「……」
言葉が出ない面々。ただ、茫然とモナークを見つめ、立ち尽くしている。何とも言えない雰囲気に、猛海は腕組みし。
(…う~ん、これはどうしたものか。ここまで困惑するとか、まだ話さないといけない事があるんだけど…)
と、思案していた。ただ言えるのは、召喚されて『ここ』にいるのは、『モナークと明石だけではない』という事だ。言うべきか悩んでいる内に、モナークが天城達に近付き、一人一人観察を始めていた。モナークの視線が天城達に突き刺さる。怪訝な表情を見せたジャン・バール。
「…何だよ」
今にも、モナークに掴み掛かりそうだ。
「モナーク、止めろ。みんなが怯えるだろ?」
猛海の言葉に、モナークは無言で猛海を一瞥。そして、小さく息を吐く。
「分かった。ただ、一言だけ良いか?」
「…ああ」
天城達に背を向け、モナークは猛海を見据えた。
「…猛海、我々の事。彼女達に話していないだろ」
「……ぅ」
図星を突かれ、猛海は小さく呻く。猛海の反応をみて、モナークは再び息を吐いた。
「前から思っていたが、猛海は肝心な事を話さない。彼女達だけではない。我々にも、これだけ仲間がいる事を何故話さないんだ」
「…すみません」
指摘されて、猛海は小さくなった。猛海は、みんなに自分の本心を話さない。その理由は、ちょっと子供っぽいかも知れないが。
「モナークといったか、猛海からあたし達の事を、どんな風に聞いているんだ?」
ずっと黙っていた伊勢が問う。モナークは、伊勢に視線を向け、腕組み。
「…どんな風にか…、そうだな。エンタープライズ、ビスマルク。伊勢、カーリューが、召喚されたところまでは聞いている」
「……」
猛海に、複数の視線が向けられる。猛海の身体がびくびく怯えていた。
「その後は、誰が召喚されて、何人いるという話は最近までなかったな」
モナークの話に、一同は、ほぼ同時に溜め息をついた。
「…猛海様」
天城とベルファストが、同時に声を掛ける。その表情は、恐ろしいほどの微笑み。猛海の頬に、一筋の汗が流れ落ちた。
「全て、包み隠さずお話しして頂けますね?」
「……はぃ」
大きな身体を、小さくしながらそう返事した。
「なるほど、君達は自ら猛海を選んだのだな」
椅子に腰を掛け、優雅に紅茶を飲みながら、モナークがそう言った。その真向かいに座っているのは、リットリオとザラ。ジュリオ・チェザーレ、アドミラル・ヒッパー。モナークの両隣に、フォーミダブル、チェイサー。少し離れた場所に、能代が座っている。
「ああ、指揮官の『魂の輝き』に惹かれてね」
そう言いながらも、少しだけ頬が赤い。モナークはすぐさま気付いた。
「…ふむ、それだけではないようだが」
その言葉に、一番反応したのは、リットリオとザラ。誰が見ても明らかに、顔が真っ赤。それを見て、モナークの表情が和らいだ。
「君達は、猛海に好意を抱いているようだ」
「……」
「ははは、隠さなくていい。猛海には、我々を惹き付ける力がある。その証拠に、我々も猛海を愛している。指揮官としてではなく、一人の男性として」
二人は、恥ずかしそうに俯く。モナーク達がいるのは、研究所の食堂。奥のキッチンでは、研究員達のパートナーが、昼食を作っていた。
「しかし、驚いた。我々の知らない間に、こんなにも仲間が増えていたのだな」
改めてモナークは言葉を発する。視線は、モナーク達から離れた場所に座り、天城とベルファスト、ビスマルク、エンタープライズの四人に説教される猛海を見た。
「…どうして、猛海は私達に何も話さなかったのかしら?」
珍しく、オイゲンが首を傾げた。モナークの視線が、再度猛海に向き、オイゲンを見据える。
「…猛海の心意は分からないが、話せない事情があったのだろう。…まぁ、猛海の事だから、大した内容ではないだろうな。ただ、ようやく合点がいった」
モナークの言葉に、全員が首を傾げた。
