話の流れ的に言って、ヘスティアの場合case1.1の続きからです。
1話
「……………はぁ…」
シャワーから頭部に降り注ぐ冷水と共に大きな溜息が零れ落ちる。水でぺたりと張り付いた兎のように白い前髪をかき上げる。
「……………………はぁぁぁぁぁ…」
そして、再度大きな溜息を吐いた。
一体どれくらいそうしていただろうか。冷水によって体の熱は奪われ凍えそうなくらいだったが、ベルの頭は全くと言っていいほど冷めなかった。
過酷なダンジョンに挑んだ冒険者が生還した後に利用する共用施設のシャワールームで、ベル・クラネルはひたすら滝行のようにシャワーを浴びながら失意のドン底にいた。
時刻はまだ早朝と、シャワールームを利用する冒険者の姿は少なく、ベルは無心で頭を流し続けていた。
――否、無心になりたくてひたすら頭を冷やしている、というのが正しい。
「…駄目だ…死にたい…。神様と合わせる顔がない…」
敬愛する
気まずい、どころの話ではない。顔面騎乗位というラッキースケベだけならまだ良かった。それならその不敬を額がヒリヒリするまで床に擦りつけて謝り倒せば
問題はその後、平たく言えばベルのベル君が暴発してしまった事だ。
敬愛する神様の局部に顔を密着させ、清らかな御手で触れられ、三こすり半もかくやと言わんばかりの速さで達してしまい、それはもうこれでもかというくらいに射精した。
ベルとて、疾うの昔に精通を迎えた男子。自慰による発散を知らぬ訳でもないし、した事がない訳でもなかった。
さらに、危険と隣り合わせのダンジョンで毎日死ぬ思いをするたびに生殖本能が目覚め、ダンジョンに挑んだ日はそういった欲求が昂ぶるもので、ベルとて例外ではなかった。
しかし。ヘスティアとの二人暮らし、禁欲的な生活にならざるを得なかった。
女性はそういった匂いに敏感だとおじいちゃんに聞かされていたベルは
それ故に、大きく性長した陰囊に溜まりに溜まったドロッドロの精液が一気に解放され、下着を、ズボンを貫通してヘスティアの手をベトベトに汚すほどの大暴発に至ってしまったのだった。
美しい少女(ロリ巨乳)に顔面騎乗位されながら手淫で果てる。
世の男性からしたら羨ましい限りかもしれないが、ベルの心は、雄としての尊厳は粉々に粉砕されたのだった。
『えぇ〜っ!?もう
『おぉ…孫よ、三こすり半で
ベルの脳内で敬愛する女神と、尊敬する祖父の二人がゲスい顔で嘲笑する姿が浮かぶ。
無論、ベルの被害妄想でしかない。しかし、ベルの脳内では非常に鮮明度の高い映像としてずっとループ再生されていてずぅ――っと頭から離れないのだ。
「……………………ダンジョン、行こう…」
生気の抜けた表情で、ポツリと呟く。
脱衣所へと向かい、念入りに洗って絞っただけでまだ濡れている下着を身に纏い、ダンジョンに挑む装いになったベルは、幽鬼のような足取りでダンジョンへと向かった。
もうその日のダンジョンでの記憶はほとんどない。
ひたすら無心でモンスターを倒して、倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して倒して、倒して――
(――体が、重いや…。ここ何階層だろう…)
自分の身体の限界を自覚するとともに意識が復活する。気がつけば、ポーチは小粒の魔石と、ドロップアイテムでパンパンに膨れ上がっており、もう詰め込むことは出来ないだろう。
疲れも限界に来ていた。頭がぼーっとしていた。全く見覚えのない地理に未到達階層に迷い込んだかもしれないと思い込む。実際は疲れすぎていて正しく現状把握出来ていないだけだったが。
エイナさんに怒られるかも、などと考えながら地上を目指して踵を返す。
「………帰ろう」
――一体どこに?もう、
今朝の暴発事件がフラッシュバックする。極度の疲労で忘れかけていた事件がベルの心を抉る。
(…う゛っ…でも、帰らないと…神様が心配するし…)
――そうかな?あんな事があったんだ。顔も見たくないんじゃない?それとも、帰った瞬間嘲笑うかもよ?
『あ、
(………………う……駄目だ…思考が悪い方ばかりに傾く……そもそも神様がそんなこと言うはずないだろ…っ!これは僕の妄想…!現実にそんな事を言われるはずが………ない…よね?)
