もし千葉くんがエロゲの主人公だったら 作:miyakokat
キーンコーン、カーンコーン…
昼休み、ガヤガヤと騒がしい教室で俺はいつものように親友の橘ヒロキとその彼女、佐倉ミオと三人でダベっていた。
「へえ、そんなことがあったんだ」
「ああ、なんか気味悪いよな」
「ん…?なんの話だ」
「なんだ千葉も知らないのか、隣のクラスの
「え…、どういうことだそれ」
原増カイトは椚ヶ丘でいっしょだった男だ。とはいってもクラスが違ってたしほとんど話したことはなく、この高校で見かけたときも「あ、同じ学校だったのか」という程度の印象しかない男だが。
「先週の水曜日に学校を出てから家に戻ってないらしくて、親から捜索願が出されてるって話だ」
「そうか、そりゃ心配だな」
「なんでも隣のクラスの話だと、駅で慌てたように駆け込み乗車するとこを見た奴がいるらしいんだが、その後の足取りが警察もつかめないらしくてな」
「ふーん…」
ある日突然、隣のクラスの生徒が失踪か…たしかに気味が悪いな。
「なあ雨宮、お前さ、原増カイトと親しいのか?」
ヒロキがそばにいた図書委員の雨宮あおいに声をかけた。
「えっ…!?」
「な、なんだよ、そんな驚いて」
「な、なんでもない、わたし、原増くんとは親しく、ない…」
「ふーん、そうか、びっくりさせてすまんな」
なんだこの反応、雨宮さんはもしかしてなにか隠してるのか…?
ヒロキも少し怪訝な顔をしたが、それ以上は何も触れなかった。
✻ ✻ ✻
ガヤガヤ…ガヤガヤ…
快晴の土曜日の朝。
『9時30分からプログラムを始めます。実行委員の皆さんは生徒会室に集まってください』
立ち並ぶど派手な看板に元気のよいアナウンス、今日は矢田さんの通う翠山学院大学附属高校の文化祭。
彼女の「屋台もすごいし出し物も面白いからぜったい来てね!」の言葉通り、まだ朝なのにもうこの人だかりと盛り上がりぶり。
もちろん俺は速水とふたりで参加。他校なので制服なのが堅苦しいがまあ仕方ない。天気もいいし、久しぶりにみんなにも会える。今日は楽しく過ごせそうだ。
「あっ!凛香に千葉くん」
「おう」
さっそく廊下でカルマと立ち話をしている矢田さんに遭遇。
「よ、千葉。速水さんも久しぶり」
「相変わらず仲いいわね。ふたりとも」
「それはお互いさま、でしょ」
「それもそうね、うふふ」
「お、おい…あれ見たか」
「お、おう…あれが例の赤羽カルマ、だな…」
「本当にいたのか、存在自体が都市伝説かと思ってた…」
「ううう…矢田さんと付き合ってるってウワサは本当だったんだ…」
なんだか周囲がザワついているが、このふたりはまるで気にしてない様子。というか全然視界に入ってないようだ。
四人でしばらく立ち話をしていると、ふいに背中をポンと叩かれた。
「よ、千葉」
「お、菅谷か」
「いえーい、凛香。元気してた?」
「あれ莉桜、髪切った?」
菅谷&中村コンビに続き、磯貝と片岡もやってきた。
「久しぶりだなみんな」
「元気そうね」
「きゃー!来てくれてありがとうメグ」
さっそく矢田さんが片岡の腕にしがみついた。
「他にも誰か来てるか?」
「陽菜乃がさっそく屋台に岡島くんを引っ張って行ったよ」
「そういえば三村と不破さんも見かけたな」
お、もう二班集合か。あいつらマジで行動が速いな。
『生徒の皆さん、各クラスの出し物の準備に入ってください』
「あ、もうこんな時間」
「大変そうだな矢田さん」
「そうなの、わたしクラスのメイド喫茶と演劇部の手伝いと屋台の綿菓子作りを掛け持ちしてて、おまけに今日は午後からわたしの出るショートムービーの上映会あるから、凛香とふたりで絶対観てね!」
「お、おう…」
