「ユウさまああああああっ♡」
旅する行商人ラビはユウという勇者の支援を直接受けている商人として、一代で恐ろしく大きな基盤を作っていた。
そのネットワークは国内を網羅するどころか近隣諸国にまで手を伸ばしだしていた。
だからこそ接触を試みるユウの前にすぐさま現れ、クーデターを起こしたメルロマルク軍に対するレジスタンスへと案内を行った。
そこまでの道中でお礼とばかりにたっぷりとかわいがることでどことなく満足そうにラビと別れる。
レジスタンスの中継地は王都から近くもあり遠くもない、そんな地点にあった。
行軍中のように数多のテントが陣を張っている。
何度も声をかけられーー刀の勇者であることを確認して通される。
「マイン、メルティ……!」
「姉さまっ! 私が先ですっ」
ガバリと抱きつくマインの胸にギュムリと顔を挟まれる。
ふわりとしながらもたっぷりと中身が詰まったいやらしく挟み込んでくる柔肉。
対抗するように左手をつかんで抱きついてくるメルティは比べるとやはり幼いがそれでも良い香りが鼻をくすぐる。
「ふたりとも無事でよかった。フォーブレイから直接こっちに来たからほとんど情報がないんだ。皆の状況とーー」
まずは自体の把握を一刻も早くと急かすが、メルティが口を開く前に、後方のテントから顔を出したリーシアと目が合う。
「ユウ様! ーーみなさぁーん、ユウ様ですよ~~、刀の勇者様ですう~」
ふええとフィロリアルきぐるみを身にまとったリーシアが大声を響かせながらポテポテとテントへ戻っていく。
ひょっこりと顔を出したのはラフタリアで、すぐにテント内に戻ると、めるさーんと大声をだす。
その様子にホットひと息。大きくはいた。
ユウをどうにかできる相手は早々いないと思っている。
その中で有効なのは人質だろう。
手を出している相手は他にも多くいたが、しっかりと思いを交わして愛していると言える相手の無事は心を落ち着かせた。
「でも、一体どうして……?」
国家の扱いはともかく、心意気については悪ぶっているが一番勇者らしいのは尚文であると言える。
差別されていたメルロマルクで地に足をつけ、行動でもって評判を上げたのが尚文だ。
領地を得て領主となり、うばらしい手腕で治めてもいる。
残りの三勇者がどうするつもりなのかは分からないが、正直一番出世している勇者でもある。
国家に牙を向き、力による支配を行う必要が一番ない立場であるはずなのだ。
その問いに答えたのはメルティだった。
「尚文はユウのことを危険視しているわ。世界の敵だって。だからこそ尚文たちは今まで本格的に攻めてきてないんだと思うけど。」
「なるほど」
確かにグラスや絆の世界を救える世界の融合にユウは賛成であった。
波をよしとするという意味ではこの世界の敵であるともいえる、のかもしれない。
女神は信頼できるとはいいづらかったが、両方の世界を救う手が他にないのも事実である。
であれば勇者として波を穏便に治めて世界の四聖勇者を同数に保ち、融合後の混乱を納めることこそが世界を救うことだと思っていた。
「尚文だけじゃない。弓の勇者の樹も尚文の元へ行ってしまったわ。その、槍の勇者の元康さまと剣の勇者の錬さまはここにいるわ」
「そう」
よしよしとメルティの頭を撫でる。
フォーブレイにいる間に少し成長したのか、少しだけメルティは頭をなでやすいように背伸びしている。
どうやら少し男らしく背が伸びているらしい。
「話を、するしかないか」
大きくため息を付く。
しかし、ユウはさほど事態を大きく思っていなかった。
なにせ、自分と他の勇者には強さの差があるのだ。
軍隊を傷つけずに進むのは大変だろが、それでもやりようはあるだろう。
尚文のもとにたどり着き、話を聞いたあとにボコってしまえば解決である。
今までこの世界で驚異を女神以外に感じたことがなかった。
そのせいだろう。
その程度にしか事態を捉えていなかったそれは大きな温度差を生んでいた。
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「ユウ様!」
目をうるわせながらもラフタリアは冷静だった。そっとユウを抱きしめる。
控えめだったがそれでも再びあえて嬉しいと全身から伝わってくる彼女の態度に胸が暖かくなる。
「尚文様は……リファナちゃんはどうなるんでしょう……」
むぐっ。
殿がつまり言葉がでなくなる。
尚文の妻であるリファナはそれこそ罪人扱いされてしまう可能性がある。
尚文がクーデターを起こした以上それを納めるとなると難しい立場であると言わざるをえない。
尚文と一緒に逃して……でも領地についてはどうだろう、反乱に参加こそしてないが……。
悩ましい環境から帰ってきたはずだったがユウの頭はむしろ痛くなるばっかりだった。
「尚文、恨むぞ~」
尚文の行動の理由がはっきりわかっていないので、ユウに勝てるわけ無いじゃんな味方陣営。