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「ご主人様?どうされましたか?もしかして、キスは初めてでしたか?」
妖艶に微笑んで、ゆっくりと近付くキュラソー。彼女も間違いなく美人だ。何の反応もみせず、固まったままの猛海の頬に優しく触れる。そして、近付く唇。
「……キュラソー、貴女。猛海様に何をしているのですか?」
氷の様に冷たい言葉と共に、部屋の灯りがつく。いつの間に起きてきたのか、ベルファストと天城が仁王立ちして猛海とキュラソーを見下ろしていた。二人の目には殺意が見え隠れしている。
「あら、メイド長。起きていたのですね。今、ご主人様にご挨拶をしていたんです」
悪びれた様子もなく、にこやかに言うキュラソー。その言葉に、微かにベルファストの眉が動く。
「挨拶とは、殿方にキスをする事ですか?」
「あら、違いました?」
ベルファストの問いに、平然と答えるキュラソー。ベルファストとキュラソーの間に不穏な空気が漂う。ベルファストの後ろでは、天城が今にも斬りかかりそうな表情。猛海は慌てる。
「落ち着け、天城。ベルファストも」
そう言って、二人の肩に触れた。ベルファストと天城が同時に猛海を抱き締める。固まる猛海。
「猛海様」
三人の様子を、キュラソーは小悪魔な表情で見つめている。
「ご主人様は、メイド長と天城さんにキスしないんですか?」
「……っへ!?」
唐突なキュラソーの問いに、声が上擦る猛海。ベルファストと天城が猛海から離れ、見つめた。
「メイド長もして欲しいと言わないんですか?」
「……そんな事」
言い掛けて、俯くベルファストと天城。
「キスくらいしたら宜しいのに」
悪戯っ子の様にキュラソーが言う。
「それは難しいよ。君が言う程、簡単な気持ちでは出来ない。それに…」
猛海が二人を見つめ。
「いや、何でもない。悪い、外の空気吸ってくる」
それだけ言うと、猛海は部屋を出ていった。その後ろ姿を二人は悲しい表情で見送る。
寮近くの公園
猛海はベンチに腰掛け、夜空を無言で見つめた。頭の中をベルファストと天城の表情が過る。
「悲しませるつもりはないんだけどな」
「なら、どうしてキスしないんですか?」
突然、後ろから問われる猛海。声の主は。
「…えっと、キュラソーだっけ?」
「はい、もう覚えて頂けたのですね。嬉しいです」
本当に嬉しそうに微笑むキュラソー。その表情を見つめ、猛海は小さく溜め息をついた。
「さっきも言ったろ?簡単な気持ちじゃ出来ないんだよ」
「……そうですか?ご主人様は複雑に考えすぎじゃないですか?好きならその想いを伝えるべきだと、私は思いますが」
「……キュラソーはさ、今さっき召喚されたばかりで知らないかも知れないけど、ベルファストと天城は」
言いかけた猛海の唇を、キュラソーの指が塞ぐ。猛海はキュラソーに視線を向けた。
「知っていますよ?」
「っえ?」
「私達はキューブの状態からでも、見えているし、聞こえています。猛海様が産まれた時から」
驚きの表情で、キュラソーの言葉に耳を傾ける猛海。
「私達は、猛海様が産まれた時から、恋をしているんです。ずっと。勿論、私も猛海様が好きです」
その言葉に嘘は見えなかった。キュラソーの表情は、恋する女性そのもの。猛海を見つめている。猛海はゆっくりと立ち上がった。
「…キュラソー、俺は」
「はい、猛海様の思うようにして下さい」
ようやく決心がついた猛海は、キュラソーの手を取り、部屋へ戻った。ソファーに腰を掛けて俯くベルファストと天城。猛海は二人に近付く。その場に膝をつくと、覗き込むように二人の表情を見た。
「…猛海様、私達は」
「ごめん、二人共。俺は悲しませるつもりはなかったんだ」
そう言うと、二人に軽く口付ける。いきなりの事に、二人は顔を真っ赤に染め、驚いていた。
「ごめんな、本当は初めて俺の前に来てくれた時から、二人が好きだったんだ。でもあの時から色々ありすぎて考えないようにしてた」
今にも泣き出しそうな二人。猛海は二人の頭を優しく撫でた。勢い良く抱き付く二人を猛海は支えられず、そのまま床に押し倒される。次の瞬間、猛海は狼狽えた。それは、二人が服を脱ぎ捨て、産まれた姿になったから。
「…な…何してんだ!?二人共」
「ようやく、私達の想いが猛海様に届いたのです」
「猛海様、どうかこのまま私達を抱いて下さい」
二人の後ろでは、キュラソーも同じように服を脱ぎ捨て、立っていた。
「…キュラソー?」
「猛海様、メイド長と天城さんの後で、私も愛して下さいね」
静かな夜に、猛海の悲鳴が木霊したのだった。
それから、数ヶ月が経過
ベルファスト達三人と猛海の生活が続いていた。あの日、猛海は無我夢中で逃げ出し、貞操の危機は守られている。がしかし、女性は強いもので、二人の時より三人になるとここまで強くなれるものなのかと感心してしまう。三人は、あの手この手で猛海を誘惑してくる。それを猛海は何とか理性で押し込め、今現在も三人に手を出していない。ただひとつ変化があるとすれば、1日一回は三人を抱き締める事だ。今日も朝から天城が猛海に甘えてきた為、猛海は優しく抱き締める。それでも、猛海は油断出来ない。それは、天城の身体から放たれる甘い香りのせいだ。他の二人もそれぞれ異なる甘い香りを放ち、猛海を惑わす。所謂、フェロモンだ。それだけならまだ良い。三人共スタイルが良く胸も大きい。抱き締める行為は、必然的に三人の柔らかな胸が押し付けられ、猛海の理性を崩しに掛かるのだ。
「猛海様、もう大丈夫ですわ」
猛海が悶々としていると天城が腕を離しながら言う。猛海はゆっくりと腕を退けた。そのまま上目遣いで猛海を見つめる天城。その瞳は潤んでいる。無意識に猛海は天城にキスをした。気が付けば長い時間、唇を重ねている。猛海の身体を天城が軽く押すと、猛海は抵抗する事無く押し倒された。啄む様なキスを二人は続けている。猛海の手が天城の頬に触れた瞬間。
「…猛海様、酷いです。私にもして下さい」
ベルファストとキュラソーが頬を膨らませ、二人を見ていた。我に帰る猛海。
「…いゃ、今のは」
「猛海様、御馳走様でした」
猛海の上に覆い被さっていた天城が妖艶に微笑んだ。生唾を飲み込む猛海。
(しまった。天城の色気に当てられた)
そう心の中で頭を抱える猛海だった。
次の投稿は未定ですが、出来れば週一で上げたいと思ってはいます。