もし千葉くんがエロゲの主人公だったら 作:miyakokat
久しぶりの投稿で本当に申し訳ありません。
ぜひともお楽しみくださいませ。
「腕はもう少しこういう感じで振ったほうがボールのスピードが出るよ」
「はい!」
「君はなかなか上手だな、筋がいい。がんばってね」
「…あ、ありがとうございます!」
いよいよテニス合宿、今日はその初日。
「あのOBさんたち、ほんとイケメンだよねー。カッコいいし親切だし。桃花もそう思わない?」
「え、あー…、そ、そうね」
「なあにー?桃花はカッコいい彼氏いるから興味ないか」
「え…?ま、まあ、その、ハハハ…」
夏休みに入ったとたん、大学から三人のOBが毎日指導に来るようになった。
一人は茶髪にアロハシャツのいかにもチャラい茂木さん、二人目は黒縁メガネの理系男子、難波さん。たしかにこの二人は見た目がとてもカッコいい。女の子の扱いに妙に慣れてるのが少し気になるけど。
それと五月の連休から度々来ているガタイのいい槍沢さん。時折ビデオカメラでわたしたちを撮っているのがなんとも不気味なんだよね…。
「おーい、みんな集まってくれ」
「「「「はーい!」」」」
山口部長の周りに全員が集合する。
「えー、それではこれからバスに乗り込みますけど、その前に今日のスケジュールを簡単に。まず○△□…」
部長の説明を聞いていると、背後から例のOB三人組が話している声が聞こえてきた。
「…おい、例のブツどうなった?」
「バッチリだ、たっぷり手に入れた」
「マジか!もしかしてそれ…」
「おう、六本木の例のバイヤー」
「すっげ!そりゃ上物だわ」
「「「ワハハハハ!」」」
ち、ちょっと!な、なに話してるの…!?!?
「ん?どうかしたの桃花」
「え…?い、いや…なんでもないよ!?」
「…?」
実は今回の合宿で気になるのはこの三人組だけじゃない。もう一つある。それは……
「えー、それではそろそろ荷物を持ってバスに移動しましょう」
「「「「はーい!」」」」
「いこ!桃花」
「う、うん」
「矢田さん、ちょっといいかしら」
き、きた…!!
わたしの目の前を遮るように立ちはだかったのは、金髪ツインテールのカオル先輩。とっても美人なんだけど、とにかく性格がキツい。
「明日の決勝戦、待ってるから。わざと負けて逃げるとか卑怯なことしないでよね」
「…え?」
「それじゃ、また」
「……」
「と、桃花、あなたカオル先輩に何かやらかしたの…!?」
「…そ、そんなわけないよ」
と言いながら、実は心当たりがある。
先月わたしは同じ部の先輩から「付き合って欲しい」と告白された。ねちっこい人で、しつこく食い下がられたけどきっぱりお断りしたところ、わたしにフられたって部内で言いふらしたらしい。
後から知ったんだけど、実はその人カオル先輩の片思いの相手だったのだ…。
そのあと特に先輩に変わった様子がなかったのでホッと安心してたけど…やっぱり根に持っていたんだ。
……こ、怖いいいいいい(ガクガクブルブル)。
カオル先輩は昨年の関東大会入賞の実力者。みんなの前でわたしを打ち負かして喜ぶつもりなのだろう…。
今のわたし、前門の虎(OB三人組)と、後門の狼(カオル先輩)に挟まれたうさぎさん状態だよね。
いやあああああああああああああああああああっっっ…!!!か、カルマくん助けてえええええええッッッ…!!!
と言いたいところだけど、彼も久しぶりにご両親がインドから戻ってくるらしく、それどころじゃない。
あー!!!神様、仏様、天国の殺せんせー!!!この際だれでもいいから、このわたしを助けてえええええッッッ…!!!
