脳が焼ききれてしまいそうだった。
体の中で花火が破裂し続けるみたいにうるさくて何も聞こえない。
視界は白に点滅し続け、ろくに働かない。
体だって微塵も動かない。
だから電池の抜けた人形のように床に倒れてしまっても自分が立っているのか倒れたのかもユウには認識できていなかった。
全ては尚文が『神の盾!』と唱えた瞬間だった。
今更になって自分の認識が全く間違っているのを理解した。
尚文は殺させるためにいたのではなかった。
ユウを殺すためにいた。
自分が殺されても仕方がないが、でも相手を殺そうとと決めて立っていたということに。
絶対的な力量の差があるはずの相手を殺すための手段を持っている相手だということがわかっていなかった。
(耳も! 目も! 何も聞こえない見えない! 力も練れない使えない!!)
魂の痛みにのけぞって陸に上がったエビのように跳ね回っているが、ユウにはそれがわからなかった。
(殺される! このままじゃ殺される!!)
「ユウ。お前が強いのは異世界二週目だからじゃない! 魔王の魂をその身に受け入れているからだ。2人分だから2重に強くなれる! でもそれは無敵というわけじゃない。魔王の魂という世界中の汚れを集めてできた神みたいな力だから、神の盾で打ち破れる!」
(魂が痛む! 俺のじゃない魂が!)
皮肉にも痛みが勇者としての魂の中に眠り少しずつ浄化されていく魔王の魂をユウに知覚させた。この魂が原因なのに、自分の魂と結びついていて切り離すことができなかった。
なんとか魂を押さえつけようとしても、全く痛みはおさまらない。
衝撃に、内から膨らみ弾ける衝撃に抗えなかった。
全くわからないなりに抵抗するように手を振り回したが、倒れたまま手足をバタバタ動かすさまはあまりにも哀れな様子だった。
「フィトリア!」
「フィトリアキーック!」
防御もできない体に勇者の攻撃が刻まれ、ダメージを与え続ける。
抵抗すらできなければ格上であろうと関係ない。
「トドメだ! その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の生贄たる絶叫。我が血肉を糧に生み出されし竜の顎により激痛に絶叫しながら生贄と化せ」
尚文の
最後の処刑の瞬間が迫っている。
(だめだ! 間に合わない!)
魔王の魂を押さえつけ、なんとか周りを認識できるようになった頃にはもはや準備は終わっていた。
高く上り詰めたジェットコースターがあとは落ちるしかないように、処刑はあとは合図だけを待っていたのだ。
ブラッドサクリファイスがユウを殺そうとしたその瞬間だった。
「ちょっと待った!!」
リーシアがフィトリアを切りつけ、ラフタリアが尚文の処刑具を切り裂いた。
「お、お待たせしました!!」
「……っち、間に合わなかったか。だがこのまま押し込むだけだ! フィトリア!」
「フィトリアは負けなーい!」
押し切るタイミングを逃した尚文PTが全力で押し切りに来る。