翌日。自分達のことを裏切ったあのグリンウッドと四宝ドラゴンオーブの追跡の為に、彼らは再び砂漠を横断する。
相変わらず熱砂の砂漠は暑い。今日は特に日差しも厳しい。あまり時間をかけると二人の女性陣が倒れると思った彼らは、予め目処をつけて砂漠を渡ることにした。
恐らくは四宝を持つ奴が行く場所はあの『漆黒のラーズグリーズ』の下に決まっている。
問題はその彼女が砂漠のどの遺跡にいるか、だ。デザートエンプレスには遺跡ともなると、星の数ほど存在している。
しかも、朽ち果てた遺跡から今現在も活動している遺跡まで含めるとその数は3桁はくだらない。これでは、時間がいくらあっても永遠に探し出すことなど出来ない。
事は一刻の事態も許さない状況だ。四宝が使われたら、この人間界がめちゃくちゃになってしまう。もしそうなった場合、秩序は失われ混沌に呑み込まれて、そして世界は失われる。永遠に。再生も叶わない滅びが待っているのだ。
そこで、リリアが持つ四宝『光弓シルヴァンボウ』の特性を使って探すことにした。実は四宝は四方を護るという言葉は、その四宝が四方を護る為に、まるで共鳴するように呼び合う事が出来る。
その『声』を聴けば、自ずと四宝がいる場所が判るという訳だ。レムはその特性を活かすことに決めた。
まずは『光弓シルヴァンボウ』の所持者であるリリアに、常に身につけて護るその四宝に意識を傾けてもらう作業を彼女にお願いするレム。
「リリア。頼みがある。その手に持っている四宝『光弓シルヴァンボウ』に意識を傾けてくれないかな……?」
「この弓にですか?」
「その『光弓シルヴァンボウ』は四宝の1つだ。『四宝は四方ヲ護る』という言葉はしっかりと意味かある。もし四宝が護るべき者から離れてしまった時に、四宝を護る人物に何らかの形で"助け"を求めるんだ。それを感じることが出来るのはリリア、今のところは君しか出来ない。頼まれてくれないか?」
「わかりました。今は奪われてしまった四宝を探すのが先決ですよね。やってみます」
「しばらくは話し掛けるのは避けよう。この四宝の微弱な『信号』を感じるには精神を集中させないとわからないからな……」
「それはいわゆる『救難信号』みたいなものですか?」
「そうだね。四宝の『救難信号』と捉えてくれて構わない」
リリアは四宝『光弓シルヴァンボウ』に意識を集中させてみる。すると確かにこの光の弓から微かにだが、力を感じる。なんだろう……?彼女は更に意識を集中させる。すると『光弓シルヴァンボウ』はこの四宝を護る主を導くように彼女を何処かに連れて行く。リリアは目を閉じて、四宝が連れて行こうとする場所へ歩いて行く。他のパーティーのメンバーは黙ってリリアの後に続いた。『光弓シルヴァンボウ』は四宝の守護者をもう1つの四宝がある場所へ導く。リリアは迷いなく進んでいる。この広大な砂漠を迷いなく進んでいる。まるで四宝の在処を知るように進んでいる。
そうして砂漠を進むこと30分。
パーティーはある遺跡に到着した。リリアはその遺跡の前で足を止めた。
「ここです。ここに四宝があります。『光弓シルヴァンボウ』が教えてくれています。『ここにある』と」
「この遺跡は?まさか『奉竜殿』?」
「
「四宝の1つ『竜宝玉ドラゴンオーブ』のあるべき場所。そして失われた『竜宝玉ドラゴンオーブ』の力を取り戻すことが出来る聖域でもある」
「あのドラゴンオーブは力を失っている状態なのですか?」
アドニスは少し驚いた声でレムに質問した。あのグリンウッドが奪い去った時でもあの宝玉からはそれなりに力を感じたのだ。アドニスが感じた力は恐らくは『人間界を護る力』だろう。だが、それを回復させて本来のドラゴンオーブの力を取り戻せば、人間一人を焼き尽くすことなど造作も無いことなのだ。ならこの「奉竜殿」に来るのは当然のことだと翔子もレムも感じた。
