れた塔こと“エロトラップタワー”は、挑む度に毎回フロアの造りが全くの別ものに切り替わる。
原理や仕組みについては一切が謎に包まれているが、おそらくは空間そのものを操作する類の非常に高度な術を用いたものであろう。というのが魔道に長ける英雄勢たちからの見解である。
フロアの変化における規則性はなく、罠の配置なども毎回異なってくるため、塔の攻略はかなり難航しているというのが現状であった。
幸いにもというべきか。挑んだ少女たちは、たとえ敗戦したとしても酷い辱めこそ受けるが命までは奪われることもなく、最終的には五体満足でどうにか拠点への帰還は果たせている。
つまり、情報を持ち帰ることはできているのだ。
自分が受けた屈辱を話したがらないという者も少なくはないが、それでも次に攻略に臨む者達にとって少しでも助けになればと、帰還した少女たちは健気にも羞恥に顔を朱に染めながら話せるだけの内容を出来うる限り仲間たちに共有するのだった。
その情報に含まれていた内の一つが、今まさに塔の攻略に進んでいたセリカたちの行く手を阻み、前に立ち塞がったのである。
「綱渡りをしなければ奥に進めないフロア……。どうやら聞いていた通りのものみたいね」
眼前に広がる光景を前に、特務機関の拠点にて事前に聞かされていた話を思い出して、セリカはひっそりと息を漏らした。
奥行きが長めの道がかなり細いフロア。
人の肩幅あるかないか程度の細い通路の両側には深さの読めない窪みが奥まで続き、そこには透明度の低い怪しげな液体が敷き詰められている。上を踏み歩こうものならば、まるで底なし沼のようにそのまま沈んでしまいそうな危うさがあった。
ジェル状の液体の色は、鮮やかながらどこか毒々しさを感じさせる濃いピンク色。ほんのりと甘い香りを漂わせるそれは、所謂ローション液に類するものである。
そしてその間。通路部分の手前には人の腰付近まで届く鉄棒が静かに佇み、それの頂点部からは何やら綱状の紐が伸びており、それが通路の先まで続いているのであった。
「誰かがこれを跨いで渡らないといけないんですよね……」
すぐそばで控えていたメイが鉄棒の前で膝を折り、桃色のツインテールを揺らしながらぼやく。彼女の視線の先には看板のような立札が鉄棒の横に並び、何やら文字が刻まれていた。
曰く『跨ぎ通れ 一人の献身が他を助け 先への道を開く』というもの。
「敵の決めたルールに従うなんて! って、普通なら思う所ですけど……」
「そうね……でも、皆ももう知っての通り、この塔は定めたルールを逸脱した時にこそ、恐ろしく凶悪な真価を発揮するわ」
メイの言葉に返しながらセリカは特務機関の拠点で聞いた話を思い出す。
これまでこのフロアに立ち入ったことのある小隊は、セリカたちの他に二組いた。
内一組はルールに従い辛うじて次へと進んだようだが、もう一方の隊は紐を切り落とし綱渡りをせずに通路の先まで進んだらしい。
そしてその選択は、結果タブー行為であったのだろう。彼女たちが道を渡り切ったその直後、どこからともなく靄にも似た巨大な闇が何の前触れもなく出現し、一行に襲いかかったのだ。
あまりにも突然のことに、抵抗する間もなく小隊の全員が一瞬にしてその中に飲み込まれ、何が起きたのかもわからぬまま、彼女たちの意識はそこで途絶えたのだという。そして、次に気づいた時には既に囚われの身となり、牢の中に閉じ込められていたとの事であった。
塔が現れて間もない攻略初期の頃ほど似たような話は非常に多い。
塔内を進み続けていると、時々特殊なルールが設けられたエリアに出くわす事があるのだが、そこでルールを順守しなければ実質ゲームオーバーとなってしまうのである。
