黒い煙が幾つも空へ昇る。大きな波しぶきがエンタープライズ達を襲う。ベルファストとキュラソーがその勢いでバランスを崩した。
「…くっ!?ここまでか!?」
全身、ボロボロになりながらビスマルクが言う。その間も容赦なく侵略者の砲弾がビスマルク達を襲う。
「……!?」
ビスマルク達の頭上を、一発の砲弾が飛び越え侵略者に命中する。
「全員、撤退!!」
誰かの声が聞こえた。その声のする方へ視線を向ける。そこには、砲台を侵略者に向けた伊勢の姿。同時に、何かがビスマルク達の横をすり抜けた。その何かは、あまりにも速く、目で捉える事は難しい。素早い動きで侵略者の背後に回り込むのが見えただけ。
「…エンタープライズさん、撤退して、下さい」
いつの間にか横にいる綾波。そこにはラフィーも眠そうに立っている。
「…いゃ、しかし」
エンタープライズ達が困惑していると、伊勢の砲台から爆炎が轟く。
「……指揮官命令、早く行こ?」
目蓋を擦りながらラフィーが言う。それでもエンタープライズ達は、決断出来ずにいた。
「綾波、ラフィー!」
誰かの声。その声には聞き覚えがある。声に反応し、綾波とラフィーが、エンタープライズ達の前に回り込み、交差しながら侵略者に魚雷を放つ。同時に、伊勢が砲弾を放った。侵略者に命中すると同時に、一番後ろにいた空母型の侵略者が、横からすり抜ける様に動いた何かに、横一閃で真っ二つになる。唖然とする面々。何が起こったのか分からない侵略者達は、その何かに襲い掛かる。しかし、素早い動きで、数体を蹴り上げ、隙間からその包囲網を抜け出し、エンタープライズ達の前に立つ。
「全員撤退しろって、命令した筈なんだけど」
「…指……猛海」
動揺を隠せないエンタープライズ。いや、エンタープライズだけではない。そこにいた面々はみな、同じ表情だった。何故なら、今目の前にいる人物が、本来ならここにいるべきではない猛海だったから。さらに、猛海の姿が、動揺を増幅させていた。
「……猛海様、その姿まるで」
ふらつきながら、天城が言う。猛海の姿は、エンタープライズ達と同じ、武装姿。しかも、その武装は明らかに異様。右手には長刀。左側の肩から爆撃機の滑走路が腕の長さまであり、腕で固定されている。その滑走路の横幅は、エンタープライズの身に付けている滑走路より、2倍近くあった。背中にも、猛海の身長と同じライフル。腰には短刀が2本ある。両太腿に、黒い装甲。足元は、天城達と同じ、水上に浮く為の装置。その装置も明らかに、分厚く、天城達の装置より馬力が違うのが、分かった。
「…全員撤退、早くしろ」
「…いゃ、だが」
「ビスマルク、前に言ったの覚えているか?」
猛海の問いに、ビスマルクは瞬時にその時の記憶を思い出す。その間、猛海の背後に侵略者の砲弾が向かって来るのが見えた。声を上げるよりも早く、猛海はライフルを肩から抜き、その砲弾を撃ち落とす。
「俺は、護られるより、護りたいんだよ」
無駄のない動き。ビスマルクは見惚れてしまう。いや、エンタープライズ、カーリュー。そして、天城達全員が猛海の漢らしさに、頬を染めた。
「綾波、ラフィー。それから伊勢、エンタープライズ達を援護しながら撤退しろ」
「了解、です」
「…分かった」
「任せろ!」
猛海の命令に、ラフィー達三人が動き出す。 すると、ビスマルクが猛海の腕を掴んだ。
「…猛海待ってくれ」
「何だ?」
「…私もここに残る、側にいたい」
ビスマルクが懇願するように猛海を見つめた。ビスマルクの頬を猛海の手が撫でる。切ない表情をみせるビスマルク。猛海はビスマルクの唇を指で触れ、軽くキスする。
「大丈夫だ。すぐに戻るから、みんなと撤退しろ」
何も言えないビスマルク。猛海は、ビスマルクをその場に残し、一人侵略者の方へ向かった。離れた場所からエンタープライズ達は猛海を見守っている。最初、心配で胸が張り裂けそうだったが、そんな心配を余所に、猛海の猛攻は凄かった。空母型の侵略者を3体、重巡、軽巡4体を沈め、戦艦1体と駆逐艦2体を難なく沈めた。侵略者達は、劣勢と悟ったのか、蜘蛛の子を散らす様にその場から離れていく。そして、猛海は侵略者達が見えなくなるまでその場にいた。ゆっくりと振り向く猛海。陽の光に照らされ、猛海は神々しかった。
整備場の2階。畳の大部屋、布団を並べ横になるキュラソー、ベルファスト、天城、カーリュー。猛海が胡座のまま、四人を見ている。一つ大きく息を吐く猛海。