「…以前から、猛海は、『我々が使える武具を作りたい』と話していた。その言葉に、意味が分からない訳ではなかったが、作る数が多かったから、疑問に感じていたが。そういう事だったのだな」
「…明石は、大変だったにゃ」
くたびれた表情で、明石が言う。そこに、天城達の説教から解放された猛海が戻ってきた。その表情は疲労困憊。
「…ああ、明石お疲れ」
「猛海しゃん、よしよししてにゃ」
猛海に抱き付く明石。猛海は、躊躇いなく、頭を撫でる。羨ましそうに見つめるラフィー達、幼女組。猛海はその視線に気付き、ラフィー達もなでなでしている。
「それで?猛海、ちゃんと話をしたのか?」
椅子に座ったまま、モナークが言う。
「……はぃ」
「何だか、歯切れが悪いな。もしかして、まだ隠しているのか?」
「…他のメンバーの事か?」
「いや、それもだが。猛海が、天城達をここに連れて来なかった理由だ」
猛海の視線が、宙を舞う。
「この期に及んで、まだ、何か隠しているのですか?」
猛海の背後に立つ、天城。恐怖を感じて、ゆっくりと猛海は振り返った。凍り付く程の笑顔。猛海は、本能的に後ろに下がる。
「…同志が戻ってるって!?」
「同志~、猛海さ~ん、どこですか~?」
「猛海さ~ん」
「…お前達、廊下は走るな」
「そんな事言って、君だって、ソワソワしてるよ」
「…してない」
「ははは、正直に認めたまえ」
食堂前の廊下が騒がしい。猛海に集まっていた視線が、食堂の出入口を見る。勢い良く開かれる扉。飛び込んできたのは、金色の髪の幼女。その幼女が、猛海を見つけると。
「みんな~、猛海さんいたよ~」
廊下に向かって、声を上げる。声を聞き付け、ぞろぞろと入ってくるメンバー。猛海を見つけると、一目散に猛海に向かって走ってきた。そして、抱き付く。
「…ぉい、こら」
「猛海、待ちわびたぞ!」
「猛海さん、いけない子ね。お仕置きしないと」
「ははは、同志猛海。元気そうで何よりだ!」
猛海を囲み、ワイワイ騒ぐ。天城達は呆然。誰かが、咳払い。モナークだった。それに気付いた面々が、我に帰り、猛海を囲っていたメンバーが、黙る。
「…お前達、久しぶりに猛海に逢ったからと、はしゃぐ気持ちは分かるが、とりあえず、彼女達に自己紹介だ」
モナークが目配せする。モナークの言葉に、頷き、姿勢を正すメンバー。一人、一歩前に出る。白銀の長髪。踝まである白いコートに身を包んだ女性が、天城達を見据える。
「お初にお目に掛かる。私は、ソビエツカヤ・ロシアと言う。宜しく頼む」
ロシアが、自身の左右に姿勢を正して立つ女性二人に視線を振る。それが合図で、視線を向けられた二人が、一歩前に出た。最初に右側に視線を向け。
「彼女はチャパエフ」
「みなさん、宜しくね」
ショートカットの淡い青髪の女性が、にこりと微笑む。次に、左側に視線を向けるロシア。
「彼女は…」
「いやぁ、私はオクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤだ。又は、ガングート。好きな方で呼んでくれ」
ロシアと同じロングコートを肩に掛け、白銀の長髪、緩めのパーマを揺らし笑う、オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ。又の名を、ガングート。
「…はぁ」
盛大な溜め息を一つ、ロシアは吐いた。
「んじゃ、次は私の番だね」
そう言って、濃いピンクの長髪を2つに結い、豊満な乳房を揺らす女性。
「私は、ブレマートンだよ。宜しくね」
天城の視線は、ブレマートンのヘソピーに釘付け。天城だけではなく、能代、高雄、愛宕。メイド隊三人。伊勢と夕立達も、ブレマートンのヘソピーを凝視している。
「…んん、最後は。アルバコアか」
「はいは~い、私、アルバコア。みんな宜しく~」
猛海の腕にぶら下がり、満面の笑みで、アルバコアは言った。
「…ふむ、これでここにいるメンバーは、紹介し終わったな」
