タクト=アルサホルン=フォーブレイは勇者であり、転生者である。
美しき女神に選ばれた尖兵であり、勝者である。
勇者の国といわれるフォーブレイに生まれた末席の王子である。
とはいえ、継承権を考えればあまたいる王子ではろくな未来はない。
せいぜいが有力貴族の次女三女と結びついて生きていくくらいだろう。
だが、タクトは違った。
齢3つで魔法の習得。5歳で製紙、製本技術を発明したり、銃器や重工業、航空機技術を開発・発展させてフォーブレイを発展させる。貴族学園を首席卒業のほか、S級冒険者になったり、他国主催の武術大会で優勝など、様々な偉業を遂げたうえで、鞭の七星武器に選ばれる。
七星の勇者とは現地の人間がなれる勇者であり、そして勇者の国であるフォーブレイでは大きな意味を持つ。
末席の王子から次期国王の最有力候補に躍り出た。
豚王ほどの無節操な混色ではなかったが、多くの女性に手を出せる精力旺盛な部分も血を紡ぎ、勇者の濃い血をもたらすことのできる性質に大きく評価されていた。
順風満帆と言えるだろう。
あえて言うならば彼が女神の尖兵であり、波をなんとかしようとする世界の味方である四聖勇者に敵対しなければ……他の七星……今となっては八星の勇者の眷属器を奪っていなければまた別の道もあったかもしれない。
けれど四聖勇者と刀の勇者が召喚されたその時点ですでに女神の尖兵として働きすぎているタクトにはもはや道などないのだった。
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「機嫌良さそうだね」
「それはもちろんだ。もうすぐ四聖の勇者武器が手に入る。やっぱり勇者といえば剣だよな。鎌も斧も勇者って感じじゃねえっていうか」
「投擲具も君のような主役には合わないだろうね」
「鞭以上にねえよ」
タクトは自分の部屋でもうひとりの勇者、茅野上紬と仲良く会話をしていた。
別の勇者と対面したのであれば戦闘を開始して奪い取ってやるところだったが、女神に直接争うなと言われたことと、刀の勇者を倒したら何でもするというのだから許している。
今まであった勇者といえば己の格を自覚せず、端役のくせに主役ぶるバカしかいなかったから、こういう態度は新鮮だった。まあ、役に立つのであればそれでいいし、立たないのであれば改めて勇者武器をいただけばよいのだ。
「それで、これからどうするんだ?」
「レベル上げに協力してもらったからね。僕はそろそろ移動しようと思ってる」
「へえ、寂しくなるな」
「何を言ってるんだか」
「別に変なことじゃねえだろ? 仲間はいても勇者同士ははじめただからな」
タクトの中で格付けはすでに終わっている。
勇者としての才能も強さも仲間も自分のほうが上だと。
紬はレベルが遥かに低い割にはかなりの強さがあったが、レベル上げをしても全然上がってないあたり才能がない。
「そう、まあ、ここからはレベル上げに必要な敵が多くなるし、狩場がかぶるからね。僕はもう一つの世界でレベル上げをするつもりさ」
「よく異世界なんて行く気になるな」
「面白いジョークだね」
タクトからすればこんなに恵まれた世界から別の世界に行くなんて信じられない。
タクトは1つの世界の王者であればそれできっと十分に満たされるだろう。
他の世界になど興味はなかった。
まあ、他種族の女には興味がある。異世界から連れては来ないものかと思っていた。
いたら口説いてやろうとニヤニヤしていると、紬は水晶をごとりと机の上においた。
「なんだこれ?」
「なに、世話になったからね。偶然知ってしまったし、知らないなら知っておいたほうがいいかと思ってね」
水晶にはぼやっと肌色が映る。
映像結晶。
DVDにように動画を録画できる装置だった。
「なんっ……」
何だこれは。
そう追求する声は途中で途切れる。
映像がやや遠ざかり、何が写っていたのかわかったからだ。
メイド服をきた女が、男と言えないようなガキにまたがって嬉しそうに腰を振っていたからだ。
何かにとりつかれたようにじっとり燃える情欲を宿しながら肌をぶつけ合っていたからだ。
「エリー……いや、そんな馬鹿な……」
快楽に流されるまま、自分で腰を持ち上げ、ずんと落とす。
その一突きでブルブルと快楽をこらえるようにしながら二度三度と繰り返している行為。
腰を持ち上げるたびにネッチョリと透明に糸がひいては途切れている。
ビチョビチョの愛液。
誰が主に行こなっている行為なのかがよく分かる。
自分のときはこんな表情を見せたことがあっただろうか。
心地よいと……、愛おしいと……、幸せであると語った彼女の表情とは異なる獣のようなトロリと溶けた顔は衝撃を与えていた。
「君のメイドだったよねえ。まあ、メイド一人くらい大したことないかもだけど……」
「エリーは、エリーは俺の、おれの……」
俺の幼馴染で初めての相手で、一生守ると決めた相手だ。
いくら女の数が増えても手放す気のない相手だ。
だがその相手がああも嬉しそうに男に抱かれている……いや、抱いていた。
ガクガクと足が震えだす。失うのだと、失っていたのだと彼女を大切に思う暖かな心に大きく穴が空き、氷を打ち込まれたように凍える。
自分以外の男と愛し合う女なんて見たくもない。
