エリーはかけていた。
LV上昇により只人より遥かに強大になった身体能力と、回復魔法を重ねがけすることで常に全力を出しながら疾走していた。一分一秒でも早くたどり着くため、必死であった。
イサムを相手にまた性欲発散にでも使ってやろうと部屋を訪れたところ、イサムはいなかった。
さて、今の時間は誰かと会う予定だっただろうかと探ってみれば、彼はナナ王女の部屋にいることがわかった。
ナナ王女のブラコンぶりは幼馴染であるエリーにはよくわかっていたし、彼女もまたライバルの一人であった。
他の女性のように中途半端に経験したことがあるせいでの欲求不満になるようなこともなければ、強いからと転ぶような女性ではなかった。兄こそ至高であると強く思っていた。
あの少年にやや惹かれだしているようだったが、まさか寝所に連れ込むほどだとは全く思わなかった。
(やるものね)
ライバルを順調に減らしているようで結構。
タクトの女は増える一方なのだから少しくらい減ってもらってもバチは当たらない。
そんなふうに思っていたがふと不安に襲われたのだ。
(もしかして私が把握しているよりずっと多く堕ちている……?)
正直なところ、PTメンバーが残ればほかはどうなろうとそこまで大差はないし、取り返すことだって簡単だろう。
なにせ、タクトは勇者である。
勇者の精を受け止め、子を生むのは何よりの誉れ。
多少強くてセックスがうまい小僧が手元にいようが、いつでも優先すべきは
けれど、タクトの周りに女は多い。アピールをやめれば愛される頻度なんてあっという間におちてフェードアウトしていく。そういう考えだったのだが……。
音などそうそう漏れようはずもない王女の部屋の壁に耳を当てるとそれでも聞こえてくる嬌声に不安の気持ちが沸き上がってくる。
(念のため。念の為よ……)
調査を開始し……PTの誰も彼もがその様子がおかしいことに気づきーー問い詰めてやろうとしたところで……彼らがすでに動き出していることに気づいたのだ。
**
タクトは毎日が苦しかった。
自分以外の男と淫らに行為にふける姿は目に焼き付いたまま消えないし、女を抱こうとしても、
(でもこの女も裏で裏切っているかもしれないんだよな)
そう思ってしまって萎えてしまうのだ。
立たない自分の惨めさ、ごまかしているが、相手の女の失望の表情が胸を抉る。
ろくに女を愛せていない。
そのくせ、焼き付いた女達が自分とより乱れる姿はどこまでもエロティックであり、ふとした瞬間に立ってしまっていることに気づくのだ。そのまま収めようとすれば当然あのとき見た映像を元にシコることになる。
その時ばかりは萎えていた分元ばかりにギンギンに立ち上がっている。
萎えるまで出せばスッキリして想像からは逃げられるが、精を出し切ったせいで余計に他の女を抱く気にならなくなり、催促されるのを嫌って一人でいるようになった。
そうして一人でいればまた思い出してしまうのだった。
悪循環がいつまでも続いている。
(この気持は俺が上だって示さないと消えねえっ!)
タクトはすでに敗北していた。
自分ではここまで悦ばせる事ができないと思うからこそ、女が抱けなかったのだ。
ああそうだ、負けだ。けど、強さは別だ。
(そうだ、俺は別にAV男優じゃねえ! 勇者なんだ)
セックスが上手いだけのガキなんて、蹴散らしてやればいい。
涙と鼻水でぐしょぐしょにしてしまえばきっと百年の恋だって冷めてしまう。
あんなのがいいなんて女はいなくなる。
そうすればきっと俺も自信が戻ってくるっ。
そして俺は負けないっ!
タクトは意気込んだ。
誰が裏切り者なのかわからない以上、みんなを集めてその場で断罪するしかない。
いや、広く自分こそが強者なのだと証明するためにも皆を集めるべきだ。
タクトは王城の大広場に女達とそして憎き少年を呼び出したのだった。
「イサム! 貴様は俺の女をかどわかし、裏で手を出していたことはわかっている! 王子の女に手を出すなんて極刑ものだが、チャンスをやろうっ、この場で決闘だ! 勝てばその罪許してやるーー負ければ命の保証はしないがなっ!」
鞭の勇者武器である、竜尾の鞭を地面に叩きつける。
ドラゴンの体を引き裂くその鞭は地面をえぐりながら鋭い音を立てる。
調子は悪くない。今までの悩みが嘘のように気持ちが晴れている。
それどころか決闘への程よい緊張のせいか胸がドキドキと揺れる。
「受けて立つ。ーーけど、決闘の場に名前を偽ることはできない。俺の名前は海道勇! 刀の勇者だっ!」
素手だったはずのガキはどこからか現れた刀をこちらに向けて名乗りをあげる。
そこには黒々と輝く日本人の子供がいた。
ーー勇者だとっ。そうか。勇者か。
(勇者だからって俺に勝てるはずはない)
周りの視線がどこか誇らしいような称賛する空気と、驚くような空気の2つに変わる。
前者の中に映像で見た女達の姿を見て、一瞬でタクトの心は燃え上がる。
勇者武器が真にタクトを認めていれば今彼は憤怒のカースシリーズに目覚めていただろう。
(ふざけんなよっ!)
とられている女のほうが多いじゃねーかっ!!
誰も彼もがタクトではなくユウを応援していた。
今までこの世界に生まれてから誰もがタクトを褒めていた。讃美の視線が、憧れの態度が、情欲の視線がタクトを褒め称えていた。誰かと比べられ、劣る方と見られることは今世でなかった。
実際はすべてが取られた女ではなく、中には単純に勇者という存在と強さに感心していたものも含まれていたが、タクトにその違いを見分けることはできなかった。
「っ! てめえ、勇者かよっ! いいぜ、この国に喧嘩しにきたって言うなら、ぶっ殺してやるっ!」
そうだ。
いかに勇者であろうと、真の勇者は、女神に認められた勇者は俺一人。
すべてを取り返してみせる。
試練を超えてやるっ!!
タクトは鞭を振りかぶった。
タクト王子はTUEE系もできるし断罪系もいける口……!
ハーレム寝取られ系主人公も!
タクト王子亡き後もテロに走るくらいには好かれていた……のかなあ?
半分くらいビッチと同じく女神の分身の可能性も……?