「あんなに嫌だったのに、抜けて落ちると「空っぽ」の自分自身がいる」
「ずっと……鬱陶しいと思っていた。その前に何で『俺』がふたりもいるんだ?って疑問に思っていた。夜になると、目が真っ赤な自分自身がいて……気が付いたらセックスの合間に暴力を振って、シャルロットは俺を殺そうとしている。でも……そんな俺が当然とばかり思っていて、それはとんだ思い上がりだった」
翔子はただ黙って彼の話を聞いていた。ただ黙って。
「本当の俺は何処にいるのだろうか?それともこれが本来の俺だろうか?後から後から疑問ばかりが浮かんでくる。その疑問に答えられる自分自身はいない。何なんだろうな。こんな自分を君は好きだという。単純に身体の相性が合っているだけで俺は『快楽』だけを欲しがっているだけかも知れないのに」
「……単純に快楽だけを欲しがっているなら、私はアドニスにも抱かれたわよ」
「そうだね。でも今まで、アドニスには身体を許していない。どんなに男に飢えても君は俺にだけしか抱かれたいと思わない。何で?俺に抱かれたい?俺は君にまで暴力を振って玩具のように扱った夜まであるのに?」
「何でだろうね。そんな男性、元の世界で懲りたはずなのに。だけど、あの男は私をただの性欲処理の女だって思っていた。ただアソコの感触が気持ちいいから突っ込みたいと思って、私は全然気持ちよく無かった。快楽でのぼりつめた経験が全く無いんだ。男性とのセックスで。だけど、あなたは違う。私を満足させてくれる。きちんと、気遣ってくれる。私が求めるとあなたは答えてくれる。それが決定的な違い。そんな男性に愛されたかった。最初は確かに怖かったの。魅力的だけど、危険な人。一度、心を許せば、取り返しのつかない程、のめりこむ。そんな男性が本当にいた。それがあなた。
レンブラントという目の前にいる男性」
「外見が好きとかそういうこと?」
「外見だけじゃない。その妖しい魅力が好きなの。危険な魅力。虜になったらもう何も見えない。あなたしか見えない。全てが欲しいと思えるそんな男性に恋をしてみたかった。だから……この世界にいるの」
「でも正体がこういう俺で君は幻滅している?」
「幻滅するほど悪い男ではないわよ。むしろ、そんな男性なんだって意外性があって嬉しい」
「意外……か。てっきり、こんなウジウジ男は嫌いって言われるのかと思った」
「そうね。いつまでもウジウジしているなら考える必要がありそうだね。ウジウジ男は嫌いだわ。私は。危機だからこそ、意地っ張りでも強気でいて欲しい。私の理想の男はそういう人」
「難しい条件だね。君の理想の男性になるのは」
「現実世界にはいないから、私はこの世界にいるの。楽しいから」
「なるほどね……」
洗いざらい話してスッキリしたのだろう。いつものあの自信に溢れる盟主がそこにいる。
「君の理想の男性には程遠いかも知れないけど、抱かせてくれませんか?俺の姫様?」
「最後まで満足させてみせるから抱かせてくれませんか?」
「ここで?」
「嫌かな?」
「何処でも抱かせて欲しいと言ったのはどちらの姫様だったかな」
「でも…?!」
ここは下働きの部屋。
リリアがもうすぐ帰って来るかも知れない。
「鍵をかけて。今すぐに。そうすれば覗かれないですむから」
「わかった。レム」
急いで内鍵を掛けた翔子。
それを確認した彼は頷いて、彼女を求め始めた。
激しいまでに熱いキスを交わすふたり。いつもレムレースで彼女が寝るベッドで今夜。
翔子は奪われる夜が来た。
キスを交わすたびに、二人が纏う衣服がベッドの下に落ちていく。いつにも増して喘ぐ翔子。そんな彼女を激しく求めるレム。
官能的に見つめ合うと、彼の淫らな舌が、彼女の身体に這う。指は彼女の花びらを弄ってわざといやらしい音を立ててみせる。
彼女がそんな自分に「淫乱みたいだ」と嘆く前に、キスをして口を塞ぐレム。
彼女の目が情欲で濡れて、しがみつく。彼の首から抱きしめて腕を絡める翔子。
レムは瞳を閉じて、左手の指で花びらを掻き回している。だんだん…痙攣している彼女。
内側からは確かな快感が雪崩れ込んで来る。呼応するように歓喜の蜜が花びらから流れる。
「アッ……アッ…!レム……!私……イク……いっちゃう!」
「イッてくれ…。そんな君を見て『エッチ』とか『淫乱』とか言わないから……」
「くううぅ!」
翔子が声を押し殺して快楽の絶頂へと駆け上る。力が込められて正直首が痛い程だったが、自分の銀髪を抱きしめていた。
「ごめんなさい。首、思い切り抱いて…。痛かったでしょ?」
「殺されるかと思った。もうちょっと軽く抱いてくれ…。触れていいからさ。リクエストは?」
「リクエスト?」
「あるなら言って」
「今夜はこの態勢でして?」
「顔が見えないよ。お互いに。それは却下かな。君がそうして涙に濡れた目を見ながら、身に受ける快楽に苦悶する姿を見て、俺を抱いていて欲しいんだ」
「アッア…!レム…!」
彼が思い切り花びらをえぐるように貫いた。温かい肌の温もりを二人で感じ合う。
ゆっくりと腰を揺らし始めるレム。今夜の彼女はまるでしがみつくみたいに自分の身体に腕を絡める。それもいい。
しきりに自分の名前を呼ぶ翔子。
「アッ……アッ……レム…っ!レム…っ!気持ちいいよ……っ!」
「こういうのを感じてみたかったんだね…君は…」
「でも……恥ずかしい……」
「恥ずかしいなんて思わないで、心から楽しんでくれ。俺のお願いだ」
そう。君は『心のカケラ』を見つけ出してくれたんだから。
俺を否定しない人がやっと見つかったんだ。
だから……俺を抱いてくれ。
俺に溺れてくれ。
俺は君に溺れるから。
いつか……別れる、その時が来た時にこの世に生きていて良かったと思える人を見つけることができたから……。