王城に突入した勇者パーティを迎えたのは罠や兵士たちの群れ……ということはなく、むしろ何もないと言ってもいい状態だった。
平時にお城に来たときのような……いや、外からの戦い合う人々の声や音を除けば深夜のように全く音の響かない状況だった。
「誰もいませんね」
「ふえっ、罠……ですかあ?」
「どうだろう。罠も何もないけど……」
生命感知では城の中にはごく少数しかいない。
殆どの戦力は外にいたと思うべきだろう。
中にいるのはメイドや厨房などの非戦闘員が主であと少数の戦力が王座近くで待っているようだった。
「大きく二箇所に戦力は集まっているようだ。王座と……これから行く広間に二人」
開かれたままのパーティもできる大広間ににいくとそこには二人の男女が待っていた。
「よく来ましたね」
「待っていたぞ」
それはメルロマルク王と女王の二人だった。
尚文に囚われていると思われていた二人は拘束一つなく、それどころか武器を構えている。
その装備も戦いに赴くものだった。
「裏切ったか」
「イワタニ様についた、と言ってほしいですね。私は女王。勝ち手が複数あると聞いた以上いずれにもかけざるを得ません。あなたの後ろにも女神がいると言うのならばなおさら」
「盾につくなど業腹だが、妻がそうすると言うなら仕方がない」
女神はろくでもないというのはわかりきったことだった。
食べるよりはマシだが、マッチポンプとして魔王と勇者を配置する女神も十分にろくでもない。
だが、だとしてどうするというのか。
四神のバリアという手もあるらしいが、全人類の魂を捧げて一時的な対処をするというのは正解なのだろうか。
それとも、尚文は別の手段を見つけているのだろうか。
「……たとえ二人であったとして、俺たちを止められるとでも?」
「最もですね。私達ではあなたにはかなわないでしょう。でも勇者の仲間であれば話は別です。ユウ様、仲間を置いてゆき、先に進んでいただけますか?」
身構えたこちらのパーティに対して警戒はしているもののまだ構えない二人。
魔王が勇者に仲間にならないかと問うような突飛な提案だ。
「なんでそんなことをする必要がある? 二人を倒してから尚文と戦えばいい」
「それは道理ですが、断ったら私たちは転移します。場所は隣の世界。そこで残りの四聖を殺します」
「なっ」
「向こうの四聖がいなくなれば諦めざるをえないでしょう? そして、四霊の力があれば女神からの干渉を防ぐ壁が張れます。この世界の人々の魂を使うのは論外ですが、滅ぶのでしたらその世界の魂を使うのもありではないでしょうか」
「殺戮をおこなうと?」
「できればやりたくありませんが」
ユウにとって絆やグラス、そして向こうの世界で世話になった面々はもはや血の通った人間で知らなかったとして犠牲にできる相手ではなかった。
女王としてこの世界を守る手段を取ることは悪いことではないだろうが、一つの世界を食いつぶすような真似をされては黙ってはいられない。
しかし、皆で戦えば彼女たちは逃げの一手を打つだろう。場合によっては尚文や四聖を殺した刺客もまた。
そして、ユウに弱点があるとすればそれはユウが一人であるということ。
ただしーー
「私達であれば勝てると思っているんですか」
ラフタリアもリファナも刀の勇者の仲間として極限レベルに鍛え上げられているのだ。
城の兵士に刺されても切られても傷さえつけられない強さがある。
「ええ。私もまたーー杖の勇者の仲間ですから」
メルロマルク王の手に杖が出現する。
その姿が様々な形に変わる。刀と同じ勇者武器であると証明が行われる。
「同じ勇者の仲間であれば勝てると?」
「いいえ、そう容易い相手ではないでしょう。レベルはそちらのほうが上であるとも。けれど、その差は経験で埋めましょう。さあ、どうしますか?」
ゲリラ戦に徹された場合、不利なのはこちらだった。
ラフタリアを見ると、苦笑するように笑われた。相当苦い顔をしていたのだろう。
「必ず二人を倒して助けに行きます。それまで一人にしてしまいますが……」
「ああ、まかせたよ、ふたりとも」
「お任せくださいっ」
ラフタリアとリーシアの二人の返事にうなずき、二人の王と王女の横を大きく迂回して通り過ぎてゆく。
行き先は王座の間。
そこに尚文たちはいるようだった。
大広間を離れた瞬間に、巨大な魔法を放った魔力の波動や、それを打ち砕く破壊音が響く。
見た限りラフタリアたちのほうが強く見えたが、勇者武器の持ち主が相手である。
そして、女王は勇者武器による強化法を認識している。
国中から資材を集めて強化している我々ほどではないだろうが、その分彼らには長い時間があったのだ。
「無事できてくれよ」
そう信じて願いながら先に進むことができることだった。
書き溜めた分は投稿しておこうと思います。