※この作品はR-18です。

もし千葉くんがエロゲの主人公だったら   作:miyakokat

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──椚ヶ丘高等学校、五英傑の昼休み。

キーンコーン、カーンコーン…

瀬尾「赤羽のやつ、今日はやけに真面目な顔してんな…」
荒木「くそ、あいつ全国模試1位だったぞ!机の上に成績表が起きっぱなしになってた。見せつけやがってあの野郎…」
瀬尾「うおッ、マジか…!?」
小山「その割になんだか元気がねえのはなぜなんだ?もしかして、もう授業についていけてねえとか?ギシシシシシシ!」
瀬尾・荒木「「(…それはないだろ)」」
榊原「どう思う?浅野くん」
浅野「…フン、俺が直接問いただしてみるとしよう」

カルマ「あー…(ヤバい…桃花とエッチしすぎて腰が…)」
浅野「どうした赤羽、やけに元気がないじゃないか」

カルマ「あ?」
浅野「ずいぶん派手に見せびらかしてるそうだが、そんなことがうれしいのか?(くそ!なんでこの俺様が2位なんだ)」

カルマ「……はあ?(なんでこいつ俺と桃花のこと知ってんだ?)」
浅野「そうやって慢心してるがいい。いつでも俺が奪ってやるからな!(1位を)」

カルマ「はあッ…!?ふざけんな、なんでてめえなんかに!(なんだこの野郎、桃花を狙ってやがるのか!?)」
浅野「おっと、本気で怒るところを見るとやっぱり自信がないみたいだな。言っておくけど大事なのはその場しのぎのテクニックなんかじゃない。日々のたゆまぬ努力なんだよ!」

カルマ「は、はあ…?(童○のお前に何がわかるんだ?)」
浅野「まあ指を咥えて見てるがいい。本気を出した俺が必ず勝つ!」

カルマ「だまれッ!!絶対に守り抜くッッ!!」

榊原「あーあ、浅野くん煽りすぎだよ…」
瀬尾「かえって余計やる気まんまんにさせちまったな…」
荒木「あああ…次のテストもヤバい…」
小山「ギギギ…せめて一教科だけでもあいつに勝ちたいいいいいい!!」




解決の時間

───防衛省、特別海外調査室。

 

 

「コンコン、…えーと、烏間さんいます?」

 

ぼさぼさ頭に黒縁メガネ、一風変わった男が戸口に立っていた。

 

「あ…烏間室長は外出中です。連絡取りましょうか?」

「いや、いいです。どうも」

 

鵜飼の問いかけに男はくるりと踵を返して出ていった。

 

「…ねえねえ鶴田ぁ、さっきの子、めちゃくちゃカッコいいんだけど、だあれ?」

「いや…わかんないすね、イリーナさん」

 

園川雀が「あっ」と顔を上げた。

 

「あの人うちの省内報に載ってます。…名前はえーと、藤堂シュン、中華人民共和国深圳市出身、東杏大学理学部中退、現在大臣官房サイバー対策専門官」

 

「あー…聞いてる。たしかIQ200ってウワサのやつだ。なんだってそんな天才がうちの会社なんかに…」

「鶴田さん、そんなこと言ってるとまた室長に叱られますよ」

「鵜飼、お前が黙ってたらいいんだよ」

「え、まだ20歳ですって…若ーい」

 

「ふーん、トウドウか…いい男(ジュルリ)」

「(小声で)うわ…すげえやらしい顔」

「もう浮気ですか、イリーナさん」

「…な!?し、しないわよ鵜飼!失礼な!」

 

 

藤堂はエレベーターに乗り込み、インカムのスイッチを押した。

 

「律」

『はいマスター』

 

「烏間さんの居場所を調べろ」

『了解、烏間せん…失礼、烏間室長は、いま───』

 

 

** ** **

 

──川立高校、軽音部。

 

 

「見ろ、千葉の真似!」

「やめろごらあ!」

 

橘ヒロキが自分の前髪をおろしてみんなに披露した。ふざけんな!俺はそんなお化けみたいな顔じゃねえ!

