マインの証言に周りがわっと湧いてた。
責める視線にとどまらず、非難の声が上がる。
「嫌がる我が国民に性行為を強要するとは許されざる蛮行、勇者でなければ即刻処刑物だ!」
「だから誤解だって言ってるじゃないですか! 俺はやってない!」
ついには王の怒鳴り声が響く。
パクパクと声にならない声を出すように尚文は口を開いては閉じる。
その表情は真っ青になっている。
「はっ! 強姦魔のクズが! 異世界だから何でもやっていいと思ったんだろうが、お前は主人公なんかじゃないんだよ!」
「異世界に来てまで仲間にそんな事をするなんてクズだな」
「そうですね。僕も同情の余地は無いと思います」
「うーん」
マインから話を聞いている元康は当然として、錬も樹もマインを信じ、尚文を責めているようだ。
勇者として選ばれた人間にふさわしい正義感と言えるかもしれない。
すがるように向けられる尚文の視線。
さて、どうするべきか。
マインのやろうとしていることはわかった。
冤罪を仕掛けて盾の勇者を孤立させることで国から嫌われている盾と俺を自然に離すつもりだろうか。
好意でもってやっているようにも思える。
真実襲われたと考えるには、おかしいことはいくつもある。
例えば食事で尚文は酒を飲んでいない。
例えば時系列で考えると動きがおかしい。
夕方に宿に戻り、19時頃には部屋に戻った尚文。
そして、マインと俺が2~3時間ほどセックスをしていた。
俺と勇者たちで1時間ほど飲んでいた。
だから、尚文が飲んだとすると、部屋に戻って3~4時間後に酒を飲み始めたということになる。
眠れなくて寝酒にと言うには時間が空きすぎだ。
途中で起きて、という話もないではないが、尚文の酒も飲まずに寝てたという証言のほうが自然に思える。
それに、マインが助けを求める相手が俺じゃなくて元康なのがおかしい。
性的に襲われかけたあとに助けを求める相手が、勇者とはいえ、交流の少ない相手よりは同じ勇者の俺のほうが自然だろう。
それにマインからは性的に暴行を受けたりしたものの暗い影がない。
もしかしたら信じてもらえないかもしれないという不安もだ。
勇者を相手に被害を訴える態度ではないのだ。
何より、尚文は童貞だし、あの性格だ。酒を飲んだくらいでマインを襲える気がしない。
感覚を凝らすとわかるが、尚文は錬と樹と同じ清いオーラを持っているので童貞である。
表情からも不当に責められている人間のものだ。
しかし、マインが好意でやっているものを暴いて犯罪者として責めるのはどうだろう?
しょうがないのでなあななにすることにする。
「あの、王様。俺には尚文がそんなことをするやつには思えないんです」
絶望からか怒りからか。目つきが変わっていた尚文だが天からの救いかのようにぱあっと目を輝かせる。
「なっ、ユウよ、盾をかばうのか。マインが嘘をついているとでも?」
「いいえ。マインが嘘をついているとも思えないのです」
「それは一体どういう……?」
「この世界には姿を真似たり偽る魔法はないのですか? 俺の世界の物語ではよく魔物が王様などの偉い人間に化けて悪行をなしたりすることがあるのです。メルロマルクは5人の勇者を抱えていますが他の国も勇者を複数抱えているのでしょうか?」
少なくとも、幻を見せたり姿を隠す魔法があることは確認している。
偽物ではないという断定は難しく、証拠もなしに否定をすると他の勇者からの信頼を国は失う。
そうなると有耶無耶にするしかないだろう。
「……いや、大国が多くても一人というところだろう」
「であれば召喚に合わせて勇者を罪人に仕立てて他国に引き抜くためや死刑にしたりするためにはめようとすることは考えられることなのではないでしょうか」
名付けて両方真実じゃね? 大作戦である。
「本人が言うように、なんの装備ももっていない現状も気になります。勇者の足を引っ張ろうという悪意ある刺客がいたのかもしれません」
「……なるほど。幻を見せたりする魔法は確かにある。その可能性は否定しきれない」
マインが嘘をついていないといった瞬間の尚文は襲いかからんばかりの態度だったが、俺の説明に納得がいっていないものの、ないでもないと言った感じだ。
気持ちをどこに向けていいのかわからない状況なのだからしょうがない。
「とはいえ、本物でないという証拠ではない。未遂であったこともあり、今回は罪には問わんだが、次があれば問答無用であると心に刻むが良い」
「くっ。結局疑いは晴れないのかよ」
「……既にお前のことは国民に知れ渡っている。もしも真実罪がないというのなら、波で活躍して疑いを晴らすが良い」
ほっと息を吐く。
死刑だの何だのという話にならなくてよかった。
とはいえ、マインとは一緒に行くことはできないだろう。
尚文は城を出てゆく。元康、樹ともに、やはりまだ犯人だと思っているようだ。
逆に錬は少し可能性を考えているようだった。
「しかし、冒険者仲間と関係があったからと言って、勇者みんな集めてすることか?」
マインが集めさせたということになるが、王や兵士と色々手回しされている。
貴族の娘だろうなとは思うが、結構な有力者なのだろうか。
そう悩んでいると一人のメイドさんが後ろからささやく。
「ユウ様、マインさんは実はこの国の第一王女、マルティ=メルロマルク様なのです。盾の勇者が本当に罪を犯したのかはわかりませんが、あまり、マルティ様とぶつからないようにしたほうが……」
メルさんが心配そうに言った。
まあ、王が死刑といえば死刑の世界で王女とぶつかるのは勇者でも危ないことだろう。
それに、盾の勇者と近いことも。
四聖ならともかく、八星では危ういのではと心配してくれている。
「……まあ、マインとは仲がいいから大丈夫だよ、ありがとう」
そう言うとメルさんはちょっと不満そうに口を尖らせる。
「もしかして、マルティ様もですか……? そうですか、手が早いんですねー……」
と不機嫌そうだ。尚文を追わなきゃ、と思いつつも、すねて可愛い彼女をおいてはいけない。
こっそりその場を抜けると空き部屋に連れ込んでバックでがしがしと攻め立て、中にたっぷりと注ぎ込んだ。
へとへとに倒れ込んだ彼女は満足そうに目を閉じていた。
お酒飲んでないしー、尚文童貞だし―、むりじゃなーい? が尚文を信じる根拠というひどい作品である。