そこは、すべてが蒼く染まっていた。蒼い森を歩くパーティ。森は深くそして静寂が支配している。深く蒼い森の奥からは、梟が鳴く声が聴こえる。魔物は驚く程、生息していない。ただ本当に静寂に包まれた深い蒼い森が目の前に広がっている。
ここは、ブルーセインツの領土内である。蒼い森と青い海の国ブルーセインツ。世界の南側に位置するこの国は、レムレースやウィンバリアシオンとは、全く違う文化が栄える国である。象徴となるものは蒼いドラゴンの存在。遥か昔より竜の存在が信仰されたこの国は、竜は特別な生き物だ。そして代々、国を治めるのは決まって女性である。高い地位に就くのも女性で、国を治めるのも女王である。だがこの国は、遥か昔より永世中立国として発展している。高い武力を持つと云われるブルーセインツは、けして他国を侵略するような国ではない。むしろ世界を想って、何処の国にも味方しない国として、その秩序を守ってきた。
深く蒼い森を抜けたパーティを待っていたのは、まるで憂鬱を表したような雨だった。この国は青空が広がる国というより、雨が降り注ぎ、まるで1年を通して梅雨みたいな天候が特徴的な国だった。彼らは雨に打たれながら、ブルーセインツの首都を目指して歩いている。彼らは雨具を着て、その蒼い大地を歩いている。
「ここがブルーセインツ。文字通り『聖なる蒼』が支配する王国だ」
「噂には聞いていましたが、これ程の雨とは……」
「だが、この国はこの雨のお陰で肥沃な大地を手に入れて、農業で生計を立てる人間が多いんだよ」
「それがこの国の住民から戦いの心を失くして、そして民主国家として栄えるようになった。そうして彼らは武器を捨て去ることも出来たんだ」
「ブルーセインツは独特の文化があると聞きました。何でも私達からすればカルチャーショックを受ける位の文化とか」
「本当に蒼い王国だね。綺麗で神秘的な雰囲気」
「翔子はこの王国は好きそうだね。雰囲気でわかるよ」
「よくわかったね。レム」
「俺もこういう国は好きだからね。五感に敏感な人間には、静寂が支配する場所は心が休まる」
「四六時中、雨ばかりの国は私は嫌ですね」
「リリアさんはこういう天気は苦手なんですか?」
「気持ちが暗くなってしまうじゃない?憂鬱になるっていうか」
「リリアは本当に晴れが好きな女性だね。アドニスは?」
「俺もこういう天気は苦手です。特にこういう霧が出る天気は、ちょっと勘弁ですね」
そう。彼らは今は、濃霧の平原を歩いている。濃霧の時は、何処から魔物が襲ってくるのかわからない。騎士としては、神経を集中させないといけないから、精神的なストレスが溜まる天気である。
雨が降る蒼い大陸の空は、晴天の青空を全く知らない国。レムレースは青空を知る歓楽の国なので、住民は既にテンションが高めだが、まるでこの国は憂鬱という言葉が似合う、そんな国だった。
気温は低い。常に梅雨時のような国なので、割と肌寒い。
すると、目の前に街が見えたパーティは冷えた体を温める為に、ブルーセインツの街の1つ、雨の街レインベースで一晩を過ごすことにした。
雨の街レインベース。降り注ぎ続ける雨の街。だが賑やかな宿場街だった。なんと言ってもこの街の売りは温泉である。しかも女性には嬉しい『美人の湯』として有名だ。当然、宿も温泉宿である。街に入ると温泉の匂いがした。賑やかな雨の街。レムレースの盟主であるレムは思い出す。確か、女王アンドリアの計らいでこの街の宿屋の優待券を貰っていた筈だ。彼は身につけている財布を調べる。
「どうしたんですか?レム様?財布を調べて」
「確かアンドリア女王からこの街の宿屋の優待券を貰っていたような気がしてね」
「優待券?あったらそこで宿が取れるね」
「そこに『美人の湯』があれば完璧だよね。リリアさん」
「そうね〜。私達、女性からすれば『美人の湯』は入りたいわ」
「あった!まさか、こんな時に役に立つとは思わなかったよ」
