もし千葉くんがエロゲの主人公だったら 作:miyakokat
「フンフン、フフ~ン♪」
『ご機嫌ですね!千葉くん!』
「うわっ!?びっくりしたぁッ…!!」
長かった夏休みも残り数日、自室で浮かれていると、突然俺のスマホに律の顔が大写しになった。
『えへへー、元気ですか?』
「こら!そういう登場の仕方はやめろ!心臓に悪いわ!」
『すいません、久しぶりなんでついうれしくなっちゃって』
「そういや最近見なかったけど、何してたんだ?」
『やだなー千葉くん、わたしに会えなくて淋しかったって、正直に言ってくださいよー』
「うー淋しかった(棒読み)、これでいいか?」
『…コホン、実はマスターから大掛かりなシステム開発を頼まれちゃって、ここひと月それにかかりっきりだったんですよ、やっとそれが落ち着きまして』
「ふーん」
『ほんとに大変だったんですよ?すんごく難工事で』
そう話す律の服がヘルメットと作業着に変わり、おまけにツルハシまで担いでいる。
「なんだか知らないけど、ま、済んでよかったな」
『はい!おかげさまでまた皆さんと遊べます!』
クルリと回転すると、律はかわいい私服に戻った。
『ところで千葉くん』
「なんだ」
『わたしが趣味で作ったゲームがあるんですけど、やってみませんか?』
「へ?ゲーム?」
『これです、これ』
彼女が指差す先に見慣れぬアイコン。ポチると明るいBGMとともにポップな画面が表れた。
「なんだこれ、恋愛ゲームか?」
『せいかーい』
「俺これから用があるんだけど」
『わかってますって、速水さんとデートでしょ?さわりだけでもいいから遊んでみてくださいよ』
しょうがねえなぁ。仕方なくSTARTボタンを押すと、さっそくゲームの紹介が始まった。
『俺の名前は千葉龍之介、○○高校に通うごく普通の男子生徒だ』
「おい、なんだこれは」
『えへへ、主人公は千葉くん自身です。すごいでしょ』
は…?恋愛ゲームの主人公がこの俺?
なんだか照れるなぁ。
『年頃の俺には気になる子がいる。それは隣のクラスの女の子だ。毎日駅で会うんだけど、告白どころかおしゃべりすらしたことがない』
「ほうほう」
『ね、おもしろそうでしょ?』
『今日も彼女はホームに立っている。とても美人でおしとやかで、ごく平凡な俺にとってはまさに高嶺の花。はあ~…神崎さん、今日もかわいいなぁ』
「おい、なんだこれは!」
『うーん、さすが神崎さん。かわいいですねえ』
「そういう問題じゃなくて!こんなのプレーしてるのバレたら俺、速水と杉野にブッ○されるわ!」
『あ、それなら大丈夫です。ちゃんと速水さんルートもありますから』
「へ…!?」
『主人公の幼なじみという設定です』
「は、はあ…」
『そんな片思いの俺に、良いおまじないがあるらしい。それは好きな相手の写真をスマホのロック画面に設定し、三週間だれにもバレなければ恋愛が成就するというのだ』
ん…?
『さっそく彼女を盗み撮りした俺は、素早く画面設定をして学校に向かった。教室に入り、自分の席でもう一度それを眺めていると、隣の席の速水凛香が俺に話しかけてきた』
あっ…!
『ねえ、なに見てるの?あれ?この写真って、もしかして…』
「ちょっと待ったあああああッッ…!!!」
『なんですか突然大きな声だして、びっくりするじゃないですかもう…』
「やめだやめだ、こんなヤバいゲーム!」
『え?どうしてですか?』
「…これ、最後に俺が包丁でメッタ刺しにされて終わるやつだろ」
『(ギ、ギクッ)えー?そ、そういうルートもあったかな…?ちょ、ちょっと何言ってるかわからないです』
「完全に○クー○デ○ズのパクリじゃねーか!」
『(チッ…バレたか)意外と鋭いですね、千葉くん』
「鋭いですね、じゃねーし!」
あっ!そんなことよりもうこんな時間!
