※この作品はR-18です。

指揮官と少女達の絆   作:氷野心雫

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姉妹の再会

 暗い夜空が明るくなり始めた頃。猛海は一人、施設の外へ出ていた。外の空気は、少し湿り気を帯び、雨が降りそうな気配。猛海は缶コーヒーを片手に、遠くを見つめていた。太陽が少しずつ水平線から現れ始める。何かが猛海の視界に入り、猛海はそちらに視線を向けた。蛍の様な今にも消えてしまいそうな光。フラフラと飛び、ゆっくりと猛海に近付く。猛海は、缶コーヒーを地面に置き、その光を優しく掴んだ。

「…これは……」

「キューブだな」

 猛海が振り返ると、モナークとジュリオ・チェザーレの二人がいた。

「見回りか?」

「ああ」

 モナークが猛海の手の平の上で、浮いているキューブを覗き込んだ。

「…弱っているな」

「そうなのか?」

「ああ、かなり衰弱している」

 モナークが小さく息を吐く。

「…君、私の声が聞こえるか?」

 キューブに話し掛けるモナーク。猛海は固唾を飲んで見守る。

『…誰?』

 弱々しい光を点滅させながら、キューブが声を出した。

「私の名はモナークだ。君、どうしてこんな所にいる?君の指揮官はどうした?」

『……私の指揮官は死んだわ…。ずっと前に』

 その言葉に、モナークが息を呑んだのが分かった。猛海は、モナークの表情を窺う。困惑の色が濃い。珍しく眉間に皺を寄せ、小さく唸るモナーク。

「モナーク、どうした?」

「……」

 猛海の問いに、モナークは無言でキューブを見つめた。そして、一度猛海に視線を向けてから、再びキューブに視線を戻す。

「…猛海、我々がこの世界に存在出来る理由は、知っているな?」

「ああ、俺達指揮官が放つ『魂の輝き』だろ。以前、モナークやみんなに教えてもらったから、覚えているけど」

「そうだ。我々には、その『魂の輝き』がこの世界に存在出来る唯一のエネルギー源だ。だから、最初にキューブの状態でこの世界に生まれる際、必ず『魂の輝き』を持つ者の近くで生まれ、その者を自分の指揮官として認め、存在を確定させていく」

 モナークは小さく息を吐く。

「…自分の指揮官が死亡した場合は、エネルギー源である『魂の輝き』が絶たれ、我々はこの世界に存在出来ず、消える。だが、それは人で言うところの死ではない」

「死じゃないなら。何だ?」

「……そうだな、簡単に説明すると、思念体として空中を漂う。思念体の状態であれば、エネルギー源は必要ないからな。我々は何年後でも『魂の輝き』を持つ者の側でキューブ体になれる」

「……それで?」

 猛海はモナークに問いながら、表情を曇らせた。

「…う…むぅ」

 唸りながらモナークは目を伏せた。猛海の視線が、手の平のキューブに向けられる。

「思念体に戻らず、『魂の輝き』からエネルギーを絶たれたままのキューブは、自らの命を削り、徐々に消耗し、そして消滅する。…それが我々にとっての死だ」

「……助ける方法は?無いのか?」

「一つだけ、この娘を救う方法はある」

 猛海の視線がモナークに再び向けられた。

「簡単な事ではあるが、それを本人が望まなければならない」

「つまり、俺を指揮官として認めさせなければならないんだな?」

「そう言う事だ」

 頷くモナーク。猛海はキューブを見る。

「…君は、どうしてそんな状態で彷徨っているんだ」

 猛海の呟き。すると、キューブが反応した。

『……ずっと一緒だったの。いつも、どんな時も私達は二人で行動してた』

 猛海が言葉を発しようと口を開き掛けたが、モナークが手で制した。

『…私達の指揮官が死んで、彼女は先に思念体へ戻ったわ。でも、私は出来なかった。だって、思念体になったら、また同じ指揮官の元で逢える保証がなかったから。だから、私はキューブのまま、彼女が来るのを待ったの』