 

「プッ…あはは!」

 

最近ずっと元気のなかった佐倉ミオまでが、堪えきれず笑い出した。ヒロキには腹が立つけど、久しぶりの笑顔に俺もうれしくなる。

 

「なあ千葉。それよりお前さ、速水ちゃんのどこに惚れたんだ?もちろん顔とか見た目以外で」

「はあ…?なんだ急に」

 

「一度聞いてみたかったんだよ。な、教えてくれよ」

「やめろって。そんなの話せるかよ」

「わたしも聞きたい。いいでしょ千葉くん?」

 

なんだなんだ、佐倉まで乗ってくると断りづらいな…。おまけに山科ダイスケまでウンウン頷いている。

 

「…俺が椚ヶ丘で担任の暗殺をしてたのは知ってるよな?」

「お、初めて自分から話したな、その話」

 

そう、俺はこの学校に来てから一度も殺せんせーのこととかE組のことを話してこなかった。それはもちろん、面白半分で興味を持たれるのが嫌だったからだ。

 

でもこうして話す気になったのは、このメンバーのことを信頼しているからに他ならない。

 

「…長くなるけど、いいか?」

「おう、じっくり聞いてやる」

 

まずは俺がE組に落ちた理由、殺せんせーと暗殺のことをかいつまんで三人に話した。

 

「ふむふむ、それで?」

 

それから速水との出会い、この一年のあいだ二人で取り組んだ暗殺のこと、最後に将来の約束をしたことを話した。

 

「ヒュー、やるなあ千葉、そりゃよくできたカップルだわ」

「うん、素敵だね…憧れちゃう」

「千葉くん、グッジョブだ」

「…あ、ありがと」

 

普段無口な山科にまで褒められると、なんだか照れるな。

 

「しかし1年間ほんと大変だったんだな」

「ああ、いろいろあった。…でも、まだ終わってないかもしれない」

「どういうことだ?」

 

俺は先週から元クラスメートたちが何者かに狙われていることを話した。

 

「…やべえな、そりゃ」

「速水さんのことも心配だね」

「ああ…」

 

四人のあいだに沈黙が流れる。突然それを断ち切るかのようにガラリと部室の扉が開いた。

 

「ねえーヒロキ!時間過ぎてるじゃん!さっさと来なよ、もう!」

 

げ…、剣崎レイカ。

 

「すまん。じゃあみんなお先」

「おう」

 

「ねえ、なんなのその髪型、すっごく変だけど」

「これな、千葉を意識してみた」

「ギャハハハハ!」

 

クッソー!バカにしやがってあの女!

 

…このとき俺は、ヒロキをこのまま見送ったことをあとで後悔することになるなんて、予想だにしてなかった。

 

 

** ** **

 

───日比谷公園、ベンチ。

 

「くそっ…!」

 

元E組生徒、杉野友人が昨夜襲われたことを受け、烏間は再び警察庁に出向き、警備について申し入れをしたが、結果はまたも門前払いだった。

 

急いで次の方策を考えなければ…。

 

腕時計を眺め、防衛省に戻ろうかと思った瞬間、ぼさぼさ頭の男がふいに横に腰掛けてきた。

 

「ご無沙汰してます烏間さん」

「…お前」

 

「だいぶお困りのようですね」

 

藤堂シュンはカバンから一枚の写真を取り出し、烏間に手渡した。

 

「元E組生徒たちを狙っているのはこいつです」

「……!」

 

監視カメラの画像に写っていたのは、黒塗りのセダンに乗り込む屈強な男だった。車のナンバーには、○の中に「外」の字が書いてある。

 

「大使館員、か…」

「ルーニア共和国の駐在武官、イワン・パターエフ中佐。特殊部隊出身で実戦経験多数」

 

「……こいつは知ってる。外務省主催の柔道の交流試合で一度だけ対戦したことがある。なんとか勝てたが、なかなかの腕前だった」

「裏の顔も派手ですよ。賭博に麻薬に乱交パーティー。ま、そっちは警視庁公安部が内偵中ですけどね」

 

「その不良外交官が、なぜE組を…?」

 