「何処の宿屋ですか?」
「何処でも使えるらしいな。この街の宿屋なら」
「そうですか。なら、ここは女性陣の皆さんの希望を聞きませんか?」
「温泉と言えば『混浴』が有名だけど、『混浴』かぁ……」
「『混浴』ね……。このパーティではそれが問題よね」
「特にうちのリーダーが好きそうな雰囲気ね」
「その目はなんだよ…」
パーティの女性陣は、疑い深い視線をレムに送る。
「耳が痛いですね」
「うるさいな。彼女達だって、似たようなものだろう。やりたがりという点では…」
思わずレムは率直に思っていたことを呟いた。腕を組む。女性陣はどうやら作戦会議をしている様子だ。
「この際『混浴』がある宿屋に泊まらせて貰わない?」
「今夜一晩くらいならいいよね」
「決まりね。宿屋に着いたら2人で話し合いましょう」
「レム」
「何だ?」
「温泉宿なんだけと、どうせなら『混浴』がある宿屋に泊まらない?」
「まあ……いいが」
そうして『混浴』がある宿屋探しが始まる。案外と簡単に見つかった。その宿屋はホテル『アヴァンチュール』。如何にもという宿屋であった。
レムは今晩の宿屋のチェックインの手続きに入る。
ここはホテルなので、普通のホテルのように2人部屋からシングルルーム、4人部屋もある。
今夜の空いている部屋を聞くレム。受付嬢は空いている部屋を案内した。
「4名様ですね。ただいま空いている部屋は2人部屋が2室あります」
「人選はお任せします」
「決まっているようなものだね。何処と何処ですか?」
「209号室と311号室です」
「アドニス。どちらにする?」
「209号室でいいですよ」
「じゃあ311号室は俺か。聞くまでもないと思うけど、リリアはどちらに泊まる?」
「アドニスの部屋ですね」
「翔子は?」
「貴方の部屋に決まっているわ」
あっさり決まったので彼らはそれぞれ自分達の部屋へと向かった。
普通の部屋だが、まるでそこはビジネスホテルのような宿屋だ。経屋の造りは至ってシンプル。最低限の設備はある。翔子とレムは部屋に入ると身につけている雨具を外した。雨具を身につけても、彼らはずぶ濡れで髪の毛から身体全体まで濡れている。彼は左腰に下げた剣を外して棚に立て掛ける。翔子は腰に巻いてある魔装銃を外して棚に置いた。
「うわ〜。ずぶ濡れになっちゃたね。気持ち悪い〜」
「風邪をひいたら大変だから、先にシャワーを浴びるといいよ」
「レムは大丈夫?」
「先に温泉に入ってくる」
「流石にこういう公共のホテルの温泉で身体を重ねるのは抵抗があってね。誰もいないなら話は別だけど、客は俺達だけじゃないし」
彼は照れた様子でそう説明すると、足早に温泉に浸かりに行った。ただし翔子の欲望には応えるように付け加えて話をしてくれた。
「大丈夫。後で部屋で楽しもう。この部屋ならいくらでもやろうと思えば出来るから」
「じゃあ……後で」
部屋に一人残った翔子は思わず呟いた。
「温泉プレイはおあずけね」
だが。実際はそうでもない。
温泉に浸かりに行ったレムは、何処にその噂の『混浴』風呂とやらがあるか確認に向かっていた。
受付嬢の人にその場所を聞いている姿があった。
「『混浴』温泉ですか?当ホテルでは予約制になっております」
「どの時間に空いてますかね」
「今夜の25時から朝まで空いております」
「予約していいですか?25時から深夜2時まで」
「はい。何名様でしょうか?」
「2人で」
「2名様、貸し切りですね」
(貸し切りなら存分に楽しめるからな)
そうして彼はそのまま温泉に浸かりに行った。露天風呂になっている男湯でゆったり浸かっている所でその『貸し切り』温泉からは、恐らくは彼らと同じことを考えていたカップルがいたのであろうか。かすかな喘ぎ声が聴こえる。
思わず聴き耳立てる。
(やってる、やってる。俺と同じ考えの奴が居たってことだ。覗きは趣味じゃないがまさかここから見える訳ないよな)
