彼らは一度、現状の整理の為に、かつて訪れたことがある街へと再び訪問した。雨の街レインベース。かつて温泉街として栄えたこの街に『新たな世界』として生まれた世界を垣間見る為に。
彼らが訪れて最初に見たのは女性だった。雨の街レインベースは女性の観光客が多いから普通だった。
だが……しばらくして、彼らはまるで刺すような視線に気付く。
リリアと翔子はその刺す視線の理由が判った。
彼らがこの街に訪れて以来、ある存在が見えないのだ。まるで最初からその存在が否定されているかのように。
彼らがパーティが見たのは女性ばかりである。男性客の姿が無いのだ。そればかりか彼女達はこのパーティの男性達をまるで軽蔑するような刺す視線を送る。
敏感な五感を持つレムには判った。自分達、男性はここでは歓迎されない存在であることに気付く。
女性陣の険しい表情はますます拍車が掛かる。
五感にさほど敏感ではないリリアも雰囲気で判った。新しい世界ではある存在が否定されている。
『男性』の存在を否定された世界。シャルロットらしい考えだった。新しい女神であるシャルロットは『男性』がいない世界を創造したのだ。男性そのものを否定した世界を創った。
だが、それだけなら、まだしも、彼らをシャルロットとの戦いに向かわせる決定的な理由を彼らは目撃する。
目の前で略奪行為がされている。女同士の諍いはますます拍車が掛かるようにひどくなり、とうとう殺しが行なわれた。
「キャハハハハッ!!馬鹿な女!私に楯突いた報いよ!!」
「クソ女!金を寄こせ!」
「クソはアンタでしょ!糞女!」
「殺してやる!」
「やってみなよ!クソ女!」
新たな世界では、略奪行為が横行している。しかも、この世界では力が正義の様子だ。殺された女から殺した女は財布を奪いそして金を毟り取る。
「アッハハハハハッ!!金を儲けたわ!もっと奪って金持ちになってやる!」
「何……?この光景…?こんなのが許されていいの?!」
「何よ!!アンタ達は!さてはアタシの金を奪いに来たのね!?」
「そんなつもりはないよ」
「アンタ達、見かけない人を連れて居るわね?女の癖に髭なんか生やして?」
「??」
よく要点がわからない話をする女に彼らは顔を向ける。
「どういう意味だ?」
「そうか。彼女達はレムのことも『女』って認識しているんだ」
ラーズグリーズは何気ない話の内容からすべてを悟る。
「彼女達には『男性』という認識がそもそも無い。何せ。『男性』が否定された世界だから」
「そもそも論議になるけど、この新たな世界には本当に『男性』が居ないんだよ」
「何それ……?気持ち悪い」
リリアはそこで吐き出すように呟く。リリアは女同士の吐き気を覚える争いを見てきたので、尚更、それが嫌になった。
「私は女同士のああいう争いを何度も見た覚えがあるの。嫌になるわ。女同士には真の友情なんかある訳無い。それぞれが裏切る為に存在しているのよ。吐き気がするわ!」
「上っ面では『仲良くしてね』って言うけど裏では『クソ女』って言っているあれよね。わかるよ。リリアさん」
翔子もそれには同意する。上っ面では仲良くしようなんて言うが裏ではクソみたいな女は死ねと言う。シェアハウスにいた翔子が嫌と言う程味わった世界だ。
そういう自分自身も前者の方だが。翔子自身もクソみたいな女はやはり死ねと言う意見の持ち主だけに否定することは出来ない。彼女の場合、それを表に出して本当に「死ね」と言った覚えがあるので、彼女達を批判する権利は無いと思う。
しかし……。この世界にこんなのが存在して良い筈が無い。
「やっぱり、私はシャルロットの世界は容認出来ない。こんなのがどこが良いの?例え、これから男女の諍いが無くても女同士の諍いがある世界なら天国でもなんでも無いわ。地獄よ。ここは」
「翔子ちゃんと同じ意見ね。ここから出て行こう?そして、シャルロットを倒しましょう?みんな」
「アドニス。お前はどう思う?」
「ちょっとこの世界は勘弁ですかね。俺も」
「同じ意見だよ。俺も。シャルロットの世界は俺も受け入れることは出来ないな。ラーズグリーズはどう思う?」
「私もこれは、存在してはならない世界だと思うよ。決定的なものを見せられたお陰で決心がついたな。さっさとあの歪みの世界樹へと向かおう」
そうして彼らは、新たな世界の女神となった傲慢なる女神、シャルロットの下に向かう為に、レインベースから去り、新しい世界樹へと足を向けた。