まるで売れっ子アイドル、さすがは矢田さん。それを見てるカルマもうれしそうだ。
「さて俺たちも楽しむとするか」
「うん!」
速水とふたりでまず向かったのは、各部活の紹介ポスターが展示してある体育館。速水はここのチア部のことが気になるようで熱心に紹介文を読んでいる。
それから中庭に向かうと、知らない女の子にナンパをして岡野さんに豪快なケリを入れられてる前原を見かけた。
「…あいかわらずだなあいつ」
「かわいいね岡野、少し背が伸びたかな」
「そうかもな」
キックのときにパンツ見えてたけど、それは触れずにおいておこう。
「あ!図書室」
速水が早足になった。
「どうかしたのか?」
「ここの学校の図書室、蔵書がすごいって聞いてたから」
へー、そうなのか。お、たしかにデカい。俺の学校の図書室の倍はあるな。中に入ると古い本の放つ特有の匂いがした。
「さすがはミッションスクール、宗教とか人文学が多いわね」
さっそく棚から気になる本を見つけてはペラペラとめくる速水。すごくうれしそうだ。
「こういうのってなかなか普通の本屋さんとか図書館には置いてなくて」
「へえ、それは貴重だな」
「この本みて」
「ん?」
「最近よくふたりで出歩くでしょ?そのとき役に立つかなって」
速水が見せたのは、都内の有名な建物とそれにまつわる歴史の本。
「千葉がいろんな建築を教えてくれるから、私が歴史を知ってると二倍楽しいでしょ?」
「あー、だから最近詳しいのか」
俺たちは学生、自由に使えるお金は少ない。デートはもっぱら町歩きが多いのだけど、速水は物知りだからふたりで話しながら巡ると見聞が広がってすごく楽しい。
「抜け道とか言って突然知らない建物に入るからびっくりしちゃうけどね」
「へへ、すまん」
俺の悪い癖なんだが、ホテルとかホールなどのどでかい公共建築があると、つい中を見たくてどんどん入りこんでしまう。速水も最初は戸惑ってたけど、最近はお客さんとか関係者みたいな顔をするのが上手くなってきた。いい感じに俺に洗脳されてきたというわけだ。でもこうやって少しでも俺の趣味に合わそうと努力してくれる彼女がとても愛おしい。
楽しそうに本を選んでいる彼女を見ているうちに、俺は大事なことを思い出した。
「しばらくここで楽しんでくれててもいいぞ」
「え、いいの?」
「ああ、俺は前原や岡島と30分ほど話してくる。その代わりこれを持っててくれ」
手渡したのは俺がE組を卒業するときに記念でもらったグロック17、対殺せんせー用の銃だ。実戦ではほとんど使わなかったけど、形が好きでずっと手許で大事に手入れしてきたものだ。
「え、これ…」
「実は昨日烏間先生から電話があってな、詳しくはまだ話せないらしいんだけど、近く身の危険が及ぶようなことが起きるかもしれないから、なるべく銃を持っといてくれって」
先生のあの雰囲気だと、かなりの高確率で何かありそうだ。
「千葉が持ってなくていいの?」
「ああ、それより速水ひとりのときが心配だし、いざというときの速射なら俺より上手だからな」
「う、うん…わかった」
彼女は少し心配そうな顔をしたけど、素直にブレザーの内ポケットにしまってくれた。まさかそのときはそんな思いつきにあとで助けられることになるだなんて、思いもしなかった。
✻ ✻ ✻
「ねえ、赤羽くん」
メイド喫茶を終えてバタバタと演劇の着替えに向かう桃花を見送った俺は、しばらく時間稼ぎで他のクラスをのぞき、そろそろ劇が始まる頃かなと廊下に出ると、突然速水さんに声をかけられた。
「なに、速水さん」
「矢田さんが空き校舎から机を運ぶの手伝ってくれないかって」
「わかった、手伝うよ」
赤羽「くん」?それに矢田「さん」?