***
───鎌倉、海岸近くの民宿。
ガラッ…
「おーい来たぞー、ばあちゃん」
「おー大河、よく来たねえ」
「これ中学のときのクラスメート」
「おやおや、こりゃ若い子がいっぱい、まあ上がって上がって」
「「「「「おじゃましまーす!」」」」」
今日は二班のメンバー+倉橋さんの8人で、岡島の祖母の民宿に泊まりにやって来た。
「なあ千葉」
「なんだ三村」
「岡島のばあちゃんさ、『となりのト○ロ』に出てきたおばあさんに似てねえか…?」
「なら岡島はカンタか」
「いや…カンタはエロ坊主じゃない」
「なにブツブツ話してんだお前ら、ほらカギ」
岡島から手渡されて、その場でなんとなく部屋割りが決まった。
・俺と菅谷
・岡島と三村
・速水と不破さん
・中村と倉橋さん
「えー!?女子は1部屋がいいよー!」
中村が不平を鳴らす。
「6畳の部屋しかねえから我慢してくれ」
「ふぁーい」
「ごめんねえ、その代わりたっぷりご馳走するからね」
「お!あざーす、おばあちゃん最高!」
こら中村、初対面の相手にいきなり抱きつくな。
ギシギシ…ギシギシ…
しかし古い建物だな、階段を上がるだけで柱や梁が軋む音がする。
「気になるだろ千葉」
「おう、建ったのはかなり昔だな。昭和の始め頃か?」
「よくわかったな、ひいじいちゃんの代に建てたらしい」
二階に上がると、小さな中庭を囲んで部屋が並んでいる。黒光りした床板に窓の波打ちガラスが風情があってとてもいい。
襖を開けて部屋に入ると、窓から雄大な太平洋が見えた。
しばらく菅谷とそれを眺めて駄弁り、着替える前に階段を降りてトイレに行くと、台所で女子4人がおばあさんの手伝いをしていた。
「なあ速水、今晩のメニューは?」
「浜辺でバーベキューだって」
お!そりゃー楽しみだな。
「クーラーに飲み物入ってるから、先に持って行ってね?」
「おう、任せとけ」
ザバーン…ザバーン…
荷物を運んだ俺たちは民宿の裏手にある浜辺で、さっそく男女対抗のビーチバレーを始めた。
「ほーら、そっちそっち!」
「うお…!おしい残念」
「三村ー、ちゃんと取れよー」
「てか岡島だろ今の!?」
いい天気だし、風も気持ちいいし今日はほんと最高だ。
「えいっ!」
バシッ…!中村のアタックが決まった。
「くそ…!はええッ!」
「岡ちんしっかり~!」
「へへ、次は負けねえぞ」
仲いいな岡島と倉橋さん。意外と似合いのカップルかもしれん。
「三村くんも負けるなー!」
「おーう!」
三村も不破さんと行きの電車からずっと話してるし、いい雰囲気だよな。
…あ、そろそろ交代か。
「おい菅谷、次お前の番だぞ」
「すまん千葉、いま手が離せねえから代わり頼む」
「仕方ねえな…」
菅谷のやつ、こんな時でも中村のスケッチかよ!
まあでもその気持ちわからんでもない。速水のビキニ姿、めっちゃ最高だし。できることなら俺もずっと眺めていたいもんだ。
スタイル抜群、ビーチバレーに興じる姿がこれまたエロい!
あ…!し、しまった、ムスコが元気になっちまった。や、やべえ…!!
