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荒れる海原を、猛海が進む。真っ黒だった空は、次第に明るくなり始めていた。ようやく、昼間らしくなった。波はまだ荒れている。大きくうねり、大波が夕立達を襲う。
「猛兄、もう帰ろうよぅ…」
「そうだな、そろそろ帰ろうか」
半泣きの夕立。夕立の頭を撫でながら、猛海は言う。猛海の側には、愛宕、高雄、夕立、エセックス、ジャン・バール、ダンケルクの六人がいる。先程まで、猛海達は侵略者と交戦していたが、出てきた次いでに、猛海の新たな武具の調整の為、ここに留まっていた。
「もう良いのか?」
「ああ、付き合わせて悪かったな」
「猛海様と一緒なら、構いませんわ」
高雄と愛宕に、柔らかく微笑む猛海。二人の頬が、ほんのり染まる。そんなやり取りを、後ろからエセックス達三人が無言で見つめていた。猛海はその視線に気付く。素早く近付き。
「どうした?」
「…ぁ…ぃえ、何でも…」
「…気にしないで…下さぃ」
「…ぃや…何でもなぃ…」
視線を泳がせ、猛海から距離を取ろうとする三人。猛海は、首を傾げた。その後ろで、愛宕の口元が緩む。
「…愛宕、何を考えてる?」
「別に、ただもう少し、素直になれば良いのに。って、思ってるだけよ?」
「…拙者は、愛宕は素直になりずきだと思うが」
呆れた表情で、高雄が言う。猛海と六人は、港へ急いだ。
港が小さく視界に入る。猛海は、後ろの六人に視線を向けた。一瞬で青ざめる猛海の表情。その猛海の表情に、六人が一斉に背後を見る。すぐ側まで迫る侵略者達。みんなが、息を飲んだ。猛海は奥歯を噛む。
「…いつの間に!?レーダーには反応が無かったぞ!」
「恐らく、この荒れた波で」
「数は!」
「…分からん」
目視確認出来た数は、空母型から駆逐艦型全て含めて、20は超えている。
「みんな、弾薬の残りはあるか?」
「…ギリギリ…っと、いったところだな」
「分かった。なら、俺が引き付けるから、しっかり狙え。無駄撃ちするなよ!」
そう言って、侵略者に向かい、駆け出す猛海。猛海と六人の連携は見事な物ものだった。侵略者達に斬り込み、着実に一体ずつ落としていく。誰も無駄な弾を撃つことはない。猛海の指示通り、動いていく。
「これで、最後!」
最後の一体を沈め、その場に片膝を付く猛海。肩が激しく上下している。六人も同じように、呼吸が荒い。
「…猛海様、大丈夫ですか?」
「……あぁ、何とか」
猛海の側に愛宕が近付き、手を差し出そうとした時。
「……指揮官!?敵機が!?」
エセックスの言葉に、猛海は視線を動かす。そこにいたのは、空母型が3、戦艦、重巡5、駆逐艦型が7。
「…どうしますか?」
震える唇で、エセックスが問う。弾薬はもうない。撤退するにしても、港までは距離がある。
「……愛宕、エンタープライズ達に伝達」
「もうしました。でも、間に合うか…」
猛海は一度、目蓋を閉じ深呼吸を一つ。そして、ゆっくりと開く。
「……撤退だ」
「はい、でも」
「良いから、撤退しろ」
「指揮官、その命令は聞けません」
ダンケルクとエセックスが同時に反発。猛海が二人を睨む。ジャン・バールも、無言だが聞くつもりはないようだ。
「愛宕、高雄」
「私達も、猛海様を置いて行くことは出来ません」
いつも猛海の言葉に従っている愛宕も、頑なに拒む。侵略者の砲台が轟く。猛海は身を翻しながら、砲弾を切り捨てた。
「…今のお前達は、足手まといだ。撤退しろ。それが聞けないなら、お前達の指揮官を辞める」
猛海は無表情だった。一切の感情が読めない。その間も、砲弾が向かってくる。猛海はそれを、次々に切り捨てた。
「…分かりました。撤退します」
泣きそうな表情と声で、愛宕が頭を下げ、ゆっくりと港へ向かった。高雄と夕立も同じように、頭を下げ、港へ向かう。しかし、エセックス達は残った。侵略者達は、三人が戦えないと解ると、執拗に狙う。その度に、猛海が三人を庇い、負傷。体力を削られていく。次の瞬間、一斉攻撃で猛海に砲弾を放つ。大きな爆発音を響かせ、水柱が立った。猛海の身体が宙を舞う。エセックス達の悲鳴が、空に響き渡った。
数十分前に遡る。居間で寛いでいたビスマルク、天城、エンタープライズの元に、青ざめた表情の伊勢が飛び込む。怪訝な表情の三人。
「…大変だ!?早く、猛海の元に!」
「どうした」
「少し落ち着いて」
天城が、お茶を伊勢に渡す。一気に飲む伊勢。その湯飲みを放り投げ、伊勢が机を叩く。
「そんな、悠長な事をしてる場合じゃないんだ!?」
