光の都ウィンバリアシオンの暗黒街を抜けて、しばらく歩いたら深い森にいつの間にか入っていた。ここは通称『妖精の森』。ここから先は妖精界アルヘイムにつながっている。
妖精界アルヘイム。
この世界は4つの世界に別れて存在している。世界樹ユグドラシルを中心にして。
妖精界アルヘイム。
人間界ミッドガル。
神界アスガルド。
そして…死の世界ニブルヘイム。
そしてその四方を護る宝が四宝と呼ばれる存在。
その1つが、この先の『妖精の谷』にあるという。
光の弓シルヴァンボウ。
妖精の王が護ると言われる光の弓矢。それを手にすることが出来るのは選ばれた存在のみ。
パーティは今、妖精の森の聖なる泉で休憩をしている。あの後、夜を通して彼らは暗黒街を抜けて一気に妖精の森まで歩いた。
妖精の森の時間は実はウィンバリアシオンの流れる時間とは全く違う流れ方をしている。
時間の概念そのものが違うのだ。だから今何時なのかと聞かれても実のところはわからない。ただ人間界の時間で表現するなら、1日は経っている。
妖精の森は緑色の森というより蒼い森と表現出来る。不思議な気配が漂う綺麗な森だ。また”迷いの森”とも呼ばれていて旅人を永遠に堂々巡りにさせる仕掛けがある。
それらは皆、自分達を守る為に考えられた仕掛けだった。
聖なる泉でのキャンプを張るパーティ。
翔子は今、魔装銃の定期的なメンテナンスをしている。魔晶石と呼ばれる魔力を含む石を定期的に取り替える作業を開発者であるレムから教えて貰っていた。
でも慣れてしまえば簡単だった。魔晶石を取り替える作業は要は弾薬を取り替えるのと同じ原理だった。だから取っ手の底を外してそこから劣化した魔晶石を取り出し、新品の魔晶石を入れれば良いだけである。劣化した魔晶石は土に返すのが義務であると彼は教えた。
世界に流れる魔力を源にしている魔晶石は、土に返すことで新しい魔晶石として生まれ変わる。そうして魂を循環させるように魔力を循環させるのだ。
作業が終わった。
「初めてにしては上出来だよ。これで魔装銃もメンテナンス完了だな」
「あの、ここでなら聞かせてくれますか?あの儀式の間にいた女の人のことを……?」
「彼女は確かに俺の妻だった人だ……。俺がまだ”薄紅のレム”と呼ばれていた頃の愛妻だった」
「……暴力を振ったって言ってました。本当なんですか?』
「ああ…。それは本当だよ…。あの頃……いや、君に出逢う前までそうだった。女を快楽を得る為の玩具のように扱い、弄んだ。でも…君がこの世界に来てそれは間違いであることにようやく気付いた。今にして思えば妻が俺に復讐をするのは当然のことで、俺はそれを受けるのが義務かも知れない。でも俺だけが復讐を受けるだけならいいけど、世界を巻きこんで復讐をするのはどうにも容認出来ない。それを防ぐのが俺のするべきことかな」
大きな樹の麓。
綺麗な泉が湧く昼間なのか夜なのか判別しにくい蒼い森。
たださざ波のように森が流れる音が聴こえる…。
2人で並んて泉のそばで話している。リリアとアドニスは他の場所で見回りをしているらしい。
その2人は今、地図を片手に場所の確認をしている。
「今、私達がいる場所はどの辺かしら?」
「珍しい目印が無いのが苦しいですが、恐らくはこの辺りかと」
アドニスが指したのは、妖精の森の中心部の泉が描かれた場所だった。
光の弓シルヴァンボウが眠る『妖精の谷』はこの先の集落だ。
距離としてはそんなには無い。
「でも……」
「どうしたの?アドニス?」
「まさか元奥様であるあの方が、敵として回るとは驚きました」
「あの『漆黒のラーズグリーズ』よね」