いまやその事実も周知のものとなり、避けて通ることができない以上は可能な限り遵守すべきだろう。という話が英雄たちの間でもまとまった見解となっていた。
「―――それでどうするの?」
二人の後方で控えていたエフィが気だるげに尋ねてくる。
隣り合うメイと揃って振り向くと、彼女は然も面倒くさそうに肩を落とした。
「誰か一人が渡らないと先に進めないんでしょ? 誰が渡るの?」
「あ~……」
言外に自分は絶対に嫌だという意思が端々から伝わってくるエフィの声色に、返すメイも酷く曖昧な唸り声を上げる。
声にこそ出さないながらも、セリカとて心情は彼女らとほとんど同じものであった。
跨いで通る。人の腰にまで届く高さで、長さは反対側まで二十メートル近く伸びているこの綱紐を。さらにその綱には、瘤のような不自然な結び目も所々に見えた。
こんなものの上を跨ぎ歩けば、間違いなく股に紐が擦れてしまうだろう。
そしてこの塔の性質からして、これが侵入者を卑猥な目に遭わす目的に用意されたものであるという事ぐらい、実に容易く想像がつく。誰もやりたがらないのは当然のことであった。
……が、前述した事情もありそれがルールである以上、従う他に道はないのだ。
「―――私が行くわ」
「セリカ様!?」
不本意ながらも名乗り出るとメイが仰天した様子でこちらを見た。
流石に予想外であったのか、エフィまでもが似たような反応を示している。
「正直に言って私だって本意ではないわ。……けれど、少なくともこの中では一番体力もある。万が一、途中で渡り切れないとなった時でも、どうにかできる可能性がまだ高いわ」
それに、と続けようとしたところで僅かに言いよどむ。
怪訝な表情を浮かべる仲間たちに、仕方なくセリカは言葉を続けた。
「それに……みんなスカートだから、その……余計に辛いかな、って……」
そこまで言うと、ようやくこちらの言わんとするところを察してくれたらしい。
メイもエフィも、……それからここを訪れる直前、ただ一人おぞましい触手罠に辱め抜かれたショックから未だ放心状態で口を開こうともしないシルクも。皆、下はスカート衣装なのである。つまるところ、綱を渡ろうとすると綱紐と股を隔てる物は下着しかないのだ。
それがどれ程の負荷となるのか、推して知るべしであろう。
「私の衣装なら、みんなよりはまだ負担も少ないと方だと思うから……」
「わかりました。セリカ様、わかりましたからそんな無理に言わなくていいですから!」
次第に顔を赤らめていくセリカに、見かねたメイが静止の声を上げる。
なんというかイケナイ話の説明を強要しているようで、聞いている方としても居た堪れない気持ちになって仕方がなかった。
ちなみにセリカの衣装は、身体の要所を守る赤い軽鎧の他に、動きやすさを重視した鮮やかな山吹色の神官戦士服であり、下は同じ色のショートパンツとなっている。
彼女自身の言うように、スカートで渡るよりかはまだ幾ばくかマシであることは確かであろう。
「とにかく! そういうことなら、お言葉に甘えておまかせしてしまいます。正直、ものすごく申し訳ない気持ちで一杯なんですけど……」
「うん。セリカ、がんばって」
ともあれ、こうして挑戦者はセリカに決まったのだった。
実際、セリカの言い分が理に適っているという以上に、やはり誰もやりたくないというのが本音なのであろう。内容が内容なだけあって、誰も異を唱える者はいなかった。
普段であれば、真っ先に身代わりに名乗り出そうなメイでさえ、頭を下げ両手を合わせてまで引き下がるぐらいなのだから余程のことである。
「ええ。任せて」
