※この作品はR-18です。

王子と完璧なメイド   作:メランコリー

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ひとまず完結です


セーラ後編

 一月ほど前、セーラが体調を崩して寝込んでしまったことがあった。

 本人は雨に濡れてしまったのが原因だと言っていたが、普段からセーラの万能ぶりになにかと頼ってきた王子はもしや過労もあるのでは、と思い、自分にも責任の一端があると感じ看病を買って出た。

 

 セーラは当然ご主人様にそんなことをさせられない、と断っていたが、王子に引くつもりがないと悟り最終的には大人しく看病を受け入れる。普段のセーラであればそれでも断固として王子に説いていただろうが、熱でフワフワとした頭ではそれも無理な話だった。

 

 最初はセーラに水を与えたり、たわいもない笑い話を話してセーラの気怠さを解消させようとしたりと甲斐甲斐しく世話をしていた王子だが、ふとセーラの身体が汗で濡れていることに気づく。

 このままでは症状が悪化するかもしれないと感じた王子は濡れた手巾で身体を拭いてあげることにした。

 

 しかしここで一つ計算違いが生じる。身体を拭くために服を脱いだセーラがあまりにも扇情的だったのだ。

 いつもはしっかりまとめ上げている長い髪を下ろし、服を気怠げに脱ぐ。それだけでもいつもの完璧なセーラとのギャップに思わず見惚れるほどなのに、その身体は色っぽく汗で濡れて、更には王子を待ちわびるように儚げに見つめてくるのだ。

 それでも病人相手に無茶をさせてはならない、と何とか情欲を我慢してセーラの身体を背中から拭く王子だが、その手が前に回され、胸に触れたところでいよいよ我慢の糸が切れてしまう。

 思わずセーラをベッドに押し倒してしまい、セーラの両足を掴んで大きくM字に広げさせる。

 

 あまりにも申し訳なくて、すまない、すまないと何度も謝りながらも、露わになったセーラの秘部からその目を離すことができない。

 そんな王子を見てもセーラは叱るどころか、嬉しそうに微笑んだ。

 

「そんなに謝らないでくださいご主人様……実は私も、人寂しくてご主人様に触れたいと思っていたのです。どうかご主人様の熱を、私に感じさせて頂けませんか?」

 

 王子に罪悪感を感じさせないためにそう言っているのか、それとも本当に病気で寂しいと感じているのか。

 それは分からなかったが、セーラの己を求める言葉を聞いてもはや我慢ならなくなった王子は彼女に襲いかかった。

 

 それからは夢のような一時であった。熱で頭が回らなくなったセーラは、王子の責めに対し実に素直な反応を返してくれた。

 硬くなった乳首を舐めればぴくぴくと身体を震わせる。

 濡れそぼった秘所の割れ目を撫でてみれば涙目で甘えた声を出す。

 そして王子の肉棒が熱い腟内に入り込んだ時には、もはや声が出ないほど大きな快楽を受け止めているようであった。

 コトが終わり二人がベッドに倒れ込めば、病気を理由に王子に風呂まで運んでもらうように甘える様子まで見せた。

 

 この時の経験で、甘えるセーラがとてつもなく可愛いことを知った王子は前回の性交でも己を求めてもらえるよう策を弄したのだ。

 そして病気の時とはいえ、一度甘えた姿を見せてくれたセーラならまた同じようにしてくれると信じてもいた。

 しかし結果はメイドであることを理由とした拒否。

 事ここに至って王子は、彼女がメイドであることにどれだけの頑なさを持っているかを思い知った。

 あの甘えてくれたセーラは、熱で頭が働かなくなって初めて現れた本来のセーラ。

 メイドとしてではない、感じたことを素直に表現できる一人の女性としてのセーラなのだ。

 

 メイドとしての自分に誇りと執着を持つセーラではある。

 だがあのセーラを見たからこそ、王子は彼女がメイドではなく、ありのままの自分としても振る舞うことができると信じられる。

 一度出来たのだ、やり方さえ分かれば何度でも出来るだろう、と。

 

