しんと静まり返った居間に、猛海と7人の女性達が無言で座る。猛海を上座に、右側にベルファスト達3人。左側にエンタープライズ達3人。そして、何故か伊勢が猛海の少し後ろに座っていた。険悪な空気が漂う空間は、呼吸さえ出来ない程重苦しい。猛海の額に一筋の汗が流れ落ちた。
「……さて、何から話してもらおうか」
腕組みし、目蓋を閉じたビスマルクが言う。
「そうだな、聞く内容がちょっとな」
「うむ、だが聞かねば、今後の関係にも差し支える」
エンタープライズとビスマルクが交互に話す。猛海達を他所に、二人は頷き、視線をベルファスト達に向ける。
「……天城、先程見たアレはどういう事か、説明してもらおう」
アレというとは、猛海と天城の情事の事だ。座ってからずっと目蓋を閉じ、沈黙していた天城がゆっくりと目蓋を開ける。その視線は真っ直ぐエンタープライズ達を捉えていた。
「……私は、猛海様を愛しています」
「!?」
静かに放った天城の言葉に、エンタープライズ達が見開く。
「…天城、自分が何を言っているのか、分かっているのか!?」
「落ち着け、ビスマルク」
テーブルを強く叩き、声を荒げるビスマルク。激しく動揺しているビスマルクとは対称的にエンタープライズは落ち着いていた。
「分かっています」
ビスマルクの問いに、天城は小さく頷く。
「ビスマルク、質問は私がする。良いな?」
「…あぁ、頼む」
エンタープライズの言葉に、ビスマルクは再び腕組みし、眉間にシワを寄せながら目蓋を閉じた。
「天城、貴女の指揮官に対する想いは分かった。だが、我々は戦艦だ。指揮官を護り、闘うだけの存在だ。その事は忘れていないか?」
「忘れてはいません。その上で私は。否、私達3人は猛海様を愛しているのです」
その言葉を聞いて、エンタープライズは小さく溜め息をついた。
「…いずれ別れの時が来ると分かっていてもか?」
「それは、百も承知です。猛海様を愛してしまった時点で、私達は覚悟をしています」
天城の言葉に、ベルファストとキュラソーが頷く。
「……別れの時って、どういう事だよ」
猛海の口から溢れた声は、低く震えていた。7人の女性の視線が、猛海に集まる。
「指揮官」
「指揮官って呼び方止めろ」
猛海の声とは思えない程、低い声が猛海の口から出る。エンタープライズは小さく息を吐く。
「…猛海、ずっと言っている事だ。我々は戦艦だと、侵略者達から指揮官を護り、最前線で闘う。それが我々の存在意義」
エンタープライズの言葉に、女性達の視線が猛海を見つめている。ベルファスト達も微笑みながらも、瞳は寂しさで揺れていた。
「……そうか、俺の想いはベルファスト達にも伝わっていなかったんだな」
ポツリと溢した猛海。項垂れ、一階に続く階段へと向かう。
「…猛…猛海様」
後ろからベルファストが近寄る。差し出されたベルファストの手を優しく払う猛海。
「しばらく、一人にしてくれ」
そう言って、猛海は出ていった。猛海は一人、目的地もなく歩く。頭の中を支配しているのは、悲しみでも、苛立ちでもなく、ベルファスト達に対する想いだけ。勿論、そこにはキューブ姿の子達とエンタープライズ達も含まれていた。
「……俺のやれる事をやるだけだ」
誰に聞かせる訳でもない言葉。猛海は小野がいる寮へと向かう。
一方、猛海が出ていった後の女性陣。ベルファスト達は、悲しみの余り猛海の部屋に籠ってしまっていた。
「天城、ベルファスト、キュラソー。部屋から出なさい」
カーリューが扉の向こう側の3人に言う。部屋から返答はない。
「もう良いだろう。ベルファスト、キュラソー、天城。我々の存在意義は、侵略者達から指揮官を護り、闘う事だけ。無用な感情は捨てろ」
「……そんな簡単に割り切れる想いではないんです」
ビスマルクの言葉に、キュラソーが返す。
「だが、いずれは辛くなる。今ならまだ間に合うだろ?」
「…そんな事が言えるのは、猛海様の寵愛を頂いていないからです」
ベルファストが返す。
「なら、どうする?今のままでは、侵略者が攻めて来た時、まともに闘えるのか?」
エンタープライズの言葉に、部屋の扉が開く。部屋から天城達が出てくる。
「なら、証明してみせます。エンタープライズさん、ビスマルクさん、カーリューさん。今から模擬戦しませんか?」
「……ほぅ、良いだろう」
三対三の模擬戦が始まる。
養成校近くの海、陸地から数キロ離れた沖合いに天城達六人の姿。皆、武装を装着し、普段見られない戦艦姿。ベルファストとキュラソーは前衛、天城は後衛の陣形。対して、エンタープライズ達は、カーリューが前衛、エンタープライズとビスマルクが後衛の陣形だった。