「特殊部隊時代の仲間が、先月の超生物掃討作戦に傭兵集団『群狼』のメンバーとして何人か参加してたようです。それがジャップの中学生に負けたって評判ガタ落ちで、仕事が無くて困ってるらしい。おおかたその恨みでしょうね」

「……。」

 

「公安の捜査は進んでるみたいですけど、ご存知のように外交特権で逮捕はできない。さんざん好きなことをやらかして、追い詰められたら母国にトンズラ。まあ、よくある話ですよ」

 

「…なぜこれを俺に?」

「そりゃもちろん、あなたを利用したいからに決まってます」

 

「なぜだ」

 

「あなたの得意分野が、わたしの仕事に必要だからです」

 

 

──こいつはいったい何者なんだ…?

 

烏間は写真を懐にしまい、ゆっくり立ち上がった。

 

「情報には感謝する」

「見返り、期待してますからね」

 

「……。」

 

慌てなくても、この男の目的はいずれわかるだろう。烏間は携帯を取り出し、鶴田に犯人の監視を始めるよう指示した。

 

…が、それは一歩遅かった。

 

 

☆☆ ☆☆ ☆☆

 

 

『オマエ、チバカ?』

『…ああ?だったらなんだってんだてめえ!』

 

バキッ!ボコッ!ドスッ!ドカッ…!

 

『キャアアアアアアアアッ…!』

 

……

…

 

〈速水凛香視点〉

 

大怪我をした橘くんが搬送されたのは、川立駅からほど近い救急病院だった。

 

「お、俺の身代わりで、ヒロキが…ヒロキが…」

「千葉……」

 

連絡をもらって駆けつけると、手術室の前に三人が立っていた。

 

「千葉くんのせいじゃない…。悪いのは、悪いのは襲ったやつだから。そうでしょ…?」

「佐倉……」

 

佐倉さんは真っ赤に瞼を泣き腫らしていた。

 

「…ヒロキのやつ、またカッコつけやがって」

 

山科くんがふいに口を開いた。

 

「え、…どういうことだ?」

「…もしかして、わざと千葉を庇ったってこと?」

 

「そうに決まってる」

「な、なぜだ…?」

 

「そりゃあー…」

 

山科くんが佐倉さんを見た。

 

「ヒロキは昔からそういうやつなの…。みんなのためにいつも自分が犠牲になろうとする…」

 

「おそらく千葉くんの話を聞いたあとだったから、男に会って瞬間的に自分が身代わりになるしかないって、そう思ったんだろうな」

 

「う、ウソだろ…?なんてこった…」

 

千葉の膝がガクガクと震えている。

 

「心配しないで…ヒロキは絶対元気になる」

「すぐに救急車も来てくれたし、命に別状はないって医者も言ってた。今はそれを信じよう」

 

「だから、千葉くんもあまり落ち込まないでね…」

 

そうつぶやく佐倉さんを見て、私は思わずピクッと反応した。この声…、ま、まさか…!?

 

「それより千葉くん、このことを誰かに連絡しなくていいの?」

「あ…」

 

「千葉、烏間先生に連絡したほうがいいよ」

「そうだな、ちょっと電話してくる」

 

急いでロビーに向かう千葉の背中を見ていると、山科くんも「俺、トイレ」と席を外した。

 

…チャンス。私は思いきって、さっき気付いたことを話すことにした。

 

「ねえ、佐倉さん」

「なに?」

 

「こんなときにこんなこと訊いてアレだけど、あなた…バーチャルアイドルのMIOさん、だよね?」

「え…!?」

 

「私、実はファンなんだ」

「ち、違い…」

「ません。合ってるよね?」

 

「…う、うん」

「やっぱり…」

 

「ど、どうしてわかったの?」

「生配信のときの声と、さっきの声の特徴が一緒だったから」

 

「ううう、油断してたー」

「ふふふ」

 

山科くんが戻ってきた。

 

「ん…?どうかしたのか?」

「バレちゃった、わたしが歌の動画投稿してること」

「え、マジか?」

「うん、速水さんて勘が良すぎだよー…」

 

