無法者の街ローシャナ。
砂漠のオアシスの麓に作られたデザートエンプレスの中では唯一の街。そこは確かに、治安は悪いの一言に尽きた。
街中に闊歩するのは盗賊団の人間ばかり。それも皆が皆、女の顔を見ると高く売れる奴隷に見えるのか嫌味な視線を送る。
パーティの男性陣は、彼女達を護るように、常に細部に神経を配って、緊張した面持ちでその街を歩く。
ローシャナの街には、盗賊団には成りすました、調査隊がいるという。表向きは盗賊団だが、彼らの目的は、混沌の女神の調査と、四宝の探索が任務とレムは耳にしていた。
この街の何処かにその調査隊のメンバーがいるはずだ。
彼らは砂漠を渡る際に消費してしまっていた水分補給をする為に、酒場へと足を運んだ。
オアシスには綺麗な蓮の花が咲いて浮かんでいるのも見えた。真っ白な蓮の花が咲いている。
オアシスの水は澄んでいるが、その水には触れない方がいいとレムは教える。
「何故ですか?」
「そのオアシスには水の精霊が住んでいるんだ。この荒んだ砂漠の水が澄んでいるのも精霊のお陰。なら、俺達のような汚れた人間がそれに触れるべきではない。わかってやってくれ。精霊は『汚れ』には人一倍、敏感な者達なんた」
「そうして頂けると嬉しいです」
そこに現れたのは水の精霊と呼ばれる精霊だった。青味を帯びた美しい女性の姿をしている。人魚のように見える。レムは彼女達の呼び名を呼んだ。
「アクエリアスだね。君達」
「アクエリアス」
「はい。このオアシスの水は『叡智の泉』の水ですから」
「あなたがたは、もしかしてブルーセインツのアンドリア様が仰っていた旅人ですか?」
「アンドリア様が?」
「アンドリア様は、こう仰っていました。今にレムレースの盟主様がこの砂漠に訪れると」
「如何にも私は、レムレースの盟主だが?」
「なら、この合言葉を教えておきます。『砂漠に蝶が飛ぶ』。関係者の方は『砂漠に何が飛ぶ』という質問しますからこう答えて下さい。あなたがたの歩む道にラーズグリーズの加護があらんことを」
「ありがとう…。恩に着るよ」
アクエリアスはまたあのオアシスの中に消えて行った……。
「善意のある精霊なんですね」
「危害を加えない限り、彼らは人間の味方をしてくれるよ?」
「だから……君も自然とかにはあまり危害は加えないで大事にしてくれ」
「うん。そうする……」
「行こう。何処かに関係者がいるはずだ」
酒場に入ると、バーテンダーの男性が彼らに水を出してくれた。
丁度小腹が空いていた彼らは、ここで食事をすることにした。無法者の街の酒場ということで、レムは踏み込んだ質問をそのバーテンダーにする。
「この街にある質問をする人間がいるかな?」
「どんな質問かな?」
「砂漠に何が飛ぶってやつだけど…」
「それは…。なら改めて質問するけど『砂漠に何が飛ぶ?』」
「『砂漠に蝶が飛ぶ』」
「なるほど。あんた達が、例の四宝を護る旅人か。噂には聞いていたけど、あんた達が」
バーテンダーは、笑顔になると、こう促す。
「うちの首領がお待ちだ。会ってやってくれ」
「首領?」
「うちの調査隊のリーダー。みんなはこの盗賊団モノキュラスのリーダーを「首領」と呼んでいるんだ」
「まあ、会って見ればわかるよ」
そう言ってバーテンダーは、酒場の奥にある隠し扉に案内を同じ盗賊団モノキュラスの団員に頼んで、自分はバーテンダーの仕事に戻ったという。団員は若い男性で頭には派手なバンダナが巻かれている。ノリは軽く努めて明るく愛想よく彼らを自分達の首領に会わせてくれた。
「あんた達があの四宝を護る旅人さん達かい?確かにいい気配を感じるね。うちの首領には下手な演技は通じないから、気を付けてくれよ?まあ、あんた達なら大丈夫だろうけど」
「ノリが軽い人ね」
「でもあの気配からすると、かなりの裏の方面の仕事に手馴れていそうだな」
「おっ!判っているね〜。どうやら噂は本当らしいね。『漆黒のラーズグリーズ』さん」
「……?何故、判った?」
「うちの首領はあんたのことを知っているよ。『漆黒のラーズグリーズ』がここに来るって言っていた」
「……そりゃあどうも」
目の前には扉がある。
その奥にいる『首領』と会った彼ら。その『首領』はレムの知り合いでもある男性だったのだ。
「待っていたぜ。レム」
揺れる椅子の背もたれに背中を預けて腕を組んて待っていた『首領』は、気軽な感じで彼に挨拶を交わした。
「盗賊団モノキュラスの『首領』ってお前のことだったのか。グリンウッド」
「よう……」
そこには黒人系の肌の色をした左目の眼帯が特徴的な壮年の男性がそこにいた。
グリンウッド。それが彼の名前だ。実は元レムレースの騎士であり、珍しいデザートエンプレス出身の騎士であり、迷宮探索のプロでもある冒険者である。
藍色の短髪に濃い茶色の肌。左目の眼帯が目印である。
「レムレースから出て、何処に行ってしまったのかと思っていたが、まさか盗賊団モノキュラスの『首領』とは、ね」
「相変わらずお前は、享楽の都の盟主様か。で?今は四宝を探す旅人か。世界中で噂になっているぞ?『漆黒のラーズグリーズ』が目覚めるって」
「よしてくれよ。まあ……昔話はこれくらいにして、要件に入ろう」
「調査隊を設立してデザートエンプレスに向かったあの後、何が見つかったんだ?」
「ここの盗賊団の連中が血眼になって探している『聖宝』が見つかった。どうやらそれは、四宝の1つっぽい匂いがしてな……。それはデザートエンプレスのある遺跡にあるという情報を手に入れた。だが、あそこは罠が半端ない。俺達、調査隊の人間が何人も犠牲になってしまったよ。多少の罠と迷路に迷う覚悟があるなら連れて行ってやる。どうだ?レム?」
「面白い。皆も興味あるだろう?」
「面白そう!行こうか?翔子ちゃん!」
「うん!リリアさんも、アドニスさんも行くなら」
「俺も興味あります」
「決定だな。なら、早速向かってみよう」
グリンウッドは片手に赤い槍を持ち、そしてパーティをある遺跡に案内した。