あとがきにて、近況報告します
本来のお昼時の食堂は、人で賑わっている。しかし、今の食堂は静かで。その上、その空気は重苦しく、暗い。食堂には、猛海達と小野。そして、先程まで猛海を嘲笑い、見下していた男達がいた。ただ、今の男達の表情は脅えきっているが。
「…小野先生、これはどういう事かな」
足を組み、猛海の横に座っているモナークが口を開く。モナークの表情は、明らかに不機嫌。それは、他の娘達も同じ。ジャン・バールと伊勢に至っては、殺意を隠そうともしない。
「…えっと」
小野の視線が彷徨う。小野の後ろに立つ男達も視線を反らした。モナークの指が、一定のリズムでテーブルを叩く。モナークと同様、猛海の横に座っていたエンタープライズとその横に座っているビスマルクも腕組みし、指がリズムを刻んでいる。
「小野先生」
ずっと無言を貫いていた猛海が、目蓋を開け、口を開く。全員の視線が、猛海に集中する。
「コイツらがここにいるってことは、何か理由があるんだろ?」
「…ああ」
猛海の問いに、小野は頷く。ゆっくりと目蓋を閉じ、溜め息を一つ。再び目蓋を開くと、顎で『話せ』と示す猛海。
「…これから先、コイツらには、水瀬の護衛をしてもらう。勿論、侵略者との戦闘時も含めてだが」
「私達が了承すると思うか?」
小野の言葉に、ビスマルクが小野を睨み付けた。
「君達の気持ちは分かる。だけど、これは決定事項なんだ」
「ふざけるな!」
ジャン・バールが声を荒げ、テーブルを強く叩いた。
「天城達を傷付け、猛海を見下したコイツらに。猛海の命を預けられるか!」
「…ジャン・バール。落ち着け」
テーブルの上で、強く握られているジャン・バールの手を、猛海が触れる。我に帰るジャン・バール。視線を猛海に向けた。優しく見つめる猛海。
「…猛海、良いのか?」
「ああ、小野先生やコイツらに言ったところで、変えられないんだろ?なぁ」
ジャン・バールの問いに、そう言いながら、視線を小野に向けた。小野は苦悩の表情のまま頷く。
「…水瀬にも、君達にも悪いとは思っている。だけど、俺には決定を覆すだけの権力はない」
「って事は。国が動いてんだな?」
「ああ、ただこの国だけじゃない。世界のお偉いさん達は、『水瀬の能力と彼女達の存在が、この世界に重要だ』と考えたらしい」
猛海は溜め息をつく。
「この世界で、これだけの戦艦達を召喚、維持出来るのは水瀬一人だけだからな。その水瀬が、最前線で自ら戦闘しているんだ。お偉いさん達は、気が気じゃないんだよ」
「まぁ、俺は別に良いけど。コイツら、もう指揮官としての素質はないんだろ?」
「確かに無いな」
「なら、どうやって護衛するんだ?まさか、コイツら自身が、俺の盾になるとか?」
「…そのまさかだ。でも、水瀬は気にしなくて良い。コイツらには、それくらいの代償を払って貰う」
小野は腕組みしながら言う。猛海は小野の言葉を聞いて、天城達に視線を向けた。みんなの表情、行動はそれぞれ違う。不安な表情を見せる者、怒りをみせる者。飽きれ顔の者、無心の者。男達を観察する者。ただ、天城とベルファストだけは、猛海に微笑みを向けている。
「天城?ベルファスト?」
「…フフフフ」
二人の表情が歪む。
(…二人の笑顔が怖!…これは怒ってるな、アイツらが俺に対して言った事、絶対根に持ってる!)
猛海の顔が引きつる。小さく咳払いし、小野に向け直ると、小野の後ろで脅えていた男達の表情が、さらに強張っていた。天城達の表情に気付いたのだろう。
「…フフフ、猛海様を護衛するなら、本気で護衛して下さいね」
「もし、猛海様に傷一つ付くような事があれば、命は無いですよ?」
「まあ、その前に。お前達が俺達に『ついて来られたら』の話だがな」
天城、ベルファスト、ジャン・バールが言う。
(…大丈夫か?)