自分で言い出したことながら恐ろしく気は進まないが、努めて明るくセリカは前に出た。
一度深く息を付いてから、幼児の腕の太さほどの綱の上に、そっと跨いで立つ。それだけで綱紐は股へと程よく食い込み、締め付けるような圧迫感を与えてきた。
「……っ」
ほとんど無意識に短く息が漏れる。
布二枚を隔ててコレなのかと、セリカは思わず眉を寄せて顔を顰めた。この状態で歩くというのは、思っていた以上に堪えるものがありそうだ。
「その……セリカ様。大丈夫ですか?」
背後から気遣わしげなメイの声が掛かる。
早くも気が滅入りそうであったが、今更投げ出すわけにもいくまい。
「……大丈夫よ。やると決めた以上、最後までやり遂げて見せるわ」
自分自身に言い聞かせるように深く息を吐き出す。
大したことではない。他人の手で直接イヤらしい事をされるわけでもないのだから。ただ少し、綱の上を渡り歩くだけだ。左右のローションプールには流石に嫌悪感があるが、これも足元に注意をすれば大事には至らないだろう。
意を決して、セリカは歩み出した。
「ん……くぅ……」
食い込む綱がショートパンツ越しに股間を擦る。
痛みはない。どうやら一般的な綱とは違い、かなり柔らかい素材で出来た物のようであった。とは言え、股への圧迫感は無視できないものがあり、非常に落ち着かない事には変わりはしない。
如何に女を辱めるか。
綱の構造から、作り手がそれを特に重視して丹念に手掛けた物なのだろうということが、実によく伝わってくる代物であった。残念ながら、微塵たりとも歓迎できるものではなかったが。
「ふぅ……ん、くっ……」
歩きはじめて間もないからか、まだ“感じる”という事態には至っていない。ただ、遅かれ早かれそうなりかねないという予感があった。
そうでなくとも、股に刺激があるというのは、ひどく羞恥が炙られる。下着とショートパンツによって衣服越しであるとはいっても、こればかりはどうしようもなかった。
(うっ……思っていた以上に恥ずかしい……! みんなの目だってあるし、出来るだけ早く渡り切ってしまわないと……)
後ろからは仲間たちの視線だってあるのだ。嘆いてばかりもいられない。
深く息を吐き出し、進めるだけ進もうと足を速めていく。
「うぅ、ん……ふ、くぅぅぅ……っ!」
ズリズリと擦りながら歩き続ける。
が、勢いがあったのもはじめのうちだけで、半ばまでやってくるころには、その足の動きも随分と鈍ったものになっていった。
絶えず異物が股を擦るというのは、どうしたところで意識してしまうものである。まるでおかしな自慰行為を強要されているようで、そのことがひたすらにセリカの羞恥を煽ってくるのだ。
加えて瘤のような結び目が大きいところは、股への圧迫が一際大きいものとなった。その上を苦労して通るたびに、より多くの体力が吸い取られていってしまうのである。
しばらくして、その足がとうとう完全に止まってしまう事となった。
常に気を張りながら進んでいたこともあってか、体力の消耗がやけに早い。はじめの頃に比べても、セリカの表情には疲労の色が濃く浮かび、吐息にもどこか気だるげなものが混じるようになっていた。
一息つくために両手で綱を押さえつけ、股に出来るだけ触れないよう引き離す。結構な力を要する行為だが、綱が股に触れているよりはまだ気が休まった。
無意識にそこまでしてから―――不意に、これが違反行為とみなされないかと慌てたが、周囲に警戒を向けても何も起こらない事に、深く安堵の息が漏れた。どうやら杞憂であったらしい。
(助かったわ……。立ち止まって休憩してもいいのなら、どうにかなりそうね。……?)
