パーティは一時的に解散となり、これから先の余りにも危険な冒険に行くかは自分達の意思に任せると言われて、翔子、リリア、アドニスは今、レムレースの執務室にいる。
一人残ったレムは自らで決着をつける為に『死者の谷』に残ることを言い、『死亡』する覚悟を決めて残った。
残った3人は話し合いをしていた。
「どうする?これから?」
「死ぬ覚悟があるなら来てくれという感じの言葉でしたね」
「でも、一人で闘うつもりなのかな。レムは」
「本当は一人で闘うのは怖い筈だよね。でも、それよりも私達のことを想って一人残ったのよ……。きっと」
「でも、本当にどうします?」
「私は異世界からの使者。『死亡』しようが関係ないから、私はレムと一緒に行くわ!」
「地獄まで道連れになっていいってことね。翔子ちゃんは」
「私もこの際、レムの道連れになっていいかな。世界が無くなったら「生者」も「死者」も関係ないし。ここまで着いて来た以上は最後まで見届けたいわ」
「アドニスはどうするの?」
「俺ですか?じゃあ……皆さんが道連れになるって言うなら俺も道連れになることにしますか」
「本当?それ?」
「本当ですって。この先はもっと危険な旅路になる。なら……俺は騎士の誇りに賭けて、レム様の護衛を務め切る考えです」
「翔子さんこそいいのですか?もしかしたら本当に死んでしまうかも知れない旅路なのに」
「今更、彼無しで生きるなんて考えられない。なら……地獄まで見てもあの人の傍に居たいの」
「私も同じね。世界がどうなっても構わない。でも、レムが死んでしまうのは耐えられないわ。この際、『死亡』という記録が残っても、私も最後まで、決着がつくまで傍に居たい」
「皆さん、そこまであの方のことを想っているんですね」
「これも『ラーズグリーズ』の導きかしら?じゃあ…行こう?翔子ちゃん」
「これで私達も『ラーズグリーズの幽霊』ね」
彼女達はまるで開き直ったように、自らが『死亡』してもこの戦いの決着まで見届ける覚悟を決めた。迷いなど最初から無いように。いともあっさりと。
彼女達の覚悟は、最初から決まっていたのだと思うアドニス。最初から、あの盟主に出逢った頃から決まっていたのだ…と。
「あの方が俺は羨ましい。あの2人の女性をそこまで夢中にさせるレム様の魅力が、羨ましいな……」
「待って下さい!俺も行きますから!」
「早くしないとサッサとレムが『死者の谷』に行っちゃうよ〜!」
パーティ解散の言葉を贈り、約1日。彼は遺跡で来る筈も無い"仲間"を待っていた。
そう思って、1人、『死者の谷』に向かおうとした、その時……。
「待って下さい!!」
「お……お前ら……」
「私達を置いて行かないで!」
来る筈も無い仲間が来たのだ。
彼は柄にもなく、感動した。
だけど、いつもの突っ張った盟主の癖が出てしまう。
「何で……来たんだ?この先は皆、死んでしまうんだぞ……。どうしてそんなにあっさりと来れるんだ……」
『お前の魅力に逆らえる人間なんてそうそういない。気が付いてなかったのか?彼女達にとって、そこが地獄でもお前がいるだけで『天国』なってしまうんだ』
「あいつらも俺と同じ。俺も彼女達と共にいたかった。どうやら、地獄まで付き合ってくれるらしいな……」
「お待たせしました。レム様」
「この戦いの決着までお供させて頂きますから」
「私はそこにあなたが居るなら何処までも」
「君達の覚悟。見せて貰ったよ。さあ……行こうか?」
「はい!」
そして、公式の記録において、リリア、アドニス、翔子、そしてレムは『死亡』した。もしくは『行方不明』と表記されることになる。
その裏では、彼らは『死者の谷』へと向かい、大樹ユグドラシルを辿り神の世界アスガルドへと目指したのである。