『ちょっと千葉くん!』
「すまん、またあとで!」
俺はあわててスマホをポケットにねじ込むと、急いでデートの待ち合わせ場所へと向かった。
***
「やめてください!はなして!」
「へへっ、いいじゃねーか」
「かたいこと言わねーで、俺たちと楽しく遊ぼうよ」
ショッピングモールに買い物に来ていたわたしは、突然チャラい二人組に囲まれた。
「おい、なにやってんだお前ら」
突然後ろからドスの効いた声をかけられて振り向くと、なんと隣のクラスの超イケメン、千葉龍之介くんが立っていた。
「ああ?なんだてめえ」
「彼女嫌がってんだろ、その手を離せ」
「なにぃ、ふざけんなお前!痛い目に遭いてえのか!?」
「おい、ボコボコにしてやろうぜ」
テンプレ通りの反応に千葉くんはまるで動じる気配もなく、前髪を指でかきあげると、切れ長の赤い瞳を見せつけた。
「痛い目に遭うのはお前たちのほうだ」
きゃあああッ!!カッコいいッ…!!!
「う、うるせえ…!やっちまえ!」
千葉くんの鋭い視線に怯んだ二人組は、殴りかかろうとして逆に腕を捻られ、床に押さえつけられてしまった。
「なんだ、ずいぶんあっけないな」
「…ち、ちくしょう!」
「覚えてろ!この前髪野郎!」
ちょっとなにこのベタすぎる展開、でも千葉くんめちゃくちゃカッコいい…!!
「大丈夫?ケガはしてないか?」
「は、はい!ありがとう…」
うれしくてわたしは千葉くんの両手をギュッと握りしめ、何度も何度も感謝していると、騒ぎで集まった群衆のひとりからただならぬ殺気が飛んできた。
「いつまで手を握ってんの!さ、行くよ!」
「痛てててててっっ!頬っぺたつねるなって!」
ふーん…あれが噂の彼女か。
たしかにすごい美人。でもこのわたしだって負けてないと思う。
同じ学校だしチャンスはいっぱいある。あとはいかに彼のハートをゲットしてこっちを振り向かせるかだけ。
む!なんだか闘志が湧いてきたぞ。
よーし!新学期からがんばろっと!
***
───翌週。
「おはよ千葉」
「おう、おはよう」
一昨日が始業式、昨日から通常の授業が始まった。
ピッ、ピッ
改札を抜けてエスカレーターに乗る。
このまま反対向きの電車に乗って速水とどっか行きてーなって思う、そんな日々がまた始まったわけだ。
「はーあ…」
「どうかしたの?」
「幸せすぎた夏休みの反動でめっちゃつらい」
「わかる…」
「なあ、今日の帰りはいつもの時間でいいのか?」
「部活の終わる時間がよくわかんないから、また連絡するね」
「おう」
ところでだけど、速水の夏服がめちゃくちゃかわいい。涼しそうな薄手の生地、スカートの丈が短くて太ももがバッチリ見える。
ふぅ…
考えてみれば毎日これを見られる俺って幸せだよな。できればこの格好でエッ○ができたらもっと最高なんだけど。
あー、なんだか元気が出てきた。この制服を採用してくれたエロい人、どうもありがとう(親指グッ)!
