「刀の勇者様? ユウ様? ううむ。どうしたものか……?」
「うわっ!?」
女神との話が終わり、さてどうしようか、と思った瞬間に目の前にはおっさんの顔があった。
肩を捕まれ、顔を心配そうに近づけられているせいで、ドアップだった。
背後に向かって大きくはね飛ぶ。
着地までの間に今どこにいるかを理解した。急増の女神の神殿である。
コツンと足元に置かれた魔除けらしい何者かもよくわからない人形が足に当たる。
あの女神に会う前はこんな神殿、と思ったがあの汚い部屋を思えばこの雑多な感じはむしろぴったりかもしれない。
「お、おお、戻ってきたのか」
「ということは、お会いできたのですな。神殿についてはなにか言ってましたか?」
「いや──……いや、気持ちが嬉しいと。思うにここはあの女神に結構あっているんじゃないかな」
「おや、そうだったんですね。ガハハ。私のセンスも捨てたものではありませんな!」
その言葉に確かに捨てられなさそうな女神だったからなとため息を付く。
**
「なるほどね。二人の女神か~」
「信じられない?」
神殿に二度とくるかと別れを告げ、王都に戻り、待っていてくれた絆を含めたこの国の重役たちと会議となる。
「いや、勇の判断を信じるよ。みんなにはラルク兄さんやテリス姉さん、グラスも信じたわけだしという方が納得しやすいかもだけど」
「いいえ、私どもも信じますぞ。納得に足る証拠は元々あったわけですしな。なぜ起こるのかだけがわかりませんでしたが、神の尺度だと思えば世界を食べる、育てるというのもまあ、わからない話ではありません」
「となればこの後だけど」
要は四聖をかけさせなければ良い。俺が生きるの条件は正直、女神自体が相手でなければ問題はないだろう。
この世界の戦力を考えてもなんとでもできると思っている。
そして、ある程度の段階まであれば四聖欠けは全四聖を殺すことで再召喚できるようになるだろうが、リセット対象に絆や尚文たちを含む以上ないと考えるべきだ。
となれば要は2つの世界の四聖を欠かさず波を超えればよいということになる。
「そう考えるともとに戻ったというか、元々の目標どうりか」
「オレ以外の四聖って」
「はい、召喚されております。ただ、協力関係にはございませんな」
「それは駄目だな。世界の危機なんだ。オレたちはまとまっていかなきゃ!」
それでは早速動き出しましょう、そう彼らはうなずきあい、走り出そうとする絆の手を掴む。
「えっ!? どうしたのさ、勇?」
「いや、絆は四聖勇者だろ」
「そうだね」
「ホイホイでかけたら駄目なんじゃ? 安全なところにいたほうがいいんじゃないか?」
「そんなことない! 勇者が動かず誰が動くっていうんだ」
心配してくれたことは嬉しいけどね! とニカリと笑う。
「あ、でももしかしてもう、元の世界に帰っちゃう……?」
「いや、その前に絆のレベル上げと向こうの世界に持っていけるような技術かアイテムを手に入れておきたいな」
「技術ねえ……あ、そういえば」
二世界間の連携は一番の急務ですぞと周りに後押しされた絆は技術とアイテム集めにも付き合ってくれるらしい。
だが、それは地獄の始まりだった
**
「全くダメダメですな。商品どころか効果すらないでしょう。はっきり言えばアクセサリーとしてはゴミといえます」
「そうなんだ? いやあ、結構見た目はいいと思うよ」
場所を変え、装飾品工房。
何でも、絆の世界では装飾品を装備としてつけることで追加効果を得ることができるそうである。
それは素晴らしいとつれられたのがここだ。
既製品もあるが、勇者が得られる高品質素材で効果の高い装飾品を作ろうとすると必然的に勇者が行うほうが効率良くなるらしい。他の世界にも持っていくなら作れるようになっておくべきだとのこと。
装飾品なんて、旅行先で行ったシルバーアクセ作成講座くらいである。銀粘土こねて作るやつ。
それを話すと、ではそこから練習しましょうと始まったのだ。
粘土は加工しやすいですからねとのことだったがこの評価である。
「鳥、でしょうか?」
「折り鶴だよ。なんで粘土で作ろうと思ったのか理解に苦しむけど、なかなかそれっぽいんじゃないかな」
違うんだ。言い訳をさせてほしい。
手で素人が作るかんたんなものってなんだろうと思って、折り紙の鶴が出てきんだ。
薄くして紙みたいにすればツルを折れるんじゃないかって思ったんだ。
「勇者様。何かを作るときはしっかり目的と、完成後の姿を思い浮かべながら作りませんと。料理と同じです。イメージで調味料を加えるのではなくまずはレシピを見て作りたいものを決め、そのとおりの手順で作るのです」
「じゃあ指輪で」
「え、ゆ、指輪かぁ、じゃ、じゃあオレも指輪がいいかな?」
シルバーアクセといえば指輪のイメージである。輪っかだし、簡単だろうと思う。
先生役の職人さんが作っていく動きを真似る。
バフ系の魔術を重ねがけして、記憶力や器用を向上させる。
そうして作ったものは、かなりのものに仕上がった。
職人さんのものと横に並べても全く違いがないように見える。
その評価といえば……
「駄目ですな」
「えええ? 正直、並んだらわからなくなるレベルに見えるけど」
「そうですな。キズナ様。装備していただけますかな? 一つづつ」
キズナは先生の作った指輪を右手の薬指にはめてから外し、俺が作った指輪を左手の薬指にゆっくりとはめると『あれ?』とおかしそうに声を漏らした。
「これ、ステータス上がってない」
「ええ?」
「そうです。確かに刀の勇者様の腕は素晴らしいものでした。ですが、ただ私と同じ動きをして作っただけです。機械で作ったアクセサリーにはステータスがやどりません。思いをこめて作らなければならないのです」
「そんな事言われてもなぁ……」
確かに、記憶した先生の動きをただ完全になぞっただけの動きは機械が作ったものと全く変わらないといえばそうなる。
「ですので、……そうですなあ。キズナ様にプレゼントすると思って作られてはどうでしょうか?」
「なるほど」
「え、いいのか!?」
ぽわぽわと頬を緩ませる絆を見れば嫌はないだろう。プレゼントとなれば気が抜けない。
半端な品を渡すわけには行かないだろう。
**
「ルアー?」
「絆は釣りが相当好きだってのはわかったし、どうせなら普段遣いできるものがいいなって」
「なるほど!! うわ、これすごいよ。【大物確率アップ大】だって!」
一刻も早く釣りに出かけたいとばかりに、川の方を見てはこちらに顔を戻すみたいな動きを何度も繰り返す。
「行ってきたらどう?」
「わ、わかった! 大物釣ってくるから、ここで待ってて!」
そう言って走り出してしまう。やれやれである。
だが、制作スキルはともかく、スキルを付与する呪術も学ばなければいけないので、このまま修行だろうか。
「あ、さっきの指輪返してもらっていない……」
気に入ってもらったのなら嬉しいが、効果のない指輪を装備し続けられるのは困る。
戻ってくる前に一つ作ってそっちを普段使いしてもらうことにしよう。
そのまま修行を続け、絆が大量の大物を抱えて戻ってくる前には最低限のアクセサリー作りの技術を会得したのだった。
釣りをしながらも指輪を見てニヤニヤしていたという……!
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