尚文との戦いを決意した俺たちは戦いの準備を整える。
とはいえ、いつでも反攻できるように整えていたレジスタンスの準備は万全であり、それこそ俺のパーティでの準備さえ整えれば問題ない、そういうレベルだった。
翌日の朝から出撃するという話に、じゃあ夜はゆっくりしないとだね、と思っていた矢先に彼女は現れた。
「うわーー、勇ごめんーー!」
半泣きの表情でこちらに飛びついてきたのはグラスやラルクたちと同じ異世界の四聖勇者、絆だった。
勇者の強靭な身体は突撃するような勢いであってもバランスを崩さずそっと受け止めることができる。
わけもわからないままそっと抱きしめるとごめん、ごめん、ごめんなさいと謝罪が続く。
どう見てもなにか悪いことが起こっていたがまるで話にならない。
落ち着いてとゆっくり背中を撫でると徐々に落ち着いてくる。
それと一緒に大声を上げたせいで声を聞いた周囲のテントからなんだなんだと人が顔を出し始めてくる。
「私の世界の四聖が一人死んでしまったんだっ!」
……一大事である。
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「ツムギを名乗る投擲具の勇者がそちらの世界から攻めてきたんだ。そいつは一人であることを生かして各国を転々としながら多くの人間を虐殺して回った。襲われた村、街、国。どこも宝も資材も根こそぎ奪っていくような有様で。オレたちも対策を取って次の襲撃国を予想しながら罠を張って待ち構えてたんだけど、何度もそれを外されて。そのうち一部の四聖勇者が閉じ困ってるなんてできない、討って出るっていいだしてさ。結果としてその勇者が殺されてしまったんだ……。今はこっちの……盾の勇者陣営に加わっているってわかって駆けつけたんだ」
絆の世界では四聖勇者は各国バラバラに召喚されており、国ごとの思惑もあり、連帯感がほぼゼロである。
こちらの四聖も仲良しとは言い難いが同じ四聖勇者とまとめられ、会議だなんだと顔を合わせており、それなりの仲ではある。
そんな異世界の四聖状況をうまく利用されたのだろう。
「別に四聖が一人減ったって問題あるか?」
集まってきた錬は訝しげにそう言う。
大有りである。
かつて女神はこう言っていた。
『そうじゃな。あとはまあ、四聖を失うと波の影響を受けすぎて融合ではなく消滅になる。融合までは四聖を失うな、くらいじゃな。一人二人なら失ってもいいが、そのときはバランス取ってもう片方も減らしておくことじゃな。バランス悪くなるからの』
すなわちバランス取りにこの世界も四聖勇者を倒すことを要求される状態になってしまったと言うことだ。
ツムギという投擲具の勇者は明らかにビッチ女神の勢力だろう。
この勇者の動きのせいで、クーデターへの反攻の最終目的は尚文の捕縛から殺害に変わってしまったのだ。
尚文もまたおそらくこのことを知っているに違いない。
「だから尚文は立ったのか……」
四聖のうち誰か一人が死ななきゃいけない状況で誰を選ぶか。
あえてクーデターを起こすことで犠牲になろうとしているのだろう。
「ごめん……友達を……」
自分は尚文をたお……殺せるのだろうか……。
元康や樹は世直しや美人助けるためにと悪人を倒している。
日本人なのにさすがと言いたいところだが、勇者経験が誰より深いはずの自分はけれど、人を殺すことに人一倍抵抗がある。
冷や汗がダラダラと流れ始めるのがわかる。
「い、いや、悪いのはその投擲具の勇者だし……でも、これ以上四聖勇者を殺させるわけにはいかない」
尚文を倒している間に再び勇者が殺されたとしたらもう団結どころではない。
すべての四聖勇者が殺されないために動くだろうし、殺される前に殺してやるなんてなったら目も当てられない。
「錬、元康。2人は絆と一緒に異世界に行って全四聖からこれ以上の被害が出ないように守ってもらえる?」
「良いですぞー! 勇者を狙うなんて非道、許せませんからな!」
「ああ。でもお前たちだけで大丈夫か? もしかしたら四人の中で誰かが選ばれるなら自分だと思ったのかもしれないし、そうだとすると本気で襲ってくるかもしれない」
「ああ、でも、他の人には頼めないことだから……」
ああ、嫌だ。
誰かにお願いしたい。
けれど、世界を荒らした目的は四聖勇者を殺すこともだろうがーーレベル上げとステータスアップが目的だろう。
各国の資材をあさりに漁った勇者はタクトレベルではすまない強さになっているはずだ。
そしてそいつが尚文の裏にいると言うなら、戦闘無しですむとは思えない。
メンバーの中で最も強力な自分たちこそ向かうべきなのだ。
倒すから殺すになってしまった途端に体の重力が何倍にもなったように重くなるのを感じた。
異世界四聖を殺すだけで尚文を味方にして、他の三勇者を異世界勇者防衛戦力に引っ張ることができるのだっ!
ユウは強いけどユウがいない方の世界でゲリラ的に四聖勇者を狩られると同しようもないという弱点。なので、向こうが決戦をのぞむというなら好都合として受けなきゃいけない的な。
それはそれとしてアニメになると更に可愛いよね、絆かわいいよ絆!