「ねー、せっかくだしそろそろ泳がない?」
「さんせー!」
ふー、危ない危ない。水泳パンツにテント張ってるとこみんなに見られたら最悪だ。
「じゃ、行こっか!」
「「「「「おー!」」」」」
みんなが水を掛け合ってはしゃいでいる様子を座って見ていると、心配した速水がそばまでやってきた。
「どうかしたの?千葉も行こ?」
「お、おう、行く」
とりあえず海に入るまでは無念無想、余計な邪念を持たずに向かう。ふー、何とかバレずにすんだ。
たっぷり泳いで、疲れたらパラソルで休むを繰り返しているうちに、みんなも緊張がほぐれたのか、期待通りいい感じにカップル同士の行動が始まった。
岡島は倉橋さんと近くのコンビニにアイスを買いに出掛けたし、菅谷は中村の背中に日焼け止めを塗っている。三村と不破さんは突堤に腰かけて来期のアニメ談義をしている。
俺も速水を誘って入り江の先まで探検に行くことにした。足元が滑って危ないところは手をつなぎ、何とか洞窟の入り口までたどり着く。
「すご…透き通ってて、海がきれい」
「ほんとだな」
押し寄せる波も今日は穏やかで、時折小さな魚が泳いでいるのが見えた。俺と速水は腰まで海に浸かり、二人で水平線を眺める。
「気持ちいいね」
「ああ、また今度二人で来ような」
「ふふ、私もいまそう思ってた」
「…好きだぜ凛香」
「ありがと。私もよ、龍之介」
辺りに誰もいないことを確かめてから、目をつむり二人でキスをした。
うーむ…そういえばここ最近、部活と期末テストでお互い忙しかったから、その…あれだ、エッチが大変ごぶさたなんだよな。
あー…ヤりたい!とにかくヤりたい!今すぐにでも凛香とヤりたいいいいいッ!!
でも今回は他のメンバーの手前、さすがにそういうシチュエーションにはならないのか。どうなんだ作者!?
う、ううう…今の俺、蛇の生殺し感ハンパねええええッッ…!!
***
ピーッ!!
「ゲームセット!矢田さんの勝ち」
「「「やったー!」」」
「桃花すごい!カッコいい!一年生の星!」
「えへへ、ありがとう」
「これで明日はいよいよ決勝だね!がんばってカオル先輩を破ってね!」
「えっ…!?あー…、う、うん…」
そ、そうだった、目の前の試合に夢中になっててすっかり忘れてた…。げ…、案の定カオル先輩がこっちを憎らしそうに睨んでいる。
「はーあ…」
「どうかしたの?あ、さすがに疲れたよね、いっぱい食べて元気だしてね!」
う、ごはんの話になると途端にお腹がすいてくる。
「今夜はカレーだってOBさんたちが言ってたよ」
「ふうん…?」
カレーか…なんか気になるなぁ。それに合宿場に着いてからあの三人見てないけど、どこにいたんだろ?
怪しい…実に怪しい。
宿舎に戻り、みんなで食堂に行くと、なぜか学年と男女でテーブルが分けられている。座ると同時に大盛のチキンカレーがドンと目の前に並べられた。
「さー、そろったかな?今夜は俺たちOBが腕を奮って作った特製カレーだから、たっぷり味わってくれ」
「「「「「「いっただきまーす!」」」」」」
あ、あの三人組、みんなが食べ始めたのを見てニヤニヤしている…。
ま、まさか、このカレーって……!
「どうかしたの桃花?」
「へ…?」
「食べないの?」
「…い、いや、食べる、食べるよ?」
「…?」
辺りを見回すと、同じ一年のみんながうれしそうに食べている。さすがにわたしだけ食べないのは怪しまれるよね…。
ええい!仕方ない…!
パクッ
…え、あ、お、美味しい。
ていうか、すごく美味しい。特にこのチキン、皮がパリパリで身がジューシーで…気がつくと夢中で一皿平らげてしまっていた。
あっ…!!なにやってんの、バカなのわたし!?!?
「桃花、お代わりいくよねもちろん」
「えっ…?う、うん…」
だ、大丈夫かな、このカレー、あとからおかしなことになるとかないよね…!?!?
「「「「「「ごちそうさまでしたー」」」」」」
みんなで立ち上がり、食堂を後にしようとしたその時だった。わたしは突然OB三人組のひとり、茶髪の茂木さんに声をかけられた。
「ねえ矢田さん、ちょっと残ってもらっていいかな?」
「え…?」
つ、ついに来た…!!
「桃花、わたしたち先に部屋に戻ってるね」
「あ、ちょ、ちょっと…!?」
そ、そんなあ!置いてかないで!わたしも帰りたいいいい!!!
「ぼくら三人、君に用があるんだ。大事なね…」
だ、だれか助けてえええええええッッ…!!!