「この場所がドラゴンオーブの力を回復させる場所なら話の辻褄は合いますよ。確かに」
「ああ。俺もそう思う。あのドラゴンオーブを本来の能力に戻すなら絶対にこの場所だ。リリア。さすがは四宝の守護者だね。良い仕事だ」
「ありがとうございます。じゃあ……ここからが本番ですね。この四宝なら最短ルートでドラゴンオーブがある場所を知らせてくれると思います。私に着いて来てください」
「その間はアドニス。翔子。俺達で彼女を守ろう。恐らくは四宝と連絡を取っている間は彼女は無防備だ。戦える状態ではないだろうな」
「うん。リリアさんの様子を見ているとわかるよ。とても戦える状態じゃないよ」
「確かにそうですね。ここは騎士の誇りに賭けて彼女を守り抜きましょう!」
「アドニスもやる気満々になったところで、行こう。奉竜殿へ」
「はい」
リリアが先頭になって彼らは遺跡『奉竜殿』へと入っていった。『奉竜殿』。ここも長らくこのデザートエンプレスに存在していた遺跡なのだろう。中は朽ち果てているがしっかりとした造りなのか崩れ落ちるような遺跡でもなかった。そう簡単に崩れる造りではない。ここは本来なら四宝を保管する聖域だ。その四宝が全く関係のない遺跡に持ち出されていたのは何故だろうか?前の所持者が遺跡で死んでしまったからだろうか。それともあの遺跡自体に何か意味があるのか?謎は尽きない。まあ、それよりもまずは奪われた四宝を取り戻すのが先決だ。
もしドラゴンオーブが本来の力を取り戻したらここにいる愛しい人が焼き尽くされてしまう。そんなの耐えられないよ。翔子の切なる願いは四宝を片手に先頭を歩くリリアを護ることに集中させた。
遺跡内は薄暗い。両方が壁に松明が灯っているだけで、濃いめの茶色の壁が見えるだけだ。真っ直ぐに伸びる通路。すると不思議なからくりに出会った。この先はどうやら、特定の石を石像にはめて進むらしい。石像は石をはめられると不思議な力で特定の部屋へと導く。何か法則があるのだろうか。彼らが道中で手に入れる石は、皆が皆、月の名前が付けられている。
『新月の石』を填めるとスタート地点へと戻り、『三日月の石』を填めると『三日月の部屋』へとワープする。何となく法則がわかった翔子。そこで翔子は質問する。遺跡の案内人をするリリアに聞く。
「リリアさん。ドラゴンオーブがある部屋はどの部屋ですか?」
「満月の部屋ね」
「なら『満月の石』を探しましょう?それを填めると行けるんじゃないかな?」
「そうか。月の満ち欠けに対応しているのか。この『奉竜殿』は」
「さっきから同じような部屋ばかり行き来していたから迷いかけていましたね」
「こういう謎解きは翔子が得意分野かもね」
「俺達は戦いが得意分野ですし」
「ああ。こういう謎解きは苦手分野なんだよな。俺もアドニス、お前も」
「恥ずかしいですがその通りですね」
「彼女達がパーティーに居てくれて助かるよ」
彼らはリリアの案内で奉竜殿の攻略を進めている。極力、戦闘を避けているルートなのか、まだ一回も戦闘に出くわしていない。何度か『新月の部屋』に戻り、そうしてようやく『満月の石』を手に入れる。これを女神の石像に填めると晴れて『満月の部屋』へと行ける仕組みだった。
女神の石像に『満月の石』を填めると彼らは『満月の部屋』の目の前の通路にワープした。
すると、リリアがパーティーに声を掛ける。
「感じます。この先の部屋にドラゴンオーブがあります!」
「急ごう!」
彼らが『満月の部屋』に入るとそこにいたのは、自分達を裏切ったグリンウッドとあの『漆黒のラーズグリーズ』と揶揄される元愛妻であるシャルロット当人が彼らを待ち受けていた…。
「来たわね。レム」
「シャルロット」
「この奉竜殿の場所がよくわかったわね。その女が握る『光弓シルヴァンボウ』のお陰かしら?」
そして彼らは何度目かの対峙をする。