※この作品はR-18です。

性勇者様のやり直し   作:もこもこ@

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101 帰還と歓迎

 龍刻の砂時計の前に立つ。

 誰が作ったのか、砂時計自体はメルロマルクのものと同じであり、それだけにどこか日本風のこの世界とは相容れない空気を出している。

 

「よし、これで」

 

 絆が砂時計に手を触れた瞬間から光り輝き出す。追って来る人間たちに刀を向けると怖気づくようにじりりと一歩引いて……その瞬間俺たちは転移した。

 

 **

 

「キズナ様……?」

「キズナ様! 本当にキズナ様だ……っ!」

「おいみんな! キズナ様だ! キズナ様が帰ってきたぞ──っ」

 

 目を開ける。背中にあるのはさっきの龍刻の砂時計と全く同じだったが、砂の量と、そしてなによりもあたりの様子が一変している。微妙に和風な趣から、メルロマルクに近い洋風な感じに変化している。

 この国が絆の拠点の国なのだろうか。ここを中心にしていたのなら絆のゴスロリ服も、ラルクやテリスの格好も納得がいくところである。雰囲気は多少に偏っているが、メルロマルクをイギリス風とすればこちらはドイツ風、程度のお国柄を感じる。

 

 こちらに気づいた男たちがわらわらと集まってくる。一様に心の底からといった満面の笑顔を浮かべており、人によっては笑いながら涙さえ流しているものがいた。

 

「へへっ、ただいまっ!」

 

 それは絆もである。

 騒ぐ声に気づいて更に人が現れて……神殿内のすべての人間が来たのではないかという感じで人にあふれている。

 興奮はなかなか冷めやらなかったが、適当なところで切り上げ、絆に案内されるがままに彼女を召喚した国、シクールの王都へと向かう。

 

 **

 

「キズナ様っ! よくぞ戻られました! 心配いたしました!」

「みんな変わりない?」

 

 こちらでも再び歓声と感涙の涙である。

 おやと思うのは神殿でもそうだったが、集まってくる人たちの殆どが男性であることだろうか。

 むしろ逆に日本やメルロマルクのように女性が働いている方が珍しいのかもしれない。

 王都の大きな会議室に座っているとまたもや多くの人たちが現れる。

 

「それでその、そちらの少年は?」

「彼は……んほんっ! カレは刀の勇者。海道勇。オレを助けてくれた恩人だ!」

「おお! あなたが女神様の言っていたという、世界を救う勇者ですなっ!」

 

 彼らの感謝の気持ちと声がこちらにも向かってくる。

 しかし、聴き逃がせない言葉が向けられる。

 

「うーん、オレは女神なんてあったことないけど、本当にそんなのが?」

「ええ! 若やテリス様、グラス様、力のある神官などが夢の中で会われたと」

 

 主目的ではあるが、やはり女神と言われても、というのはある。

 そして絆は会えていない。

 無限迷宮という隔離された空間だから、ということかもしれないが、その空間を超えられない神ということでもあるのではないだろうか。

 本当に信じていいのか。その見極めが必要だ。

 絆やグラスに情を抱きつつも、俺はやはりメルロマルクの勇者である。守るならあちらの世界であるという気持ちに変わりはなかった。

 

「波も起こってるんだって? そもそも波ってなんなの?」

「波とは世界の衝突融合現象です。世界各地の記録によれば”波との戦いに勝った方の世界は延命できる”と。そして四聖こそがその勝敗の判定の役割を果たしており、四聖が失われた世界が敗北し──滅ぶ。そう言われていました」

「そんなっ!」

「ですが、若やテリス様、グラス様と話し合い、彼らを向こうの世界に送り出そう、そう話が決まりかけたその日でした。女神が現れたのは」

 

 夢に現れた彼女は世界の融合現象について正しい話を教えたという。

 世界が融合しても滅びたりはしない、そもそも、世界はすでに融合を果たしている。

 過去この世界には勇者は一人だった。

 しかし2つの世界が合わさり2人に、そして大きくなった世界が再び合わさり、4人になったと。

 だからこそ世界はこんなに極端に違う文化が陸続きの世界にあるのだと語ったらしい。

 

 納得できるようなできないようなだが、それを元に古い文献を調べると確かにABの文化については共通の資料があるのにCDの国の記録には全くABについての記録がないなど距離的には国交があってしかるべきなのに全く記録がないことがわかる。何よりも、草人や魂人の記録がそのタイミングから現れているというのが説得力をもったらしい。