――とまぁ、深い自己嫌悪の沼に溺れ苦しみながら、ベルは地上を目指す。その途中でモンスターがあまり現れなかったのは不幸中の幸いだろう。おそらく今の著しく集中を欠いたベルがモンスターに襲われていたらひとたまりもなかっただろう。
そして、ベルとしてはあまり喜べないが、その後は何の障害もなく敬愛する女神の拠点に辿り着いてしまう。
辺りはすっかり日が暮れ、ボロボロの教会は深い夜が作り出す闇と魔石の街灯のぼんやりとした灯りで照らされて物寂しい雰囲気を醸していた。
(うぅ…此処に帰りたくないと思う日がくるとは…でも…これ以上遅いと、神様…心配するし……いやでも…っ)
英雄を目指してダンジョンに挑み、死ぬほど疲れた体で敬愛する女神の下に帰る。疲れ切った
その幸せは今朝の1件で基礎から粉々に砕け散った。それも僕のせいで、と。ベルは酷い自己嫌悪に陥っていた。
しかし、帰りたくないという気持ちとは裏腹に、ベルには敬愛する神様を心配させたくないという気持ちがあった。
相反する想いは、それはもうごちゃまぜになっていた。1歩進んで2歩下がる。3歩進んで2歩下がる。
ベルの苦悩が滲み出たかのような足取りで廃墟のような教会へとゆっくりと歩を進める。
そして、あと少しで教会の入口に辿り着くといった瞬間、教会の中からひょっこりと白い人影が躍り出た。言うまでもなくヘスティアその
当然、教会の入口付近にまで歩を進めていたベルとヘスティアの視線はガッチリという音が聞こえるほどにかち合った。
「「――あ゛っ……!?」」
二人揃って汚い声が口から漏れ出た。そしてお互いにぎこちない様子で慌てふためいた。
ベルは心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われ、急激に喉が酷く乾いて、声が出せなかった。
『やぁ、ベル君。早漏は治ったかい?英雄を目指す男が早漏なんてあり得ないよねぇ?HAHAHA☆』
――なんて言われたら、今すぐに情けなく咽び泣きながら逃げ去る自信があった。自己嫌悪を重ねれば重ねるほど酷くなっていく心の中のヘスティアの嘲笑。普段なら絶対有り得ないと切って捨てるほどの内容だったが、今のベルはどうにも振り払えないでいた。
そうして両者は数秒間は石像のように固まっていたが、先にヘスティアの石化が解け、瑞々しい唇を開いて言葉を紡ぐ。
「や、やぁ…ベル君!かっ、かかかか帰りが遅かったから心配、したんだぜ…?」
身を強張らせて身構えていたベルの耳には、ベルの妄想のヘスティアのように嘲笑うような様子は一切なく、ひとえにベルを心配するような声音が伝わってきた。
ヘスティアはぎこちないながらもいつもと同じように笑顔でベルを迎え入れようとしてくれた。
ベルは、その優しさに涙腺が熱くなるを感じた。
「…っ!…し、心配かけて…すっ、すみませんでしたぁぁぁっ!!」
「…いいんだベル君…僕は、君が無事に帰ってきてくれたらそれでいいんだ…」
聖母のように語りかけながら、ヘスティアは涙ぐむベルの手を掴んで教会の中へと導いて行った。
祭壇の先にある小部屋に入り、薄暗い部屋の一番奥の棚の裏にある隠し階段を二人で下っていく。そして小窓から微かに漏れる光を頼りに扉を開けると、見慣れた光景が目に入る。
一足早く部屋に入ったヘスティアがニコリと笑う姿を見て、愛しの我が家に帰ってきたという実感が湧いた。
「
そんなベルの心持ちを見抜いたのだろう、ヘスティアは改めてそう言った。
「はい…、ただいま戻りました!神様」
ここまで来たら、二人とも最初のぎこちなさはほとんどなくなっており、今朝の出来事などなかったような団欒が繰り広げられていた。
――そして時間は過ぎ…
まかないのじゃが丸くんを頬張り、ふたり仲良く歯を磨いて、就寝前の軽い会話をと、ヘスティアはベルが不在の間に自身が行っていた情報収集の内容をベルに切り出し始めた。
「そ、そのさ…(チラッ)け、今朝の事なんだけど(チラッ)、僕は…その気にして…(チラッ)ないから…(チラッ)さ…(チラッチラッ)」
忘れかけていただけあってベルの動揺はひとしおだった。チラチラと視線をベルの顔ではなく股間に向けるヘスティアの様子を見て、なにかとてつもなく嫌な予感がしたのは確かだった。
「…あ、あの…神様?」
「え、えっとね…ベル君が居なくなった後にね、デメテルの所に相談に行ったんだ」
「………そ、相談?」
【相談】とは、どうすればよいかなどについて、意見を述べ合ったり、意見を述べてもらったりして考えること、である。
ヘスティアが相談するほどの今朝の出来事と言えば、暴発事件をおいて他にあるまい。つまりそれが指し示す事は――
「そ、そういうことに不慣れな男の子は早くても仕方がないってデメテルや他の女神達も言ってたし、早漏は改善出来――」
デメテルのみならず、そういう話題が大好きな女神達に、ベルの早漏が広く伝搬して知れ渡ったという事に他ならなくて――
「神様のバカァァァァァァァァァァッ!!!」
「――る…ってちょっ!?ベル君!?ベルくぅぅぅぅぅん!?!?」
その日、ベルは寒い夜空の下で涙を零しながら一夜を明かしたという。
ちなみに、ヘスティアのフォローをぶった切る形でベルが飛び出して行ったので口にされることはなかったが、続きはこうだ。
「るから大丈夫!それに…き、君のおちっ、おちんちんは…かなり大きい部類らしいから自信を持っていいぜ☆!」
当然、ヘスティアはベルの事をボカして相談していたつもりだったが、周りの女神達はヘスティアの羞恥心を隠せていない様子から当然眷属との間に起きた事件である瞬時に見抜いていた。そして根掘り葉掘り聞いている間に話題はブツのサイズへ。
女神達の熱気で終始押され気味だったヘスティアが顔を真っ赤にして手で示したサイズに女神達は驚愕した。
そしてその後、ヘスティアの唯一の眷属であるため女神達は即座にベルの存在へと辿り着いて頰を赤らめた。
(あの、可愛いらしくて幼い顔つきの少年に…ビッグ・マグナムがっ…///!?)
その後、その噂を知る女神の界隈では、ベルの渾名がビッグボーイになってたとかなってないとか。
真相は――神のみぞ知る。