いつもの口調と違う…それに速水さんなんだか目が不自然に赤い。あきらかにおかしいと踏んだ俺は、それでも何食わぬ顔で彼女の後をついていくことにした。
「空き校舎ってどっち?」
「こっちよ、ついてきて」
どう見ても本人にしか見えないんだが、これ本当に偽物なんだろうか?変装にしてはずいぶん出来が良すぎる。どうなってるんだ…?
こうしてほいほいついていく俺の身にいったい何が起こるのだろう。それでも、気分は警戒心というよりもむしろ好奇心が勝っているけどね。
敷地の外れまで歩くと、うっそうとした林のなかに使われてない校舎があらわれた。管理はそれなりに行き届いているようで建物はきれいだが、誰もいないので雰囲気は暗い。
ガラガラ…
中に入り、校舎の端にある物置までやってきた。扉を開ける速水さんの後姿を見ながら、俺はあたりをじっと警戒していた。
物置の中に入ると、ふいに彼女が俺を振り返った。
「ここよ、友達がお待ちかねしてるわ」
な、なに…!?
そこにいたのは上半身裸でぐったりと椅子に腰かけていた千葉だった。
「あら、やっと来たのね赤羽くん」
部屋の奥から現れたのは、乗馬用ムチを手に持ったきわどい黒ボンデージ姿の30歳くらいの女だった。
「あなたがなかなか来ないから、この子を代わりにいたぶっていたのよ?ふふふ…」
「はあ…はあ…はあ…き、来ちゃだめだ、カ、カルマ…」
何度打たれたのだろう、千葉の胸にはところどころに赤いミミズ腫れができていた。
「ふふ、ようこそ赤羽くん」
「なっ…!?」
背後から声をかけてきたのはなんと桃花だった。そしてその手には小型スプレーが…
シュッ…!
「……ど、どうして(ガクッ)」
崩れるように両膝をついた俺を桃花と速水さんが抱え、千葉の隣に座らせると二人がかりで上半身の衣服を脱がした。
「若いのにいいカラダしてるわね、ゾクゾクしちゃう」
女は舌なめずりしながら鞭を振り上げた。
ピシッ…!ビシッ…!ビシッ…!
激しい鞭打ちを何度も浴び、意識を失いかけたその瞬間、女は傍らのソファーにどさりと腰かけた。
「さあ、お次はあなたのお楽しみタイムよ。フフフ…」
………
……
…
「ねえ凛香、カルマくん知らない?」
せっかく劇に出演したというのに気づけばカルマが会場におらず、電話にも出ないことに疑問を感じた桃花は、階段でたまたま出会った友人に声をかけた。
「知らない、あんたこそ千葉がどこにいるか知ってる?」
聞けば凛香も約束の時間に千葉が戻ってこなくて連絡も取れないという。
「なんかあやしい、ね…」
「やっぱりそう思う?」
凛香の表情がこわばった。
「烏間先生から連絡があったことって聞いてる?」
「聞いてるわ、千葉から」
「わたし、家からこれ持ってきたの」
桃花は懐からゴムナイフを取り出して凛香に見せた。
「あれ、ふたりともどうかしたの?」
「あ、三村」
「ねえ三村くん、カルマくんと千葉くんどこ行ったか知らない?」
こういうときに観察力のある三村は頼りになる存在だ。
「へ…?カルマなら速水さんといっしょに校舎の外をさっき歩いてたじゃないか、それに千葉も矢田さんと。何を言ってんの?」
「「うえええっ…!?!?な、なにそれ!?」」
✻ ✻ ✻
「うッ…あぁ…」
「や、やめるんだ…ふたりとも」
それは絶望的な状況だった。クスリで身体の動きを封じられた俺と千葉は、別々の彼女から口で奉仕を受けていた。
「ち、千葉、許さんぞ…あとでぜったいぶっ殺してやるからおぼえてろ」
「それはこっちのセリフだカルマ…うッ!」
にせ桃花に舌で亀頭を舐められて千葉がのけぞった。見てると腹が立って仕方がないが、俺自身もにせ速水さんに口でしごかれて、あまりの気持ちよさに頭がクラクラしている最中だったりする…
「どうかしらあなたたち、友達の彼女から逆寝取られされてる気分は。オホホホホッ…!」
くそっ!自分に腹が立って仕方がなくて、この女に嘲笑されてもまるで耳に入ってこない。
「こんなことされたって、少しも気持ちよくなんかないからな」
千葉が不遜に言い放つがいかにも言い訳くさい。絶対ウソだ、メロメロの表情でさっきから首を上げ下げしている。
「そう、じゃあ二人とも。この強情な男の子たちにもっと激しくしてあげなさい」
女の命令で突然ふたりの奉仕スビードが速くなった。
ジュポッ…ジュポッ、ペロッペロッ…
「く、くうっ…!」
「うあ、あ…!や、やばいッ…も、もうダメだ!」
ビクンビクンビクンッ…!