 そしてその方法も、あの時の光景を思い出せばすぐに分かる。

 あの時のセーラは、病気によりメイドの仕事をこなせていなかった。

 いや、メイドではなくなっている自分を許すことが出来ていた、と言った方が正しいだろうか。

 恐らくセーラは完璧なメイドであることに恐ろしいほどの強迫観念を持っている。メイドではない自分を、よほどのことがない限り許すことができないのだ。

 だがそれならば話は簡単で、セーラにメイドではなくてもいい理由を作ってあげればいい。

 そしてそのために必要なものは、丁度目の前に転がっていた。

 

 

 

「はぁ、お忍びで城下町の視察ですか?」

 

 あれから数日。いよいよ視察が翌日に迫って、俺は自分の考えを述べた。セーラは訝しげに問い返してくるが、もちろん態々お忍びで行く理由はある。

 

 いつもは俺や皆と一緒に大勢で行って、店を見て回っていただろう? だがそれでは民は身構えてしまって、本来の生活を見ることは出来ないと思ったんだ

 

 王城からの視察となれば警戒もするだろうし、たとえ本当は景気が悪かったとしてもそれを表に出すことはしないだろう。

 そんな懸念がありながらも事前に周知させて、大勢で赴いていたのは安全保障上の理由だ。

 つい最近まで野良の魔物は近くをうろついていたし、盗賊ギルドなどの危険な人間勢力も多く存在していた。それが故単純に俺の身を守る必要があり、また緊急時にはこれだけ沢山の王国軍が城下町に出てこられるぞ、と国民や反抗勢力に見せつける必要もあった。

 ようやく国内も安定してきて、少人数で城下町を見て回ることを考慮に入れられるようになった。

 その旨をアンナに伝えたところ、護衛として信頼の置けるものをつけるならば、と条件付きで承諾を得ることができた。

 

 

 その護衛として、俺はセーラに一緒に来てもらいたいと思っている。

 

 

「はい、かしこまりました。全身全霊で王子の身を守らせていただきます」

 

 恭しくお辞儀をするセーラ。

 どうやらこの任務の過酷さにはまだ気づいてないようだ。

 直前まで黙っておいて狼狽えるセーラを見るのも面白いかと思ったが、明日に向けて色んな準備も必要なので今伝えることとする。

 

 

 明日一日、俺のことをご主人様と呼ぶことを禁じる

 

「え……それなら王子と」

 

 王子もダメだ。せっかくお忍びで行くのに、ご主人様やら王子と呼ばれたらすぐに正体がバレてしまう。同じ理由で俺の本名もダメだ

 

「……それでは、一体どうお呼びすればよろしいのですか?」

 

 困ったように問いかけるセーラに俺は事前に考えておいた答えを述べる。

 

 好きにしてくれ。あなたでもダーリンでも、呼びたい名で呼んでいいぞ

 

「……承知しました。何か方策を考えておきます」

 

 流石にダーリンは嫌なのだろうか、セーラは逃げの一手を打ってきた。まあ呼び方は彼女に任せるとして、次の条件を伝える。

 

 後は出来れば敬語もやめてくれ。二人で行くなら、カップルという設定が一番良いからな

 

 ここが一番重要なポイントだ。セーラと二人で街に出かけるというだけでも心が躍るが、彼女にメイドではない自分を意識させるなら俺はご主人様であってはならない。呼び方だけでなく、扱いもご主人様としての俺から脱却しなければならないのだ。

 

「私が王子の恋人、ですか? しかしそれはあまりにも……」

 

 フリで良いんだ。それがメイドとしての仕事なんだと考えてくれ

 

「……そういうことならば。メイドとして、完璧にこなしてみせます」

 

 最後に、明日は私服で来てくれ。そのメイド服じゃ、王宮に仕えていると丸分かりだからな

 