「もしかして山科くんも関係あるとか?」

「うん、ダイスケくん無しだと成り立たないぐらい、いっぱいお世話になってます」

「そうなんだ…すごい」

 

千葉が電話を終えて戻ってきた。

 

「ん…?なんかあったのか?三人とも」

「なんでもない」

「ないです」

「ない」

「…?」

 

「それより速水、とりあえず家まで送るわ」

「いいの?私だけ帰って…」

 

「心配だからそうさせてくれ。俺はまた戻ってヒロキに会ってから帰ろうかと思う」

「わかった。じゃ、お二人とも」

 

「うん、またね。速水さん」

「気をつけてな」

 

 

すっかり暗くなった夜道を千葉と二人で歩く。

 

「ねえ、さっきの電話はどうだったの?」

「ああ。烏間先生、犯人がわかったらしい」

 

「えっ…!そうなの!?」

「とりあえず明日、この件に関わりのあるメンバーで旧校舎に集まることになった。速水も来てくれるよな?」

「旧校舎ね、わかった」

 

「なあ速水」

「ん…?」

 

「俺、ヒロキを襲ったヤツのこと絶対に許さない」

「うん…」

 

「…ん?」

 

千葉が怪訝な顔をした。

 

「…ごめん、もし千葉が被害者だったとしたら、わたし今ごろどうなってたかなって…」

 

あ…涙が出てきた。

 

「ご、ごめんな速水、心配かけて…」

「…ううん、襲われたのが私ってことだってあり得たわけだし…そんなのお互い様だよね」

 

「そうだな、速水でなくてほんとよかった…」

 

千葉はいつだって私にやさしい。

 

こうして付き合うまでは、どこまでが相棒としての配慮で、どこからが恋愛感情なのかがよくわからなかった。

 

もちろん今はしっかりとわかる。私にだけ向けた特別なベクトルを。

 

「あのな速水」

「なあに?」

 

「実はヒロキが襲われたとき、剣崎レイカも一緒だったんだ」

「え…?」

 

「なのにあいつ、ほったらかして逃げてそれっきりだ」

「……。」

 

「ヒロキには、俺を本気で心配してくれる速水みたいな彼女が必要なんだと思う」

 

「それが佐倉さん、だよね」

「ああ、そうなるといいな」

 

「大丈夫、きっとそうなるよ。私が千葉と結ばれたように…」

「おう、きっとな」

 

千葉が私の額にキスをした。

 

それだけで満足できない私は、前髪で隠れた彼の目を見上げて目をつむり、唇にキスを求めた。

 

 

** ** **

 

──翌日、旧校舎グラウンド。

 

〈千葉龍之介視点〉

 

 

「…以上が君たちを襲った犯人の概略だ」

 

晴天の下、烏間先生の緊張感溢れる声が久しぶりの授業みたいで何だかうれしい。

 

「どうしてこの場所に?」

 

矢田さんが真剣な表情で問いかける。

 

「警察の内偵がヤツにバレた。これ以上、元E組の生徒を狙うには時間がないと悟ったんだろう。腹いせにこの校舎を焼き払うと仲間に連絡したらしい。その決行予定が今日だ」

 

…みんながゴクンと唾を飲んだ。

 

「で、ここからはお願いなんだが、ご存知の通り旧校舎を含むこの裏山はすべて君たち元E組の所有物。いくら警察や防衛省でも私有地では手も足も出せない」

 

「つまり…?」

 

杉野が問いかける。

 

「君たちはヤツを捕まえてくれるだけでいい。あとは警視庁が身柄を確保して、外務省から大使館に正式抗議をする。ヤツは晴れて国外追放というわけだ」

 

「なーんだ、追い出すだけか。つまんね」

 

カルマが不平を鳴らした。

 

「さすがに相手の国もヤツをお咎めなしとはいかないだろう。国際社会のブラックリストに載るわけだしな。以上、なにか質問は?」

 

「「「「「「ありません!」」」」」」

 

「ガキ共、ちゃんと守りなさいよ。ここはみんなの大事な財産なんだから」

 

