3-1 闇深き光の都
レムと翔子、リリアとアドニスのパーティが光の都ウィンバリアシオンに到着したのは真夜中の12時を回っていた。
そこは荘厳な宗教都市。歓楽の都レムレースとは正反対の敬虔なる民が住む街だった。しかし、光の都というには何やら不穏な空気が漂っている。
闇夜が支配する街で唐突に悲鳴が聴こえた。まるで魂までもが凍りつきそうな悲痛な悲鳴が響いた。彼らは何事かとその悲鳴の聴こえた方向へ向かって行った。
そこにあったのは薄紅色の髪の毛を持っている女性の無残な死体があった。思わず翔子は目を向けようとした時、レムが自分に抱き寄せ、首を横に振っていた。
「またあの殺人事件だわ…」
「薄紅色の髪の毛を持っている女性を狙った殺人事件か。一体、警察は何をやっているんだ?」
「酷い。嬲り殺されている…」
「レム様。これは…?」
「フューネラル教皇が注意を促していた例の殺人事件だな。何でも決まって薄紅色の髪の毛を持っている女性のみを狙った殺人事件が起きていると彼は話していたよ」
「レム…?」
「君は見ないほうがいい。トラウマになってしまう」
「光の都なのに、血の匂いが漂う街とはな…」
15分ほど経過して警察が駆けつける。そして、殺害されてしまった女性の身柄を確認している様子が見えた。
彼らはため息をついて、そしてこの一連の殺人事件の話しを始める。
その内容に興味を抱いたレムはその警察官に話かけた。
「ちょっといいかな?」
「あなたは?」
「レムレースの盟主、レムだ。実は教皇フューネラル殿に会いに来たのだが、丁度この殺人事件に遭遇してしまってね……。一体、このウィンバリアシオンで何が起こっているのか知りたい」
「これは、あの有名なレムレースの盟主様でしたか。このような場面を晒してしまうとは申し訳ございません」
「いや。今はただの旅人だ。それよりも何がこの街で起こっているのか教えてくれないか?」
「この殺人事件が最初に起きてから既に1ヶ月が経過してしまっています。殺されてしまった女性は決まって薄紅色の髪の毛を持つ若い女性で、犯人は『闇の戦乙女』を名乗った宗教集団なのです」
「犯人が誰かがわかっているのに何故逮捕しないのですか?」
リリアがそこで当然の質問をした。翔子もそう思う。何で犯人が誰かがわかっているのに何故逮捕しないのだろうか?不思議でしょうがない。
だがそこには何か重大な理由があると思ったレムは、少し踏み込んだ質問をした。
「その『闇の戦乙女』という宗教集団に何かあるのかな?」
「彼ら『闇の戦乙女』はとある神をこの世に呼ぶ為に生贄の血を集めているのです。その犠牲者が彼女たちなのです……」
「ある『神』?」
「彼らは『混沌の女神』の復活を望んでいるのです。女神を呼ぶ為に汚れのない処女の血が必要で、一説によると薄紅色の髪の毛持つ若い女性が汚れなき女性であるという伝説があるのです」
「なるほど……。それで決まって薄紅色の髪の毛持つ若い女性が狙われて殺されているのだな?」
「はい…。もう既に犠牲者は20人以上にも上ってしまっています」
「でも何故、生贄の血を集めているのですか?」
「儀式を開く為にです。『混沌の女神』を呼ぶ為に儀式を開こうと生贄の血を集めているのです」
「ありがちな話だな。確かに」
「どういうことなの?レム?」
「大体、この手の宗教集団というのは儀式を執り行い、『神』などの存在を呼ぶんだ。特にこの宗教都市であるウィンバリアシオンでは珍しいことではない」
「ええ。そうですね。特に高位の存在を呼ぶ為には生贄などを必要とするのは珍しいことではありません」
「レムレースではあり得ないことなんだけど、ウィンバリアシオンではあり得ることなのよ。翔子ちゃん」
「しかし、気になるのは、今の『闇の戦乙女』という組織だな…。話からして怪しい存在だな」
「レム様。もう既に真夜中の1時を回っています。宿の手配をしませんか?」
「血の匂いも濃くなって来ているな。早めに安全を確保して、明日、フューネラル教皇に会いに向かおう。話はそれからだな」
光の都ウィンバリアシオン。
しかし、今、そこは闇深き光の都となってしまっていた。
ふと、翔子は夜空を見上げる。
月も星も浮かばない、漆黒の闇夜が見えるだけだ。
何処からか聴こえる、女性がすすり泣く声が、怯えて救いを求める声が、無情にも聴こえる。
「ねえ?レム。何で、『神』様は生贄の血を求めるのかな……?そんなの捧げられて何になるのかな?私、わからないよ」
「……。それは俺もそう思うよ。だけど、神はそれを望んてなくても人間はそれを望んてしまっている。身勝手に生贄を用意すれば神は助けてくれると信じてしまっている…」
「レム様。この事件、私達も解決の手助けをしますか?これ以上、生贄となる薄紅色の髪の毛持つ若い女性を殺させる訳にはいきませんし、何より『闇の戦乙女』という宗教集団が気になります。俺は」
「このまま放って置くわけにはいきませんし、もしかしたら、事件を追えば、『闇の戦乙女』の企みがわかるかも知れませんね」
「翔子。君はどう思う?」
「私も『闇の戦乙女』の企みを知るべきだと思います。それに儀式の為の生贄を集めるなんて、私には許せません」
「決まったな。とりあえず、宿屋に行って一晩の宿を取ろう」
そうしてパーティはまずは一晩の宿を取り、翌朝。フューネラル教皇の下に挨拶をしに向かうことにした。
まだ光の都には生々しい血の匂いがありありと漂っている……。