「はぁ……しかし私はこれ以外に外用の服など持っておりません」

 

 まさかとは思ったが、不安が的中したか。城内ではいつもメイド姿のセーラしか見たことが無かったため、私服のセーラを見てみたいという下心も混じっていたのだが……

 

 それならこの後買いに行くか、体格の似た城内の女性に借りるかしてくれ。困った時はアンナに相談してくれればなんとかしてくれるだろう

 

「では、そのように。しかし武器はどうしましょう? あの槍斧はカップルには不釣り合いなものかと思われますが」

 

 あぁ、その問題もあった。まあ俺も剣を腰につけていくし、冒険者カップルということにでもしておこう。流石に護衛のセーラに何も持たせないわけにもいかないし

 

「ですが、それなら……いえ、かしこまりました」

 

 何か言いかけてやめるセーラ。

 冒険者仲間の設定なら、カップルのフリをする必要は無いことに気づいたのだろう。

 しかし先週誓ったように、俺はセーラにメイドとして以外の姿も見せてほしい。今回の偽装デートがそのための手段なのだとセーラも悟ったのだ。

 

 じゃあまた明日、セーラとのデートを楽しみにしている。

 

「デートではなく仕事ですが、セーラも楽しみにさせていただきます」

 

 

 

 

 さて、この偽装デートの目的は単純だ。

 仕事として俺の恋人を演じさせることで、セーラにメイドでなくてもいい理由を与えたのだ。

 これならセーラもメイドではない自分を許すことができるだろう。ついでに俺が好きだという気持ちを素直に表現できるかもしれないという期待も持てる。

 前回の性交でセーラの俺への恋心を確信したからこそ、恋人を演じさせる、などという命令を下すことができた。俺のことを何とも思っていない女性に、王子権限で恋人のフリを命じるというのは非人道的だという感覚くらい俺にもあるのだ。

 

 

 さぁ、俺も明日は王子ではなく、セーラを愛する一人の男として臨んで行こう。セーラに地位や身分を気にしない振る舞いを求めるなら、俺こそが身をもってそのやり方を示さなければならないのだから。

 

 

 

 

 城下町視察当日の朝。

 

 いつも通りメイドとして王子の起床と食事のサポートをしたセーラは、メイド服から私服に着替える為に一度王子から離れた。

 私室でセーラの私服を色々と想像しながら王子が待っていると、控えめなノックの音がした。すぐにセーラだと分かって入室の許可を出したが、中々扉が開かれない。

 もしや聞こえなかったかと思いもう一度入れ、と言うとおずおずと扉が開かれる音がした。

 

「失礼します、ご主人様」

 

 常にはなくか細い声で返事をしたセーラが部屋に入ってくると、王子は思わずほぅ、と息を飲んだ。

 

「このような格好をご主人様にお見せするのが気恥ずかしくなり、部屋に入るのを少し躊躇ってしまいました……申し訳ございません」

 

 赤いブラウスに白のミニスカート。長く伸びた足には黒のタイツが映え、胸元には控えめにリボンが結ばれている。そしていつもは後ろでまとめられている髪が解かれ、腰のあたりまで落ちている。

 彼女の髪と目と同じ色を中心にコーディネートされたその服装は、彼女にとても良く似合っていた。

 

 拙い語彙ながらも王子が彼女の服装を褒め称えると、セーラは安堵したかのようにホッと息をついた。

 

「良かった。アンナさんにも似合ってるとは言われていましたが、男性の意見を聞くことが出来なかったのでご主人様のお眼鏡に叶うか不安だったのです」

 

 とてもよく似合っている、似合っているのだが……一つだけ問題があった。

 セーラの背中に担がれた槍斧だけが、やはりあまりにもアンバランスに悪目立ちしているのだ。

 とはいえそれは普段のメイド服の時でさえ感じているチグハグさだったので、王子は今さら指摘する気にもならないのだった。

 

 

 二人連れ添って街に向かう途中、王子達は着いた後の行動について話し合っていた。

 

 それで、俺の呼び方については考えてきてくれたか? 