「…エンタープライズさん、私達が勝ったら」
「分かっている。もう、口出しはしない。だが」
「はい、私達が負けたら、エンタープライズさん達に従います」
六人全員が確認出来る位置に伊勢の姿。伊勢は審判役だ。伊勢の右腕が頭上から一気に下りた。開始の合図。先に動いたのはカーリューとキュラソー。砲台から爆炎が轟く。紙一重で砲弾を避ける両者。エンタープライズが爆撃機を射ち放つ。ベルファストが爆煙でその視界を塞ぐ。ビスマルクと天城は互いの砲弾を打ち消し合っていた。両者一進一退の攻防。力は同格に感じた。しかし、エンタープライズの爆撃機を完全に防ぎきれず、ベルファストが損傷。天城とキュラソーも一部武装が破壊されている。
「勝負あったな」
「…まだです!」
天城の言葉に、ベルファストが反応。爆煙で広い範囲を見えなくし、キュラソーと天城が同時攻撃した。これには、エンタープライズ達の防御も追い付かず、武装が一部破損する。それでも優位な状況は変わらない。
「……!?」
天城達のいる方とは別の角度からの砲撃が、エンタープライズ達を襲う。エンタープライズ達がそちらを見た。そこにいたのは、人為らざる異形の者。それを侵略者と呼んだ。大きさは3つに分類している。一番大きい侵略者は空母。中型は、武装の種類が多く戦艦、軽巡、重巡。一番小さい侵略者が駆逐艦である。そして、今エンタープライズ達に向かって来ている侵略者の数は、空母5、重巡4、軽巡3、戦艦4、駆逐艦4だ。闘えば、圧倒的不利な状況である。しかし、エンタープライズ達はまだ動く砲台を向け、闘う意思を示した。
「…エンタープライズさん、ここは一旦引きましょう」
「いや、引かない!引けない!我々の存在意義を今ここで証明してみせる」
エンタープライズのその横顔に、天城達もふらつきながら侵略者に砲台を向ける。
「でしたら、私達は猛海様の想いを、その覚悟を証明してみせます!」
「……全艦、一斉に撃て!」
エンタープライズの号令と共に、爆炎が轟いた。
数時間前に遡る。猛海は小野の元にいた。理由は簡単。武具作りをする為だ。
「…猛海、良いのか?」
「確かに、良くないけど、みんなに分かってもらう為には、早くこれを完成させないと」
小野の問いに、作業の手を止めずにそう言った猛海。その眼差しには、猛海の決意が見てとれる。小野は、そんな猛海を無言で見つめ、作業を再開した。しばらく作業していると、慌てて近付いてくる足音。それは養成校の校長だった。
「……あぁ!?水瀬君、ここにいたのか!」
「どうしたんですか、校長」
息を切らした校長に、小野が問う。数回深呼吸した校長は、猛海に近付き。
「水瀬君、お願いです!君のパートナーを戦場へ向かわせて下さい」
「…何故ですか?」
校長の言葉に怪訝の表情の猛海。
「先程、政府から侵略者がこちらに向かっていると情報が」
『…指揮官!…猛海、聞こえるか?』
「……伊勢?」
急に頭から伊勢の声が聞こえ、周囲を見渡す猛海。
「…伊勢か、お前どこから」
『そんな事は後から説明する。兎に角、今エンタープライズ達が侵略者と交戦中。状況は不利だ』
「…はっ?何で、エンタープライズ達が?天城達もそこにいるのか」
『全員いる。だが、説明する時間がない、このままだとみんな沈む。猛海、早く来てくれ』
その言葉を聞いて、猛海の中で何かが弾けた。
「小野先生、校長。俺行ってきます」
「……あぁ、分かった」
猛海は返事もまともに聞かず、武具を手に取り走り出した。走る途中で、小さな少女が二人、猛海を見ているのに気付く。一人はウサギの様な耳を付け、眠たそうにしていた。もう一人は、機械の様な耳を付け、無表情。
「……指揮官、ラフィーも一緒に行く」
「綾波も、一緒に行きます」
「君達も戦艦少女?って、今はそんな悠長な状況じゃ」
そう言って走り出す猛海。ラフィー、綾波も同じように走り出した。ラフィーはやはり眠たそうに。
「綾波達は、駆逐艦だけど」
「…指揮官のお役に立つぅ…」
「寝るなぁ」
走りながら寝そうなラフィーを猛海は担ぎ走る。海が見えて来ると、黒い煙が沖合いから上がっているのが見えた。猛海の背筋が凍る。
「指揮官、まだ間に合います。行きましょう」
綾波が言いながら、走る。猛海はがむしゃらに走り、浜辺に着くと、武具を素早く取り付け、海に入った。いつの間にか下ろされたラフィーも海の上に立っている。
「二人共、俺の指示で動けよ」
「……分かった」
「了解、です」
二人の頷きに猛海は海面を滑るように、ベルファスト達の元へ向かったのだった。
某アニメみたいな感じに話を割ってるわぁ…
近い内に、後半書きますから、勘弁して下さい…