「…その彼女は見つかったのか?」

『……えぇ…気配を感じ…た…』

 言葉が途切れ始める。猛海の表情が焦りに変わる。モナークの表情も苦悶に歪んでいた。

「俺を、君の指揮官として認めろ」

『…それは無理。…って…貴…を、指揮…として認め……彼女に……逢…保証…な』

「彼女の気配を感じたんだろ?なら、逢える確率は高い」

『彼……が、近く…保証…はないわ』

「…分かった。なら、君の名前を教えてくれ」

 微かな光のキューブ。大きさも米粒程しか無い。

『……ポーラよ』

「…ちょっ⁉︎今、ポーラと言った⁉︎」

 今まで、無言で猛海達の会話を聞いていたジュリオ・チェザーレが、慌てた表情で猛海の腕を引き、手の平のキューブを凝視した。僅かに、光が戻るキューブ。

『…チェザーレ、久しぶりね。…ラには逢えな……けど、最後にチェザーレに逢えた…も、救われたわ』

「ポーラ、最後じゃない。…今から言う事、落ち着いて聞いて。ザラは私達といるわ」

『…本当…に?』

「ええ、本当よ。だから、猛海を指揮官として認めて。そしたら逢えるから」

 チェザーレは微笑む。声色も少しだけ明るい。

『…嘘じゃないわよね?』

「ポーラ、この状況で嘘言えると思う?」

『………分かったわ』

 その言葉と共に、キューブの光が徐々に大きくなり始める。弱々しい光がゆっくりと人の形になり、青い髪をサイドに結んだ女性が、猛海の前に現れる。

「…ザラにそっくりだ」

「ザラとポーラは、姉妹艦だからね」

 ポツリと溢した猛海に、ジュリオ・チェザーレが言う。ポーラの身体がフラつく。猛海は素早くポーラの身体を支えた。

「…本当にザラに逢える?」

「ああ、100%保証する」

「…良かったわ。早く…逢いた…」

 ポーラの意識が途切れた。猛海はポーラの身体を抱き上げ、ポーラの顔色を見る。かなりの疲労感が見て取れたが、呼吸は落ち着いていた。

「とりあえず、俺の部屋に連れて行く」

「ザラに伝えようか?」

「その必要はない。ザラは俺の部屋で寝てるから。リットリオも一緒だけど」

「…っえ?」

「ザラに話さないといけないだろうから、チェザーレも一緒に来い」

 猛海の言葉に、チェザーレの表情は戸惑い。しかし、頬はピンク色に染まっている。チェザーレの返答を待たずに、猛海は歩き出していた。慌てて猛海の後を追うチェザーレ。その後ろを、モナークも追う。

 

 

 

 

 部屋に戻ると、ザラとリットリオ、ジャン・バールの三人が起きていた。ちょうど下着を身に付けている最中。

「…猛海、どこに行ってたの?…って、ポーラじゃない⁉︎」

 ザラは、猛海にお姫様抱っこされているポーラを見ると、下着姿のまま慌てて近付く。

「色々あってな。説明はチェザーレから聞いてくれ。俺は小野先生の所に用事があるから。それと…」

 そう言って、猛海がモナークに視線を向ける。

「モナークは、天城達に彼女の事、話しておいて」

「ああ、分かった」

 頷くモナーク。猛海はポーラをベッドにゆっくりと下ろし、部屋を出て行く。続いてモナークも退出。部屋に残された面々。ザラはポーラの横に近付く。先程より表情が穏やかに見える。

「それで?何があったの?」

 ポーラの頬を優しく撫でながらザラが問う。チェザーレは先程までの経緯を説明する。その間もザラはポーラの頬を撫でていた。小さく溜息をつく。

「…本当、ポーラらしいわね」

 どんな時も離れず、同じ指揮官の側でザラとポーラはいつも一緒だった。先の戦線で指揮官が殉職した時、ザラは爆風でポーラと離れ離れになっていた。ポーラの気配を探したが、身体の装備も体力もボロボロで、意識を維持する事も難しかった。だから思念体に戻ったのだ。

 

『いつかまた逢えるから』

 

 そう信じて。ポーラの瞼が開く。しっかりとザラをその視界に捉えるポーラ。満身創痍の身体を起こし、大粒の涙を浮かべザラに抱き付いた。

「ザラ…、逢いたかった」

「私もよ、ポーラ」

 抱き締め合う2人。それを見ていた3人は静かに部屋を退出した。




こんばんは、久方ぶりです。とりあえず生きてます。死んでません。鬱病にはなりましたがね。モチベーションを上げるべく、しばらくは仕事休業。執筆を無理ない程度にしていきます。書く気力も殆ど無いんですけどね…。
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