そう言って、愛宕から伝達された内容を、三人に伝える。三人は無言で椅子から立ち上がり、ベルファスト達、メイド隊と港へ向かった。かなり離れた場所から黒煙が上がっている。一台の車が、エンタープライズ達の横に停まった。中から出てきたのは小野。
「…貴方は」
「おぅ、話は猛海から聞いてる」
「…っえ?」
小野の言葉に、その場にいた全員が固まる。言葉を探している天城。小野はそれに気付く。
「話は後だ。とりあえず、これを君達に」
そう言って、車のトランクを開けると、人数分の水上装置があった。猛海と同じ物。
「これなら、猛海の所まであっという間」
白い歯を見せ笑う小野。小野の言動に、全員が呆けていたが、我に帰るとその武具を掴む。
「すまない、助かる」
「兎に角、今は考えている暇はない。装置の性能は、猛海を見てたから分かるだろ。行くぞ!」
エンタープライズとビスマルクの号令で一斉に飛び出る面々。バランスを崩しながらも、猛海の元に急いだ。
猛海の身体が、水面に叩き付けられる。エセックス達は、発狂しかけた。その時、無数の砲弾が、侵略者達に向かったのが見えた。力無く振り向く三人。エンタープライズ達がそこにいた。
「エンタープライズ…先輩」
「エセックス。何故、猛海を護らない」
「…違うんです。もう弾がなくて」
エンタープライズとエセックスの横を、天城が通り過ぎる。水面に浮かんでいる猛海の身体を起こす。猛海の顔面は、血で汚れ、左目蓋が切れている。腹部に刺さる幾つもの鉄片。
「猛海様」
「天城、今救護ヘリがこちらに来ている」
上空に響く、ヘリの音。猛海の呼吸が弱い。咳き込み、蒸せた猛海の口から、大量の血が出る。救護スタッフが、素早く猛海をヘリに乗せ、搬送した。
「ベルファストさん、カーリューさんとキュラソーさん三人で、猛海様の元へ」
「分かりました。では、後程連絡します」
ベルファストの言葉に、頷く天城。ビスマルクとエンタープライズ達は、その場に力無く座り込んでいるエセックス達を囲む。
「戻るぞ。立て」
「……はぃ」
恐怖で怯えた表情の三人が頷く。無数の侵略者達の残骸を残し、エンタープライズ達は港へ向かった。
静まり返る居間で、エンタープライズ達は、ベルファスト達の報告を待つ。重苦しい空気が、さらに場を暗くする。そこに、天城と愛宕が戻ってきた。
「…猛海は、どんな状態だ?」
「辛うじて、息はあります。今夜が山場だと」
「……そうか」
「私は、悲観する事はないと思っています」
天城の発言に、エンタープライズ達は視線を向ける。
「どうして、そう言える。根拠は?」
「私達は、『魂の輝き』でこの世界に存在する事が出来ます」
「そうだな」
ビスマルクの返答に、天城は頷く。
「もし、猛海様の『魂の輝き』が弱っているのであれば、私達の身体には明らかな変化がある筈です」
天城の言葉に、自分達の身体を見る。そして、近くにいる者達の身体も観察した。
「確かに、変化は見られない」
「…私は」
「はい、そこまで~」
居間の扉を蹴破り、入ってくる数人の男達。
「何者だ!?」
「おお~怖」
高雄が刀を抜く。ニヤニヤとイヤらしい笑みを見せながら、男達が近く。
「俺らを切ったら、君達の大切な人が死んじゃうよ」
「…何を」
「だから、抵抗したら、水瀬が死んじゃうよ?って、言ってんの」
その言葉に、力無く刀を落とす高雄。刀を隅に蹴飛ばし、ニヤニヤと笑う男達。
「…何が望みだ」
エンタープライズが問う。すると、男達が、近くにいたエセックス、ビスマルク、ダンケルク、天城、愛宕の背後に周り、胸を揉みしだく。
「っな!?」
「俺らのモノになれよ」
その発言に、背筋が凍り付いた。
混濁する意識の中、猛海は夢を見ていた。天城達が、見知らぬ男達に、胸を揉まれ、服を脱がされそうになっている。
(止めろ!?)
男達の手は止まらず、彼女達の大切な部分に触れようとしている。
(…彼女達に触れるなぁ!!…)
激昂し、猛海が腕を伸ばす。何が猛海の腕に触れた。猛海の視線が、その何かを捉える。そこに、七人の見知らぬ女性達。逆光でその表情も見えない。
『死にかけている状況で、その輝きは興味深い』
『単なるバカなのよ』
『私は、好きよ』
『ウム』
『あいつらに比べたら、マシなのは確か』
『心配しないで』
『そう、私達が護って上げるから』
初めて聞く声。そして、光が強くなる。猛海は、七人に手を伸ばした。
(…君達は)
『これから宜しく頼むよ。我々の指揮官。また後で逢おう』
声だけを残し、彼女達は消えていった。
明けましておめでとうございます。年末年始の激戦中、真っ只中です。グロッキーな状況で、ようやく休みがね…。まだまだ、激戦が続くので、不規則なアップは変わりません!
疲労困憊でも、インフルエンザになってないのが奇跡やわ~。