手で触れていて、ふと違和感に気づく。
何やら綱はしっとりと湿り気を帯びているようであった。それどころか、先に進むほどに水気が増しているようにも見える。
「なんだか不自然なほど湿っているわね。水気の多い場所……みたいなものだからかしら?」
左右のローションプールに目を向けながら思案する。
このエリアを踏破―――つまり綱を渡り切った少女は、フロアについてあまり細かな部分までは語らなかった。
不明瞭な内容に関しては仕方がないとしても、彼女からざっくりと共有された情報は、ローションの中に落ちると辛い目に遭うから気を付けて、という点のみ。
当時はそんなものなかったのか、あるいは落ちた記憶が鮮烈すぎて記憶から抜けて落ちていたのか、綱が濡れていたことについては何も語られていない。
そして、肝心の落ちるとその後どうなるのかなどといった具体的な部分においては、決して語りたがらなかったのだ。しかしその様子だけで、彼女がこの場所でとてつもなく悲惨な目に遭ったのだろうということは、いやでも察することができた。
ともあれ、綱が濡れている事は気に掛かるが、これ以上は考えても仕方がないことだろう。セリカは歩みを再開することとした。
時々休憩をはさみながらさらに進んでいく。
はじめの頃よりもペースは落ちたが、この分ならゴールまで問題なくたどり着けるだろう。と、内心でひっそりと安堵していた時であった。
「んんっ!? な、なに……?」
身体から―――より具体的には、綱に跨る股間から甘い疼きにも似た熱が奔り、セリカの表情が切なげに歪んだ。
突然のことに戸惑っていると、今度は股の間に綱の水気とは明らかに異なる、己の愛液による湿り気を感じ取り、その事実が増々セリカを慌てさせた。
「そ、そんな……うそ、どうして……っ。――ぁ、ぐっ! この水、まさか……っ!?」
眉根を寄せながら呻く。そしてその熱が股間から全身へとじわじわ広がり始めていくと、ようやくその原因をもたらした物の正体に気づいた。
綱から滲み出していた水気は、間違いなく媚薬の類なのだろう。
気づけば全身の皮膚から発熱したように汗が滲みだしており、ちりちりと肌を焦がすようなもどかしい疼きに脚が震えはじめていた。
「あ、うぅ……やっ、ぅあぁぁ……」
おまけに、おそらくは進むにつれて少しずつ量を増やしていくことによって、媚薬の効果が表れ始める時間を調整していたのだろう。
半分以上進んだとはいえ、ゴールまではまだ幾ばくかの距離がある。ここまで進んでしまっては、今更引き返すことも難しい。それならこのまま最後まで歩く方がまだ建設的である。
しかし……。
(くっ……よく見ると瘤の数がさっきまでよりも明らかに多い……! なんて悪辣なの……っ)
ゴール手前の道のりは最初の頃よりも明らかに険しさを増したものとなっていた。
これまでのように休憩しながら進むのはあまり得策ではないだろう。綱の水気の正体が媚薬とわかった今、この場に長く留まればそれだけその毒に身体が蝕まれることになるのだから。
だからと言って、ペースを速めて進むこともリスクでしかない。結果を焦って転びでもすれば、確実に左右のローションプールに落ちてしまうことになる。それだけは避けたい。
そうなると、今すぐに少しずつでも確実に進むことが最善であろう。出来るだけ時間を掛けずに判断し、セリカは歯を食いしばって歩み始めた。
「ふぅぅぅっ! んんっ、ぎ……んぐぅぅぅんっ!」
が、そんな決意も虚しく、ほんの数歩進んだだけで足が止まってしまう。
ゾクゾクとした感覚が首筋を這い上がってくる。股を擦る綱をはっきりと“気持ちいい”と感じてしまい、恥ずかしい呻き声が抑えられない。
今やセリカの顔は、彼女自慢の肩まで流れる緋色の髪とほとんど見分けが付かなくなるまでに、赤く染まり上がっていた。
(あ、熱い……身体が、勝手に感じちゃう……っ。それでも、くぅ……進まないと……!)