「きゃあああ!そのガキども!ってほんと久しぶりでうれしい!もっかい言って先生!」

「そ、そう…?桃花がそういうならもっかい言うわよ、スー…、ガキどもッッ!!」

 

「あああ…最高!もう一回!」

「やめなって、矢田…」

「ふふふ」

 

「なあ、杉野」

「なんだ千葉」

 

「神崎さん、ずいぶん大人の雰囲気になったな」

「わかるか…俺、幸せすぎて死にそうなんだ」

「そりゃよかった」

 

「速水だってきれいになったじゃねえか。あれなら高校でモテまくりだぞ。大丈夫か?千葉」

「俺はなんも聞いてねえけど、やっぱヤバいかな…」

 

「気をつけろ、間違いなく周りに狙われてる。それに矢田さん、ほんとヤバいよな…」

「たしかにヤバい…」

「ヤバい…ほんとヤバい」

 

ヤバいしか言えないのは、さっきからカルマがこっちを睨んでるからだ。これ以上言うとどんな目に遭わされるかわかったもんじゃない。

 

卒業してまだ一ヶ月、冷静に考えればいくらなんでもそんなに変化するわけがないのだが、久しぶりの再会で俺も杉野ものぼせているに違いない。

 

「室長、鶴田さんから連絡が来ました」

 

園川さんが烏間先生につぶやいた。

 

「君たち、ヤツが来た。これから山道を登ってくる。配置についてくれ」

「手筈通りしっかり頼むわよ!」

 

それから5分ほどして「ヤツ」が真っ赤な携行缶を手に提げて校門に現れた。初めて見る犯人は、俊敏で頭の切れる獰猛なヒグマのような大男だった。

 

「ねえねえおじさん、ここで何やってんの?」

 

男が校舎にガソリンを撒こうとした瞬間、カルマが呑気に声をかける。振り返った男の顔面に、杉野の投げた渾身のストレートボールが直撃。

 

「グブァアアアアッッ!?!?」

 

あっという間に男は布テープで簀巻きにされて地面に転がった。実にあっけない結末だった。

 

「オ、オマエラッ…!?」

 

男が俺たちを見て目を見開いた。

 

「あっれー?このおじさん、どっかで見たことある」

「ほんとだー、わたしも見たことある」

 

「俺このあいだこいつにバシバシ殴られたぞー」

「あー、もしもし警察ですかー?不法侵入の放火犯見つけましたので至急来ていただけませんかー?」

 

みんなでわざとらしい芝居をしていると、男がわめき始めた。

 

「オイッ!ハナセッッ!!オマエラミンナブッコロシテヤルッッ!!」

 

「…うっるさいなあ」

「口にもテープしようか」

 

「いや、口よりも鼻がいい」

「千葉?」

 

「カルマ、持ってんだろ?例のやつ」

「はいはい」

 

カルマから練りワサビと練り辛子のチューブを渡された俺は、キャップを取って男の鼻の穴に一本ずつ突き差した。

 

「…ナ、ナンダコレハ?」

 

「せっかくだから自己紹介しとこうか。俺の名前は千葉龍之介、お前が昨日襲った相手は残念ながら人違いだ」

「…ナ、ナンダトッ!?」

 

ギュウウウウッ!

 

「こいつはヒロキの分」

「ギャアアアアアアアアアアッッ…!!」

 

ギュウウウウッ!

 

「で、こっちは佐倉と山科の分だ」

「ヒギイイイイイイイイイイッッ…!!」

 

尋常でない悲鳴に驚いて、裏山のたくさんの鳥たちがバタバタと一斉に飛び上がった。

 

それからしばらくして黒いミニバンが到着し、4、5人の黒服の男たちが降りてきて、不幸な犯人を後部座席に放り込んだ。

 

「烏間君、君たち防衛省の手厚い協力に感謝する」

 

眼鏡をかけた40歳位の神経質そうな男が烏間先生の肩をポンと叩いた。

 

「いや、正確には」

「…?」

 

「かつてここの生徒だったこの子たちが、大事な想い出の地を守るために戦った。それだけのことです」

「ほう」

 