「…本当、勘弁してくれ。俺は肝が冷えたぞ」
「申し訳ありません」
四人それぞれから謝罪の言葉が出る。
「まぁ、今回は間に合ったから良かったけど」
そう言って、近くで横になっているキュラソーの頬を撫でる猛海。キュラソーが頬を染めた。
「…猛海様ぁ」
猛海の手を掴むキュラソー。ヨロヨロと起き上がり、猛海に抱き付いた。猛海が優しく抱き締める。
「…私、もう猛海様に逢えないかと」
嗚咽を漏らし、そう言うキュラソー。気が付けば、天城とベルファストも猛海に寄り掛かる。カーリューはその状況を静観していた。猛海の手が、カーリューの頭を撫でる。ビクリと身体を反応させるカーリュー。目尻が下がり、瞳を潤ませる。
「…肩の力を抜けよ、カーリュー」
猛海がそう言うと、カーリューが微笑む。初めて見せる表情に、猛海の鼓動が高鳴った。
「…ビスマルク」
「何だ、エンタープライズ」
ボロボロの服を脱ぎながら、エンタープライズとビスマルクは互いの身体に消毒液を付け合う。
「指揮官…いゃ、猛海は今までの指揮官達とはやはり違うな」
「…そうだな」
無言になる二人。静かな部屋に聞こえる隣の部屋の声。二人は耳を澄ませた。
「……ちょっ…と待って…」
「ほら、良いから」
声の主は、猛海とカーリュー。二人は見合い、服を着ると猛海達がいる畳部屋に向かう。勢い良く襖を開けた。目に飛び込んで来たのは、下着姿の天城達と猛海に服を脱がされているカーリュー。一気に顔を真っ赤に染める二人。
「…な……何を」
「ああ、丁度良いところに、二人も服を脱げ」
恥ずかしがるカーリューに、猛海は服を脱がし下着姿にさせると、今度はエンタープライズ達に近付く。二人は後退り。しかし、猛海は二人の腕を掴んだ。掴まれた腕の強さで、猛海に敵わないと悟る二人。諦めて素直に従った。その様子を、天城達は黙って見ている。猛海の前に下着姿の女性6人。猛海は6人の身体を真剣に見つめる。一人ひとりを隅々まで観察し、怪我の箇所に触れた。
「……んぅ」
「……ぁ…」
猛海に触れられる度、天城達が甘い声を出す。
「…ちょっと声出すの我慢しろ」
珍しく猛海が注意する。3人は必至に我慢。猛海の視線がエンタープライズに向く。真っ赤に染め、猛海の視線から顔を反らしたエンタープライズ。猛海の手が、エンタープライズの肩に触れる。ビクリと反応するエンタープライズ。
「…ん~、かなり怪我の箇所が多いなぁ、ビスマルクも」
そう言って、ビスマルクの脇腹を撫でる猛海。
「よし、お前達はしばらく休んどけ」
猛海の発言に、6人全員が猛海に集中する。
「それはどういう事ですか?」
「そのままの意味だ、怪我が治るまで大人しくしてろ」
「…そんな」
ベルファストが泣きそうな表情をする。猛海は優しく頭を撫でた。
「たまにはゆっくりしてろ」
「でも、猛海様に触れられないのは、辛いです」
「分かった。撫でるくらいはしてやるよ」
ベルファスト達3人の甘えっぷりを目の当たりにし、エンタープライズ達3人は唖然とする。
「俺はお前達を護りたいんだ。頼むから今は俺の言う事を聞いて休め。勿論、エンタープライズ達も怪我が治るまで休めよ」
「……猛海がそこまで言うなら、でも護衛は」
「心配しなくても、綾波達がいる」
「…ぅん、ラフィー頑張る」
部屋に綾波とラフィーがいた。実は最初から部屋にいたのだが、エンタープライズとビスマルクは気付いていなかった。伊勢もいたのだが、居眠りしている。
ある程度、話が纏まったところで、猛海は1階に作ってもらった浴場へと向かう。元々整備場だった場所。住むには色々と足りなかった。特に水回りは生活する上で欠かせない。意外と風呂が好きな猛海。鼻歌混じりに浴室へと足を踏み入れる。
「…あら、貴方誰?」
湯けむりで視界が曇っているが、そこには見知らぬ獣耳の美女。勿論、一糸纏わぬ姿で、猛海を見つめていた。隠す物が薄い布だけのその女性は、妖艶に微笑む。色白の肌、豊満な乳房と括れた腰。そして、むっちりとした臀部。長い黒髪は濡れ、背中に張り付いている。言葉が出ない猛海に、その女性が近付く。次の瞬間、猛海の首筋に冷たく硬い感触が。
「…ほぅ、拙者の目の前で堂々と覗きとは」
背後にいたのは、少し垂れ耳の黒髪の女性。その女性も美女だった。しかし、今の猛海はそんな余裕等ない。何故なら、首筋に刀を突き付けられたからだった。
かなり間が空きました。なるべく、話を割らないように頑張ります。