快感に耐えながら必死に足を動かす。それだけでも相当な労力を要する作業だった。
既に彼女の秘所は、止めどなく溢れ出てくる愛液によって水浸しとなっている。
敏感になった身体で、これ以上の刺激を受けてはもう耐えられないだろう。出来るだけ股に負担が掛からないよう、セリカは慎重に足を動かしていく。
程なくして瘤に差し掛かると、一度歩みを止め大きく息を吐き出した。
ここばかりは流石に足踏みしてしまうが、ここまで来たらもう覚悟を決めるしかない。何度か深呼吸を繰り返すと、ついにセリカは足を踏み出すのだった。
「ふあああああっ! ああっ、んはあああああああっ!!」
陰核を圧迫する強烈な官能に堪らず嬌声が上がる。
予想していたよりも数段強い快感に、媚毒で火照りきった身体が耐えられるはずもなく、瘤の上でセリカは盛大に絶頂した。
目の前が一瞬真っ白に染まる。
迸る性感に全身が小刻みに震えてくるが、歯を食いしばって足を動かし続けた。ほとんど気力だけで瘤を乗り越えていく。
「ん゛ぅ゛っ!!」
どうにか瘤を越え切ったところで一際強い刺激が奔り、思わずくぐもった悲鳴が漏れた。最後は滑り落ちるように越えてしまったため、陰核を必要以上に強く擦ってしまったのだ。
その刺激はすぐに強烈な官能へと置き換わり、セリカはまたしても達してしまう。
ごく短い時間での連続イキに、股座から溢れ出た体液が床に滴り落ちていく。身体中から一気に力が抜け落ちていくようだった。
(こ、こんなの……後、何回繰り返せばいいの……!?)
揺れる身体を苦労して支えながらも戦慄せずにはいられなかった。
泣き言が口をついて出てきそうになるが、辛うじて内に留める。忘れてしまいがちであるが、後方では仲間たちも見ているのだ。いつまでも悲観した情けない姿を見せるわけにはいかない。
弱りかけた心を叱咤し、セリカは深く息を吐き出した。
目尻に薄らと涙を滲ませながらも、仲間たちのために再び歩き出そうとする彼女の姿は、実に健気なものであった。しかし―――、
「―――――あっ」
意思とは裏腹に身体にはこれまでの疲労が溜まりきっており、踏み出した足から踏ん張るための力が一瞬大きく抜け落ちてしまった。
平坦な地であれば膝を付くだけで大事には至らなかった事だろう。
しかし、この場は平坦でこそあれ非常に狭い道であり、なおかつ両脚の間には秘部を刺激して動きを阻害する綱があるのだ。
そんな場所でバランスを崩せば、果たしてどうなるか。
傾いた体勢を立て直すこともできず、盛大に素っ転んだセリカは、そのままローションプールへとその身を投げ出すこととなった。
「せ……セリカ様―――――っ!!」
後方からメイの悲鳴染みた叫び声が聞こえてくるが、セリカにはそれに応える余裕もない。
ヌルヌルとしたジェル状の液体が全身に纏わりつき、衣服の中にも滑り込むように入ってくる。思っていたほどの深さはなく溺れるようなことはなさそうだが、身体中に粘りつく悍ましい感触を受けては何の慰めにもならなかった。
「~~~ッ!! い、いや……っ! くっ……気持ち、悪いッ!」
粘性は強いが抜け出せないほどではない。
嫌悪感に叫び出したくなる思いを堪えて、必死に通路の上まで這い上がる。苦労してどうにか元いた場所まで戻ると、身体を支えるために綱に掴まり、喘ぐように息を付いた。
「ハアッ……ハアッ……んっ、く……んんっ!?」
体力気力とも最早限界寸前であったが、追い打ちは程なくしてやってきた。
ベトベトと身体中にへばり付くローションにも、やはりというべきか媚薬成分が含まれていたのだろう。常温の水とそう変わらない温度の液体に濡れたというのに、体温が徐々に上昇していくような感覚。ここまで散々火照らされた身体が、じくじくと新たな熱を灯し始めていた。
「い……ひぅ、っく……! くぁぁぁぁっ……!」
身体中の感度が強引に引き上げられ、まるで全身の全てが性感帯となってしまったかのようだ。