***
ジュー…ジュー…
「おい岡島、この肉うまいな」
「おう、ばあちゃんが知り合いの肉屋でちゃんと選んでるからな」
「へー、やっぱ肉の選び方にコツとかあんのか」
「そりゃあるよ千葉ちゃん、部位によって値段も味も全然違うからね、用途に合わせてよく吟味しないと、良いお肉なんて買えないよ?」
むう…さすが生き物に詳しい倉橋さん、肉の味まで極めているとは玄人だな…
「そういえば千葉くん、凛香とさっきどこ行ってたの?」
「え…?ああ、その先にど、洞窟があってだな(ゲフンゲフン)」
「二人きりで洞窟?ニシシシ、何かあったな~?」
うぐぐ…黙れ中村。
「おーい、みんな知ってる?」
不破さんと速水が台所の片付けから戻ってきた。
「何がだ?」
「近くで納涼祭やってんだって!みんなで行こうよ」
「神社のとこだな、よーし行くか!」
「「「「「「さんせー!」」」」」」
さっそく浴衣に着替えた俺たちは、路地を歩いて神社に向かった。
「うわ!屋台がいっぱい!やったー!」
「あ!ちょっと待てって」
うれしそうに駆け出す中村を菅谷が追いかける。
「桃花ちゃんも来れたらよかったのになー」
「そうだな、ま、せっかくだし俺らも楽しもうぜ」
「うん!」
残念そうな倉橋さんの肩に岡島がポンと手を置いた。
「三村くん、あっち行ってみよ?」
「おう、じゃあ千葉、またあとで」
三村も不破さんと人混みの中に入っていく。
「行こうか、俺たちも」
「うん」
速水はりんご飴、俺は焼き鳥を買って食べる。
にぎやかな音楽に誘われて広場まで来ると、トラックの荷台の即席舞台でアマチュアバンドが演奏していた。
「そういえば来週だっけ、千葉も本番だよね」
「そうそう、駅前コンサートな。それと月末にいよいよバンドコンテスト」
「がんばってね、両方応援に行くから」
「おう」
「みんな元気?」
「もちろん」
ヒロキのケガで出遅れたものの、バンド練習は順調に進んでいる。もしかしたらコンテスト入賞も狙えるかもしれない。ほんと良いメンバーに恵まれたと思う。
ヒロキ自身はというと、佐倉との交際も順調のようだ。毎日LINEでノロケてくるのがウザいけど。
「あ!あれやろうよ、久しぶりに」
並んだ屋台に射的があるのを速水が見つけた。
「…いや、よしとこう」
「え、どうして?」
「また速水が負けるのを見るのはかわいそうだしな」
「む…抜かしたね、あんたが負けたらどうすんの?」
「そうだな、よし、じゃあ賭けようか。負けたほうが何でも言うことをきくのはどうだ?」
「…またそれか、どうせ変なお願いするんでしょ」
バレたか。だが俺はめげん!
「おやおや~、逃げるのかな?速水くんは」
「…ふ、ふざけないで!絶対に勝ってやる!」
よーし、引っかかった。俺はニヤニヤしながら射的の店番をしてるおっさんに二人分のお金を手渡した。
弾は10発か。卒業以来ほんと久しぶりにライフルを構えて的を狙う。
パン…!パン…!
「おー、惜しいなぁ兄ちゃんたち、うちのはムズいからな~、まあがんばれ」
おっさん、初弾は弾道を見るための試し撃ちだぜ?
「いくぞ速水」
「うん!」
パン!パン!パン!パン!
