続きをどうぞ
ICU(集中治療室)が、慌ただしかった。治療室の中に、緑色の長い髪の女性、黒髪ロングで額に二本の角を生やした女性、そして、ベルファスト達も知っている三姉妹の末っ子、フォーミダブルが、猛海の側に立っていたからだ。
「フォーミダブル様!?どうして、何故この様な事を!?」
ベルファスト達の腕を拘束する三人の女性。赤髪の女性、白銀の女性は、ベルファスト達も初めて見た。もう一人は、エンタープライズ達とよく共にし、ベルファスト達も顔馴染みのチェイサーだった。
「チェイサーさん、答えて下さい!」
「…五月蝿いわねぇ、馬鹿指揮官の命令なんだから、聞くしかないでしょ」
「……アドミラル・ヒッパー」
ベルファストの拘束を解き、チェイサーがベルファスト達の前に立つ。複雑な感情が見て取れる。
「私達の指揮官は、ベルファストさん達の指揮官の命を狙っています」
驚愕の表情の三人。チェイサーは溜め息を一つ。
「理由は?」
「……馬鹿な事だと思っていますが、私達の指揮官は、ベルファストさん達を含め、エンタープライズ達を欲しがっていて」
「…欲しがってって」
呆然とするベルファスト。
「ベルファストさんが、考えている事は分かっています。私達を召喚、維持する為には『魂の輝き』が強くなければ無理ですから」
「まぁ、あの馬鹿指揮官達はこの事、知らないんだけどね」
やれやれとヒッパーが首を横に振る。
「…猛海様をどうするのですか?」
「エンタープライズ達が、指揮官達に危害を加えたら、殺すように命令されています」
その発言に、ベルファスト達が猛海の方に視線を向ける。緑色の長い髪の女性が短剣を持っていた。すでに、その剣の先は、喉元に当てられている。
「動かないで下さい。ベルファストさん達が抵抗すれば、その時点でも殺すように言われています」
ベルファストの奥歯がギシリと鳴った。それは、キュラソーとカーリューも同じだ。しかし、喉元に当てられた短剣を、その女性は退けた。チェイサーが驚く。フォーミダブルと黒髪ロングの女性も様子がおかしい。緑色の髪の女性の方に、視線を向けず、猛海を見て驚いていた。三人の口元が何やら動いている。
「…信じられない。こんな事が」
「凄いです」
「面白い」
ベルファスト達も、猛海の異変に気付いた。明らかに、猛海の『魂の輝き』が大きく強くなっている。意識が戻る様子はない。だが、その強さは広がり、治療室全体を包んだ。ベルファスト達を囲んでいたチェイサー達四人が、猛海の方に向かう。輝きは、七人を呑み込んだ。ベルファスト達は、輝きの強さに目が眩み、七人の姿を捉えられない。
「…何が起こっているのでしょうか」
「分かりません」
カーリューの問いに、ベルファストはそう答えた。次第に、輝きが元の状態に戻る。ベルファスト達が七人を見た。
「指揮官の望みとあらば」
緑色の髪の女性が言う。七人の身体は、淡く光っている。ベルファスト達は息を飲んだ。チェイサーが、ベルファスト達に視線を向ける。表情は笑みが見えた。
「心配しないで。私達の指揮官は、この御方よ」
そう言って、猛海の手に触れた。ベルファストが、ハッとした表情。
「ベルファストさん、ちょっと行ってきます」
「…どこへ」
「そんなの。元、馬鹿指揮官の所に決まってるでしょ?」
そう言うと、七人はゆっくりと消えていった。
天城と愛宕は抵抗している。しかし、服は破かれ、その豊満な乳房が、男達の前で震えていた。
「良いねぇ、もっと抵抗しろよ。その分、燃えるぜ」
ビスマルクも必至に抵抗している。エセックスとダンケルクは、抵抗する力はない。猛海に対する罪悪感からきているのか、成すがままだ。
「抵抗がないのは、ヤリ易くて助かるけど、面白くねぇな。犯す気も起きねぇわ」
服を脱がされ、全裸にされている二人。エンタープライズが叫ぶ。
「お前達の猛海への気持ちは、その程度か!?お前達も猛海を慕っているのだろ?その気持ちも諦めるのか!?」
「心配するなよ。コイツらをヤったら、お前もたっぷり可愛がってやるから」
エンタープライズの髪を摘まみ、匂いを嗅ごうと鼻を近付けた。その時。
「彼女達から離れてもらおうか」
言葉と共に、緑色の髪の女性、チェイサー達が現れ出る。驚く面々。
「…お前ら、何命令無視してんだ!?」
「そうだ。指示があるまで、待機してろ」
激昂する男達。エンタープライズ達は、何が起こっているのか分からない。
「その命令は無効だよ。我々の指揮官は、君達ではない」
「お前、何を言っている?リットリオ」
リットリオと呼ばれた女性に、男が問う。リットリオは、朗らかに笑う。
「何を言っている?簡単な話だよ。我々の指揮官は、水瀬猛海だ」
「…そんな」
「そんなもこんなも、そうなんだから分かりなさいよ。本当、馬鹿ねぇ」