抗う術もなくその場に蹲ったまま、気が狂いそうになるような快感の嵐を必死に耐える。
しかし、セリカがそんな状態にあっても塔の罠は待ってはくれず、更なる試練が容赦なく降りかかろうとしていた。
がこん。と硬質感のある音がセリカの頭上で無機質に響く。
何かが開くようなその音の先を見やると、通路上の天井が開き、そこから鎖の付いた複数の鉄枷が伸び出してきた。それらは一斉にセリカへ殺到すると、彼女の両手首と腰付近を捕え、あっという間に拘束してきたのだった。
「やっ……! 今度はなにを!?」
強力な武器である『王家の剣』は腰に帯びたままであったが、度重なる災難で疲れ切った身体に不意を突かれたのでは、鞘から抜く余裕さえなかった。
セリカを拘束した鎖が徐々に巻き上げられていく。
強い力で引っ張られるが然程の痛みは感じない。鉄枷かと思っていたが、どうやらローションのぬめり気で外れることがないよう工夫された物のようで、鈍色に近い色をしたゴムのような特殊な素材でできた枷のようだった。
場違い極まりないことながら僅かに感慨を抱いている間にも、持ち上げられたセリカの身体がゆっくりと綱の上に降ろされていく。
「んぅっ……!」
再び綱を跨がされる体勢となり、綱が股に食い込む感触に思わず甘い声が漏れる。
どうにか逃れようとするが、枷による拘束はそのままで思うように動けない。それどころか、今度は前に進むようにと鎖が引っ張られていき、セリカに綱渡りを強制的に再開させ始めたのだ。
「ふああっ!? だ、ダメっ、そんなペースで歩けな――あああっ!」
無理やり歩かされ、股が擦れる感触に堪らず悲鳴が上がる。
既に二度達した上に、全身が媚薬による快楽に侵されたことによって、身体の感度が常時より格段に跳ね上がってしまっているのだ。
ほんの少し歩いただけで強烈な快感が奔り、セリカは激しく身悶えた。
「あうっ! やっ、は……んんっ! ま、待って……無理っ、こんなの……く、ああっ!」
歩くというよりは引きずられる様な形でズリズリと綱の上を進んでいく。
己の意思ではもう止まる事もできず、そうこうしている間にも難所である瘤に差し掛かる。気づいたセリカは目を見開くと、いやいやと子供のように首を横に振り続けた。
「やめてっ! こんな勢いでなんて本当に無理よ!」
必死に拒絶の声を上げる。
しかし無慈悲な罠がそれで止まってくれるはずもなく、鎖はセリカを引っ張り続けた。そして抵抗も虚しく、そのまま瘤の上を二つ三つと立て続けに通過させられていった。
これまで一つ乗り越えるたびに苦労していたことを考えると、本当に簡単なほどにあっさりと。
が、それはあくまでも傍から見ている分にはという話である。当事者であるセリカにとっては、敏感に蕩けた陰核を凄まじい勢いでゴリゴリと弄り続けられているも同然の話で、そんな単純なものではなかった。結果―――
「んぎぃ……! ぅ、はああああっ! イっ、また……イ、クっ……! く、ああああっ!」
セリカは繰り返しイキ続けた。
知らずうちに内股となっていた股から流れる愛液はもうずっと垂れ流しっぱなしで、快感から逃れようとくねらせる腰が絶頂に何度も跳ね上がる。
そうして乱れ続けて何度も姿勢を崩すが、枷による拘束のおかげで倒れることもできない。途中から脚に全く力が入らなくなっていたため、体重の全てが綱を跨ぐ股間に圧し掛かり、イった直後の陰核は休む間もなくいじめ抜かれた。
「ああああああああああっ! あ、ああっ! うああああああああああっ!!」
イって、イって、果てるほどにイキ続ける。
そんな状態が一体どれほど続いたのか。そうこうしている間にもようやく終わりが見えてきた。綱の終点である。尤も、絶頂の連続に悲鳴を上げ続ける今のセリカには、それに気づくだけの余裕すら残ってはいなかったが。
ラストスパートをかけるように、セリカを引っ張る鎖の速度が加速する。