「う、うえッ…!?」
次々とおもちゃを落としていく俺たちに、おっさんの顔がみるみる真っ青になっていく。
「あ!しまった…」
速水が狙ったネコのぬいぐるみが、グラついただけで止まった。すかさず俺がサポートに回りポトンと落とす。
結果は俺が9個、速水が8個。久しぶりにしては上出来だ。
「く、くやしい…」
「へへっ、残念だったな速水」
「千葉のくせにほんと生意気」
「なんだそりゃ」
「…た、頼むからお前ら、もう来ないでくれ!」
おっさんに拝まれながら俺たちは意気揚々と次の屋台に向かった。
そのあとはたこ焼きを食べたり、わたあめを摘まんだりしながら神社の境内でおしゃべりをして、気がつくと夜の8時を過ぎていた。
「そろそろ戻ろうか」
「うん」
よっこいしょと立ち上がる速水に手を貸して、繋いだまま路地裏を歩く。
民宿に戻ると、玄関にたくさんのサンダルが並んで置いてあった。
「あ、みんな戻ってるね」
「俺たちが一番遅かったか、意外だな」
トントンと階段を上がり、互いに自分の部屋に向かう。
「じゃ千葉、おやすみ」
「おう、おやすみ」
く~…残念、速水ともっとイチャイチャしたかったな…。でも今回はさすがに仕方ねえか。
…あれ?
なんだこれ、俺の荷物が部屋の外に出してある。どういうことだ?
『おう千葉、戻ったかー』
襖の向こうから菅谷の声がする。
「おい、なんだこれは」
『すまん、いま取り込み中だから他の部屋に行ってくれ』
「はああっ…!?」
『ごめんね~千葉くん』
なーんだ中村か、しょうがねえなぁ菅谷のやつ。
で、俺はどこの部屋に行けばいいんだ?仕方なく廊下をウロウロしていると、同じく荷物を抱えた速水が出てきた。
「あ、千葉…」
「速水、お前ももしかして」
「不破に追い出された、三村が来てるみたい」
え…?ということは
・菅谷と中村
・不破さんと三村
のカップルがいま二人きりでいるわけだよな?
ってことは、もしかして岡島も?
『ごめんね凛香ちゃん、わたしと莉桜ちゃんの部屋が空いてるから、千葉ちゃんとそっちでごゆっくり~』
おおお…!?と、ということは…!!!
「……」
「……」
「な、なあ、速水」
「なに…?」
「俺たちさ、せっかく二人きりになれたのに、なんでこんなに距離が離れてるんだ?」
6畳しかない狭い部屋なのに、俺と速水の布団はギリギリまで離してひいてある。
「だって…あんた絶対に変なことしてくるでしょ?」
「おーい、俺たちたしか恋人同士だよな?」
「だーめ、もしみんなにバレたらどうすんの!?」
ちぇ~…残念。ま、まあ、冷静に考えれば、さすがにそれはマズいかもな。
しょんぼりしながら速水に淹れてもらったお茶を一口飲んだその時だった。
ガタガタッ!ガタガタガタガタッ…!!
「あ…!」
「じ、地震…!?」
建物がブルブルと震える強い揺れが突然俺たちを襲った。
ガタガタガタガタッ…!ガタガタッ!
シーン…
時間にして1分くらいか、結構長かった。
「…揺れたな、震度3か4かな」
「うん…」
「こんなヤワな建物だし、次が来たら心配だな」
「そうだね、とりあえずテレビ見てみよ?」
俺はちゃぶ台のリモコンを取り、ボタンを押した。
「…あれ、何も出てないな」
「んー、スマホにも来てない」
どういうことだ?この辺り結構揺れたはずなのに、どこにも情報が出てないって、そんなことあるか?
…ガタガタガタガタッ!ガタガタッ!
ま、また来た…!!
ガタガタッ…!ガタガタッ!
こ、今度は揺れ方が違う。しかもさっきとは別の角度から揺れている。
シーン…
あ、あれ…?な、なんだか不規則で不自然な揺れ方だな。しばらくすると収まるけど、なんかおかしくねえか?
「ね、ねえ千葉、いまの揺れって…」
「ああ、なんかおかしい。それにどうやらこの建物だけだな、揺れてるの」
「も、もしかして…」
「そのようだな」
速水は両手で赤い顔を覆った。
そう、これは地震なんかではない。あいつらバカップルのイチャつき音にちがいない。
てことは…
「なあ速水、これなら俺たちも遠慮なんかしなくていいんじゃね?」
「ば、ばか…!」
《続く》