※この作品はR-18です。

淫欲は今宵も盟主に抱かれる   作:翔田美琴

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6-5 ラーズグリーズの幽霊

 神界アスガルドが崩壊して、間もなく異変が起き始める。神界アスガルドの兵士達が突然、消えていなくなる事態が起きたのだ。

ブルーセインツを襲撃していた、アスガルドの兵士達が消えていく。この異変に浅葱色の戦乙女であるワルキューレは、神の世界アスガルドで重大な異変が起きたことがわかった。 

 

「兵士達が消えていく…!これは……一体…?オーディン様の意識も無い。アスガルドで異変が起きたのか?まさか…?」

 

 浅葱色の戦乙女が撤退したことでブルーセインツの襲撃は終わったが、神界アスガルドでシャルロットが神の王になったことで、事態は混迷し始める。

 徐々にひび割れ始める世界。

 そこであの『ラーズグリーズ』が表に出た。パーティには今、黒髪の赤い瞳の男性がそこにいる。

 彼はこの事態の打開策を話してくれた。

 

「いや。まだ手はある。レムレースの街に、それがある」

「レムレースに?」 

「以前、アドニスも共に行ったことがある文献に載っていない遺跡。実はあの先は『死者の谷』に繋がる道がある。その『死者の谷』から死の世界ニブルヘイムへと行き、そこから世界を支える大樹であるユグドラシルを目指す」

「ユグドラシルを登ってアスガルドに行き、シャルロットを倒す。そして神槍グングニルを奪還すれば、未来は見えてくる」

 

 しかし、その死者の谷に行けばどうなってしまうのかアンドリアは知っている様子だ。珍しく反論した。

 

「しかし……『死者の谷』に行き、死の世界ニブルヘイムへ行くことは、彼らが『生者』から『死者』になってしまうことを知っていますか?」

「死の世界ニブルヘイム。そこは死者の世界。我々、生きる者にとっては、そこに足を踏み入れることは『死』を意味する……」

「だがユグドラシルを辿って行くにはもうそこからしか行くことは出来ないだろう……」

「あの遺跡は『死者の谷』に関係する遺跡だったのですか?」

 

 この広い世界に旅立つ前にレムレースの近くで発見された遺跡があった。そこの地理調査でわかったことは、遺跡の先は『死者の谷』に繋がることだった。

 『死者の谷』。レムレース近郊に位置する谷。その先の世界は文字通り死者の世界。しかし、大樹ユグドラシルの根本があるのもこの世界だった。

 大樹ユグドラシルの根本から登れば、アスガルドにも行けるというラーズグリーズの説明は正しい。

ただしその作用としてこのパーティの人間達……翔子、リリア、アドニスの3名は記録上、『死亡』してしまうのだ。 それが問題だった。

だが、今思い付く打開策はこれしかないのも事実だった。

 そこで翔子は言った。 

 

「その『死者の谷』はここから近いのですか?」

「すぐ近くだよ。レムレースからも近い。国境辺りにあるんだ」

「行くだけ行ってみない?」

「そうだね。ここで討論していてもしかたないし、私も行くわ」

「俺も行くだけ行ってみたいです」

「決まりだね」

 

 薄紅のレムは納得した様子で、意識をレンブラントに返す。彼は女王アンドリアの心配に感謝を述べつつ、その足で『死者の谷』へと向かうことにする。

 

「アンドリア女王。私達はとりあえず、『死者の谷』に向かうよ。アスガルドがひび割れ始めるということはこちらにも影響が出る筈だ。この際、『死者』になろうが、なるまいが関係ないと思う」

「……わかりました。そこまで言うなら私は、この先の未来をパートナーと共に視ましょう」

「行こう」

 

 ロイヤルブルーから出たパーティは国境の近くにある遺跡へと向かう。『死者の谷』に直接繋がる遺跡。文献にも載っていない遺跡だ。

 そこに行く道すがら、レムは「レムレース」という街の名前の由来を話した。 

 

「レムレースという名前の由来は『死者の街』という意味合いがあるんだ。この世界を護る四宝には、死者の世界を護る四宝もある。それを護る街がレムレースなんだよ」 

「レムレースってそういう意味があったんですね」

「『死者の谷』ってどういう所なの?」

「あえて言うなら……狭間の谷だね。生者と死者の狭間の谷。一応、生者も行くことは出来る。足を踏み入れるかは別として」

「行くだけ行ってみよう」

「もし…そこに行ったら俺達はさしずめ『ラーズグリーズの幽霊』ですね」

「御伽話はやがて真実になる……か」

「その御伽話ってどういう物語なの?」

「この世界では有名な御伽話でね……よく子供の時に一度は聞かさせる少し怖い話さ」

「ああ、それ、俺も聞きました。ただのコケ脅しだと思ってましたけど、そうでは無かったんですね」

「そういうことだな」

 

 そうして彼らは『死者の谷』に繋がる遺跡へと辿り着く。

 そこは確かに生者と死者の狭間の世界だった。幽霊が漂う不気味な遺跡だ。肝試しにもうってつけだが遊びで訪れるにはそこは余りにも危険過ぎる。

 遺跡に足を運ぶパーティ。中の雰囲気は暗い。幾つもの幽霊が飛び交い、松明の炎が青白く燃えている。遺跡の奥の扉の前で止まる。

 

「この扉の向こうはもう『死者の世界』だ。あの扉を潜れば、『生者』から『死者』になる」

「それは記録や戸籍まで影響を及ぼす変化だ。ここから先は、意志を持つ者だけが来るように」

「この先に行けば、戸籍上でも『死亡』と明記されてしまうだろう。生半可な覚悟では後悔してしまう。とりあえず、このパーティは一時的に解散とする」

「レム様は?」

「私の戸籍もここで恐らく『死亡』になるだろうな……。でも、誰かが止めなければ世界の明日は無い。元々は私が蒔いた種だ。だから……私はここに残る」

 

 そして最後の言葉が贈られた。 

 

「ここまで着いてきてくれて、ありがとう……。でもこの先は余りにも危険だ。それでも……その危険を顧みす来る意志がある者は来てくれ。私から言える言葉はこれだけだ」

 

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