そのくせ目は大きく見開かれ目が離せない。
ずるりと引き抜かれるたびに主張する大きなイチモツは、だからこそあんなガキが俺から奪ったのだろうかと自信を粉々に打ち砕く。
「そいつ、女癖が悪いんだ。寄生虫みたいな男だよ。入り込むと見境なく手を出す。他にもいっぱい手を出してるみたいだね。いくつか撮れたんだけど──」
前世ではAVの一つや2つ見たことある。でもそれは結局演技というか、見世物だった。
まるですぐ隣で行われていると錯覚してしまうような、体臭が臭ってきてしまうような生々しさはなかった。
これは本物だ。ホントだ。実際に行われたことだ。
なまじ誰よりも深く愛し合った自信があるエリーだけに真偽ははっきりしていた。
優秀な勇者の頭脳がにくい。
脳内が勝手にほくろ一つ一つの位置を確認しながら照合を終えてしまう。
タクトは女が自分を愛し、自分に愛される……それだけで満たされると純粋に信じていた。
だからこそ、他の男に捕まるような可愛そうな女の子を見れば声をかけてあげたし、勇者であり優秀な俺に声をかけられて誰もが嬉しそうについてきた。
強固で永遠の絆があると信じていた。
「ほ、ほかにも……あ、あるのか……?」
だれだ、だれだ? 自分を裏切るような人間なんているはずがない。
女の中には思えば出会いの一回しか抱いたことがない相手もいる。
そうであれば他の男に気の迷いでなびいてしまう女がいるかも知れない。
エリーはお互いの初めての相手で、それこそ一番回数をこなしている相手だった。
誰より強い絆が俺たちにはあったはずだ。だったら他の女は……けれど、それでも信じきれず、逃げ道を作っていた。
だが、紬はこちらの様子をわかってかわからずか、隠すことなく水晶をいくつも机に落としていく。
ひとつ、ふたつ、みっつ、いつつ、いや、ちがう、ひとつ、ふたつ……
熱病に浮かされるように声にならない声がもれる。
数を数える。それだけの行為がうまくできず、ようやく全部数え終えて……
「あ、あ、こ、こんなに、ある、あるのか……? 嘘だろ……」
「こんなの一部さ」
水晶が積まれてゆく間にも映像のエリーは何度も快楽に震えている。
ついに高まりきったのか、口がふわりと開ききって、ほうけきってしまい……
(イクなっ、イクなっ、ぃくなっ! とどまれっ! それは、俺とだけだろうっ!?)
イキさえしなければ決定的でないとばかりに心の声が引き止め続ける。
やめてくれ。どうか。
だが、声にならぬ声は届かない。
無情にもエリーはタクトの目の前で絶頂した。
くてりと果てるエリーは心地よさそうで、潤んだ瞳は俺の方ではなく相手に向けられている。
(なぜっ、なぜだ……)
『タクト様よりすごーい!』
ビクリと体が震える。ぎょっとしてそちらを向けば、エリーほどではないが長い付き合いの女がいた。
映像結晶が再生されており、こちらには音声も閉じ込められていた。
エリーのものとは違い、お互いが快楽を与え合うような激しい性交は、まさしく交尾だった。
どろどろにとろけあった女は嬉しそうにガキに口づけをしていた。
タクトは女好きではあったがノーマルだった。
体位の数も多くなく、自分が気持ちよくなれる正常位くらいだった。
だが目の前の映像は違った。全身を味わい切るとばかりに行われる激しい動きは乱暴のようでいて繊細だった。
指の動き一つが、腰の動き一度が深い快楽を与えているようだった。
快感に染まり浸り切る女の顔はタクトが見たことのないもので……どこか魅入られるところがあった。
誰にも触れられていないのに、タクトはいつの間にか勃起しており、じんわりとにじむ我慢汁がじんわりとズボンに円状の跡を残していた。
「こいつ、他国の勇者だよ。刀の勇者様。君と同じ勇者だよ。このままじゃ、君の女、全部奪われてしまうかもね」
怒りが、悲しみが、絶望が混ざり合いながらも自分以外の行為に、愛する者の感じている表情に、性欲が湧いてしまってた。人生で一番大きく心が揺さぶられていた。
悲しいはずなのに、辛いはずなのにそれなのに陰茎はビンビンに存在を主張している。
一人二人と絶頂しているのを見ているうちに、タクトは指1つ触れもしないのに射精していた。
人生で一番勢いのよい射精はビュッ、ビュと精子を大量に打ち付けていた。
じんわりと精子独特の臭いが漂いだす。
「あっ、あッ、うぐっ、ぐううぅ……」
(なんだよこれ、何だよコレっ!)
「女を取り返したければ……君が勇者として彼より強いって見せつけてやらないと彼女たちの目は冷めないだろうね」
こちらの様子に気づいたのか気づいていないのか、紬は冷たい瞳でこちらを見ている。
だが、今のタクトの目には入らない。
元気づけられたと、与えられた希望に飛びついた。
そうだ。
まだ、失ったわけじゃねえ。
何もかもを認めないように顔を振りながら、自分から何かを奪おうとする男への殺意だけを抱こうとして……それでも視線は流れ続ける自分の女の痴態から目を離せずにいた。
いつの間にか紬が部屋から出ていったことにも気づかず見続けた。
失われるとは想像もしてなかった。
目覚めてしまうタクトさんカナシス。
でも、豚王に処刑代わりに女を抱き殺されるところ見る原作と比べれば……ど、どうだろう? 死なないだけましなんでしょうか?