人馬一体。あるいは一心同体。
口に出さなくてもお互いの意思を重ね合わせて動いた瞬間、その一体感は恐ろしいほどの快感に変わる。
仲間ががまるで自分の手足のよう。
自分がまるで彼女たちの体のよう。
思いを重ね合わせる一体感は驚くほどリーシアの心を満たしていた。
そもそもリーシアは力はなくても胸の奥に強い正義感を宿していた。
それを表す形がなくて、樹に出会うまではただの少女だったけれど、正義という憧れの形を得て少しずつ自分の思いが出始めてきた。
樹という強い光を追い続けていたけれど、彼の周りの人間には少し正義とは違う理屈で動いてるんじゃないかと疑ったりもした。
刀の勇者であるユウのパーティと旅をすると時々過去自分たちが救ったはずの世界のその後を知ることが増えてきた。
影の下調べのあとに行った”正しいこと”と困っている人がいるみたいだから、悪いやつがいるみたいだからと手を出した”正しいこと”のその後だ。
影からの依頼はその後の処理が完璧だった。
悪徳領主は裁かれ、勤勉な王国に忠誠を誓う貴族が普通に納めていた。
衝動や仲間から囃し立てられて行った正義は悪は倒されたが次の悪が……あるいは無秩序になった民衆がより状況を荒らしていた。マフィアが地域を支配して麻薬を売り出しているのを見た時、本当にあれは正義だったのか? と悩んだ。
賢くならなきゃいけない。
でも、賢くなって悪から目をそらすように
その点、ラフタリアは素直な少女だった。悪いことは悪いと感じられる人だった。
グラスは賢かった。どうしてこうなってしまっているのかを教えてくれた。
ガエリオンは人間社会に興味がないようでいて鋭かった。
彼らと一緒にいることで、正義とは、勇気とは悪を倒すものではないのだと知った。
「なかなか頑張っているみたいですね」
「樹様! お久しぶりです! みんなのおかげです!」
「そうですか。強くもなったようですね。どうです? 戻ってきませんか?」
大規模な麻薬密造組織の殲滅作戦に加わることになった。
貴族が黒幕であったことから、弓の勇者である樹とチームアップで組織の解体に挑むことになった。
多数の高レベル奴隷を使って守っていたようだったが、勇者の仲間としてレベルと連携力を上げた皆には全く叶わず、薬や金を元に国家に根付こうとしていた組織はわずか半日で灰となった。
仕事終わりにお互いに顔を合わせる時間があった。
弱いと過去切り捨てたとは思えないほどキレイな笑顔で樹はリーシアを誘い出した。
リーシアはあたりを見渡す。
かつての弓の勇者の仲間たちは面倒そうにこちらを見ていた。断れと目が言っている。
今の仲間たちは行きたいなら止めないが寂しいと表情が語っていた。
リーシアは憧れだけでは正しいことがわからないと気づきだしていた。
目の前にいる少年が、正義の名のもとに悪を裁くのが好きな、何かにコンプレックスを抱いていることにもようやく気づけた。少年なのだ。自分と同じでまだ幼い。
なのに勇者になって、その力を理由はともかく正しいことに使おうとするのだからやはり樹はリーシアにとって変わらず勇者だった。
「ありがとうございます。でも、今の仲間は彼女達で、私は刀の勇者のPTですから」
リーシアは思い出す。
練習だといって何度もリーシアを抱いたユウ。
初な貧乏貴族の娘ではあったが、時間があればそれなりに調べるし話も聞く。
自分がされていたことがどういった行為だったか理解していた。
でも、それだとわかっても、嘘つき、騙したなとは思わなかった。
どこかすがるようにリーシアの体を抱くユウになんと表現していいかわからないどこか温かい愛しい気持ちを抱いていた。
ユウもまた樹と同じように勇者であっても少年なのだと気づいた。
リーシアは今は自分の気持でこのPTにいた。
**
「あ、戻ってきたみたいですよ」
「わ、私もいて大丈夫でしょうか?」
「別に気になんてしないと思うなの」
とはいえ、彼の館に滞在させてもらっているどころか、部屋まで割り当てられていることには申し訳無さを感じている。
仲間としては一体感を感じるレベルまでだと思うが、拾われた、という意識があり、ちゃんとしたPTとして迎えていいのだろうかと悩む。
「リーシアさんなら大丈夫だと思いますよ」
そう言われれば流石に覚悟も決まる。
メイドのメルさんによって扉がひらき、そこには気のせいかもしれないが少し背が伸びたように見える彼がいて。
「おかえりなさい」
皆で笑顔で彼を迎えた。
樹を含めた自分たちの失敗を知って樹もまた自分たちと同じ人間で、だからこそユウもまた人間であると思い、自分の居場所はここだみたいなリーシアさんと、そんな皆に自分の家味を感じるユウみたいな。
-追記-
すみません、一週お休みいたします。