 世界の安定のための柵としてすでに刀の勇者は異世界に送った、時期を見てこの世界に一度呼び戻せ。その時囚われの四聖も救出できるだろう、そう語ったとのことである。

 

 ……筋は通っている、のだろうか? 尚文や樹も似たようなことを調べていたらしく、少なくても刀の勇者はこの世界の勇者だった。そして、四聖勇者と、あちらでは一人不明だが八星勇者。一人の勇者に二人の眷属。あちらも四、こちらも四。

 同サイズの世界同士がぶつかるから融合するのだろうか。

 そして、波の中で片方の勇者が失われれば融合ではなく勇者のいない世界の消滅になるから残っていた文献も間違いではない、となるだろうか。

 

「……そっか。まあ、世界同士で争い合うようなことにならなくてよかったよ。グラスやラルク兄さん、テリス姉さんは?」

「彼らは刀の勇者を借りる間は向こうの手伝いをすると。まあ、協力関係の実績づくりですな。若のことです、仲良くやってるでしょう。ははは」

「そっかー。みんなとも会えると思って楽しみにしてたんだけど」

 

 わかっていたことだが、絆はだいぶ慕われているようである。自分も城の兵士たちやメルさんとの件で一部の神官職には人気が内でもないが、絆ほどには慕われていないだろう。

 それもこれも彼女が勇者として勇気を示してきた結果であり、人として慕われたからだろう。

 ……少し羨ましいと思わないでもない。

 

 エスノバルトは、あいつは? こいつは? とあれこれ仲間の現在を聞いている絆をぼうっと見ていると絆がこちらに気づくとニコリと笑うと何を勘違いしたのか、机の裏でこっそりと手をつないできた。

 

「(エスノバルトは仲間だよ。男だけど、うさぎの魔物なんだ)」

 

 別にそんなことを考えていたわけではないが、少しだけ心配そうな表情を浮かべる絆。

 掴んできた指を掴み返すと満足したのか微笑んだ。

 

 **

 

「ここが新たに作った女神のための神殿です」

 

 思えばこの世界もあちらの世界もだが不思議なところがあるなと気づく。

 勇者を信仰対象にしていることもだが、崇める神のいない宗教であることである。

 キリスト教のイエス・キリストを勇者に置き換えれば信仰も納得がいくが、その対象は俺や尚文たち四聖勇者である。

 崇めるにたるとは思えないが、それでも崇めたくなるほど魔物のいる世界では力こそが信仰対象なのだろうか。

 だが、現れた女神にひとまずでも神殿を建ててしまうこの国の人間の行動の速さはなかなかのものであると思う。

 

「龍刻の砂時計のあるところと比べると小さいな」

「まあ、急ごしらえですし、ないのもイカンだろう、ということで立てましたからな。ガハハ。いやお恥ずかしい」

「まあ、別に俺は女神じゃないからどうでもいいけど」

 

 本当に急ごしらえなのだろう。外観に比べると中は何を飾るべきか悩んだように雑多としている。

 縁起物らしい人形などを並べた祭壇はなんとなく不気味さすらあった。

 微妙な気持ちになりながら、グラスやラルクたちの証言を元にしたらしいふわっとしたイメージの神像が飾られた祭壇に祈りを捧げると、その瞬間意識を失った。

 




コミックス17巻でキズナが出ていたのに気づいて買いましたが、キズナかっこいー!

四聖を殺し合って、相手の世界を滅ぼすことで融合現象から逃れようとするキズナ世界の選択に、手のひらを返すように敵対されること、味方になってもらえないことになれている尚文はすぐに相手の選択肢として受け入れてしまって。

それに対して、「尚文はあきらめるの?」「オレはまだやり尽くしてない」
手を震わせながらも「無限迷宮は二度と出られないはずだった。敵国からも生還した。全部ウソみたいな本当の出来事」「できないと決めつけるのはバカみたいでしょう?」と説得。

世界を破滅に追いやるかもしれない選択を提案することへの震え。でも最高の結果を求めて努力しようと自分の考えを示す勇気がきらめいていましたね。尚文も勇者としてまっとうにきらめくキズナに色々思うところ出ててグッてきます!

そして次回ついに女神との邂逅です。


コミックスの絆は魅力全開感あります。書籍がちょっとふわっと戦わないことになった感じがあるというのもありますが、勇者感強くておすすめです!

絆パーティで好きなのは?

  • 風山絆
  • グラス
  • テリス
  • ラルク
  • 全員さほど好きではない
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