「あの時、壮絶な夫婦喧嘩をした後、彼らは和解したとばかり想っていました。でも違った」
「復讐するべきはわれにありって感じよね。でも、レム…あの人は変わったわ。翔子ちゃんが来てあの人は前よりも優しくて、でも弱くて、でも強くありたい…」
「世界を呪うあの日から世界を想う盟主になることにしたんじゃないかな……」
「リリア様……。恨みを抱いていたのでは無かったのですか?あの方に?」
「うん。でも……なんだかそれも無くなっていった。変わって行くあの人が見るのが好きになった。だんだん変わっていくの。まるで、凍てついた心が溶けていくみたいに。翔子ちゃんは常にあの人と共にある。でも翔子ちゃんもいつもいい人でいる訳じゃ無くて…」
「裏側では『殺してやりたい奴がいた。でも現実世界ではそれをしたら罪になる。だからやらなかった。でも悔しい。私は謝ってほしかった。でも謝罪の言葉なんか聞けなかった。だからここでは殺す』ってまるで青白い炎みたいな怒りがあるんだよ。レムの怒りより余程怖い…」
「単純な話ではないですね。何が怒りに変わるのか人間わかりませんから……」
アドニスは人の複雑さに改めて恐怖し、同時に面白い生き物なんだなとつぐつぐ感じるところがあった。
レムと翔子は一向に帰って来ない2人を心配しつつも己の淫欲が高まっているのを感じているのか、泉のそばで身体を重ねる。
キスはもう当たり前……。
これをしないと盛り上がりに欠ける。
彼らは草むらに横たわり激しく口を奪い合う。
翔子は完全に寝転び、彼の愛撫を受ける。
レムは膝を立てて彼女の頭を抱え込むように腕を絡めて、服を少しづつ脱がし始める。
やがて身体を重ねるパートナーは彼の身体が見たくて堪らない。何時でも艶のある身体。その他身体に素肌を重ねたいと願う。
「ねえ…?身体を見せてくれない?」
「寒くないかな……?」
「私の肌で温かくなっていいよ」
「待っていてくれ…」
彼は手の込んた衣装を着ている。片方にだけ羽織った純白のマント。その下は軽めの鎧。ズボンは白く長靴を履いているので脱いだ。マントが風に揺れて落ちる。無造作に脱ぎすてていくレムの姿を彼女は見つめる。
上半身裸になったら、早速触り始める翔子。この細身の身体はどうしたら作れるのだろうか。無駄な贅肉が無い筋肉の身体が素敵過ぎる……。
彼の手は彷徨うように性感帯を触って唇を使って舐める。
彼女も上半身裸になると。
お互いに抱き締め合い身体の匂いと感触を確かめあった。
「今夜はどんなセックスにしたい?」
「君の好きなように抱いてくれ…」
「横になって?」
柔らかい草むらの感触が身体に直に感じるレム。
彼女も下半身の旅人のズボンを下ろすと下着を穿いたまま、器用に熱く濡れた花びらに分身を入れた。切なく喘ぐ翔子。
身体をゆっくり揺らし始める…。
「アッ…アッ…これ……イイッ…!」
「うッ…うぅ…うぅ……もう果てる……ッ」
「まだよ…まだ……ッ。我慢してレム…お願い……ッ」
「翔子……ッ。翔子……っ!」
「私……あなたを魂から愛しているわ…っ!」
「魂から愛している……?」
「俺も君から離れたくない!」
「俺たちはきっと尻尾を絆のリボンで結ばれた2人なんだな…?」
そうして聖なる泉のワンプレイは彼らがお互いにキスを交わしながら絶頂へいくことで静かに終わる……。
森の置くから帰って来たリリアとアドニスは隠れて密かに覗き込んていた。
「翔子さんとレム様は離れることの無いリボンでつながっているのかも知れませんね」
「うん。そうだね……」
妖精の森は静かに2人を見つめている……それだけだった。