華やかなパーティーが終わった後の夜。夜10時を回る頃、3名の国の執政を担当する者達による円卓会議がされていた。
レムレースの盟主・レム。ブルーセインツの女王・アンドリア。そしてウィンバリアシオンの教皇・フューネラルによる円卓会議がされている。
まずはこの世界の4つの地域で起こっている現状についての情報交換がされていた。
「まずは、我々、ブルーセインツから現状を説明いたします。こちらの国では徐々に時空の歪みが大きくなってきている様子です。「女神の城」付近は特に巨大な混沌の存在が確認されました。あの付近には”何か”の存在が確かにあるようです」
「”女神の城”に何かが存在する?一体、どのようなものなのでしょう?」
「巨大な”混沌”の存在ということは、”混沌の女神”に関する何かと推測するのが妥当かな。それで、デザートエンプレスは今、どういう状況に?」
「相変わらず、地下組織である盗賊団が国の覇権を巡って争っています。今では戦争状態です。混沌の女神に関する遺跡が発見されましたが、とても調査どころの話ではありません」
「ウィンバリアシオンの現状は?」
そこで教皇・フューネラルは口を開いた。彼は独特の神官のローブ姿で、袖が長く裾も長い、高貴な紫色のローブを着ている。
「ウィンバリアシオンでは、謎の宗教がその勢力を拡大させております」
「謎の宗教?」
ブルーセインツの女王・アンドリアが話に加わる。
彼女は”聖なる蒼”と呼ばれる独特の蒼いドレスに、対となった空中に浮く玉座に座っている。何でも彼女が座る玉座には聖なる竜の卵が眠るという。
それを護る為にこの玉座と共に姿を現しているのだ。
「”闇の戦乙女”という名前の組織で、目的は不明。ただし、夜になると毎夜の如く、謎の儀式の為にある女性を生贄に捧げようと殺人を繰り返しております。犠牲になった女性はいずれも薄紅色の髪を持つ若い女性です」
「それも、”混沌の女神”に関係するものと考えるのが妥当だな」
「レム盟主。そちらの”混沌の女神”に関する調査は進みましたか?」
「いや。思いのほか、進んではいない。だが、”混沌の女神”に関係ある女性の保護には成功した。近日中にはレムレースの近くにある遺跡にその女性を連れて行く予定だ」
「でしたら、我々は何をまずは最優先するべきでしょうか?」
「まずはフューネラル教皇。そちらはその”闇の戦乙女”なる組織の解明を優先してくれ。そちらで保護をしている人物にも関わることが起きるかも知れない」
「わかりました。盟主殿」
「アンドリア女王は、独自の判断でデザートエンプレスとブルーセインツの情報収集と守りをお願いします」
「わかりましたわ。盟主殿。ところで、盟主殿はいかがするつもりかしら?」
「近日中に、ウィンバリアシオンに足を運ぶ。そこで、その謎の組織をこちらでも独自に調査をしようと思う」
「何か、引っかかるものがあるのですね…?」
「ああ。引っかかるな。多分、何か重要な情報が隠されているに違いない」
「盟主殿が来たら、こちらとしても、歓迎式典を挙げねばと思うが…」
「それは結構だよ。そんなことをしている状況でもないだろう?」
「確かに、殺人事件が背後で行われているのに歓迎式典はいい気分ではないですな」
「というわけだ。とにかく皆、”混沌”の暴走にはくれぐれも注意を。それは突然発生する”災厄”だ。街の人々をけして犠牲にしないように計らってくれ」
こうして、3か月に一度の円卓会議が終わり、教皇・フューネラルと女王・アンドリアは明日にも帰路につくことが決定されていた。
真夜中の12時を回り、歓楽都市レムレースの祝祭も終わりを迎える。
円卓会議を終わらせたレムは、青味を帯びた部屋の中、一人、夜空の月を仰ぎ見ていた。
(ついに来たんだな…。俺がこの街から旅立つ、その日が…)
彼は左手の漆黒の手袋を外した。生々しい傷痕が残る左手。それを見つめていた。
(だけど、俺は一人じゃない。孤独な人間ではない。きっと、この先も大丈夫なはずだ…。きっと…)
それを真夜中の照明が消された部屋の中で見つめて、そして祈るように胸に抱いた。
それを細い三日月が静かに照らしていた。
翌朝。
レムは、翔子とアドニスとリリアを呼んだ。
彼らは今、レムの執務室に姿を現している。
彼らは盟主の言葉を待った。沈黙を守って。そして盟主の口から言葉が出た。
「昨夜、円卓会議をした。そして薄々感づいているだろうが、私もいよいよ、この街から出る日が来たようだ。そこで頼みがある。君たち3人をその旅に着いてきてほしい。私からのお願いだ。引き受けてくれると嬉しいが…」
その言葉に逆らう者はここにはいなかった。
彼らもとうとうその時が来たと思った様子だ。
興味津々な様子で応えて見せた。
「今更、水臭いですよ。レム様」
「そうですよ。もう私達はとっくにレム様に巻き込まれてしまっていますから」
「私もこの世界がどうなっているのか見てみたい!」
「……みんな、ありがとう」
「明日から、出立だ。まずは光の都・ウィンバリアシオンに向かう!」
「はい!」
こうして、彼ら4人の旅が始まる。
一体、この世界に何が待っているのか…。世界の終わりか…または世界のはじまりか…。
混沌とは?そして、混沌の女神とは…?
謎に満ちた、世界から切り離された享楽の都から、広い世界への扉は開いたのであった。