連載5~6回で完結か?
東京都新宿区ーー。
戸村玲奈は心の支えを失った。母を亡くした自分はこれから何を支えにして生きていけばいいのだろう。途方に暮れてしまうような心持ちだった。
新宿区上落合のの火葬場。焼け残った戸村瑞江の骨を囲んで十数人が立っていた。おぼろげな人型の燐酸カルシウムの遺物だけを残して、瑞江は旅立ってしまった。叔母の石川由紀江は玲奈の肩に手をあてがってくれた。心情を
火葬場でのお別れを終えて外に出た玲奈に叔母は語りかけた。
「玲ちゃん、春からうちに来てね。離れの部屋が空いているし、何不自由なく暮らせるようにするからね」
「ありがとうございます」
「玲奈。気を落とさずにな」
叔父の石川弘義は力強く言ってから、玲奈の真正面に立った。
ありがとうございますを言い終える前に、弘義にぎゅっと抱きしめられた。玲奈はとまどった。叔父の指は動いた。耳にかかったセミロングの髪を分けてきた。感触にドキッとする。
「玲奈ちゃん。心配はいらない。何不自由なく暮らせるから」
力強く言った。叔父の熱情のようなものを感じとった。
「はい。お世話になります」
叔母の由紀江は「玲ちゃんはもう子どもじゃないのよ。抱きしめたら誤解のもと」と苦言を呈した。
そっと叔父から離れる。弘義は玲奈の頬が赤くなっていることをやんわりと指摘した。抱きしめられていたとき、玲奈は腿を圧迫しているモノを意識していたのであった。それはまだ目にしたことがないモノだった。
2017年3月末。玲奈は母と住んでいた中野区高円寺のアパートを引き払って、新宿区中井の石川家に引っ越した。4月から高校二年生だ。通学している
石川家での新たな生活は順調にスタートした。叔父の弘義も叔母の由紀江も優しかった。大学に通っている娘の晴恵は勝ち気な性格でときどき両親を困らせていたが、玲奈の目には微笑ましく映った。
ある日の夜、居間で晴恵と二人きりになった。テレビの知的バラエティーを観ながら、晴恵は「玲ちゃん、彼氏いないの?」と問いかけてきた。
「いません。まだ……」
「まだ?」
「まだつくる気ないし」
「彼氏をつくるのに早い遅いはないよ。私は中三で彼氏つくったよ」
「私はまだいいです」
「そう。玲ちゃん。勉強は大事だけど、セックスを体験することも大事よ」
曖昧に頷いたが、セックスがどうして大事なのか、わからなかった。
玲奈はセックスを経験したことがなかった。それどころかオナニーすら知らなかった。知識の上では知っていたが、自らの指を使っての経験はなかったのだ。
それからしばらく経ったある夜、玲奈は由紀江の部屋に呼ばれた。由紀江は大手ランジェリーメーカーの子会社「ピーチツリー」で下着のデザインを担当していた。
「プレゼントしたい物があるの」
玲奈はスリーサイズを測ってもらうことになった。由紀江は優秀な下着デザイナーだ。プレゼントされるのは下着にちがいないと思った。
「ウエスト57㌢、ヒップ85㌢、バストはアンダーが66のトップバスト82㌢。玲ちゃん。今、ブラジャーのカップは?」
「Cです」
「Cカップじゃ少しキツくない?」
「はい。キツいと感じることあります」
「今からはDカップにしましょう」
由紀江は広告チラシの裏に《玲奈、D65》とメモした。
「ブラは近々揃えます。きょうは下だけプレゼントするわ」
ピーチツリーブランドのパンティはカラフルだった。ミントグリーンにアイボリー。エメラルドグリーンにベビーピンク。レモンイエロー。玲奈は5枚の下着をもらった。
「玲ちゃん」
「はい」
「玲ちゃん綺麗だから、学校でモテるでしょう?」
「そんなことありませんよ。全然モテません」
「そうなの?モテない筈ないけどねえ」
由紀江は首を傾げた。
ほんとうのところ、玲奈は松陽高校の生徒から注目されていた。男子生徒から誘われることがしばしばあったが、すべて断っていた。今ひとつ、乗り気になれなかったのだ。石川家に居候している身なので、男性との交際は自重して、家事を手伝うことが第一と思ってもいた。
下校時に東北沢駅のホームで中年男性に「あなたの瞳、きれいだ。澄んでいるね」と声を掛けられたこともあった。そのときは怖くなって、駅員のもとに駆け寄ったのだった。
7月初旬のある夜、由紀江は帰りが遅くなるとのことだった。ピーチツリー社の同僚である女性社員の送別会に出るためだ。夕食の支度は玲奈と晴恵に託された。
二人は作業を分担しあって、肉ニラ炒めと麻婆豆腐と味噌汁をつくった。
午後7時すぎ。夕食が出来上がった頃、叔父の弘義は帰宅した。
由紀江がいない食卓は、玲奈が来てから初めてのことだった。弘義は料理の出来を誉めちぎり、ゴクッと喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「玲ちゃん。タイトスカート可愛い。脚が綺麗だ」
弘義はほろ酔い加減なのか。玲奈が着用している花柄のミニタイトスカートまで誉め称えた。
午後8時すぎ。後片付けがあらかた終わると、晴恵は「彼とラインするから、後はお願いね」と言って、二階の自室に上がっていった。
弘義は食堂から居間に入っていった。やがてテレビの音声が聞こえてきた。玲奈はお皿やグラスを拭いて、食器棚に収納し始めた。
「玲奈ちゃん、来てくれないか」
食堂のドアを開けて、弘義は言った。何か用事なのだろうか?
玲奈が居間に入ると、ソファーに座っている叔父は「こっちにきて」と言った。目が妖しげに光っていると感じた。
おそるおそるソファーの前に来ると、弘義は立ち上がり、「玲奈」と呟いた。異様な空気を察して、玲奈は後ずさった。叔父の動きは異常に速かった。抱きしめられた。
「叔父さん、いやです」
「玲ちゃん。娘とおんなじなんだ」
言葉の意味はわからなかったが、圧迫から逃れようともがいた。
「自分の娘みたいに可愛がりたいんだ」
「やめてください」
叫んだつもりだったが、か細い声しか出なかった。背中にまわっていた弘義の腕は下がった。玲奈の腰に腕をまわして、腰と腰を密着させてきた。
「いやです。やめて」
弘義の腰は小刻みに律動した。ミッキーマウスのサーフTシャツに隠れている玲奈の臍の辺りに、硬いけれど
「愛情なんだよ」
叔父は詭弁を吐いた。
「やめて!誰か」
さっきより大きい声が出た。弘義はさっと離れた。
「玲ちゃん、晴恵に聞こえるじゃないか。誤解だ」弘義は手のひらをひらひらと振った。
「叔父さん。何が誤解なんですか?私、叔母さんに言います」
涙声でうったえた。
「待ってくれ。もうしないから。ほんとうに誤解なんだ」
玲奈はぷいと踵を返して居間を出た。
愛情なんて嘘だ。叔父は私にエッチなことをするつもりだったのだ。男性は性的に興奮するとぺニスが硬くなると本で読んだことがある。
私に対して性的興奮していたのだろうか?信じられない。
また宜しくです。