 

「はい。とりあえず二人なので、呼び方を決めなくても私の発言がご主人様宛のものだと分かるでしょう。それでも必要なら、あなたと呼ばせていただきます」

 

 あなたか、いい響きだ……

 これは何としてもそう呼んでもらいたいものだ。

 まあそれはそれとして、そろそろ様付けや敬語はやめてくれ。

 

「かしこまりまし……いえ、分かりまし、た?」

 

 若干敬語が抜け落ちてないが、元々誰が相手であっても丁寧に接してきたセーラだ。丁寧語を使うことくらいは許してやろう。

 

 そう思い口を閉ざす王子。このデートは素のセーラを表現させることが目的なのだ、まるっきり違う性格を演じさせることは本意ではない。

 

 

 

 しばらくして、街の大通りに到着した王子達。

 丁度仕事に出かける時間に差し掛かったようで、通りを行き交う人で混雑している。

 以前と比べて魔物の脅威が遠ざかっていることを肌で感じているのか、忙しなく動いているというのにその表情は生き生きとして明るい。

 

 大分人が増えたな……もっと街を大きくしないと、歩くことすらままならなそうだ

 

「最近では王子の噂を聞きつけて国内の至る所からこの王都に駆けつける人が増えていますし、東の国や帝国といった他国からも観光に来ている人がいますからね、ほら見てください」

 

 セーラの言葉に従って良く観察すると、確かにあまり見かけないような服装を纏った人が所々に点在している。

 観光に来られるほど道が整備されてきたというのはかなりの朗報だ。

 

「それではまずどこから行きましょうご主、コホン、あなた」

 

 王子を主扱いしないことに未だ慣れない様子のセーラ。普段そつのない彼女の狼狽える姿は、その私服姿とも相まってまるで別人のようだ。

 

 そうだな……とりあえずこの通りを見物しながら歩こう。そのために……

 

「そのために?」

 

 手を繋ごう

 

「!?」

 

 驚いた顔を見せるセーラ。

 この混雑した道をはぐれないで歩くために手を繋ぐのは有効だし、セーラとのカップル気分も味わいたい。そんな王子の下心と打算混じりの提案に、恥ずかしさで耳を赤くしつつゆっくり頷く。

 

「で、では……失礼します」

 

 王子の右手にセーラは左手を重ねていく。

 ようやく触れそう、というところで王子は強引に指と指を絡ませ合う。ラブラブな恋人同士にのみ許されるという、いわゆる恋人繋ぎをしたのだ。

 

 じゃあ、行こうか

 

「はい、お、お供します」

 

 はっきりと動揺を隠せないセーラ。

 こうして視察デートは、波乱の内に始まったのだった。

 

 

 

 店に入ってみれば手を繋いだ二人を見て店主にからかわれ。

 途中で購入した昼食にはお互い食べさせあい、つまりあーんをすることとなり。

 城で待つ仲間たちにお土産を買えば、男なんだから俺に任せろ、と重い荷物を取り上げられ。

 慌てる度に王子をご主人様と呼びそうになる。

 

 セーラにとってはあまりにも目まぐるしく1日が過ぎていった。

 

 

「ふう……お疲れ様でした、ご主人様」

 

 視察が終わり、王子の私室に戻った時には慣れないことの連続にクタクタになっていたが、最後のメイドの意地で王子に労いの言葉をかけるセーラ。だがそれに王子は物申す。

 

 忘れたか? 今日一日は俺のことをご主人様と呼んではダメだ

 

『明日一日、俺のことをご主人様と呼ぶことを禁じる』

 視察が終わってもそのルールは続いていることを知り、ちょっと泣きそうになるセーラ。

 そんな彼女に対し、王子はなおも続ける。

 

 つまり、日が変わるまで俺のメイドに戻らなくていいってことだ。どうだセーラ、これ以上メイドではないのは辛いか? 