ドピュッ…ドクドクッ、ビュルビュル…ビュプ…
俺と千葉がそれぞれ別の彼女の口のなかで果てたのは、ほぼ同時だった。
「はあ…はあ…、す、すまん…カルマ」
千葉が情けない顔をして俺に謝ったが、人のことを言えない俺は奉仕を終えたニセモノの速水さんを見下ろしつつ、そのまま黙っているしかなかった。
「アハハ!最高ね、その表情。お次は本番よ、お友達の彼女を寝取る気分はどう?」
「や、やめろ…もうやめてくれ!」
千葉が女に懇願した。
「ふふふ、ウソをおっしゃい。ずいぶんと立派にここをおっ立ててるくせに」
女は千葉の下半身をギュッと握りしめ、千葉がウッと悲しそうなうめき声をあげた。
「ふふ、なにを迷ってるの?所詮この子たちはニセモノでしょ、いくら楽しんでもバチは当たらないわ」
「お前…柳沢の部下か?」
俺は憎しみの目で女をにらみ、つぶやいた。
「おや、勘のいいガキね。そうよ、この子たちもあんたたちのかつての担任と同じ技術からできたものなの」
「し、触手か…」
千葉も顔を上げた。
「そう、人工骨格を触手マテリアルで覆った生体アンドロイド…最高でしょ?」
そうか、そういうことだったのか…
「さあ、四人で楽しく続きをしなさい。気持ち良すぎてみっともないほど大きな声を出してあえぐがいい、アーッハッハッハッ!」
そのときだった。
ガタンッ…ガラガラ…
空き校舎のどこかで扉が開く音がした。その途端女はキッと険しい表情をし、チッと舌打ちをするとニセモノふたりに侵入者を排除するよう命令した。
✻ ✻ ✻
「もしかしてここ、かな…?」
「しっ…見て、だれかの新しい足跡がある」
三村くんの不可思議な目撃情報をヒントに、普段は使われていない空き校舎に凛香とわたしはたどり着いた。他の元E組メンバーにも連絡をしてあちこち探してもらっているけど、どうやらここが本命のようだ。
わたしは残りのメンバーにLI〇Eで集合を呼びかけると、凛香とふたりで忍び足で校舎内を探索した。
ガラガラ…
使われてない教室はそれなりに掃除がなされていて、埃っぽいことはないがやはり寂しいものだ。こういうときにも先を歩く凛香の度胸のよさがうらやましいというか、頼りがいがあるというか。
「(小声で)ここも異常はないわね、次行きましょ」
うん、とうなづき廊下に出ようとしたそのときだった。教室のうしろの扉から突然ダダダッと下着姿の「凛香」が飛び込んできた。
「うええええっ…!?」
いったいなにが起こったのか、その光景に頭が処理しきれない。なんと目の前にふたりの凛香がいる。
「矢田ッ…!よけて!」
凛香の叫びで我に返ったわたしは、殴りかかってきたニセ凛香(?)の拳をなんとかかわすことができた。
急いで体勢を整え、次のパンチを二の腕で受け止めると、今度はわたしの偽物が前の扉から飛び込んできて、本物の凛香(ええい!ややこしい)に襲い掛かった。
わたしはニセ凛香の攻撃で手一杯だったけど、凛香もそれは同じのようだ。必死で防戦しながら相手のスキを狙っている。
「んッ…!はぁッ…!えいッ!」
「はッ…!やあッ!んんッ…!」
時折相手に殴られたり蹴られたりしながらもなんとかニセモノと戦っていると、本物の凛香のハイキックが見事わたしの偽物の右側頭部を捉えた。
バキッ…!
