※この作品はR-18です。

指揮官と少女達の絆   作:氷野心雫

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 近況報告は、後書きで

 とりあえず、続きをどうぞ


再始動~後半~

 静かだった海原に響く、爆発音。幾つもの水柱が立ち上がる。その間をすり抜け、特殊な義手と義足を上手く使いこなす猛海。

「…そこだ!?」

 威勢の良い声と共に、猛海は義手を振り下ろす。特殊な義手に取り付けられているのは、何故かピコピコハンマー。しかも、黄色のインク付き。

「…きゃっ!」

 黄色のインクが、着物にしっかりと付く。インクを付けられた天城が、少しバランスを崩し、海面に尻餅を付いた。

「油断したな、天城」

 天城の頭を優しく撫で、猛海はそのまま去っていく。その場に残された天城は『あら、残念』と小さく呟き、微笑みながら猛海を見送った。

「天城も落とされたか」

 まだ海面に座り込んでいる天城に、手を差しのべながらモナークが言う。そのモナークも胸や背中に、黄色のインクが付いていた。

「ええ」

 差し出された手を天城は取る。周囲を見渡すと、天城とモナークから少しだけ離れた場所に、エンタープライズとビスマルク。メイド隊の面々。綾波やラフィー達幼女組。その他、ロシアやチャパエフ達の姿もあった。みんなの服には黄色のインクが付着している。

「…明石、このインクは落ちるのだろうな?」

「心配いらないにゃ、水で簡単に落ちるにゃ。染みも残らないから、安心してにゃ」

 ビスマルクの問いに、明石は満面の笑みで答えた。モナークと天城が合流する。

「皆さんも落とされたのですね」

「ああ、天城とモナークもか」

 エンタープライズがクスリと笑う。

「猛海達の方も、能代とチェイサー。ダンケルクが落とされたよ」

 そう言って、視線を後ろに向けると、青いインクを服に付けられた三人がいた。三人とも苦笑している。

「さて、まだ残っているのは、猛海を含めて、エセックスとザラ。ジャン・バール、リットリオの五名か」

「そうですね。こちらは、オイゲンと愛宕、伊勢。ガングート、高雄の五名です」

 ベルファストとモナークの言葉に、みんなの視線は猛海達の方へ向けられた。2チームの力は拮抗している。天城達が撃っていたのは、実弾ではなく、ペイント弾だ。猛海達は黄色。天城達が青色。ルールは簡単。それぞれのインクが服に付けられた時点で、被弾と判定される。

「それよりも、こちらのメンバーは、癖が強いのが残ったようだな」

 モナークの言葉に、ビスマルクが息を吐く。同じようにロシアも溜め息を一つ。勿論、天城も溜め息をつく。

「…敵に回したら、面倒臭い」

 面々がポツリと溢す。

「あはは~!猛海!行くぞ!」

「参るぞ!猛海殿」

 言うのと同時に、猛海に幾つものペイント弾を放つ高雄と伊勢。猛海はそれらを難なく避け、二人に向かって一気に滑り込む。そして、ピコピコハンマーを振り上げた。高雄が後ろに下がる。横から、ペイント弾が猛海に向かって、放たれた。

「猛海!もらったぞ!?」

 満面の笑みで、ガングートが言う。猛海は、ニヤリと笑った。ガングートの放ったペイント弾に向かう猛海。着弾する直前で、身を翻し、避けた。猛海の瞳には、ジャン・バールの姿を捉えている。ガングートに向かって、ペイント弾を放つジャン・バール。

「…っうおぉ!?」

 間抜けな声と共に、ガングートの背中が黄色に染まる。猛海は、そのまま身体を反転して、伊勢に向かって小さな拳銃を向けた。拳銃から放たれるペイント弾。まるでスローモーションの様に、時間が過ぎる。しかし、素早い動きで、高雄がペイント弾を切り捨てた。猛海がバランスを崩す。それを見逃さず、高雄と伊勢が猛海に砲台を向けた。

「もらった!」

 二人の表情が、勝利を確信する。猛海は不敵な笑みを向け、そのまま海面に伏せた。倒れていく猛海に意識がいってしまった二人。猛海の背後から現れたリットリオとザラに気付く。

「っな!?」

 高雄と伊勢に向かって、砲台を向けているザラとリットリオ。すでに砲台からペイント弾が放たれていて、伊勢と高雄は、反応出来ずに真っ正面からペイント弾を食らった。思い切り、着物に黄色のインクが付く。放心状態の二人。すぐに立ち上がり猛海はその二人の横を通り過ぎ、次の標的に向かう。残るは、オイゲンと愛宕のみ。伊勢達があっという間に落とされ、オイゲンと愛宕が溜息を一つ。