 

 その言葉にセーラは押し黙ってしまう。

 メイドではなく、王子の恋人として過ごした今日一日を思い、その時間がもう少しだけ続くと知って……自分はどう思ったのだ? 

 

 大変だった、目が回るようだった、それでも……

 

(いえ、何を、何を考えているのですか、私は! 楽しかったと、もう少しだけこんな時間が続いて嬉しいなどと、なんておこがましい!)

 

 必死で己に浮かんだ考えをうち消そうとする。

 王子の恋人なんて大役、己には荷が重いのだ、今日という日は泡沫の夢のように消え去るべきものなんだ! と。

 

 実際のところ。まるで恋人のようにエスコートしてくれる王子を見て、セーラはより強く自分の思いを自覚するようになっていた。

 ふと気づけば仕えるべき主としてではなく、一人の男として見てしまう。

 この感情は、間違いなく恋と呼ばれるものなのだと。

 

 だがそれが分かって、だからどうするというのだ? 

 相手が王子という身分では、真の意味で結ばれる可能性など万に一つもない。それなのに己の慕情を自覚してしまえば、待っているのは悲しい結末だけ。

 それが分かっていたからこそ今まで必死に目を逸らしてきたのに、今日己の望んだ姿を目の前に突きつけられてしまった。

 あんな風に一人の女として王子と一緒に街を歩き回り、手を繋いで笑い合うのがお前の理想なんだ、と。

 

 そんなセーラの葛藤を見て王子は告げる。

 

 なあセーラ。前にメイド以外に自分の道は考えられないと言っていたが、それは今でも変わらないか? 本当に、セーラが心の底から望むものが他にもないと、胸を張って言えるか? 

 メイドではない今なら、はっきりと自分の答えを出せるんじゃないか? 

 

 王子の問いに、セーラはもはや己に嘘をつけなくなっていることを悟る。知らなければ自分を騙しながらやっていくこともできたのに、王子の恋人という甘美な経験を得てしまったからにはもう自分も、王子も騙せない。

 

「……ふふ、いじわるな人ですね。ええ、今ならはっきりと言えます。私は、あなたが欲しい。ただあなたを好きなだけではなく、あなたにも私を求めてほしい。ひどい話ですよね、側にいるだけで、仕えるだけで満足だったはずなのに。いつの間にか秘めた慕情を向けるようになり、挙げ句の果てには私のことを想ってほしいなんて強欲な願いを抱えるようになっていたのです」

 

 ポツリ、とようやく己の真の想いを発露させることができたセーラ。

 その言葉を聞いて王子は嬉しそうに笑う。

 

 そうか、やっとありのままのセーラを見せてくれたな。

 ……それなら俺も王子としてではなく、一人の男として言わないわけにはいかないな

 

 王子も心を決める。今までセーラの心の声を聞くことばかりに腐心してきたが、自分の感情を言葉にしたことはなかった。

 

 セーラ。俺もお前のことが好きだ。愛してると言っても良い。暇な時にはいつもセーラのことを考えてしまうし、お前の全てが欲しいとも思ってしまう。強欲さなら、俺の方が数段上のようだな

 

 遂に己の想いを告げる王子。

 自らの結婚がそれこそ国の行く末を左右すると知っている王子は、どれだけ好きでもそれを口にすることは出来なかった。

 だが愛する女性がメイドという自分の殻を破り、はっきりと想いを口にしてくれたのだ。王子という立場を言い訳にセーラの告白から逃げたら、彼はこの先一生自分を許すことができないだろう。

 

 王子の告白に、セーラは思わず嘘、と呟き、その場に崩れ落ちる。

 そんな彼女を、王子は近寄って抱きしめた。

 

 嘘じゃない、嘘なんかじゃない、この想いは誰にも否定させたりしないさ

 

 その言葉を聞いて、王子の胸の中でセーラは泣きながら笑ってしまう。

(王子が私を好き? そんなことは許されない、絶対にいけないことのはずなのに……ああ、嬉しさで泣いてしまう、笑ってしまう、だめ、ダメ、駄目なのに!)