でも考えたら速水と同じクラスの男共は、俺よりもっと長い時間これを見てるわけだ、ぐぬぬ…ゆ、許せん。
そんなバカなことを考えていると、あっという間に俺の降りる川立駅についた。
「じゃ、また放課後な」
「うん、元気だしてね」
いや、もうお前にめっちゃ元気をもらったよ。そう思いつつ俺は歩いてすぐの学校へと向かう。
「よー千葉」
「おう」
こいつも久々の登場、同じクラスでバンド仲間の橘ヒロキだ。
「なにニヤニヤしてんだお前」
「え?なんでわかった」
「俺様の観察力をなめんな、どうせさっきまで速水ちゃんとイチャイチャしてたんだろ」
「うるせー、てめえと一緒にすんな」
「あ!おはよう千葉くん」
ヒロキと下駄箱の前に立っていると、なじみのない女子から突然声をかけられた。
「この前はどうもありがとう」
「え?」
「怖くてドキドキしてたから、助けてもらってほんとにうれしかったよ」
あー思いだした、ショッピングモールで絡まれてた子か。
「せっかくだから、あとでお礼させてね」
…え?いやいや、そんなのいいって。そう言いかけたときにはもう、あっちに行ってしまった後だった。
「おい千葉、いつの間にあいつと仲良くなったんだ?」
「今のだれだっけ」
「は?知らねーで話してたのか?」
「ああ」
「隣のクラスの
「ふーん」
「ふーん、じゃねーだろ。勉強はトップクラスで一年にしてバレー部のエース、おまけに校内でも指折りの美人で巨乳ときたもんだ。完璧だろ?」
ほーう、それは知らなかった。
***
───昼休み。
キーンコーン、カーンコーン
「はーあ…」
「どうかしたの?サトミ」
「千葉くんのこと考えてたら、それだけで午前中が済んじゃった」
「ハハ…重症だね」
「彼、いつも屋上でお昼食べてるらしいから、ちょっと突撃してくる」
「お、さっそく行動開始?がんばれ~」
ガラガラ、パタン。
「あの子、本気だね」
「いやー、さすがに難しいんじゃない?今まで何人この学校の女子が討ち死にしたことか」
「でもサトミだし、いい線いくかもよ?」
「あー、まあたしかにね」
───ガチャ。
お…いたいた、千葉くん。
あれ、また橘くんといっしょか。
なんなのあの二人、めちゃくちゃ仲良いんだけど、もしかしてBL!?
「でよ千葉、お前の好きなバンドのなんだっけ、電撃ラーメンダメ親父?」
「ちがーう、電撃ラリアートエクストラダメージ。アングラの聖地椚ヶ丘のライブシーンを代表するトップバンドだ。それがどうかしたか」
「そう、その何とかラリアットのボーカルがな、ミオと商店街のスーパーに行ったら、レジ打ってたんだよ」
「え…!?ま、マジか、あの闇将軍メンデス閣下がか!?」
「そう、それそれ。地獄の業火でこの世を焼き尽くせとか、女共を全員○せとか、威勢のいいことをわめいてるあいつだよ。それが店長に叱られてペコペコ謝ってやんの。なんなんあれ、カッコ悪すぎだろ」
「う、ぐぐ…、聞きたくなかったそんな話」
か、会話がマニアックすぎて中に入れない。ええい、そんなの気にしない!
「ね、ねえ、わたしもいっしょにお昼食べていい?」
「お、茜川か、いいぜ」
「おう」
わたしは千葉くんの真向かいに腰を下ろし、わざと胸の谷間が見えるように屈んだ。
「なあ茜川、夏休みどうだった?」
「ん?部活三昧、二人は?」
「おんなじだよ、俺も千葉も毎日バンド練習。あ、千葉はたしかバイトしてたよな」
「おう、知り合いのカフェでな」
次はスカートの中を意識させようと、わざと目の前で足を組み直す。うーん、前髪で隠れて千葉くんの視線がよくわからない…。
「あ、でもすぐ辞めたよなお前」
「ああ、二週間の予定が三日でな」
「なんでだ?」
「どこで聞いたか知らんが、うちの学校の女子が大挙してやって来て、キャーキャー騒いで常連客とトラブル起こした」
「あー…駅前コンサートにも来てたあいつらか」
「そう、おかげで欲しかったエレキベースが買えなかった。楽しみにしてたのに…」
「お前も大変だな…」
「おう…」
「…ね、ねえ、旅行とかどこか行ったの?」