「…降参よ」

 そう言って、両手を挙げたオイゲン。愛宕も同様に、降参を示している。猛海は躊躇した。その一瞬の気の緩みを、オイゲンと愛宕は見逃さない。ニコリと微笑み、砲台を猛海に向けた。しかし、猛海は小さく息を吐き、人差し指を上に向けると。

「二人共、ちゃんと上空も確認しような」

  猛海の言葉に、二人はハッとして、上に視線を向ける。二人の頭上にはエセックスの爆撃機が、ペイント弾を投下していた。水風船が弾ける様な音とともに、オイゲンと愛宕の髪に黄色のインクが付着。

「俺達の勝ちだな」

 柔らかい笑みで猛海はリットリオとザラに視線を向けた。二人も満足そうに微笑んでいる。離れた場所にいたエセックスが猛海達と合流した。

「うむ、見事だ」

 エンタープライズが言う。エンタープライズの横で、ビスマルクや天城達も頷く。

「ああ、良い感じに連携出来ていたな」

 言いながら猛海が近く。

「…あの、指揮官」

 申し訳なさそうに能代が口を開いた。猛海は視線を能代に向け。

「どうした?」

「…あの…私」

 口籠もる能代。猛海は小さく首を傾げた。表情は暗い。

「言いたい事は、はっきりと言うべきですよ」

 少し不機嫌そうに天城が言う。その言葉に、能代は小さく深呼吸。

「……私達、あまりお役に立てなくて。ご迷惑をお掛けしました」

 そう言いながら頭を下げる能代。能代の後ろで、チェイサーとダンケルクも頭を下げている。数秒の沈黙。猛海が能代に近く。そして、頭を優しく撫でた。

「大丈夫だ。ちゃんと役に立ってるし、迷惑とか思ってないから、心配するな」

 猛海の言葉に、能代が頭を上げる。その瞳には薄らと涙が。

「チェイサーとダンケルクも」

 二人に視線を向け、微笑む猛海。暗い表情だった二人にも笑みが溢れる。その様子を、離れた場所から見ているハウ達。

「かぁ〜!あたしも指揮官と遊びてぇ!」

 ワシントンが叫んだ。その声に、男達がビクつく。

「くそ〜、お前ら。早くそれを使いこなせ!」

 男達の足元を指差すワシントン。

「まぁまぁ、ワシントン落ち着いて。彼らも彼らなりに頑張っているし」

「そうそう、長い目で見守って上げないと」

 ハウとミネアポリスの言葉に、男達が半泣きになる。新しい武具に慣れる為、必至に頑張っている男達。だが、ワシントンの指導はスパルタだった。最初よりは大分使いこなせてはいるが、猛海の足元にも及ばない。

「少し休憩させてみては如何でしょうか?」

 ハーマイオニーが言う。男達の表情が明るくなった。

「はぁ〜⁉︎何言ってんだよ。このくらいで休憩?冗談抜かすな」

 物凄い剣幕でワシントンが言う。ワシントンの言葉で男達が硬直。

「休憩する程疲れてないだろ!」

「ワシントン、そんなに怒らないで」

「怒ってない!イラついてるだけだ」

「…それを怒っているって言うんだよ」

 困り顔のハウとミネアポリス。ハーマイオニーも溜息をついた。

「ワシントンの気持ちは分かります。しかし、彼らは指揮官様とは違います。その事、分かっていますか?」

「……分かってる」

 ハーマイオニーの言葉に、苛立っていたワシントンの表情が曇る。

「ワシントンが焦る気持ちは分かります。私も頭では理解していますが、焦る気持ちはあります。ですが、根本的に指揮官様は他の方々と違います。『魂の輝き』も私達に対する気持ちも、全てにおいて」

 ワシントンの視線が猛海に向かう。天城達と笑いながら話している猛海。ハーマイオニーがワシントンの横に立つ。

「私達はずっと指揮官様を見守って来ました。それはこれからも同じです。でも、指揮官様の事ですから、これからも私達の為に、危険を顧みず身を呈するでしょう」

「…ああ、分かってる。そういう奴だよ。指揮官は」

「だから、私達は指揮官を護る為に『自ら召喚』したんでしょ」

「…もう『あの時』の様な想いはしたくないから…」

 ミネアポリスの言葉に、三人の表情が『悲しみ』に染まる。その瞳に映る猛海は、空の青の様に澄んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 模擬戦を終えてから、数時間後。夕方の食堂でジャン・バールが一人溜息をつく。頬を少し染めて、何度も何度も溜息を繰り返す。

「どうしたのですか?」

 夕食作りをしていた天城が声を掛ける。

「…あ…天城か、いや…何でもない」

 そう言いながらも、溜息が溢れる。ジャン・バールの様子を見つめる天城。厨房の中では、天城以外にメイド隊三人とヨークタウン、能代も夕食作りをしていた。勿論、新しいメンバーに加わったハーマイオニーもいる。天城がベルファストに耳打ち。