歩く力どころか自分の足で立つ力さえ残っていない身体が、股間を綱に強く押し付けたまま、最後の数十センチを勢いよく引きずられていく。
「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
ブシュァッ! と盛大に潮が噴き出す。
ガクガクと痙攣を繰り返しながら綱道を越えたセリカはそのまま床に放り出されると、力なく前のめりに倒れ込み、ぐったりと横たわって荒い息をついた。
そんなセリカをしり目に、彼女を散々苦しめた元凶たる拘束枷はまるで仕事を終えたと言わんばかりにひとりでに外れていき、何事もなかったかのように鎖とともに天井へと引っ込んでいく。
同時に、スライムプールを覆い隠すように新たな道が広がっていき、歩きやすい普通の通路が出来上がっていったのだが、セリカにはそれを見る余裕さえなかった。
「あ、ぁ……んぁぅ、っ……」
半開きとなった唇の間から微かに漏れる声は弱り切ったものながらひどく悩ましげで、激しい情事を終えた直後の女が醸し出す特有の色香にも似たものが全身から立ちのぼっている。
特にずぶ濡れとなった下履きからは、ローション単体では決して出すことのできない凄まじい雌のにおいが放たれており、潮吹きの名残が奥から溢れて今なお新たなシミを広げていっていた。
平時の淑やかな姿は想像もつかないほどに淫猥な艶姿。
駆けつけてきたメイたちが言葉を失くすほどに酷い惨状であった。
「ねえ、セリカ……」
メイたちに介抱され始めてからしばらくした頃。未だ無言で消沈した様子のセリカを見かねたのか、珍しく気遣わしげにエフィが声を掛けた。
実のところ、彼女らの間には異性を巡った確執が続いており、現在もどこか互いに遠慮し合っている傾向があった。この戦いで少しでも二人の絆が深まればという計らいから、彼女らは同じ小隊に編成された経緯があり、有事の際におけるフォロー役として、二人とそれぞれ親しいメイとシルクが残りのメンバーに選ばれていたのである。
自ら苦難に挑み、苦しい思いをしながらも道を開いたセリカに、エフィもまた思うところがあったのだろう。傍らで見守るメイはそう信じて疑わなかったのだが……。
「―――……アルムにされるのと、どっちが気持ちよかった?」
エフィから飛び出したのは、この上ない程にとんでもない爆弾発言であった。
空気が凍りつくという表現すら生ぬるい。幽鬼の如く身を起こすセリカの姿を見て、メイは生まれて初めて絶対零度と呼べる空気をその身で体感したのだった。
そして悲劇―――あるいは喜劇とも呼べるそれが幕を開く。
疲労困憊にして精神的にも弱っていたはずのセリカは、エフィの言葉にショック療法さながらの復活をして立ち上がると、魔女の如き形相で咎人へと掴み掛った。流石に殴るような真似はしないが、それでも指先に込める力には一切の手加減をしない。
その暴力が向かう先。エフィとしては――失言この上ないものだったが――セリカを元気づける意図で言ったつもりであったため、いきなり容赦なく頬を引っ張られたことにたちまち逆上してしまい、彼女もまた暴力女へと反撃の手を伸ばすのだった。
二人は縺れ合うようにしてゴロゴロと床を転げまわっていく。
ついには二人をどうにか仲裁しようとワタワタするメイまで巻き込み、最終的に彼女たちは、いつの間にか開き直していたローションプールの中へ仲良く転がり落ちていったのだった。
時には喧嘩も必要だろう、と終始傍観に徹していたシルクだけが、ただ一人辛うじて難を逃れる。……が、これにより部隊は最早崩壊したも同然という惨状となった。
あろうことか、仲間同士のキャットファイトという異例の事態によって……。
結局、彼女たちはそのままこのエリアから身動きが取れなくなってしまい、エクラの召喚術によって拠点に帰還できる事をただ待つ他なくなってしまったのであった。
その後、無事に帰還した彼女たちが塔であった出来事について、一様に口を閉ざすことになったのは言うまでもない。