「きゃああああッッ…!」
「ち、ちょっと凛香ぁ!わたしの偽物になにか恨みでもあるわけ!?」
「はああっ…?いまそんなこと言ってる場合!?」
「じゃあこっちも遠慮なく!」
お返しとばかりにわたしもニセ凛香の腹にパンチをお見舞いした。
ドスッ…!
「げふッ…」
内臓を押し上げる感触がグニャッとして芯がなく、やけに柔らかい。まるで殺せんせーの身体のようだ。
凛香と目が合う。互いにこれはおかしいと感じ始めた矢先、廊下の向こうからカルマくんと千葉くんの叫ぶ声が聞こえてきた。
「桃花ッ!そいつらは殺せんせーと同じ触手生物だ!」
「速水ッ…!銃を使え!倒せるぞ!」
やっぱり!わたしは懐からゴムナイフを取り出すと、目の前であえぐニセ凛香を肩から腰まで一気に袈裟切りにした。
ズババババッッ…!!
「うぎゃああああああああああッッッ…!?」
相棒の本物凛香もハンドガンでわたしの偽物を撃ちぬく。
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ…!
「ひぎいいいいいいいいいいッッ…!?」
耳をつんざくような悲鳴とともにふたりの偽物がドロドロと溶け始め、ジュウジュウと音を立てて蒸発していく。ゴムの焼けるような不快な臭いが教室中に充満し、肉体を失った骨格ががくりと膝から崩れ、みじめに床に倒れこんだ。
ジュウジュウと肉体が溶ける音がしばらく続き、わたしも凛香も呆然とその様子を見続けた。
「な、なんてこと…」
わたしは自分の偽物が溶けて消滅していく様子に少なからずショックを受けたが、凛香は気丈にも顔を上げた。
「さ、いくよ。ふたりを助けないと」
「う、うん!」
急いで廊下に出ると、ボンデージ姿のあやしい女がわたしたちを待っていた。
「おやおや、わたしのかわいい人形たちによくもまあひどいことを…」
「あなたは何者!?」
「ふふ…今日はずいぶんと楽しませてもらったわ、次はあなたたちが最高の快楽を楽しむ番よ。覚悟しときなさい…」
「あっ…!ま、待て!」
女が逃げるそぶりを見せたのであわてて追いかけようとすると、突然ボフッと床から煙が舞い上がり、辺りが真っ白に包まれて何も見えなくなった。
廊下の窓を開け、視界が晴れたときにはもう女はどこかに去っていた。
「カルマくん…!」
「千葉っ…!」
急いで探すと、ふたりは椅子に座ったままぐったりとしていた。
「だ、大丈夫?カルマくん…」
「ああ、心配ない」
「ち、千葉、千葉…(グスン)」
「大丈夫、なんとか生きてるよ」
「よ、よかった……」
凛香は安心したのか、がくりと床にへたり込んだ。なんだ、ずっと気丈に見せてたけど本当は不安でいっぱいだったんだ…
わたしたちは「もう誰に見られてもいい」とばかりに恋人同士でしっかりと抱き合った。
みんなの呼吸が収まったころ、わたしはゆっくりと顔を上げた。あの女が残した言葉「次はあなたたちが最高の快楽を楽しむ番」とは、いったいどういう意味なのだろう。
「ねえ、カルマくん」
「なに…?」
わたしの腕のなかでカルマくんが顔を上げた。
「あの女の人が言ってた、今日はずいぶん楽しませてもらったって何のこと?」
「え…(ギクッ)な、なんのことかな…」
「千葉はわかる?」
「い、いや、わかんねー…」
不思議に思っていると、カルマくんと千葉くんが伏し目がちになにか目くばせをした。
「「ああっ!あやしい!何か隠してるぅっっ…!!」」
凛香とセリフがぴったり合った。
あれ、わたしたちってこう見えて実は結構いいコンビなのかな…?
つづく。