※この作品はR-18です。

淫欲は今宵も盟主に抱かれる   作:翔田美琴

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8-5 不死者王の提案

「グリンウッド!お前!無事だったのか?」

「ああ。俺はこれでも不死者王(ノーライフキング)だからな。地上の人間達とは独立している」

「不死者?」

「いわゆるアンデットの中でも、特に力を強く持つ者を不死者という。中でも不死者王(ノーライフキング)は最強の力を持つ王だ。だけどお前は今はシャルロットの味方では無いのだろう?」

「そういう事だ。奴はあのオーディンを凌ぐ神だ。恐らくは最強の神であり敵でもある」

「こちらのヴァルキリーも結晶化してしまったしな」

「物質化は?」

「無理だ。止めろ。その状態のヴァルキリーは行き場を失った魂の状態だ。宿る肉体が無いから無理に物質化させると崩壊してしまう」

「戦力としては期待出来ないということか」

「だが、万事休すという訳でも無い。シャルロットの望みが魂からラーズグリーズとの融合を望むならこちらにもチャンスがある」

「どういう意味だ?」

「ここにあるヴァルキリーの魂とラーズグリーズの魂と誰か1人の魂を融合させれば、最強の戦力が生み出せる」

「ただし、1つの肉体に3つの魂を入れる。そのような荒業に耐えられる肉体があればの話だが……」

「そこまでしなければならないの……?」

「お前達も見ただろう?!奴はオーディンを凌ぐ力を手に入れたんだ!この地上を救うにはもうそれしか方法が無いのだ」

「だけど、との肉体に3つの魂を宿らせるんだ?3つの魂を受け入れられる器となる人間がこの場に居るのか?」

「その為の俺が居る」

「グリンウッド……」 

「俺も曲がりなりにも不死者王(ノーライフキング)と呼ばれた者だ。俺の肉体を器にして、奴を倒せ」

「いや……。その役目は俺にさせてくれ」

「レンブラント!何を言っているの?」

「レム。お前、本気か?お前を含めて3つの魂を1人の肉体に宿らせるんだぞ。お前自身が消えて居なくなり、お前という存在そのものが崩壊してしまう恐れもある」

「最悪、お前自身の記憶すらも無くなる。お前自身が必死になって刻んだ記憶が、無くなって、お前自身も消えて居なくなる」

「やめて……!そんなのやめて!」

「翔子…」

「自分自身が消えていいなんて、そんなこと思わないで!私、嫌だよ!そんなの嫌!」

「翔子ちゃん…」

「確かに決着を着けなければならない。だけど、あなた自身が消えて居なくなるのは嫌!」

「……翔子。それを承知した上で俺はラーズグリーズの魂を受け入れる器になるんだ……。あの時、俺は君に言った。あんなに嫌だったのに抜けて落ちたら空っぽの自分がいた、と。本当にその通りなんだよ。あのラーズグリーズは今でも俺の大事な『もう1人の自分』なんだ。あいつが居るから俺が居る。切っても切り離すことが出来ない魂の絆があるんだ。それは、君にも言える言葉だ。だけど、ラーズグリーズの魂を受け入れられるのは俺だけだ。世界中探しても俺だけだ。なら……俺は新しい世界を創る最後の戦力になれるなら、なる」

「考えたんだよ。俺なりに。この世界を歩いて、俺なりに考えたんだ。確かにグリンウッドを最後の戦力として投入すれば俺達は生き残れる。だがそれで、妻の暴走を止めたと言えるか?結局は他人に押し付ける事になる責任を。だが、俺が最後の戦力としてラーズグリーズとヴァルキリーの魂を受け入れ止められれば、夫としての責任は取れた事になる」

「でも、私はあなたの妻で、愛する男性なの!新しい妻よりも過去の過ちを償うのが大事なの?」

「……わからない。けど、元を正せば俺の責任なんだ。この世界を治める責任がある。俺だけじゃない。全ての世界を守る責任がある。俺は盟主だから……」

「翔子ちゃん。まだ消えると決まった訳じゃ無いから泣かないで…」

「きっと彼は戻ってくる。約束を破らないのは翔子ちゃんが一番知っているでしょう?レムは戻ってくる。私達の下に。ね?」

 

 リリアは翔子を抱きしめる。泣き崩れる翔子をリリアは抱いて、なだめていた。アドニスも側に寄って翔子を見守る。アドニスは翔子の為にレムに言う。

 

「レム様。自分だけ消えて責任を果たせばいいと思っていたら、俺は許しませんよ。新しい愛妻の為に生きて戻って来てください。いいですね?」

「判った、アドニス。お前に殺されるくらいの覚悟はないと生きて戻ってくるのは不可能だからな。俺はこんな戦いで身を犠牲にする程、安っぽい責任では無いんだ。君達にしてきた事を振り返れば」

「結論は出た様子だな。行こうぜ!レム!俺達の底力を見せつけてやろうぜ!あの傲慢な女神の鼻柱をへし折ってやろうぜ!」

「ああ!これで最後だ。この闘いで全てを終わらせる!そして、俺達の物語を続けるんだ」

「大丈夫?翔子ちゃん?」

「ありがとう。リリアさん。終わりじゃないのね。これから始まるのね?私達の物語が」

「始めましょう!私達の物語を!」

「新しい歴史を始めましょう」

 

 こうして彼らは最後の闘いに挑む事になる。

 全ての闘いに終わりを。そして新しい歴史に始まりをもたらす為に。これは終わりの闘いでは無い。これは始まりの闘いである。

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