モナークが言う。そこに、三笠、日向、ティルピッツ、ダイドー、シリアスの五人が入ってきた。
「自己紹介は終わったのかい?」
「三笠、今終わったところだ」
「……っえ?三笠さん達は?」
愛宕の問いに、三笠がキョトンとしている。そして、猛海に視線を向けた。
「水瀬君、君。いい加減、ちゃんと話をしなさい」
三笠の叱咤。姿勢を正す猛海。
「すみません。ちゃんと話します…」
猛海は、天城達真っ直ぐ見据え、ポツリ、ポツリと話し出す。
「…本当、猛海様には」
「すみません」
「つまり、三笠をはじめ、ティルピッツ、日向。ダイドーとシリアスの五人は、別の指揮官のパートナー。って事だな」
ビスマルクが言う。それに頷く猛海。
「モナーク達は、猛海の武具の手伝いをしていた。ここまでは合ってるか?」
無言で、頷く猛海。
「んで、猛海が今まで、あたし達をここに連れて来なかった理由が、格好悪いところを見せたくなかったと」
「…はぃ」
猛海の呆れた理由に、面々は息を吐く。
「ははは、確かに。猛海からしたら、見せたくないかもな!」
豪快に笑うガングート。猛海が情けない表情で溜め息一つ。そんな猛海を微笑んで見つめる面々。急に、猛海が顔を上げ、みんなを見回す。その表情に、面々は息を飲んだ。
「…悪い、話してない事が、もう一つある」
「……っえ?」
「天城達をここに連れて来た理由だ。モナーク達にも関係あるから、聞いてくれ」
天城達から、少し離れた場所で立っていたモナーク達が、近付いてくる。
「…えっとだな、ざっくり説明すると、今日からここで、暮らす」
「……それは初耳だぞ。猛海」
「言ってなかったからな」
モナークの問いに、淡々と答える猛海。
「俺が、天城達をここに連れて来た理由。それは、モナーク達を、生活拠点にしている整備場に連れて行くと、人数オーバーで暮らせないからなんだ」
言われて、面々は互いを見つめ合う。この食堂が広かったから、気付きにくいが、猛海をパートナーとして選んだ彼女達の人数は、31名。まだ、キューブ姿の娘達が、実体化すれば、さらに窮屈に感じるだろう。
「そこで、俺が提案したんだよ」
その声のした方に視線を向ければ、白衣姿の小野がいた。小野の横に、三笠とティルピッツが立つ。
「ここで働いている研究員は、元々指揮官として働いていた者達ばかりだし、モナーク達も、ここで武具の調整とか手伝ってくれてるし。研究所には、使ってない部屋があるから、どうか?って」
小野はニヤニヤしながら言う。それを見て、天城とモナーク、エンタープライズが溜め息を一つ。
「今まで、黙っていて悪かった。本当は、もっと早く言いたかったんだけどさ」
それを言う前に、侵略者との戦闘で負傷。入院や退院、その後のリハビリ生活で、なかなか言えず。要は、言うタイミングを逃したのだ。
「…出来れば、今のまま、整備場で暮らしたいけど。お風呂、気に入っていたし。平屋も住みやすかったから」
「…仕方ありませんね。これだけの人数が生活するとなると、今の場所では無理です」
ベルファストが言う。その言葉に、猛海が頷く。他の面々も頷いた。
「話が纏まったところで、引っ越しの準備が必要だな」
エンタープライズ達が、食堂を出るところで、三笠がみんなの前に立つ。
「ああ、その必要はないよ。すでに荷物は、君達が居住する部屋に運んでいるから」
唖然とする面々。猛海は、何とも言えない表情のまま、みんなを新たな居住部屋に連れていくのだった。
まずは、始めに謝罪を。ごめんなさい!今回、ちょっと話がおかしくなりました。
…なんと言いますか、色々ごちゃごちゃで、このごちゃごちゃを、次話で上手く纏まれば良いなぁ、と思っています…
まぁ、主人公が何とかしてくれるでしょう!
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