猛海は内心、不安を覚えながらその日は過ぎた。
次の日
猛海と天城達は大海原にいた。
「久々の海だな」
猛海の心の中の様に、空は青く澄み。波は穏やか。海面を撫で吹く風は心地好い。
「そう言えば、全員で出るのは初めてだな」
猛海を囲む様に、天城達が立っている。みんなの表情も、穏やかに微笑んでいた。
「……水瀬…」
穏やかな雰囲気を壊す、間の抜けた呼び掛け。天城達の表情が、苛立ちに変わる。猛海は溜め息一つ。
「…お前ら、遅いな」
「…そんな事」
「……言われても」
呼吸を乱しながら、男達が言う。海面に膝をつく男達。
「足を引っ張るくらいなら、帰れ」
男達を見下ろし、腕組みしたジャン・バールが言う。その横に、伊勢が近付き。
「猛海の護衛に、お前達は力不足だ。ここに移動するだけで、弱音吐くとか。正直、足手まといなんだよ」
「…何だと」
伊勢の言葉に、リーダー格の男が立ち上がり、伊勢に詰め寄る。
「足手まといって言ったんだ」
伊勢はそう言った。怒りをみせる男達。一触即発。その様子に、猛海は再び溜め息を一つ。
「伊勢止めろ。それとお前らも」
二人の間に入り、伊勢の肩を優しく叩き、男達に視線を向ける猛海。
「お前ら、海は初めてじゃないんだろ?」
「…初めてじゃない。ただ、いつも使っている武具と違うから」
「もしかして、今まで旧式使っていたのか?」
猛海の問いに、頷く男達。旧式とは、猛海と小野が今の武具を開発する前の物だ。今、男達が装着している武具は、猛海と小野が開発した物。性能が圧倒的に違う。猛海は、腕組みし思案する。
「仕方ない。今日は訓練無しだな」
「猛海様、どうしてですか?」
「コイツらがこれじゃ、訓練出来ないだろ?」
天城の問いに、そう答える猛海。男達の表情が、苦虫を噛み潰した様な表情に変わる。
「ならどうする?」
リットリオが、男達を見下ろす。
「そうだな。何人か、コイツらに指導してくれるか?」
「猛海様のお願いでも、絶対に嫌です」
「冗談のつもりか?嫌だね」
「断固拒否します」
猛海の言葉に、みんな即答。その反応に、猛海はから笑い。
「…しかしなぁ、一応コイツらを使える様にしとかないと、後々大変になるだろ?」
「それでも、私達は嫌です。彼らを指導するくらいなら」
『その役割、私達が請け負いますわ』
エセックスの言葉を遮る様に、声が重なる。猛海達が声のする方へ視線を向けた。そこには、キューブが4つ浮遊している。
「頼めるか?」
『はい、指揮官様のご命令とあれば』
『あたしが、きっちり指導してやるよ』
『まぁ、任せてよ。指揮官』
キューブが淡く光り、人の形になっていく。淡い光がゆっくりと消え、四人の女性が立っていた。その一人が、一歩前に出る。金色の長い髪が風に揺れ、キラキラと光っていた。赤色を基調とした海軍服。白いマント。スカートは短く、黒いタイツに白いブーツがエロい。
「初めまして、指揮官。私はハウよ。宜しくね」
次に前に出てきたのは、メイド服の女性。猛海は、ベルファストに視線を向ける。
「…彼女は、ハーマイオニーです」
「ハーマイオニーです。指揮官様、以後お見知りおきを。メイド長、お久しぶりです。これから宜しくお願いします」
「ええ、こちらこそ宜しくお願いしますね」
ハーマイオニーが、スカートを摘まみ礼をする。その横に、ショートの白髪。黒いミニスカの女性が立つ。
「あたしはワシントンだ。宜しく頼むよ」
腕組みをして言う。最後に、どこかの民族衣裳の様な服に身を包み、褐色肌の女性が猛海の前に立つ。
「私は、ミネアポリス。宜しく!」
