「よく来たわね。その女が握る『光弓シルヴァンボウ』のお陰かしら?」
「シャルロット。これは俺の責任だ。君の裁きは甘んじて受ける。だから……世界の調和を乱す真似はしないでくれ!」
「今更、君に謝るのは遅いかも知れない。だけど……世界を破壊することだけは止めて欲しい」
「そうね。今更、謝るって言われても、もう遅いわよ。私の今までされた屈辱をチャラにしろって言うの!?」
「だから、君の裁きを受ける。今、この場で。君は俺を殺せば気が晴れるのだろう?なら……この場で殺してくれて構わない」
「レム!?何を言うの!?」
「俺の過ちで世界を破壊させる訳にはいかない。なら……」
「止めて!!過去の過ちはこの先の人生で償えばいいじゃない?!わざわざ殺されることはないわ」
「翔子…」
「シャルロットさん。貴女も許してあげてくれませんか?この人を…。彼は昔のことを悔いています。今でも苦しんでいます。赦してあげてください……。もう、彼は昔の『彼』ではありません」
「……。本当に嫌な男。新しい女をその妖しい魅力で拐かしたのね」
「違います!私は魅力でこの人を好きになったんじゃありません!本当にこの人の人柄が好きなんです」
「……翔子。君は……」
「魅力だけで好きになるなら、私はアドニスにだって抱かれたはず。だけど…アドニスには抱かれなかった。この人だけしか目に見えていない。私はこの人が苦しんでいる理由を聞くことが出来た。この人自身の言葉で。だから……誑かさせたわけじゃないです」
「……。あら、そう?なら……仲良く貴女もこいつと一緒に死ぬがいい!」
シャルロットはグリンウッドから捧げられた竜宝玉ドラゴンオーブを手にしている。
それは翔子が想像していたものよりもかなり小さな宝玉だった。その宝玉は手のひらに収まるくらいにコンパクトで、そして不思議な輝きを宿している。それは敢えて表現するならば、深淵の紫色の光。まるで闇のような光の色だった。
シャルロットがその紫色の宝玉をレムと翔子に向けた。そしてこの奉竜殿でチャージした力で焼き尽くそうとする。
だが。
宝玉は反応しない。それを拒むかのように静かな光を放つだけだ。
シャルロットは苛立つように吐き捨てた。そしてこの四宝を投げ捨てる。
「このドラゴンオーブまで、私を拒むか!忌々しい!なら、この場でお前らを直接始末するまで!」
シャルロットは鋭利な剣を鞘から抜き放つ。そして目の前にいるこの憎い夫を殺そうと襲い掛かって来た!
だが、それを止める為に、リリアとアドニスも戦列に加わる。翔子も戦列に加わる。
あのシャルロットにはグリンウッドも赤い槍を持って加勢した。
「死ね!」
「そうはさせないわ!」
リリアが普段使用している弓矢で牽制攻撃を仕掛ける。
レムはアドニスと共に剣を引き抜き、容赦なく襲い掛かって来る元愛妻に仕方なく剣を向けた。
あの時の夫婦の喧嘩が脳裏に浮かんで来る。あの時の醜い争いがレムの剣を鈍らせる。
「レム様!」
アドニスが彼に向けられた健を防いだ。己の細剣で受け止める。シャルロットが怒鳴りそして、その剣を弾き飛ばす!
「邪魔するならば貴様も死ね!」
「くそっ!!」
「レム様!何を迷っているのですか!?ここでこの人に殺されようと思っているのですか!?殺されないでください!翔子ちゃんの為にも生きて!」
「リリアさん」
「今度は翔子ちゃんを悲しませるのですか?!もう誰とも別れたくないのでしょう?なら、生きて、戦ってください!」
「償うチャンスはこれからいくらでもありますから!」
「リリア様の仰っる通りですよ!レム様!これからです!翔子さんの為にも生きてください!」
「リリア…。アドニス…」
「迷っているようね?なら……いい事を教えてあげる。私の剣にその身体を貫かれなさい!」
シャルロットの憎悪の剣が迫って来ている。だが彼はそれを止める気持ちが無いのかそのまま、その刃を受け止めようとする。
だが、その瞬間。
竜宝玉ドラゴンオーブを握り締めた翔子がその力をシャルロットに向けて放った。
真っ白な光が漆黒のラーズグリーズに襲う。彼女はその力に驚愕している。
「な…何?ドラゴンオーブだと!?何故た?何故、あんな小娘に…ドラゴンオーブは味方する!?」
「あの
「ええ。翔子さんは優しい方ですけど敵に回すと怖い方です。あらゆる方法であなたを倒しますよ。レム様を守る為なら」
「この人を傷つけるのは私が許さない……!」
「これが世界を安定させる為の
「この人がいない世界なんて嫌。私はこの人がいる世界なら混沌に呑み込まてしまってもいい…!」
「翔子。君はそこまで俺を」
「好き…!だから死なせない!だから…ドラゴンオーブよ。私に力を頂戴!この人を守る力を!私に頂戴」
竜宝玉ドラゴンオーブはそれに応えるように眩い光を放って、また一発、青白い光をあの漆黒のラーズグリーズに放つ。容赦なく。非情なまでに撃ち込む。
漆黒のラーズグリーズと揶揄されるシャルロットは、その力を受けて血を流す。腹部を中心に血が滲んできている。
彼女は狼狽え、そして一時的な撤退を余儀なくされる。
「さ…さすがはドラゴンオーブ。四宝と呼ばれるだけはある…!……この場は撤退させてもらうわ!だけど、私は必ず、貴様らに裁きを下して見せる!」
シャルロットはその場からまるで霧のように消えでいった。
グリンウッドも共に連れて消えた様子だ。
奉竜殿に残ったのは、新たな竜宝玉ドラゴンオーブの守護者となった翔子と、四宝の1つ『光弓シルヴァンボウ』の守護者リリア、そしてアドニスとレムだけになった。
レムはただ呆然とするばかりだ。そして最後は握り締めた剣を落として、自分自身を悔むことしか出来ない。
どうすれば俺は赦されるのだろうか?
そればかり考えていた……。
それに対する答えは知っている。翔子は考えに耽るレムに答えて見せた。
「答えは出ているわ…。まだ、償うチャンスはある。だから、前だけを見て進んでください」
「翔子。本当にすまない…。君には迷惑ばかりかけて…」
「迷惑だなんて思ってません。これは私が好きでやっていることだから。それに、レムのリーダーシップが無ければここまでこれなかったよ」
「ええ。私もそれに賛成!」
「俺も。だから私達は一蓮托生です。だから前だけを向いて進んでください」
「…悩むのはそれからか。そうだね。君たちか一緒で本当に良かったよ。わかった。俺は前だけを向いて進むよ」
和やかな雰囲気に包まれるパーティー。だが……!
「薄紅のレム!転生するがいい!」
その瞬間。
彼らは信じられない現象を目の当たりにするのであった!