「俺は長野に里帰りしたくらいかな。千葉はたしか中学のツレと海に行ったんだよな」
「おう、鎌倉の民宿に泊まった」
「そのときの写真とかあるの?見せてよ」
「わかった」
わたしは千葉くんの右隣に移動して、スマホをいじる彼の腕にさりげなく胸をグッと押し当てた。
「これがその民宿。友達のばあちゃんがやってる」
「へーどれどれ?よく見えない」
太ももをしっかりと彼の足にくっつけて画面をのぞきこむ。ふふふ、これでどうだ。
「いっしょに行ったツレって、どんな連中だ?」
「これ、元々クラスで同じ班のメンバーでな」
写真を見ながら彼の引き締まった背中に手を回す。
うーん…ここまでアピールしているのに、リアクションがなさすぎて彼の気持ちがまったくわからない。
ピロン♪
千葉くんのスマホにLINEがきた。
「あ、中村からだ」
「お、例の派手なねえちゃんか」
「グッドタイミング、アルバムを送ってくれたわ」
続いてメッセージに『遅れてごめーん、いい写真いっぱいあるよ~お楽しみに!♥️♥️♥️』と書いてあるのが見えた。
「うおっ、こ、これは!」
「おー大胆だな、速水ちゃん」
写真を漁る彼の指が、砂浜でビーチバレーをしている彼女の写真で止まった。それからなぜか黙ったまま微動だにしない。
「…お、おい、茜川」
顔をあげると橘くんがわたしに「こっちにこい」と手招きした。
「なによ」
「いいからこっちにこい」
「なんなの?」
スマホをガン見している千葉くんから少し離れた位置で橘くんがわたしに耳打ちをした。
「千葉が気になるのはよくわかるけどな、悪いことは言わん、あきらめろ」
「…は?なんでそんなことあんたに」
わたしはムッとして橘くんをにらんだ。
「すまん、言い方がよくなかった。お前はすげえ美人だ。それは認める。けどな、あいつは絶対に攻略できない」
「どうしてよ」
「今の彼女以外、奴はだれも眼中にないんだ」
「そんなのわかんないでしょ?」
「仕方ない、俺が口で説明するより自分で見たらわかるだろ」
え…?なに言ってんの?
ちょっ…ちょっと、あ、あれなに!?
ま、まさか、あれ…!?!?
ガラガラガラ…、パタン。
「おかえりーサトミ」
「どうだった?千葉くん」
フラフラ…、ドサッ
「ど、どうしたのサトミ!?」
「大丈夫!?顔がすごく赤いけど」
「ち、千葉く、ん、すごい…」
「なになに?なにがすごいの?」
「アソコが…アソコが…」
「なんなん?はっきり言ってよ」
「あ、アソコが…、アソコがクソデカいの…そ、それも、見たことないぐらいモッ○リしてて…」
一瞬の沈黙。
「「キャー!ちょっ、ちょっとマジで!?」」
「あんたなんでそれを見れたの!?!?」
「詳しく教えなさいよっ!!!」
『千葉龍之介はああ見えて実はとても巨根である』
その情報は瞬く間に女子生徒全員に知れ渡り、新たな伝説となった。
「はあー…目隠れイケメンで彼女一途で、しかもアソコがデカいとか、妄想はかどるはかどるぅ!!」
「ああー!龍之介さまぁ!お願いだからわたしを抱いてええええっっ…!!!」
───翌日の夕方、自宅玄関。
ガチャ…
「ファッ!?な、なんだこのエレキベースの山は!?!?」
「あ、お兄ちゃん!こっちこそ聞きたいんだけど!」
「龍之介、あんた何か余計なこと学校で言ったでしょ!女の子が次々やってきてこれ置いて行ったんだけど!」
はああッ…!?
い、いったい何台あるんだこれ…。
ぐぐぐ…こ、困った、どうすりゃいいんだああッ!!
いつもお読みいただきありがとうございます。
挿し絵に使っているアプリ「カスタムキャスト」が4/1に公開したシューティングゲーム、わたしも遊んでみました。
自分が作ったキャラがゲームの主人公になってとっても楽しいです。さっそく速水さん(おっ○い増量中)にライフル持たせてバンバン撃ちまくりました。
【挿絵表示】
下手くそなのであんまり得点できませんでしたが、自分の好きなキャラが動いて敵と戦うってほんと最高。
エイプリルフールの特典じゃなくてずっと常設してくれたらいいのにね~。