 

 なあセーラ。今日一日、俺たちはお互いの気持ちを確かめ合った一組の恋人に過ぎない。ならこの後どうすればいいか、分かるよな? 

 

 セーラには分かる、分かってしまう。

 恋人が、夜に彼氏の部屋で二人きり。

 これで何もなければ、その方がおかしいだろう。

 

 王子の誘いにセーラは涙を浮かべた目を閉じる。

 そしてどちらからともなく顔を寄せ、その唇を触れ合わせるのだった。

 

「これが、メイドではない私の初めてのキス……あなたに捧げることができる日が来るなんて、思いもよりませんでした」

 

 恍惚としながら自分の唇に人差し指を触れさせるセーラ。

 その仕草が可愛くて、王子はゆっくりとセーラの身体を押し倒していくのだった。

 

 

 

 キス、キス、キスの嵐。

 セーラの身体を確かめるように触りながら、彼女の至る所に唇を寄せる王子。まずは手、腕、鎖骨と徐々に上に移行していき、顔にたどり着けば耳、鼻、おでことフレンチキスを繰り返す。そして最後に残った唇には何度も何度もキスを繰り返し、次第に舌まで入れ始めた。

 

「ンゥ、ンンンンっ!」

(あぁ、彼の舌と私の舌が絡み合って頭がボゥとする。目を開けば眼前に愛しい人の顔があるし、目を閉じれば舌を撫で回される心地良さに溺れてしまう。こんな、こんな幸せなことがあって良いのだろうか)

 

 キスの快楽に呆然とされるがままになるセーラ。

 今までされたことのなかったディープキスというものに、彼女は溺れそうになっていた。

 

「ンチュ、ン、ンンッ!? 〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 最後に舌を吸い上げられた時には頭が一瞬真っ白になり、濁流のように押し寄せる快楽に早くもイッてしまっていた。

 

「ハァ、はぁ、はっ……ンァァ!? そ、そこは……」

 

 ようやく唇を離され息を整えるセーラだが、王子はその間に彼女のブラウスを前から脱がせ、スカートも邪魔だとばかりに下に下ろす。

 扇情的な赤色の下着だけが残されたセーラをジックリと眺め、今度は足の指先からまたキスを始めていた。

 指は丁寧に一本一本しゃぶり、太ももにはキス跡が残るほど吸い付いていく。

 そして本丸の秘部に狙いを定め、下着の上から舐め回していった。

 

「ンァッ、ンン、ンうううん! そこ、そこは汚い、ンンッ、です! 

 舐め、舐めてはダメ……ンァァんぅぅぅ!!」

 

 トドメとばかりに小さなお豆に吸い付かれ、またもや絶頂してしまうセーラ。もはや言葉でしか抵抗出来ず、身体は王子を待ちわびるようにビクビクと震えている。

 王子はここでようやく顔を上げ、セーラの目を見つめながら言う。

 

 セーラ。俺はお前が好きだ。愛している。だから……お前の中に挿れたい。お前を俺という色に染め上げてしまいたい

 

 二度目の告白。もうセーラに抵抗することなんてできない。身体も心も、王子に嘘なんてつけなくなっている。

 

「はい……セーラの膣内(なか)に入れてください。私をあなたの色に染め上げて、あなた無しでは生きられないようにしてください!」

 

 その言葉を待ちわびていたかのように、王子はセーラの肌着を取り、自分の肉棒を秘部に勢いよく突き入れる。

 

「ンァッ──、ンンゥゥっ!! 〜〜〜〜〜〜〜っ!?」

 

 王子の肉棒がセーラの最奥まで辿り着き、その余波だけで彼女はイッてしまう。

 膣内がうごめき、逸物に上下左右から絡みついてくる感触に王子は我慢しきれず、すぐさま腰を動かし始めた。

 