アドミラル・ヒッパーが呆れた表情で言う。男達の表情が、怒りに染まっていく。殺意が見てとれた。その場にいる女性全員が、砲台を出現させ、男達に向ける。全裸の二人も、天城、愛宕、ビスマルクも同様。一瞬で、形勢逆転になった。
「一つだけ、教えて上げよう。我々は、自らの指揮官を選ぶ権利がある。例え、別の指揮官に従っていたとしても、それを上回る能力がある指揮官を選ぶ。それが、我々のたった一つの権利だ」
腕組みしたリットリオが言う。
「それに、君達が彼女達を、自分のモノにするには『魂の輝き』が弱すぎる。これだけの人数を、君達は召喚、維持する事は出来ない」
壊れた居間の扉を、壁に立て掛ける人物がいた。振り向く面々。そこにいるのは、指揮官養成校の理事長になった木下と小野だった。二人を連れてきたのは、黒髪ロングの女性とチェイサー。
「これはまた、どうしたものか」
「…理事長」
男達が後退り、壁際に追い込まれた。その間に、エセックスとダンケルクに上着を掛ける天城とエンタープライズ。天城も片手で胸元を隠している。
「君達の指揮官は、彼らかい?」
「いいえ、我々の指揮官は水瀬猛海に移っています。彼らのパートナーはもういない」
「…成る程」
うんうんと頷く木下。いつも、穏やかな笑みを見せている木下の表情が、一変する。殺意とも似た視線。ゆっくりと男達に近付く。
「指揮官としての能力が無くなった者は、ここにいる資格はない。早々に出ていきなさい。それから、彼女達に対する言動、壊した扉の修理費、分かっていますね?」
木下の発言に、青ざめる男達。戦意喪失状態だ。小野に連れられ、トボトボと部屋を出ていった。
「それじゃ、私もこれで」
「…はい、ありがとうございました」
木下に頭を下げるエンタープライズ達。張り詰めていた空気が緩む。エセックスとダンケルクの頬に涙が流れ落ちた。
「間に合って良かった」
「はい、ギリギリでしたから」
そう言って、エセックスとダンケルクの前に座るチェイサー。天城と愛宕に、服を渡す伊勢と高雄。綾波、ラフィー、夕立は、畳部屋から怯えた表情で出てきた。
「もう、大丈夫ですよ」
愛宕が優しく言うと、安堵の笑みで、みんなのところに駆けてくる三人。
「ヒッパー、久しぶりだな」
「元気そうで何よりだわ。ビスマルク、それとオイゲン」
「ヒッパーの指揮官があんなのだなんで、知らなかったわ」
「五月蝿いわねぇ。私だって、好きであんな馬鹿指揮官を選んだ訳じゃないっての」
「召喚装置のせいか」
「そうよ。水瀬って男が産まれる前に、あんなのに捕まったのよ」
ヒッパーがお怒りモードで言う。ビスマルクは溜め息を一つ。
「水瀬猛海の存在を知ったのは、我々が元、指揮官に捕まった後だからな」
「…初めて見る顔だな」
リットリオに近付くエンタープライズ。ビスマルク達も視線を向ける。
「我々は、先の大戦で戦った貴女方の後、召喚された戦艦達だ。だから、知らないのは無理もない」
リットリオが目配せする。一歩前に出るリットリオ。
「私は、リットリオだ。それから、こちらはザラ。それから、ジュリオ・チェザーレ」
赤髪のザラが頭を下げ、白銀の髪のジュリオ・チェザーレが同じように下げる。
「私は、能代と言います。天城さん達よりも後に召喚されたので、ご存知ないと思います」
黒髪ロングの能代が言う。天城は能代を見つめ、優しく微笑む。
「能代さん、これから宜しくお願いしますね」
「…はぃ」
憧れのお姉さんに逢えて、嬉しそうな能代。頬を染めた。
「ちょっと質問」
伊勢が手を上げ、声を掛ける。視線が一気に伊勢に集まった。
「お前達の指揮官が、猛海になったって言ったよな?」
「…ああ、そうだ」
「なら、猛海の意識は回復したのか?」
その問いに、首を横に振るリットリオ。天城達の表情が曇る。
「危機的な状況なのだが、指揮官の『魂の輝き』は強かった。我々を召喚する力がある程に」
「猛海様が、召喚?」
「…ああ、そうだ」
天城の問いに、頷くリットリオ。そして、事の経緯をみんなに説明したのだった。
猛海が負傷してから、三ヶ月後。ようやく、猛海が戻ってきた。殆ど入院中の世話をメイド隊の三人と天城が担っていた。久しぶりの猛海との再会に心を踊らせる面々。先に部屋に入って来たのは、車椅子を抱えた天城とキュラソー。みんなの表情が一瞬で変わる。そして、両脇をベルファストとカーリューに支えられながら、猛海が部屋に入って来た。エンタープライズの瞳は揺れた。ビスマルクは唇を噛み、ヨークタウン、愛宕、ダンケルクの頬は、涙で濡れる。伊勢や高雄、夕立、ラフィーと綾波も今にも泣きそうだ。みんなの目に映る猛海の姿。それは、左目を失い、右手の手首から先はない。そして、左の足は。付け根から無くなっていた。
「よう、久しぶりだな」
当の猛海は、いつも通り笑っていた。
アップが不規則になってしまうので、書ける時に書きましたぁ…。
次の投稿まで、勘弁して下さい…。次回は、極甘で行きますから!