「ベルファストさん。もしかしたら、ジャン・バールさん」

 天城の意図を、ベルファストは一瞬で理解した。二人は無言で頷き合う。下ごしらえしていた手を止めて、天城はジャン・バールに近く。

「ジャン・バールさん、ちょっと私について来てもらえますか?」

「…あ…?」

 言うのと同時に、天城はジャン・バールの腕を掴み、立ち上がらせた。そして、そのまま引っ張っていく。天城が向かう先は、勿論猛海の所。今、猛海は小野の整備室にいる。天城はそこへ向かった。大きな扉の前に立つと、インターホンを押す。静かな廊下。

「…天城、手を離してくれ」

「いいえ、それは致しかねます」

 きっぱりと断り、天城は再度インターホンを押す。しばらくして、扉が開いた。部屋の中は大きな機械音が響きわたり、ジャン・バールは耳を塞いだ。天城の耳もクニャリと垂れ、嫌そうな表情。それでも、ジャン・バールの手は離さない。部屋の中に入り、大きな機械の間をすり抜け、部屋の一番端まで向かう。ようやく機械の間から出てくると、幾つものモニターを見つめている猛海と小野の姿を見つけた。二人は天城とジャン・バールに背を向け、モニターを見つめ続けている。天城が猛海に近付く。

「天城、どうした?」

 モニターから視線を外す事なく、猛海が天城に問う。一瞬、天城は驚いた。

「…どうして私だと思ったのですか?」

「何となく?」

「何となくで分かりますか?」

「多分、感だよ。それで?何か用か?」

 ようやく猛海が振り向き、ジャン・バールと天城を交互に見つめた。ジャン・バールは、俯きながら天城の後ろに隠れるように動く。

「猛海様、ちょっとお時間をもらえますか?」

「…良いよ。んで?」

「ほら、ジャン・バールさん。猛海様に言う事があるのではないですか?」

「…えっ⁉︎」

 天城に問われ、硬直するジャン・バール。猛海の視線は、ジャン・バールを捉えている。

「…ぇ…いゃ…私は…」

「何だ?どうした」

 挙動不審のジャン・バール。猛海は小さく溜息をついた。

「小野先生、天城。ちょっと席を外してくれないか?」

「ああ、分かった」

「分かりました。猛海様、あとは宜しくお願いします」

「…っえ?…ちょっ…、待っ…」

 天城と小野はそのまま離れて行く。部屋に残されたジャン・バールは、逃げ場を失い、身体を小刻みに振るわせている。沈黙する猛海とジャン・バール。猛海は、先程まで小野が座っていた椅子を、自分と向き合う様に動かした。

「ほら、ジャン・バール。ここに座れ」

 そう言って、椅子の座面をポンポンと叩く。ジャン・バールは、しばらく棒の様に立ったままだったが、ゆっくりと猛海に近付き、椅子に座った。しかし、ジャン・バールは、猛海と視線を合わせない。

「どうしたんだ。何か話したい事があるんだろ?」

「……」

「俺に不満があるのか?」

「…いゃ、猛海に不満なんて…ある筈ない」

「じゃあ何だ?」

「…ぅ…恥ず…」

 消え入りそうな声でそう言うジャン・バール。両手で顔を覆った。心なしか、耳が赤い。

「仕方がないな」

 猛海の手が、ジャン・バールの頭を撫でる。ピクリとジャン・バールが反応した。猛海の手は優しくジャン・バールの頭を撫で続ける。徐々にジャン・バールの両手が下り、安心しきった表情を見せた。猛海が手を退ける。すると、ジャン・バールの表情が寂しそうに変わり、いきなり猛海を抱き締めた。ジャン・バールの急な抱擁に、猛海は抱き締め返す。

「…猛海、もっと頭を撫でて」

 甘えた声でジャン・バールが言う。猛海は、ジャン・バールを膝に乗せて、優しく何度も撫でた。次第にジャン・バールの寝息を立て始める。

「ジャン・バールって、意外と甘えん坊なんだな」

 ジャン・バールの体温を感じながら、ポツリと話す猛海だった。




 皆様、お元気でしょうか?自分は、色々ありました。と、言いますか、目まぐるしく、周囲の状況が変わり、魂が抜けそう…。

 さて、前回から数ヶ月ぶりに投稿しました。本当に、ごめんなさい。もうね、脳疲労を起こしてまして、書きたいのに、手が動かない状況が続いてました。

 しかし、ようやく一つの山は越えそうなので、投稿率は高まるかと思います。これからも、寛大なお心で見守っていただければ、幸いです。
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