「イヤァッ! まだイッてる、のに!! ハアン、あっ、あっ、ンンッ、ンンゥゥ──!?」

 

 限界を超えた快楽に何度も身をよじるセーラ。

 その度に大きな乳房がぷるぷると震え、夜行灯に惹かれる虫のように王子の唇が近づいていった。

 

「ンァ、アア! 吸っちゃダメ、ですっ! ンゥゥ、噛んでもだめ、ですぅ!」

 

 桜色の乳首を唇の中で転がすと面白いようにセーラが喘いでくれる。

 腰をなおもゆすり、セーラの膣にその形を覚えさせながらも、硬く尖った乳首を舐め、吸い、噛んで単調な刺激にならないようにする王子。

 

「あぁ、また、またイッちゃいます! ごめんなさい、また私一人でイク、イッてしまいますっ!!」

 全身で快楽を受け止め続けるセーラ。

 最早自分が何度イッたかすら分からず、それでも身体は貪欲に王子を求め続けている。

 王子は白濁液を待ちわびているセーラに、そろそろ己の限界が近いことを告げた。

 

 イク、イクぞセーラ! このままお前の中に出してやる! 

 

「はい、来て、きてください! 私の膣内(なか)を、あなたの子種でいっぱいにして下さい!!」

 

 同時に絶頂し、セーラのお腹の奥底に精液が注ぎ込まれていく。

 セーラはその感触を決して忘れないように、噛み締めながら味わっていた。

 

 

 その後も何度も愛し合い、気がつけば日が変わろうとしていた。

 セーラにかけられた、恋人という魔法が解ける時が近づいてきたのだ。

 

「もうすぐ今日という日が終わってしまうのですね……なんだか夢を見ていたような気分です」

 

 ベッドの上で王子に抱きしめられながら、セーラは夢見心地のようだ。

 王子は夢なんかじゃないさ、と言いながら、己の存在を刻みつけるかのようにさらに強く抱きしめた。

 

「はい。ですが、明日からはまたメイドと主に戻らなければなりません。それこそが今日垣間見た国民の方々のためにすべきことなのですから」

「あなたがくれた今日という日を、私は生涯忘れません。この思い出があれば、私はどんな時でもあなたに尽くすことができます」

 

 何やら今日のことは一晩の思い出として片付けようとするセーラ。

 それでは意味がないので、王子は慌てて言い募る。

 

 これから先、俺も王子としてあり続けることが辛くなる時が来るかもしれない。そんな時、俺を王子ではなく一人の男として見て、恋人として甘やかしてくれる人がいると助かるんだがなぁ……どこかにそんな都合の良い人はいないかなぁ、ああ困った困った

 

 王子の下手な芝居を、セーラは目を丸くして見ている。

 

 でも一国の王子を地位なんて関係なく見てくれるような、そんな良い女なんてどこにもいないだろうなぁ……参考までに聞くけど、セーラは誰か心当たりがないか? 

 

 王子の意図を理解したのか、セーラは本当にどうしようもない人ですね……と呆れ混じりに笑った。

 

「ふふ、あなたの周りにはそんな女性はたくさんいると思いますが……いいでしょう、私がその存在になってみせます。主の望みを完璧に叶えてこそ、真のメイドなのですから」

 

 セーラの答えに王子はよしよし、と頷いた。

 今はまだ、仮初めの恋人でいい。王子の妻になるなど、今のセーラには考えられないだろうから。

 でもいつの日か、それこそ魔物の危機が完全に消え去る日が来たら、今度こそ正式なプロポーズをしよう。

 魔物という憂いが消え、それまでに誰にも文句を言わせないだけの実績を積み上げれば、二人の障害になるものは消え去るのだ。

 

 そう決意し、しかし今は目の前の温もりに集中しようとまたセーラを強く抱きしめる王子なのだった。




エロまでが遠すぎてデート描写をキンクリしてしまったことが唯一の心残りです
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