「たとえ大人たちが守ってくれなくとも、自分たちで戦う術を学んだ彼らです。…この学舎(まなびや)でね」

 

「…ふん、ま、理由はどうあれ結果として国益に叶いさえすればそれでいいんだ、俺たちはな」

「……。」

 

「それでは烏間君、また会おう」

 

男はニヤリと微笑み、素早くミニバンに乗り込むと、あっという間に校門から出て行った。

 

「ちょっとなんなの?あの腹立つ陰気臭い連中は!」

 

ビッチ先生が不満げに吐き捨てた。

 

「警視庁公安部外事第一課。これからもよく会うから覚えとけ」

「ふーん…、あいつらがいわゆるガイジってやつか」

 

 

☆☆ ☆☆ ☆☆

 

 

「すまんな、いつも来てくれて」

「気にすんな、どうせヒマだし」

 

「俺のせいでコンテストに出られなくなったな」

「おい、まだそんなこと言ってんのか」

 

あの事件からほぼ毎日、俺はヒロキの見舞いが日課になっている。

 

「それより千葉、お前に報告がある」

「なんだ」

 

「その…俺な、ミ、ミオと付き合うことになった」

「ま、マジかよッ!よかったなおい!!」

 

「ああ。俺な、正直言うとミオとダイスケが仲いいから、自分は身を引いたほうがいいかなって、そう思って他の女と付き合うことにしてたつもりなんだ」

「それが、誤解だったってわけか?」

 

「ああ、ダイスケに『ミオをいつまでほっとくつもりなんだ』って怒られて、それでやっと決心がついた」

「山科はそれでよかったのか?」

 

「あいつ、『俺は二次元しか愛さねえ』んだと」

「そ、そうか…」

 

山科って、竹林に似てんな…。

 

コンコン、ガラガラ。

 

「千葉、そろそろ帰ろ?」

「おう、行くか」

 

佐倉とどこかに行っていた速水が戻ってきた。この二人、最近やけに仲いいのはナゼなんだ…?

 

「じゃ、また来るからなヒロキ。早く良くなるよう、おとなしくしてろよ」

「おう」

 

廊下に出ると、佐倉が玄関まで送ってくれた。

 

「千葉くん、ほんとにいつもありがとうね」

「ヒロキから聞いたぜ。よかったな」

 

「えへへ…。まあいろいろあっだけど、それもこれも千葉くんのおかげかな」

「あいつが元気になったら、またバンドがんばろうぜ」

 

「うん!!」

 

気持ちのいい笑顔に見送られて、俺たちは駅に向かった。

 

「よかったね千葉」

「ああ、ほんと言うことないな」

 

こんな温かい気持ちになるのは久しぶりだ。俺は歩きながら知らないあいだに鼻歌を口ずさんでいた。

 

♪~♪~

 

「…あ、そうだ千葉。今度の会場のことだけど」

 

おおっ…!そうそう、いよいよ速水のチアガールデビューの日だな!うおおおおおおおおッッ!!

 

内心の大興奮を必死で抑えつつ、俺は冷静さを装って速水の取り出したプリントを見た。

 

「○○体育館か、わかった」

「振り付けはこんな感じだから」

 

速水がスマホで練習動画を見せてくれたのだが、も、もしかして、こ、これを踊るの、か…!?

 

ツ、ツツー…。

 

 

「…ち、千葉、鼻血出てる!!」

 

へ…!?は、鼻血…?う、うわああっっ!!!

 

「…だ、大丈夫?」

「ああ、止まった…」

 

ううう…カッコ悪、なんで俺は肝心なときにいつもこうなんだ!

 

「…千葉ってもしかして、いま流行りのクール○ジ男子を狙ってんの?」

 

「んなわけあるかあ!!」

 

 




スピンオフで烏間&イリーナW主役のスパイ小説を書いてみたいわたし…(書けないけど)。

藤堂は007のQのイメージで、名前はマンガ「エリ○88」に出てきた登場人物から採りました。といっても古すぎて誰もわかんないですよね。すいません。

次回から普通の学園物に戻ります!
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