白い歯を、見せ笑うミネアポリス。つられて猛海も笑顔になった。猛海は、一度視線を天城達に向けると。
「…よし、ならお前達に、コイツらの指導を任せる。頼んだぞ」
そう言って、男達に視線を向ける。茫然と立ち尽くしている男達。じっと、ハウ達を見つめていた。
「…何だ?どうしたんだよ」
怪訝な表情で、猛海が言う。その言葉に、男達は動揺しながら口を開いた。
「…ぇ?いゃ、水瀬」
「今、召喚したの…か?」
「いや、俺が召喚したんじゃない」
男達の問いに、猛海は首を横に振る。
「…いや、でもお前の事。指揮官って」
「ああ、確かに。彼女達の指揮官は俺だけど。召喚したのは、俺じゃない。彼女達が自分で召喚したんだ」
猛海の発言に、再び動揺する男達。
「自ら召喚って、あり得ないだろ?」
「…そうか、初めて見たんだっけ?う~ん。どう説明したら良いかな」
猛海は、頭を掻きながら、男達に説明した。猛海の話を聞いて、男達はただずっと、驚き続ける事になる。
「…はは、最初からお前は俺達と格が違うんだな」
ようやく男達は納得。その表情は、何か吹っ切れたようだった。猛海とハウ達は一通り話をすると、ハウ達は、男達と一緒に猛海達から離れ、水上装着の練習を始めた。
「さて、俺達はどうしようか」
腕組みし、思案する猛海。
「…折角来たんだ。少し身体を動かしてはどうだ?」
モナークが言う。
「それもそうですね。運動ついでに、ちょっとした模擬戦でもします?」
少し嬉しそうにキュラソーが言う。
「良いわねぇ。猛海も賛成でしょ?」
不適な笑みで、オイゲンが猛海を見た。猛海は少し飽きた表情を見せたが、小さく頷き。
「そうだな、久々だし。ちょっとやるか」
猛海の言葉に、喜ぶメンバー達。特に、伊勢と高雄、ガングートが子供の様に歓声を上げている。
「そうなると、組分けをどうするかだな」
「そうですね。一応、模擬戦という事ですので。猛海様を補佐するメンバーを決めてから、残ったメンバーが相手をするのはどうですか?」
ヨークタウンが、そう提案した。
「あたし、猛海と遊びたい」
「拙者、猛海と手合わせがしたい」
伊勢と高雄が同時に言う。それを聞いて。
「それじゃ、私も猛海と遊んでみたいわ」
「私も、オイゲンと同じ。猛海さんと遊びたいわ」
オイゲンとチャパエフが不適な笑みで言う。猛海は小さく溜め息をつく。
「では、私もオイゲンさん達の方につきますわ」
「うむ、私もそうしよう」
「…エンタープライズと天城がそちらなら、私もそちらにつこう」
エンタープライズ、天城、ビスマルクが口々に言う。
「ええ!?なら、誰が猛海しゃんの補佐に?」
「そうですね。ジャン・バール、リットリオ。ザラとチェイサー、能代。エセックス、ダンケルクにお願いします」
「…私達が(俺達が)!?」
明石の問いに、天城が答える。そして、天城の発言に、名指しされた七名がハモった。
「ええ、ですから。猛海様が全力を出せるように補佐して下さいね。私達も全力を出しますから」
驚いた表情の七名に、満面の笑顔で天城は言ったのだった。
前回の投稿から、かなりの時間が経過しました。もしかしたら、読みづらい部分や表現、疑問に感じ部分があると思います。ごめんなさい(本気で!)
皆さま、日々どのようにお過ごしでしょうか?コロナが猛威を振るう中、自分は相変わらず、暇なのに忙しい?日々を過ごしております。
猛海と嫁達が自分の頭の中で『早く書け!早く書け!』と騒いでおりますが、何分、書きたいのに、時間が無いのと体力が…。しか~し、必ず最後まで書き上げますので、もうしばらくお付き合い下さい。