それは正しく戦争だった。
メルロマルク王城を舞台としたレジスタンスと王国軍率いる尚文の兵士同士の戦い。
技量はお互いに同程度。
人と人のぶつかり合いは多くの血を流し始めている。
数自体はこちらのほうが多いが、向こうには地の利がある。
城壁から雨のように降る矢の一斉掃射はこちらの先鋒を削り、その後のぶつかり合いで一気に押し返されてしまっている。
「出る」
本来ならここで錬たち勇者PTの力を使いながら王城内に流れ込み、ユウが決戦を引き受ける流れだったが、絆の世界での四聖勇者の欠員から絆PTを含めて錬や元康はあちらに行き、自分を含めて残りの四聖勇者同士守りを固めてもらっている。
そのせいもあり、現状の最上位PTはユウPTだけであり、残りは万が一にも落とされる訳にはいかないメルティとマインたちである。遠くから魔法を使うことはできるが前線投入とまではいかないレベルになる。
「《生体感知》……死なない程度にぶっ飛ばすっ! 《風波動弾》っ!」
魔法で対象を選択し、風を大砲のように固めた玉を打ち出す。
その力はすべての兵士を吹き飛ばそうとして──
『我、盾の勇者が女神の力を借りて天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。 龍脈の力よ、我が魔力と勇者の力と共に力を成せ。 力の根源たる盾の勇者が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者等に全てを与えよ』
「アル・リベレイション・オーラⅩ!」
大きな力の波動が戦場全体に行き交う。
それなりの痛みを与えるはずの風の波動は、多少の傷みを与えるに終わってしまう。
軽いジャブを食らった程度に怯んではいたが、すぐに体制を整え、反撃をしだす。
彼らの力は恐ろしいほどに強化されており、一人を数人で抑えなければあっという間にやられてしまうほどだ。
まるで巨人になった敵を相手にするように全体が押されだしている。
「これがオーラだって?」
キッと王城の一番上、バルコニーからこちらを見る尚文を睨んだ。
オーラの魔法はこちらも使える。
だが、認識の差なのだろうか、ユウのオーラの魔法の範囲は最大でPT分である。
軍隊全てにかけるような魔法ではなかった。
威力を上げて再度全員を攻撃する手はあったがここまで強化された相手をやるとすると範囲が大きくなり戦っている仲間を巻き込む。種類を変えて状態異常で麻痺や毒を考えるがサポートが本職の盾の勇者が相手であると考えると結局お互いの手のつぶしあいになる。
「《生体感知》」
今度は敵ではなく味方を対象にする。
「《プロテクション》」
ドラゴンの攻撃を防ぐ防御膜が味方兵士を包む。
最初の波で村人たちを守った力だ。
とは言え、防御だけが硬いこちらと全ステータスが向上した向こうでは結果はしれている。
だが、プロテクションはダメージ減少ではなく一定値まで完全なダメージ無効である。
であれば取れる手段がある。
「メルティ! マルティ!!」
後方に向かって大きく声を張り上げる。
返ってくるのは二人の返事と──
『力の根源たる私が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者に水の塊を射出せよ』
「ツヴァイト・アクアショット」
『力の根源たる私が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者等に炎の雨を降らせ』
「ツヴァイト・ファイヤースコール」
水と炎の魔法が兵士たちを吹き飛ばす。
敵味方関係なく魔法は降り注いだが、味方の兵士だけはプロテクションに守られダメージがない。
「ならばっ!」
尚文が魔法で守ろうと発動させる瞬間に──
「《イージスの盾》」
あらゆる魔法、呪術を防ぐ代わりに防いだ魔法の10倍の魔力を消費する魔法で阻害する。
打ち合いを続ければ先に魔力が空になるのはこちらだろうが、それさえバレないのであれば向こうにとっては手を潰され続けるように感じるだろう。
いつでも対応できるようにこちらは待機する必要があるが、現状で大きく影響を与えてくる尚文をフリーにはできない。
「いまなのねー!」
強力な魔法に倒れ数を減らした敵に一斉に味方の兵士が襲いかかる。
それに合わせてガエリオンが空を舞い、悠々と攻撃の届かない高さから炎の玉を吐き続ける。
「ぎゃー!」「ぐわーっ!」「弓兵っ、弓兵っ、まずはあそこっおっ!!」
ドラゴンを狙える相手はまっさきに落とされ、段々と責められる一方になっていく。
「ユウ様! ここはガエリオンに任せて先に行きましょう!」
後ろを振り向けばこちらに向かって親指を立てるメルティと余裕そうに高笑いをしているマイン。
「任せた!」
戦場を兵士たちに任せ、ユウ、ラフタリア、リーシアの三人が王城へと飛び込んだ。
久しぶりの投稿はドキドキします。おてやわらかにー