雨の街にて一夜の情事で気分転換をしたパーティは、ブルーセインツの首都への旅を再開した。外は相変わらず雨が降り注ぎ、彼らは雨具を着て蒼い平原を歩く。しばらく歩くと一際大きな街が見えた。ブルーセインツの首都である街ロイヤルブルーである。
「見えた。あの街が首都ロイヤルブルーだ」
「高台にある街なんですね」
「綺麗な街」
「あの街にアンドリア女王がいるんですね」
「ねえ!空を見て!」
「あいつらは神界アスガルドの兵隊だ!」
「それに『ラーズグリーズ』の妹って話のワルキューレもいるわ!あの浅葱色の鎧!」
「オーディンめ!前々から考えていたのだな。話は後にして急いで中に入ろう!」
上空から冷徹な眼差しでワルキューレはラーズグリーズのパーティが来たのを確認する。腕を組み、嘲笑う。
「来たか。ドラゴンオーブを持つ女というのは青い服の奴ね。オーディン様が仰る通りただの人間ね。丁度いい」
首都ロイヤルブルーへと入るパーティが最初に見たのは、普通の人間よりも低い身長の人間ばかりが存在している光景だ。大体、130センチくらいの高さの人間達だ。そして彼らは自分の身の丈よりも長い槍を手に闘う光景があった。空には
「待っていました。貴方方がここに訪れるのを」
「貴女は?」
「女王アンドリア様の従者である、アクアです。ブルーセインツ騎士団の団長を務める者です」
「王宮にてアンドリア様がお待ちになっております」
ブルーセインツの王宮はやはり青か基調になっていた。水が流れる音が聴こえる。『聖なる蒼』というだけあって城壁の壁も水色で統率されている。そして竜の銅像も飾られているのもそこかしこに伺う事が出来た。
パーティは、女王の間に姿を現す。そこには落ち着いた佇まいの女王アンドリアの姿があった。彼女は今日この日に来るのを予め予期しているように声を掛けてくれた。
「遠い所からわざわざここまで足を運んで頂いてありがとうございます。盟主殿。今日辺り貴方方がここに来るのではないかと思っておりましたわよ」
「本当ですか?」
「その様子だと、貴方の内側に眠る『ラーズグリーズ』ともようやく和解出来た様子ですね」
「アンドリア女王。何故、そのことを知っているのですか?貴女には一度たりともそのことをお伝えしてはいないのだが……」
「私には『未来』を共に視るパートナーがいます。そのパートナーは人の心までをも映す鏡。貴方がこの3ヶ月の間に起こった出来事は全て視えました。私には視えていたのです」
「では今の私達の状況も?」
「手に取るようにわかりますわ。ですが、状況は更に悪くなっていると言わざるを得ないですね」
「何故です?」
「貴方方が追う敵……シャルロットが今、オーディンと戦っています。彼女は神の槍グングニルを狙い神の世界アスガルドを襲撃したのです」
「なんですって!」
アンドリア女王が事態の説明をしてくれた。光弓シルヴァんボウ、そして竜宝玊ドラゴンオーブ。2つの四宝を入手に失敗した彼女は、四宝の1つでもある神槍グングニルを掌握する為に神界アスガルドへと襲撃した。世界を支える大樹であるユグドラシルを辿って。そして神界アスガルドではまさに今、オーディンとシャルロットが戦いをしている。
彼らはどちらも歪んだ正義を掲げている。人間達を排斥しようとしているオーディン。滅びに向かう世界にトドメを刺して新たな創造主になり『男性』がいない世界を創ろうとするシャルロット。
彼らが争う神槍グングニルはそれ1つだけでも途方も無い力を手にする事が出来る四宝の中でも特別な武器。その所持者であるオーディンから奪い取ろうというのがシャルロットの狙いだ。
だが、シャルロットは普通の人間の筈だ。そんな彼女が曲がりなりにも神の世界を治める王に勝てるのだろうか?
ラーズグリーズのパーティの面々はその疑問が浮かぶ。だが、事態は神の王を遥かに凌駕する事態になってしまったのだ。
「貴様は人間だな。たかが人間の女如きが我に挑むとは愚かにも程があるぞ」
「貴方も所詮、神であっても『男』だった訳ね。私が何も策も無しにここに攻め込むと思って?」
「何?」
「私は『神』を超える為の研究をしていた。どうしたら人間の身で神に挑む事が出来るか。答えはすぐに出た。人間の身で神を超えるには、『神の器』を作り、そこに神の魂を移せはいい」
「『神の器』だと?ただの人間とは違うらしい」
「あなたがエルフと人間のハーフであることは知っているわ。だから私はそれと同じ物を作る事にした……。神の学問を学ぶうちにわかったのは、『魂』の重さは神と人間では同じ価値ということ。同じ価値なら私でも『神』になることが出来るということ。違うかしら?」
「人間の分際で神を冒涜するとは大した肝の持ち主ではないか」
「あなたも似たようなものでしょう?人間をただの「道具」としか見ていない」
「そんなあなたがこのまま神の王にいるよりも、私が神の王になる方が余程有意義というものだわ」
「たかが人間如きに、我の座をくれてやるほど私は腑抜けではない!」
「あなたは腑抜けよ」
「何!?」
「やりなさい!」
シャルロットはオーディンとの会話中に実は失伝魔法を復活させた3人の賢者を密かに配置させていた。彼らはあの『王呼の秘法』を発動させた3人である。彼らは更に魔法の研究を進め、ある失伝魔法をも身に着けたのだ。
輪魂の呪。これは本来では肉体と魂を結びつけて死者を復活させることが出来る魔法。しかし、それを逆呪文として発動させると肉体と魂の結びつけを解いて、魂を離れさせることが出来る。解いた魂をまた、輪魂の呪で別の肉体へ結びつけることも出来る。
これをオーディンに使用すると、たとえオーディンでも魂を解かれて死に至るというのだ。
その場に残るのは空になった『神の器』のみ。そこにシャルロットが乗り移れは晴れて彼女は神の王になる。そういう寸法だった。
程なく3賢者による輪魂の呪は発動した。
「何だと!輪魂の呪だと!?馬鹿な!」
「油断した結果ねえ。あなたの魂なんか私には必要ないけど、一応支配だけはしておきましょうか。そうすれば、私は晴れて神の王になれることだし」
「おのれ…!!」
「さよなら。オーディン。愚かな神の王よ」
3賢者達は、次は彼女、シャルロットの魂をオーディンという『神の器』に魂を結びつける。
そうして誕生したのは、新たなる神界アスガルドの女王だった。その手には神の槍グングニルが握られている。
こうして、神の槍と神の器をも掌握したシャルロットは、忌々しい世界を滅ぼす為に行動を開始する。
事の顛末を告げられたラーズグリーズのパーティは、愕然する。もう既に神界アスガルドの崩壊は始まっている。一度、滅びに向かえばもう修復も叶わない終わりが始まっている。
もう手立ては無いのか?
だが、ここで『彼』が表に出た。
薄紅のレムはまだ手が残されているのを彼らに告げる。
「いや。まだ手はある。レムレースの街だ。あそこに事態を治める最後の手が残されている」
「何処にですか?」
「死者の谷。そこから道がある。この事態を収める為のただ1つの道が」
薄紅のレムはそこで語り出した。この事態は収束させる方法を。