と思っていたが、覗くことが出来たのだ。そっと視線を送ると、『貸し切り』温泉で交わる男女がいた。
(残酷な光景だぜ…。ってあれは……まさかな)
その交わる男女は彼が『まさか』と思っていた人物達だった。 リリアとアドニスだ。
(何だ。彼らもしっかりやってるじゃないか。何を気取っていたんた?俺は?俺達は俺達だよな)
それにしても、彼らは激しく愛をぶつけあっている。リリアのあどけない喘ぎ声が、男湯に浸かるレムに残酷な仕打ちをしている。欲情している訳では無いのに、自分自身が大きくなってしまった。
(……。今夜は1回では終わりそうにないな)
このままでは、『貸し切り』温泉で一戦する前に部屋で一戦するかも知れないと思った彼は早々に風呂から上がった。
(お楽しみはこれからさ)
「ふー。良い温泉だった」
彼が311号室に帰るなり、翔子は彼を求めた。思わずレムの胸に飛び込む翔子。軽く抱きしめるレムは彼女に朗報を寄せた。
「今夜の25時。『貸し切り』温泉で待っている。そこで君を抱かせてくれ」
「本当?」
「本当だよ」
「それまでに身体を綺麗にしてきてくれ。1階に貸し切り露天風呂があるからそこでしよう」
「場所を見てきていい?」
「確認するだけして来たら?女湯も近くにあったし」
「ちょっといってくるね」
そうして翔子も女湯に浸かりに向かった。彼女は温泉に浸かると、内心びっくりした。『美人の湯』というだけあって浸かって見ると肌が滑らかになったような気がする。そうして、彼女も身体を綺麗にしてそっと秘められし場所へ指を下ろしてみた。そこはもう彼を切なく求めて濡れている……。少しだけ弄ってみると、みるみる淫欲が湧いて来た。
(ダメ…!我慢できない…!)
彼女はそこで自慰行為をしてしまう。声を押し殺して頭の中で彼に抱かれる。指が加速していく。乳首を弄って指で掻き混ぜてしまう。そしてそのまま絶頂へと駆け上がる。後2時間も待てば彼に抱かれるのに独特の快感に彼女は虜になった。
「はあっ……はあっ……この感じ…素敵……」
深夜25時。今日という日が終わろうとしている真夜中。
『貸し切り』露天風呂で翔子は盟主に抱かれた。
「はあっ…はあっ…レム。今夜のレムも激しいよぉ……!」
「それが堪らない。そうじゃないか?翔子」
貸し切り露天風呂で彼らは欲望をぶつけ合う。彼女の薄紅色の乳首を甘噛みして、舌で細かく舐めて、彼は囁くように甘く指摘する。温かいお湯の下では相変わらず無邪気に触れ合う。レムは左手で確認するように触れてその花びらの感触を確かめた。
「いつもより濡れている。もしかして…下の女湯で慰めて来たのかな……我慢できないで」
「だって…我慢できない……こんな感触をそのままなんて…」
「俺に抱かれるのに?ズルいな……君は。俺はわざわざ我慢したのに」
「お仕置きが必要だね」
「アァッ……レム…!」
そのまま彼女を跨がせて自らを入れたレムは、浴槽の中で踊り出す。
水しぶきが派手に飛んでいる。彼女の手が自分の銀髪をぐしゃぐしゃにした。
「どう?このお仕置き?君には堪らないものだろう?」
「こんなお仕置き…初めて……」
「だろうね。こんなのお仕置きではない筈だな。でも…これが俺のお仕置きだ。君の快楽は俺のものだからね」
翔子は艶やかに喘ぐことしかできない。下半身から雪崩れ込む確かな快感に呑み込まれ、全てを目の前の男性に奪われてゆく。
「さっきさ……この露天風呂でリリアが抱かれていたんだよ…。アドニスに……何の因果かな…?わからないよな……君に聞いても」
突き上げる嵐に身を任せながらも彼は今のパーティのあまりの不思議な関係に失笑する。
「君を抱くのは俺だけだ。この先も俺だけに抱かれてくれよ。いいね?翔子」
「はい……」
彼女はそう答えるしかなかった。
私にとって、あなたは理想の男性だから……。